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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C07C |
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管理番号 | 1096952 |
審判番号 | 訂正2004-39006 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-05-13 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2004-01-07 |
確定日 | 2004-03-23 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3106505号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3106505号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3106505号発明(平成2年12月21日特許出願、優先権主張 平成2年9月28日 日本(JP)、平成12年9月8日設定登録)の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正するものであり、その訂正事項は下記の(a)のとおりである。 (a)明細書段落【0021】に、「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」とあるのを、「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート」と訂正する。 2.当審の判断 上記訂正事項(a)について検討する。 (2-1) 本件特許明細書の段落【0021】の上記記載に関し、「実施例1で得た」化合物は、明細書の段落【0015】(実施例1)及び段落【0016】(【表1】)に示されるように「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート」であって、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」ではなく、一方、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」なる化合物は、明細書の段落【0019】(実施例4)及び段落【0016】(【表1】)に示されるように、実施例4により得られたものではあるが、実施例1で得られたものではない。 そうしてみると、段落【0021】の「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」なる記載は、その記載された内容自体が矛盾しており、該記載中の「実施例1で得た」、あるいは、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」の、いずれかが誤記であると認められるものの、当該記載からでは、どちらが誤記であるのか判断できない。 (2-2) そこで、どちらが誤記であるかを判断するための何らかの知見を得るべく、本件特許明細書の記載をみるに、段落【0021】には、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」に続き「(以下、CMENDと略記する)」なる記載がなされており、この略号は段落【0021】に記載の「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」の化合物名についてのものであるから、該略号と化合物名との関係について検討する。 段落【0021】と同様に化合物名と略号が併記されているのは、段落【0025】及び【0026】であり、ここには、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエート(以下、CMENHと略記する)」、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオノナノエート(以下、CMENNと略記する)」と記載され、これらの略号は段落【0021】の記載も含めて、最初の4文字が「CMEN」と共通しており、また、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の化合物は、該請求項1に記載されているように「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエート」と総称され、具体的にこれらの化合物の製造例である実施例1〜4に記載された化合物の名称も、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオ」の部分は共通しているのであるから、上記略号の部分「CMEN」は、化合物名の部分である「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオ」に該当する、即ち、上記「CMEN」は、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオ」の下線部をアルファベットで表し並べたものと解釈できる。そして、長い名称を有する化合物等を、例えばその化学構造を特徴付ける骨格や置換基の最初の文字をアルファベットで表して並べ略号で表すことはしばしば行われるところであるから、この解釈は妥当なものと認められ、すると、上記略号の最後の1文字は、具体的「アルカノエート」の最初の文字をアルファベットで表したものであり、段落【0025】においては「ヘキサノエート」に該当する「H」、段落【0026】においては「ノナノエート」に該当する「N」、が記されているものと認められる。 (2-3) この知見、即ち、化合物の略号は、最初の4文字は共通し、最後の1文字は、具体的な「アルカノエート」を表す、という知見に基づき、段落【0021】の記載をみると、略号の最後の1文字は「D」であるから、段落【0021】に実際に記載されている「トリデカノエート」であるとするよりも、訂正事項(a)で提示するように「デカノエート」であると解され、そうすると、「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」の記載は「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート」についての記載と解され、この解釈と整合するのは「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート」が記載されている実施例1に係る「実施例1で得た」の記載の方であるから、「実施例1で得た」を誤記とするより、「1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」が誤記である、とする方が妥当であるものと認められる。 (2-4) そうしてみると、段落【0021】の「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート」なる記載は、「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート」の誤記と認められるから、上記訂正事項(a)は、誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。 そして、「実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート」は、願書に添付した明細書に記載され、該化合物がビニル系単量体の重合開始剤として有用であることも同明細書に記載されているから、訂正事項(a)は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートおよびその用途 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ炭素数1〜9のアルキル基を示し、R1、R2およびR3の合計は4〜11である。)で示される1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエート。 【請求項2】下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ炭素数1〜9のアルキル基を示し、R1、R2およびR3の合計は4〜11である。)で示される1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートを有効成分とするビニル系単量体の重合開始剤。 【請求項3】前記ビニル系単量体が塩化ビニルである請求項2の記載の重合開始剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は新規なペルオキシエステルである1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートに関するものであり、ビニル系単量体、例えば、MMA等の(メタ)アクリル酸エステルや塩化ビニル、酢酸ビニル等の重合開始剤としての用途に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来からビニル系単量体単独またはそれと共重合可能なビニル系単量体との混合物を重合させる際に、重合開始剤としては、種々の有機ペルオキシドや、アゾイソブチロニトリル(以下AIBNと略記する)等のアゾ化合物を用いる方法が知られていた。 【0003】 例えば、塩化ビニル系単量体の重合には、低温でも活性のある重合開始剤として、特開昭54-11190号公報に記載されたジイソブチリルペルオキシド(以下、IBPOと略記する)および特公昭40-16795号公報に記載されたアセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド(以下、ACSPと略記する)等や、特開昭58-120611号公報に記載されたクミルペルオキシネオデカノエート(以下、CNDと略記する)、更にはパラメンタルペルオキシネオデカノエート(以下、PMNDと略記する)等の過酸エステルでカルボン酸のα炭素が第3級である化合物が知られていた。 【0004】 また、MMAなど(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合にはt-ブチルペルオキシピバレート(以下、BPVと略記する)、あるいはパラメンタルペルオキシピバレート(以下、PMPVと略記する)を、酢酸ビニル単量体の重合にはAIBNなどを用いることが知られていた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、前記、IBPO、ACSP、CND、PMNDを重合開始剤として用いる塩化ビニル系単量体の重合方法にはそれぞれ問題があった。すなわち、IBPOは水に対して非常に不安定で、水と接触して分解するため、重合活性の持続性がなく、結果として重合体の収率が低かった。またACSPは分解生成物の衛生上の問題と、得られた重合体が着色する等の熱安定性が悪かった。CNDはクミルペルオキシ基に起因する分解生成物のために重合体に特有の臭気があるという欠点を有していた。更にPMNDは重合体にテルペン臭の臭気がつくという欠点を有していた。 【0006】 また、AIBNを重合開始剤として用いる酢酸ビニル系単量体の重合方法では、高重合度のポリ酢酸ビニルが得られるものの、得られた重合体が着色する等の熱安定性が悪かった。BPVは重合開始剤として用いる(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合では、得られる重合体の物性については殆ど問題がないものの、重合活性がやや低く、重合体の収率が低いという欠点があった。また、重合開始剤としてPMPVを用いた場合には、重合体にテルペン臭がつくという問題があった。