• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 無効とする。(申立て全部成立) C02F
審判 全部無効 特123条1項8号訂正、訂正請求の適否 無効とする。(申立て全部成立) C02F
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 無効とする。(申立て全部成立) C02F
管理番号 1096974
審判番号 無効2003-35127  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-04-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-03 
確定日 2004-05-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3149138号発明「連続式電解イオン水生成器の制御装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3149138号の請求項1乃至4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3149138号の請求項1乃至4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明4」という。)は、平成3年10月9日に特許出願され、平成13年1月19日にその特許の設定登録がなされたものであって、その後特許異議の申立がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされ、そして、この特許異議の申立について平成14年10月15日に「訂正を認める。訂正後の請求項1乃至4に係る特許を維持する。」との決定がなされたものである。
これに対し、松下電工株式会社から平成15年4月3日付けで本件発明1乃至4の特許について無効審判の請求がなされたところ、その後の手続の経緯は、次のとおりである。
答弁書: 平成15年7月22日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成15年12月9日
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成15年12月9日
口頭審理: 平成15年12月9日
上申書(請求人): 平成16年1月23日
上申書(被請求人): 平成16年2月20日
II.本件発明
1.訂正後(本件無効審判請求時)
本件無効審判請求の対象となった本件発明1乃至4については、特許異議の申立における平成14年3月18日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)が認容されているから、本件発明1乃至4は、その訂正請求書に添付された訂正明細書の請求項1乃至4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】陰極と陽極を有する電解槽への通水管路中に設けられて通水の残留塩素を除去するフィルタカートリッジと、前記通水管路中に設けられて通水の流量を検出する流量センサと、前記陰極と前記陽極間に直流電圧を印加するスイッチングレギュレータと、前記電解槽の電解強度を調節するレンジ切換スイッチと、流量と前記レンジ切換スイッチの操作で決まる電解強度との関係により電解の要否を判定するとともに、前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する制御ユニットとを備えることを特徴とする連続式電解イオン水生成器の制御装置。
【請求項2】上記制御ユニットが、通水時の流量を積算する通水量算出手段と、通水量によりフィルターカートリッジの寿命の有無を判定して寿命に達した場合はそれを表示するフィルタ寿命判定手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の連続式電解イオン水生成器の制御装置。
【請求項3】上記制御ユニットが、通水時に流量により電解能力を判定して流量の多少や適性を表示する電解能力判定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の連続式電解イオン水生成器の制御装置。
【請求項4】上記フィルタカートリッジが、フィルタ交換時に通水量の積算をリセットするリセットスイッチを備えることを特徴とする請求項1記載の連続式電解イオン水生成器の制御装置。
2.訂正前(登録時)
本件訂正前の特許請求の範囲請求項1乃至4は、以下のとおりである。
【請求項1】陰極と陽極を有する電解槽への通水管路中に設けられて通水の残留塩素を除去するフィルタカートリッジと、前記通水管路中に設けられて通水の流量を検出する流量センサと、前記陰極と前記陽極に直流電圧を印加する電源回路と、前記電解槽の電解強度を調節するレンジ切換スイッチと、流量と前記レンジ切換スイッチの操作で決まる電解強度との関係により電解の有無を判定して前記電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする制御ユニットとを備えることを特徴とする連続式電解イオン水生成器の制御装置。
