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審決分類 |
審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正を認める 審判請求を却下する(争いの請求項は全て訂正により削除) A23D |
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管理番号 | 1096945 |
審判番号 | 無効2003-35059 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-03 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-02-17 |
確定日 | 2004-01-05 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3187001号発明「非トランス、非テンパーフィリング脂肪」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3187001号の請求項1乃至7に係る発明は、平成9年6月24日(パリ条約による優先権主張1996年6月26日、オランダ)に特許出願され、平成13年5月11日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成15年2月17日付で、旭電化工業株式会社より、請求項1に係る発明の特許に対して無効審判が請求され、延長された答弁期間内である平成15年9月12日付で被請求人より答弁書並びに訂正請求書が提出されたものである。 2.訂正の可否についての判断 (1)訂正の内容 被請求人が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。 ア.特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ.請求項2および3の請求項の番号を繰り上げて請求項1および2とするとともに引用形式から独立形式に訂正する。 ウ.請求項4の請求項の番号を繰り上げて請求項3とするとともに、引用していた請求項2又は3を請求項1又は請求項2と、引用番号を訂正する。 エ.請求項1乃至4を引用していた請求項5を、削除した請求項1の記載を組み込んで独立形式とし番号を繰り上げた請求項4と、引用していた請求項2乃至4を請求項1乃至3を引用するように訂正した請求項5とに分ける。 オ.請求項6の引用していた請求項5を請求項4又は5と訂正する。 カ.請求項1乃至4を引用していた請求項7を、削除した請求項1の記載を組み込んで独立形式とした請求項7と、引用していた請求項2乃至4を請求項1乃至3を引用するように訂正した請求項8とに分ける。 (2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否および独立特許要件 上記訂正事項ア〜カは、請求項1を削除し、それに伴い請求項2乃至請求項7の記載様式を改めるものであるから、この訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。 上記訂正により本件特許の請求項数は増加したが、これは請求項1を削除することにより多数項従属形式である請求項5と請求項7がそれぞれの請求項にそれらの多数項全てを従属させることができなくなったために、請求項5を請求項4と請求項5とに、また請求項7を請求項7と請求項8とに分けたことによるものであるから、当該請求項の増加にもかかわらず、本件訂正は特許請求の範囲を減縮するものに該当する。 そして、上記訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、訂正前の請求項2乃至7は本件無効審判請求の対象とはされていないところ、当該請求項を訂正した訂正後の請求項1乃至8の特許についてはこれを拒絶すべき理由を発見しないから、これらの請求項についての訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものでもない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第134条第2項及び同条第5項において準用する第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.無効審判請求についての判断 無効審判請求の対象であった請求項1に係る発明は、上記訂正の結果削除され、審判請求の対象が存在しない。 