更に、ポリマー工業では、経済的理由からポリマーの生産性を増大させることが望まれており、反応時間の短縮および生産容量の増大のために、一層活性な重合開始剤が引き続き要求されている。本発明は、ポリマーの変色および臭気のない収率の良い、重合開始剤を提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は、これら目的解決するため、提案されたもので、本発明の第1は下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ炭素数1〜9のアルキル基を示し、R1、R2およびR3の合計は4〜11である。)で示される1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートに関するものである。本発明の第2は、下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ炭素数1〜9のアルキル基を示し、R1、R2およびR3の合計は4〜11である。)で示される1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートを有効成分とするビニル系単量体の重合開始剤であり、本発明の第3は、前記ビニル系単量体が塩化ビニルである重合開始剤である。なお、本発明の第1及び第2の上記一般式(1)で示されるペルオキシエステルのR1、R2、およびR3に対する炭素数の上限は実用性を考慮して決定される。通常R1、R2、およびR3はそれぞれの炭素数が9までのアルキル基であり、R1、R2、およびR3の合計は11までである。 【0008】 本発明のペルオキシエステルの具体的な例としては、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオノナノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエート等である.本発明のペルオキシエステルは、従来の方法に従い、例えば、以下のようにして得ることができる.即ち、カルボン酸クロライドと、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルヒドロペルオキシドを水酸化ナトリウムか水酸化カリウムまたはピリジンのようなアミン類を触媒として、通常のペルオキシエステルと同様の反応条件下で得られる. 【0009】 即ち、溶媒として芳香族炭化水素例えば、トルエン、エチルベンゼン、または脂肪族炭化水素例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、石油ナフサ、ミネラルスピリットまたはイソパラフィンを主成分とする脂肪族炭化水素(例えば商品名「シェルゾール」;シェル化学社製)を用いて合成するかまたは合成後希釈して用いることができる。なお反応温度は-10℃〜30℃程度である。本発明に用いるカルボン酸クロライドとはカルボン酸に塩素化剤、例えばPCl3、POCl3、SOCl2等を反応させた後に、反応混合物から酸クロライド生成物を単離させてつくることができる。 【0010】 本発明に用いるカルボン酸としては、具体的には、ネオペプタン酸、ネオオクタン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、ネオトリデカン酸は(カルボン酸のα-炭素原子が完全にアルキル基によって置換されている「ネオ酸」と一般に称されるカルボン酸のうち、全炭素数がそれぞれ7、8、9、10、13であるカルボン酸の異性体混合物である)等が挙げられる。本発明に用いられる1-シクロヘキシル-1-メチルエチルヒドロペルオキシドは、強酸触媒、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、イオン交換樹脂の酸体またはp-トルエンスルホン酸の存在において、ヘキサハイドロ-α-クミルアルコールを過剰の過酸化水素で処理して作ることができる。 【0011】 本発明の第2は、MMA等の(メタ)アクリル酸エステルや塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体単独またはこれらの混合物を重合させる酸に、重合開始剤として前記一般式(1)で示される特定のペルオキシエステルを単独で使用するか、あるいはベンゼン中の0.1モル濃度液における半減期が10時間となる温度が30〜65℃の範囲にあるペルオキシエステル、ジアシルペルオキシドおよびペルオキシジカーボネートのうち少なくとも1種よりなる重合開始剤と併用することを特徴とするビニル系単量体の重合方法である。 【0012】 本発明の重合開始剤が使用されるビニル系単量体としては、例えば、塩化ビニル、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸アミド、アクリル酸アミド等である。本発明に使用される重合開始剤の添加量は一般に、ビニル系単量体の仕込量100重量部に対して純品換算で0.001〜10重量部であり、好ましくは0.01〜0.5重量部である。その量が0.001重量部未満では重合速度が遅くなる傾向にある。また1重量部を越えると重合反応の制御が困難となり、得られる重合体の物性も低下する傾向にあるので好ましくない。 【0013】 本発明で使用される重合開始剤は、10時間半減期温度が30〜65℃であるペルオキシエステル、ジアシルペルオキシドおよびペルオキシジカーボネートのうち少なくとも1種である。具体的なペルオキシエステルとしては、t-ブチルペルオキシピバレート(55℃)、BND(46.5℃)、CND(36.6℃)など、ジアシルペルオキシドとしてはIBPO(32.5℃)、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド(59.5℃)、ラウロイルペルオキシド(62℃)、オクタノイルペルオキシド(62℃)などであり、ペルオキシジカーボネートとしては、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート(以下、OPPと略記する)(43.4℃)、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート(40.5℃)、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート(40.5℃)などである。 