【請求項2】は、上記1.と同じ。
【請求項3】は、上記1.と同じ。
【請求項4】は、上記1.と同じ。
III.本件訂正の概要
本件訂正は、訂正請求書(全文訂正明細書を含む)の記載のとおり、
(ア)特許請求の範囲請求項1に記載される「前記陰極と前記陽極に」を「前記陰極と前記陽極間に」とした上で「電源回路」を「スイッチングレギュレータ」に訂正し(以下、「訂正事項ア」という。)、
(イ)特許請求の範囲請求項1に記載される「電解の有無を判定して前記電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする制御ユニット」を「電解の要否を判定するとともに、前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する制御ユニット」に訂正し(以下、「訂正事項イ」という。)、
(ウ)明細書の段落【0008】の記載を請求項1の記載と整合させ、段落【0009】の記載を「【作用】上記構成に基づき、電解槽に実際に通水されると、フィルタカートリッジにより通水中の残留塩素が除去され、流量センサの信号で流量が検出される。そして、流量センサの信号で流量が検出され且つレンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づきスイッチングレギュレータをON、OFF動作し、これにより電解槽に通電して正常に電気分解する。また、流量センサの信号で流量が検出されない非通水時、流量センサの信号で流量が検出されてもレンジ切換スイッチが非電解位置の場合には、制御ユニットは、電解不要と判定するとともにスイッチングレギュレータをOFF動作して、電解槽は非通電の状態に保持され、こうして適確に電解槽に通電することが可能になる。」と訂正し(以下、「訂正事項ウ」という。)、
(エ)明細書の段落【0021】の記載を「【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、連続式電解イオン水生成器において、流量センサの信号で実際の通水時の流量を検出し、これとレンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づくスイッチングレギュレータのON、OFF動作により電解槽の通電を制御するように構成されるので、水圧や配管経路の圧損等に影響することなく、適確に電解槽に通電または非通電することができる。」と訂正する(以下、「訂正事項エ」という。)というものである。
IV.請求人の主張と証拠方法
1.請求人の主張
請求人は、「特許第3149138号の請求項1乃至4に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として甲第1乃至5号証、また上申書で技術水準として甲第6乃至10号証を提出して、審判請求書、口頭審理(口頭陳述要領書を含む)及びその後の上申書における主張を整理すると、概要次のとおり主張する。
(1)無効理由1:本件訂正に係る訂正事項イの、「前記電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする」を「前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する」に訂正する訂正は、スイッチングレギュレータに電源回路のON、OFFをする機能を新たに付与するものであり、訂正前の特許明細書(以下、「訂正前明細書」という。)または図面に記載した事項の範囲内においてなされていないものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書きの規定に違反しており、本件特許は特許法第123条第1項第7号に該当し無効とすべきである。
(2)無効理由2:上記訂正事項イの、「前記電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする」を「前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する」に訂正する訂正は、「電源スイッチ」が「スイッチングレギュレータ」という技術の内容、目的及び機能等を全く異にするものに置換されているのであって、本件特許の技術的範囲が変更されている。したがって、この訂正は実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に違反しており、本件特許は特許法第123条第1項第7号に該当し無効とすべきである。
(3)無効理由3:本件訂正に係る訂正事項アの、「電源回路」を「スイッチングレギュレータ」に訂正する訂正は、スイッチングレギュレータが電源回路とスイッチングレギュレータの概念が異なるため電源回路の下位概念に相当しないから、特許請求の範囲の減縮に該当するものではない。したがって、この訂正は実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に違反しており、本件特許は特許法第123条第1項第7号に該当し無効とすべきである。