従って、本件無効審判の請求は、特許法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 非トランス、非テンパーフィリング脂肪 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 SUS、SSU、及びSU2型トリグリセリドを含む低トランスフィリング脂肪組成物用又は包装マーガリン用の脂肪ブレンドであって、ここにおいて、この脂肪ブレンドは、5重量%未満のトランス脂肪酸含量を有し、SUS及びSSU型トリグリセリドを0.5以上2未満のSUS:SSUの重量比で含み、SUSは34重量%未満の量で存在し、SU2は55重量%未満の量で存在し、この脂肪ブレンドは、20℃で不安定化脂肪についてNMRパルスによって測定される固体脂肪指数が、10乃至35を示し、ここにおいて、Sは16乃至18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸残基、及び、Uは18個の炭素原子を有するモノ及び/又はジ不飽和脂肪酸残基であり、この脂肪ブレンドが、 (i)ヨウ素価50乃至70のエステル交換されたパームオレイン成分、及び、 (ii)SUS含量60乃至80重量%、SSU含量5乃至30重量%、及びSU2含量5乃至15重量%であるパーム油画分を 含む、脂肪ブレンド。 【請求項2】 SUS、SSU、及びSU2型トリグリセリドを含む低トランスフィリング脂肪組成物用又は包装マーガリン用の脂肪ブレンドであって、ここにおいて、この脂肪ブレンドは、5重量%未満のトランス脂肪酸含量を有し、SUS及びSSU型トリグリセリドを0.5以上2未満のSUS:SSUの重量比で含み、SUSは34重量%未満の量で存在し、SU2は55重量%未満の量で存在し、この脂肪ブレンドは、20℃で不安定化脂肪についてNMRパルスによって測定される固体脂肪指数が、10乃至35を示し、ここにおいて、Sは16乃至18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸残基、及び、Uは18個の炭素原子を有するモノ及び/又はジ不飽和脂肪酸残基であり、この脂肪ブレンドが、 (i)エステル交換されたシア-オレイン画分、及び、 (ii)SUS含量60乃至80重量%、SSU含量5乃至30重量%、及びSU2含量5乃至15重量%であるパーム油画分を 含む、脂肪ブレンド。 【請求項3】 成分(i)及び(ii)が、60乃至90:40乃至10の範囲の重量比で存在する、請求項1又は請求項2の脂肪ブレンド。 【請求項4】 フィリングが、SUS、SSU、及びSU2型トリグリセリドを含む低トランスフィリング脂肪組成物用の脂肪ブレンドであって、ここにおいて、この脂肪ブレンドは、5重量%未満のトランス脂肪酸含量を有し、SUS及びSSU型トリグリセリドを0.5以上2未満のSUS:SSUの重量比で含み、SUSは34重量%未満の量で存在し、SU2は55重量%未満の量で存在し、この脂肪ブレンドは、20℃で不安定化脂肪についてNMRパルスによって測定される固体脂肪指数が、10乃至35を示し、ここにおいて、Sは16乃至18の炭素原子を有する飽和脂肪酸残基、及び、Uは18個の炭素原子を有するモノ及び/又はジ不飽和脂肪酸残基である、ブレンドを少なくとも部分的に含む、充填されたチョコレートバー。 【請求項5】 フィリングが、請求項1乃至3のいずれか1請求項の脂肪ブレンドを少なくとも部分的に含む、充填されたチョコレートバー。 【請求項6】フィリングが、25乃至45容量%の空気又は他のガスを含むようにホイップされた、請求項4又は請求項5の充填されたチョコレートバー。 【請求項7】 SUS、SSU及びSU2型トリグリセリドを含む低トランスフィリング脂肪組成物用の脂肪ブレンドであって、ここにおいて、この脂肪ブレンドは、5重量%未満のトランス脂肪酸含量を有し、SUS及びSSU型トリグリセリドを0.5以上2未満のSUS:SSUの重量比で含み、SUSは34重量%未満の量で存在し、SU2は55重量%未満の量で存在し、この脂肪ブレンドは、20℃で不安定化脂肪についてNMRパルスによって測定される固体脂肪指数が、10乃至35を示し、ここにおいて、Sは16乃至18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸残基、及び、Uは18個の炭素原子を有するモノ及び/又はジ不飽和脂肪酸残基である、脂肪ブレンドを、フィリングの脂肪の後硬化を避けるためにフィリングの一部分として使用する、チョコレートバー用のフィリング中へ使用される脂肪ブレンド。 