【0014】 これらの重合開始剤の添加量は適宜選択すればよいが、通常1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートの添加量の1/4〜4倍量である。本発明において用いる重合方法は懸濁重合、溶液重合および乳化重合であるが、本発明による重合開始剤を用いる以外は通常の処方でなんら問題ない。重合温度は一般に10〜75℃であり、好ましくは30〜60℃の温度範囲である。重合温度が10℃未満では重合時間が長くなる傾向にあり、一方75℃を越えると重合開始剤の寿命が短くなり、高重合転化率に到達させることが困難となるので好ましくない。ただし、残存するビニル系単量体の量をできる限り減らすために、10〜75℃で重合した後、約120℃で昇温し、後重合を行う処方、および10〜75℃の重合温度で重合をスタートすると同時に約120℃まで昇温して重合することも可能である。 【0015】 【実施例】 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。 実施例1(1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエートの合成) 攪拌器を備えた200ml4つ口フラスコに35%水酸化カリウム水溶液28.3gを入れ、攪拌下液温を20℃に保ちながら、95%1-シクロヘキシル-1-メチルエチルヒドロペルオキシド17.9gとヘキサン10gの混合物を添加した。更に攪拌下、液温を20℃に保ちつつ3時間攪拌を続けた後、冷水20gを加え、更に5分間攪拌した。水相を分離し、5%水酸化ナトリウム水溶液20gで洗浄した後、水で3回洗浄した。この溶液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥後、真空下ヘキサンを除去した結果、無色液体の目的物24.1gを得た。その活性酸素量は4.83%であり、計算により純度94.3%、収率73モル%であった。この物質の同定は、IRおよびNMRスペクトルで確認した。その結果を(表1)に示す。 【0016】 【表1】 【0017】 更にベンゼンを溶媒として熱分解速度を測定した。(濃度:0.1mol/l)。その結果、このペルオキシエステルの10時間半減期温度(T10)は41.4℃であった。 【0018】 実施例2(1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエートの合成) カルボン酸クロライドとしてネオヘキサン酸クロライドを用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、無色液体の目的物を得た。この物質の同定は、IRおよびNMRスペクトルで確認した。その結果(表1)に示す。更に実施例1と同様の方法で、熱分解速度を測定した。その結果、このペルオキシエステルの10時間半減期温度は46.2℃であった。 【0019】 実施例3(1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオノナノエートの合成) カルボン酸クロライドとしてネオノナン酸(出光石油化学社製脂肪酸:商品名「エクアシッド9」)を塩素化することにより得たネオノナン酸クロライドを用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、無色液体の目的物を得た。その結果を(表1)に示す。更に実施例1と同様の方法で、熱分解速度を測定した。その結果、このペルオキシエステルの10時間半減期温度は40.5℃であった。 実施例4(1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオトリデカノエートの合成) カルボン酸クロライドとしてネオトリデカン酸(出光石油化学社製脂肪酸:商品名「エクアシッド13」)を塩素化することにより得たネオトリデカン酸クロライドを用いた以外は実施例1と同様にして合成を行い、無色液体の目的物を得た。その結果を(表1)に示す 【0020】 更に実施例1と同様の方法で、熱分解速度を測定した。その結果、このペルオキシエステルの10時間半減期温度は40.9℃であった。この結果から、本発明の1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートは、同じカルボン酸から誘導される先行技術のt-アルキル過酸エステルよりも分解半減期が短いということがわかる。 【0021】 (塩化ビニルの重合) 実施例5 容量400mlのステンレス製オートクレーブに、イオン交換水200mlとポリビニルアルコール0.1重量部とを入れ溶解させた。次に実施例1で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート(以下、CMENDと略記する)を純品換算で0.07重量部を添加した後、-80℃以下に冷却し、塩化ビニル単量体100重量部を加えた。オートクレーブの空間部分を窒素ガスで十分に置換した後密栓した。それを45℃に保った恒温水槽中に8時間浸し重合させた。攪拌は、オートクレーブを水槽中で32r.p.mで回転させることにより行なった。重合を行った後、冷却し未反応の塩化ビニル単量体を除き、得られた白色粉末を、2回100mlの水で洗浄した後、真空で乾燥した。重量から塩化ビニル重合体の収率は84%であり、平均重合度は2020であった。得られた塩化ビニル重合体の熱安定性試験として下記に示す着色性試験を行い、同時に臭気についても調べた。それぞれの結果を(表2)に示す。 