(4)無効理由4:本件訂正後の明細書(以下、「本件明細書」という。)および図面には、スイッチングレギュレータのON、OFF動作の条件等が、当業者が実施することができる程度に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであり、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第3項の規定に違反しており、本件特許は特許法第123条第1項第7号に該当し無効とすべきである。
2.証拠方法及び記載事項
(1)甲第1号証:「電気・電子工学大百科事典 第23巻 電気通信(2)」株式会社電気書院、1982年9月第1版発行、第329〜330頁には、
「スイッチングレギュレータ(・・・) 直流をいったん交流あるいはパルスに変換したのち必要な直流電圧とするレギュレータをスイッチングレギュレータという。出力電圧の制御は、スイッチング素子の”ON”期間と”OFF”期間の比を変化させて行っている。」(第329頁右欄6〜11行)と記載される。
(2)甲第2号証:「新版 電気電子用語事典」株式会社オーム社、平成3年8月10日第1版第3刷発行、第235頁には、
「スイッチングレギュレータ ・・・ スイッチング素子によって直流を断続し、その断続周期を、あるいは1周期内のオン・オフの時間比を変えることによって、負荷に供給する平均電流を調整するようにした直流電源装置のこと」(第235頁右欄21〜26行)が記載される。
(3)甲第3号証:特許権者の提出した「平成14年6月28日付け上申書」には、
「4-2.スイッチングレギュレータを用いた点の作用効果について」の項に「スイッチングレギュレータを用いることによって、電解のON、OFFを切り換えるために従来必要とされていたスイッチやリレーなどの部品を省略することができるのに加えて、・・・設計できるようになります。」(第3頁16〜21行)と記載される。
(4)甲第4号証:特許権者の提出した「平成14年3月18日付け訂正請求書」
(5)甲第5号証:特許権者の提出した「平成14年3月18日付け特許異議意見書」
(6)甲第6号証:「スイッチングレギュレータ -どうすれば設計できるか-<電子科学ブルーブックス>」産報出版株式会社、1979年8月初版発行、第3〜5、8〜13頁には、
「本書では、いくつかあるスイッチング方式のなかで、現在、主流となっているラインオペレーション方式で、かつデューティサイクルを可変することによって出力の安定化制御をおこなうパルス幅制御方式に特に重点をおいて説明を加えてみました。」(第3頁10〜13行)、及び「スイッチング方式は、デューティサイクル(・・・・)を変化させることにより、出力電圧を制御する方式です。」(第12頁16〜19行)と記載される。
(7)甲第7号証:「電気百科事典」株式会社オーム社、1982年8月初版発行には、
「スイッチングレギュレータは、トランジスタをスイッチング動作させるものであり、・・・・スイッチングレギュレータ(パルス電源ともいう)では・・・高い周波数でスイッチングし、高周波変圧器を使用して変圧するので、変圧器の小型化とコンデンサの小容量化が可能になる」(第217頁8〜22行)と記載される。
(8)甲第8号証:「総合電子部品ハンドブック」電波新聞社、1980年7月初版発行には、
「スイッチングレギュレータは、スイッチングトランジスタの飽和を利用して、非安定直流電圧をチョッピングし、その出力電圧を平滑にするもので、スイッチングトランジスタのON/OFFデューティサイクルを変えることによって出力電圧の安定化するものである。」(第305頁右欄4〜9行)と記載される。
(9)甲第9号証:「理工学事典」株式会社日刊工業新聞社、1996年3月初版発行には、
「IC電圧レギュレータ・・・●定義 入力電圧、負荷電流、あるいは周囲温度が変動しても出力電圧を一定に保つことを目的とした直流安定化電源に用いる集積回路をいう。」(第305頁左欄1〜8行)、及び「スイッチングレギュレーター ・・・ 電子回路を動作させるのに直流電源が必須であり。・・・直流を断続しパルス化することにより損失を少なくし、高効率化したものをスイッチングレギュレータという。・・・出力電圧を一定に保つように動作する。」(第738頁左欄「スイッチングレギュレーター」の項)と記載される。
(10)甲第10号証:「新版 電気工学ハンドブック」社団法人電気学会、1988年2月初版発行には、
(a)第448頁「7章電源回路」からの章には、第449頁の「7.2電圧安定化回路」の項に「直流を得た後で安定化する方式には、・・シリーズレギュレータ方式(・・)と、いったん高周波交流に変換して制御を行う、図162に示すスイッチングレギュレータ方式とがある。ここでは、これらの電圧安定化回路について述べる」(第450頁左欄4〜9行)と記載され、
(b)第450頁「7.2.2 スイッチングレギュレータ方式」の項には、「基本回路構成は、入力電圧と出力電圧の関係によって、昇圧形、降圧形および昇降圧形の三つに分類できる。スイッチングレギュレータは、直流入力をスイッチングすることにより、直流電力の変換を行うものであり、この意味でコンバータとも呼ばれる。」(第450頁右欄18〜22行)と記載され、図164からみると「Dが0(ton=0)のときVout=Vinである(ここで、tonはオン期間、Vinは直流電源の電圧、Voutは出力電圧)」ことが伺える。