【請求項8】 請求項1乃至3のいずれか1請求項の脂肪ブレンドを、フィリングの脂肪の後硬化を避けるためにフィリングの一部分として使用する、チョコレートバー用のフィリング中へ使用される脂肪ブレンド。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、非トランス、非テンパーフィリング脂肪に関する。 【0002】 【従来の技術】 冷融解、非トランス、非テンパーフィリング脂肪は、本発明者らの欧州特許第555,917号に公知である。この欧州特許によると、ブレンドが使用される場合、51乃至80重量%のSUSトリグリセリド、5重量%未満のS3トリグリセリド、7乃至60重量%の(U3+U2S)トリグリセリド、40重量%未満のSSUトリグリセリドを含み、SUS:SSUトリグリセリドの重量比が6未満である、これらの組成物が得られる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 上記の脂肪組成物は優れた非テンパー脂肪組成物であるが、上記の組成は、一つの不利な影響、すなわち、クリーム中に使用した場合、およその雰囲気温度で貯蔵したとき脂肪の過度の後硬化(posthardened)が起こることを本発明者らは発見した。この後硬化は、消費者による脂肪の評価を劣ったものとし、そのため、この脂肪から製造したクリームが存在する製品は、高い評価を受けない。さらに、この問題は、中程度に硬化された脂肪組成物、例えば、中程度に硬化されたアラキン酸及び大豆油の混合物を使用することによって克服し得ることは、先行技術から公知である。しかし、中程度の硬化は、硬化された脂肪中に実質的な量のより身体によくないトランス脂肪を生じる結果となるため、これは健康上よくない脂肪を使用しなければならないことを意味する。 【0004】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、本発明者らの先の欧州特許555,917号に示した公知の脂肪の有利な特性を維持しながら、上記の問題の解決方法を発見するために研究した。 【0005】 この研究により、上記の目的を満たし得る新規な脂肪組成物を得た。この新規な脂肪は、SUS、SSU、及びSU2型トリグリセリドを含む低トランスフィリング脂肪組成物用又は包装マーガリン用の脂肪ブレンドを含み、この脂肪ブレンドは、5重量%未満、好ましくは2重量%未満のトランス脂肪酸含量を有し、SUS及びSSU型トリグリセリドを2未満、好ましくは0.5乃至1.5のSUS:SSUの重量比で含み、SUSは34重量%未満、好ましくは15乃至25重量%の量で存在し、SU2は55重量%未満、好ましくは30乃至50重量%で存在し、この脂肪ブレンドは、好ましくは20℃で不安定化脂肪についてNMRパルスによって測定された固体脂肪指数が、10乃至35、より好ましくは15乃至30、最も好ましくは20乃至25を示し、ここにおいて、Sは16乃至18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸残基、及びUは、18個の炭素原子を有するモノ及び/又はジ不飽和脂肪酸残基である。 【0006】 上記の定義において、NMR測定は、不安定脂肪について行われるが、これは、脂肪を実際の測定の前に以下に示す温度の様式にさらすことを意味する。即ち、60℃で融解、60℃で5分間、0℃で1時間、測定温度で2分の1時間である。 【0007】 【発明の実施の形態】 上記のブレンドは好ましくは、 (i)ヨウ素価50乃至70のエステル交換されたパームオレイン成分、及び、 (ii)SUS含量60乃至80重量%、SSU含量5乃至30重量%、好ましくは10乃至25重量%、及びSU2含量5乃至15重量%であるパーム油画分を 含む。 【0008】 代わりに、ブレンドは、 (i)エステル交換されたシア-オレイン画分、及び、 (ii)SUS含量60乃至80重量%、SSU含量5乃至30重量%、好ましくは10乃至25重量%、及びSU2含量5乃至15重量%であるパーム油画分を 含む。 【0009】 上に定義した脂肪(i)及び(ii)は、60乃至90:40乃至10、好ましくは70乃至80:30乃至20の範囲の重量比で使用され得る。 【0010】 フィリングが本発明のブレンドを少なくとも部分的に含む、充填されたチョコレートバーも又、本発明の一部分である。本発明者らは、本発明の新規なブレンドが非常に良好なガス混和性を有することを発見し、それは、脂肪ブレンド中の空気又は他のガスを25乃至45容量%混合することが容易であることがわかった。これは、従来のホイッパーで、ブレンドをホイップすることによって達成され得る。