【0022】 【表2】 【0023】 (着色性試験および臭気) 塩化ビニル重合体100重量部、ジブチルスズマレート2.5重量部、可塑剤としてジオクチルフタレート80重量部を混合し、160℃のロール上で10分間混練し、1mm厚みのシートを取り出し、そのシートの着色度合を目視にて観察した。また同時に、取り出し時のシートの臭気を調べた。 実施例6,7実施例5において重合開始剤のCMENDの添加量、重合温度を変えた以外は、実施例5に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。これらの結果をそれぞれ(表2)に示す。 実施例8 実施例5において重合開始剤としてCMEND0.07重量部の代わりにCMEND0.03重量部とOPP0.03重量部を用いた以外は実施例5に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。これらの結果を(表2)に示す。 実施例9 実施例8において重合開始剤としてOPPに変えてIBPOの0.03重量部をCMEND0.03重量部に加えて用いた以外は実施例8に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。これらの結果を(表2)に示す 【0024】 実施例10 実施例5において塩化ビニル単量体100重量部に変えて塩化ビニル単量体90重量部と酢酸ビニル単量体10重量部を用い、重合温度を50℃とした以外は実施例5に準じて重合を行なった。これらの結果を(表2)に示す。 比較例1 実施例5において重合開始剤としてCMEND0.07重量部に変え、IBPO0.07重量部を用いた以外は実施例5に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。これらの結果を(表2)に示す。 比較例2、3、4 実施例5において重合開始剤としてCMEND0.07重量部に変え、ACSP、CNDおよびPMNDをそれぞれ0.07重量部を用いた以外は実施例5に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。これらの結果をそれぞれ(表2)に示す。以上(表2)より明らかなように重合開始剤として従来の重合開始剤を用いた方法に比べ、本発明の重合開始剤を用いた方法では物性のよい重合体が収率よく得られる。 【0025】 実施例11 実施例5において重合開始剤としてCMEND0.07重量部に変え、実施例2で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオヘキサノエート(以下、CMENHと略記する)0.03重量部とBND0.03重量部を用い、重合温度を50℃とした以外は実施例5に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。その結果、ポリ塩化ビニルの収率は82%であった。 【0026】 実施例12 実施例5において重合開始剤としてCMEND0.07重量部に変え、実施例3で得た1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオノナノエート(以下、CMENNと略記する)0.07重量部を用いた以外は実施例5に準じて重合温度を45℃で塩化ビニル単量体の重合を行なった。その結果、ポリ塩化ビニルの収率は86%であり、臭気および着色がない重合体が得られた。 比較例5 比較のため、実施例12において重合開始剤としてCMENNに変え、クミルペルオキシネオノナノエート0.07重量部を用いた以外は実施例12に準じて塩化ビニル単量体の重合を行なった。その結果、ポリ塩化ビニルの収率は80%であった。この重合体の臭気を調べた結果、アセトフェノンに似た微臭があった。 【0027】 実施例13 実施例12において重合開始剤としてCMENN0.07重量部に変え、CMENN0.03重量部とOPP0.03重量部を用いた以外は実施例12に準じて重合温度を45℃で塩化ビニル単量体の重合を行なった。その結果、ポリ塩化ビニルの収率は85%であり、臭気および着色がない重合体が得られた。 実施例14 実施例12において重合開始剤としてCMENN0.07重量部に変え、CMENN0.03重量部とBND0.03重量部を用いた以外は実施例12に準じて重合温度を45℃で塩化ビニル単量体の重合を行なった。その結果、ポリ塩化ビニルの収率は85%であり、臭気および着色がない重合体が得られた。 【0028】 【発明の効果】 一般式(1)で示される本発明の1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエートは、新規化合物であり、同じカルボン酸から誘導される先行技術のt-アルキル過酸エステルよりも分解半減期が短いという特徴を有している。そのため、本発明のペルオキシエステルを従来の重合に重合開始剤として単独で用いるか、あるいは特定の重合開始剤と併用することにより、重合速度を高めることができる。したがって、重合サイクル時間を短縮させ、生産容量を増大させることができる。同時に得られる重合体には、臭気がなく、熱安定性、特に着色がない。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2004-03-11 |
出願番号 | 特願平2-412711 |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Y
(C07C)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前田 憲彦 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
西川 和子 関 美祝 |
登録日 | 2000-09-08 |
登録番号 | 特許第3106505号(P3106505) |
発明の名称 | 1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオアルカノエ-トおよびその用途 |