V.被請求人の反論と証拠方法
1.被請求人の反論
答弁書、口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)及び上申書を整理すると、被請求人は、請求人の上記主張に対して、口頭陳述要領書において参考資料1、2を、また上申書において技術水準として乙第1、2号証を提出して、次のとおり反論している。
(1)無効理由1、2について、本件訂正に係る訂正事項イの、「前記電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする」を「前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する」に訂正する訂正は、訂正前明細書の段落【0009】、【0019】及び【0021】の記載から「電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする」の文言の中には、「電源スイッチ17をONまたはOFFする」事項と、「レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する」事項の両者が包含されていることは明らかである。したがって、この訂正は、電源スイッチ17とスイッチングレギュレータ16とを組み合わせた実施形態とスイッチングレギュレータ16のみの実施形態のうち、スイッチングレギュレータ16のみの実施形態に減縮したものであるから、新規事項の追加には該当しないし、また、特許請求の範囲の拡張又は変更にもあたらない。
(2)無効理由3について、本件訂正に係る訂正事項アの、「電源回路」を「スイッチングレギュレータ」に訂正する訂正は、訂正前明細書の段落【0011】から「スイッチングレギュレータ」が「電源回路」を構成する一部品であることは明らかであり、電源回路の下位概念としてスイッチングレギュレータが含まれるので、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許請求の範囲の変更には該当しない。
(3)無効理由4について、特許異議申立が平成13年9月26日であるから、平成11年改正特許法第120条の4第3項が適用されるので、異議申立が請求された請求項には独立特許要件は適用されないので、法律適用は失当である。また、仮に無効理由が特許法第123条第1項第4号によるものとしても、本件明細書は、当業者は充分に実施できる程度に記載されているから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。
2.証拠方法及び記載事項
(1)乙第1号証:「スイッチングレギュレータ -どうすれば設計できるか-<電子科学ブルーブックス>」産報出版(株)、1979年8月初版発行、第130〜133頁には、
「2.9.2 ON/OFFコントロール これは、スイッチやリレー等によりAC入力をON/OFFすることなしに(電源に対するAC入力はONのまま)、微小電力によりスイッチングレギュレータの出力のON/OFFを制御(コントロール)する機能です。」(第131頁3〜6行)と記載される。
(2)乙第2号証:「スイッチング・レギュレータ設計ノウハウ -現場技術者実戦シリーズ5」CQ出版株式会社、昭和60年4月10日初版発行、第115〜121頁には、
「制御電圧に正確に比例してパルス幅を制御することができ、制御範囲もゼロから任意の幅まで変化することが可能です。」(第117頁1〜2行)と記載される。
(3)参考資料1:特許第2804656号公報(本件と同一の出願人の関連特許)
(4)参考資料2:特許第2810262号公報(本件と同一の出願人の関連特許)
V.当審の判断
1.本件発明1について
1-1.無効理由1について
(1)本件訂正に係る訂正事項イの訂正前の「電解の有無を判定して前記電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする」という構成の技術内容についてみてみると、この構成に関して、訂正前明細書には、【作用】として段落【0009】に「流量センサの信号で流量が検出され且つレンジ切換スイッチが電解位置の場合は、電解判定手段により電源スイッチがONし、電源回路により電解槽に通電して正常に電気分解し、また流量センサの信号で流量が検出されない非通水時、流量センサの信号で流量が検出されてもレンジ切換スイッチが非電解位置の場合には、電解判定手段により電源スイッチがOFFして、電解槽は非通電の状態に保持され、こうして適確に電解槽に通電する」と、【実施例】として段落【0014】に「電解判定手段42は、流量qと予め設定された基準流量を比較するもので、基準流量以下の場合に駆動回路43を介してリレー25にOFF信号を出力し、レンジ切換スイッチ28が電解位置にあり且つ基準流量以上の場合にON信号を出力する。」と、また、実施例の作用について説明する段落【0016】に「流量センサ4のパルス信号が制御ユニット40に入力しないため、電解判定手段42で非電解と判断してリレー25にOFF信号が出力し、このリレー25により電源スイッチ17がOFFして電解槽5は非通電し、非電解の状態に保持される。」