それゆえ、本発明の新規なフィリングは、ガスを混和され、充填されたチョコレートバーの製造に実質的に適している。本発明の新規な脂肪組成物を含む、包装マーガリンも、本発明の一部分である。 【0011】 【発明の効果】 本発明のもう一つの実施様態によれば、本発明の新規な脂肪ブレンドは、任意にホイップの後に、チョコレート製品の貯蔵中の脂肪の後硬化を防ぐために、充填されたチョコレート製品のフィリング部分として、有益に使用され得る。 【0012】 【実施例】 1.以下の配合を使用してホイップクリームを製造した。 粉砂糖 50重量% 脂肪 40重量% スキムミルクパウダー 10重量% 【0014】 使用した脂肪は、 (A)アラキン酸及び大豆油の、中程度に硬化された混合物(65:35の比)であって、約35%のトランス含量を有する混合物、 (B)湿式分別されたパーム油オレイン/パーム油/3重量%のS3、70重量%のSUS、14重量%のSSU及び10重量%のSU2を有するパーム油画分の20:50:30の重量比の混合物、及び (C)ヨウ素価65のエステル交換されたパーム油オレインと、6重量%のS3、68重量%のSUS、14重量%のSSU及び10重量%のSU2を有するパーム油画分の80:20の重量比の混合物 であった。 【0015】 異なる成分及び組成のトリグリセリド組成物を以下に示す。 【0016】 異なる脂肪ブレンド(A)、(B)及び(C)の固体脂肪指数は以下のとおりであった。 【0017】 成分をホバート(Hobart)混合機中で混合し、得られたクリームを、混合物をホイップできる温度へ冷却した。ホイップ温度及び空気混入の量を以下に示す。 【0018】 クリームを20℃で貯蔵し、異なる時間間隔の後、クリームの硬度を測定した。結果を以下に示す。 【0019】 硬度は、60°のコーンを有するスティーブンス(Stevens)テクスチャー分析機を使用し、0.5mm/秒の速度を使用して測定した。硬度はgで示している。 【0020】 上記の結果から、後硬化はトランス脂肪組成物(A)で最も低く、欧州特許第555,917号の組成物である組成物(B)で後硬化は受容できないほど高く、本発明の組成物(C)は、後硬化は受容できる程度であり、トランス脂肪に見受けられる値に十分近いとの結論に達した。 【0021】 2.以下の配合を使用してホイップクリームを製造した。 粉砂糖 50重量% 脂肪 40重量% スキムミルクパウダー 10重量% 【0022】 使用した脂肪は、 1.アラキン酸及び大豆油の、中程度に硬化された混合物(65:35の比)であって、約50%のトランス含量を有する混合物、及び、 2.エステル交換されたパーム油オレイン/シアオレインと、パーム油画分の75/25の重量比のブレンド であった。 【0023】 脂肪2のトリグリセリド組成を以下に示す。 SUS 23.2 SSU 19.6 SU2 34.4 【0024】 脂肪ブレンドの固体脂肪指数は以下のとおりであった。 【0025】 成分をホバート混合機中で混合し、得られたクリームを、混合物をホイップできる温度へ冷却した。ホイップ温度及び空気混入の量を以下に示す。 【0026】 クリームを20℃及び25℃で貯蔵し、異なる時間間隔の後、クリームの硬度を測定した。結果を以下に示す。 【0027】 硬度は、60°のコーンを有するスティーブンステクスチャー分析機を使用し、0.5mm/秒の速度及び2mmの浸透深度を使用して測定した。硬度はgで測定している。 【0028】 上記の結果から、同量の空気が両方のクリームに混合され、後硬化はトランス脂肪組成物1で最も低く、本発明のブレンド2は、後硬化は受容できる程度であり、トランス脂肪に見受けられる値に十分近いという結論に達した。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2003-10-28 |
結審通知日 | 2003-10-31 |
審決日 | 2003-11-20 |
出願番号 | 特願平9-183172 |
審決分類 |
P
1
122・
832-
XA
(A23D)
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最終処分 | 審決却下 |
前審関与審査官 | 吉住 和之、北村 弘樹 |
特許庁審判長 |
種村 慈樹 |
特許庁審判官 |
鵜飼 健 田中 久直 |
登録日 | 2001-05-11 |
登録番号 | 特許第3187001号(P3187001) |
発明の名称 | 非トランス、非テンパーフィリング脂肪 |
代理人 | 山崎 行造 |
代理人 | 山崎 行造 |
代理人 | 羽鳥 修 |