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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1096393
異議申立番号 異議2003-71223  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-01-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-12 
確定日 2004-05-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3344286号「付加硬化型シリコーン樹脂組成物」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3344286号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由
【1】手続きの経緯

本件特許第3344286号は、平成9年6月12日に特許の出願がなされ、平成14年8月30日に特許権の設定登録がなされ、その後、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。

【2】本件発明

本件特許の請求項1〜5に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、請求項1〜5に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 (A)下記平均組成式(1)
Rn(C6H5)mSiO[(4-n-m)/2] (1)
(但し、式中Rは同一又は異種の置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基又は水酸基で、全Rの0.1〜80モル%がアルケニル基であり、n,mは1≦n+m<2、0.20≦m/(n+m)≦0.95を満たす正数である。)で示される25℃での粘度が10000cp以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン 100重量部
(B)下記平均組成式(2)
R’aHbSiO[(4-a-b)/2] (2)
(但し、式中R’は脂肪族不飽和炭化水素基を除く同一又は異種の置換又は非置換の一価炭化水素基、a,bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である。)
で示される1分子中に少なくとも2個のSi-H結合を有し、ケイ素原子に結合したR’とHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000cp以下である直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン 10〜100重量部
(C)付加反応触媒 触媒量
を必須成分とする、25℃での粘度が10〜300ポイズで、150℃でのゲル化タイムが5分以下であることを特徴とする付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】 180℃で2時間硬化させた後の硬さがデュロメーター(ショアD)で60以上である請求項1記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】 180℃で2時間硬化させた後の曲げ強度(JIS K6911)が100kgf/cm2以上である請求項1又は2記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】 (B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、一般式(2)のケイ素原子に結合したR’とHの合計の5〜50モル%がフェニル基である請求項1,2又は3記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】 (B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、一般式(2)のケイ素原子に結合した全R’とHのうち15モル%未満がフェニル基であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、フェニル基が15モル%以上であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの1:9〜9:1の混合物である請求項1,2又は3記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。」

【3】特許異議の申立ての理由の概要

特許異議申立人は、甲第1号証(特公昭52-44900号公報)、甲第2号証(特公昭53-20545号公報)、甲第3号証(特開昭57-172302号公報)、及び、甲第4号証(特開昭54-159459号公報)を提出し、本件発明1〜5は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張をしている。

【4】判断

1.本件発明1について
本件発明1は、「平均組成式(1)で示される25℃での粘度が10000cp以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン」(以下「(A)成分」という。)100重量部と、「平均組成式(2)で示される1分子中に少なくとも2個のSi-H結合を有し、ケイ素原子に結合したR’とHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000cp以下である直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン」(以下「(B)成分」という)10〜100重量部を必須成分とすることを要件として具備している(以下、この要件を「本件要件」という。)。そして、本件発明1は本件要件を発明を特定する事項の一部として備えることにより、低粘度であり、種々の成形方法によって複雑な形状、厚物の成形品を得ることができると共に、透明で、高硬度、高強度を有する硬化物を得るという効果を奏するものと認められる。
そこで本件要件について甲第1〜3号証を検討するに、甲第1号証には、(A)成分に相当する化合物が記載されているが、(B)成分は記載されていない。甲第2号証には、(A)成分も(B)成分も記載されていない。甲第3号証には、(B)成分に相当する化合物は記載されているが、これを(A)成分と本件要件の配合割合で配合することは記載されておらず、またそれを示唆する記載もない。
以上のとおり、甲第1号証には(A)成分が、甲第3号証には(B)成分がそれぞれ記載されているが、それらは別々の文献に、別々の化合物と配合することが記載されているだけであり、両者を配合すること、特に本件要件の配合割合で配合することについては、甲第1〜3号証に記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
なお、特許異議申立人は甲第4号証も提出しているが、甲第4号証にも本件要件を示唆する記載はないから、本件発明1は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
なお、本件要件に関して、特許異議申立人は以下のa〜cの主張をしているが、以下の(1)〜(3)の判断により、これらの主張は採用出来ない。
特許異議申立人の主張は以下のとおりである。
a:甲第1号証には、(A)成分に相当する化合物と特定の有機ポリシロキサン(以下「b」という。bは特許異議申立人も認めるように(B)成分とは異なる物質である。)を併用することが記載され(請求項1、実施例、第4頁第I表の中央に記載されたベース樹脂を参照。)、甲第1号証の比較例に、本件発明1の平均組成式(2)に該当する架橋剤(第5頁第9欄を参照。以下「b-1」という。)が記載されているから、甲第1号証の実施例に記載された(A)成分とbからなる組成物(以下「甲第1号証の組成物」という。)において、bに代えて、b-1を使用することは容易である。
b:甲第2号証には、本件発明1の平均組成式(2)に該当する架橋剤が記載されている(第4頁第7欄の比較としての組成物に使用された架橋剤を参照。)から、甲第1号証の組成物において、bに代えて、該架橋剤を使用することは容易である。
c:甲第3号証には、(B)成分が記載されているから(実施例1〜3で使用された第6頁左上欄第1行のメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサンを参照。)、甲第1号証の組成物において、bに代えて、(B)成分を使用することは容易である。
これらの主張に対する判断は以下のとおりである。
(1)aについて
甲第1号証におけるb-1は、その組成式が平均組成式(2)に該当するもののその粘度は記載されていないから、b-1が(B)成分に該当するとは言えない。したがって、bに代えて、b-1を使用しても、本件要件は構成できない。また、甲第1号証には、「b-1」の粘度を25℃で1000cp以下とし、(A)成分に対して、本件発明1のような配合割合で配合することを示唆する記載はない。
したがって、aの主張は採用できない。
(2)bについて
甲第2号証に記載された架橋剤は、その組成式が平均組成式(2)に該当するもののその粘度は記載されていないから、該架橋剤が(B)成分に該当するとは言えない。したがって、bに代えて、該架橋剤を使用しても、本件要件は構成できない。また、甲第1、2号証には、該架橋剤の粘度を25℃で1000cp以下とし、(A)成分に対して、本件要件のような配合割合で配合することを示唆する記載はない。
したがって、bの主張は採用できない。
(3)cについて
甲第3号証には、(B)成分が記載されているが、甲第1、3号証には、甲第1号証の組成物において、bに代えて、(B)成分を使用することを示唆する記載はない。また、(A)成分と(B)成分を本件要件の配合割合で配合することを示唆する記載もない。
したがって、cの主張は採用できない。

2.本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件要件、若しくは、本件要件をさらに特定した要件を具備する発明であるから、本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

【5】むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1〜5についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-20 
出願番号 特願平9-171006
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 あき子
船岡 嘉彦
登録日 2002-08-30 
登録番号 特許第3344286号(P3344286)
権利者 信越化学工業株式会社
発明の名称 付加硬化型シリコーン樹脂組成物  
代理人 久保田 芳譽  

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