と、段落【0017】に「次いで通水すると、・・・流量qが検出されるが、レンジ切換スイッチ28が非電解位置の場合には、上述と同様に電解判定手段42で非電解を判断して電解槽5は非電解の状態になる」と、そして、段落【0019】に「通水時にレンジ切換スイッチ28を所定の電界強度レンジに操作すると、電解判定手段42で電解を判断してリレー25にON信号が出力し、このリレー25により電源スイッチ17がONする」と記載される。これらの記載からみて、通電、非通電させる電源回路の「電源スイッチ」は「電源スイッチ17」とみれるから、この構成は「流量センサの信号で流量が検出され且つレンジ切換スイッチが電解位置の場合は、電解判定手段により電源スイッチ17がONし、電源回路により電解槽に通電して正常に電気分解し、また流量センサの信号で流量が検出されない非通水時、或いは流量センサの信号で流量が検出されてもレンジ切換スイッチが非電解位置の場合には、電解判定手段により電源スイッチ17がOFFする」という技術内容を意味していることは明らかである。そして、この構成によって「電源回路」がON,OFFして通電、非通電となり、「こうして適確に電解槽に通電する」(段落【0009】参照)のである。
また、上記した「電源スイッチ」が「電源スイッチ17」とみれることについては、訂正前明細書において「電源スイッチ」は、普通に用いられる意味の、電源回路で用いられるON、OFFスイッチであり、他の特別な定義も見当たらない。しかも用語は明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用することが特許法施行規則第24条の4(様式第29の2)で規定されており、その規定に従って記載されているという観点からも至極当然といえる。
そうすると、上記構成は、上述した技術内容からみて「電解の有無を判定して前記電源回路の電源スイッチ17をONまたはOFFする」ものと解することが相当である。そして、上記した段落【0009】に記載されるように、上記構成によって「電解槽への通電を適正に行うことができる」のである。
(2)一方、これに対し、訂正事項イの訂正後の「電解の要否を判定するとともに、前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する制御ユニット」は、本件明細書の段落【0009】(訂正事項ウ)の記載からみて「流量センサの信号で流量が検出され且つレンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づきスイッチングレギュレータをON、OFF動作し、これにより電解槽に通電して正常に電気分解し、流量センサの信号で流量が検出されない非通水時、流量センサの信号で流量が検出されてもレンジ切換スイッチが非電解位置の場合には制御ユニットは、電解不要と判定するとともにスイッチングレギュレータをOFF動作して、電解槽は非通電の状態に保持され」ることを意味するものといえる。そして、こうした構成とすることにより「適確に通電または非通電することができる」(訂正事項エ)というものである。
(3)そうすると、訂正事項イは、技術内容が上記(1)で述べたものから、上記(2)で述べたものに置き換わっていることからみて「電源スイッチ」を「スイッチングレギュレータ」に置き換えたものといえる。すなわち、訂正事項イは、上記した技術内容からみて「電源スイッチ」を「スイッチングレギュレータ」にすることによって、電源スイッチ17を排除し、「電源スイッチ17を電源回路をON、OFFさせる」から「スイッチングレギュレータにより電源回路をON、OFFさせる」に置換するものといえる。
そこで、「スイッチングレギュレータ」が「電源回路をON、OFFさせる」ものかという点について訂正前明細書をみてみると、訂正前明細書には「直流供給電力を制御するものとして、パルス制御型のスイッチングレギュレータ(PWM)16に接続される」(第5欄4〜6行、段落【0012】)、および「電源スイッチ17がONする。すると、・・・スイッチングレギュレータ16に入力する。このとき、制御ユニット40でレンジ切換スイッチ28の操作に応じたパルス幅が設定され、このパルス信号がスイッチングレギュレータ16に出力してON、OFF動作し、直流供給電圧が可変制御されるのであり、これによりレンジ切換スイッチ28の操作に応じた電解電圧を出力する。」(第7欄3〜13行、段落【0019】)と記載され、他に「スイッチングレギュレータ」の機能についての記載はない。これらの記載から「スイッチングレギュレータ」は「電源スイッチ17がONした後に、通電され、ON、OFF動作により直流供給電圧をレンジに応じて可変制御する」ものといえる。そして、電源回路のON、OFFは、上記(1)でみたように「電源スイッチ17」で行っているのであるから、「スイッチングレギュレータ」は「電源回路をON、OFFさせる」ものでないことは明らかであるといえる。
(4)このことについて被請求人の主張(反論)をみてみると、被請求人は、訂正前明細書の段落【0009】、【0019】及び【0021】の記載から「電源回路の電源スイッチをONまたはOFFする」の文言の中には、「電源スイッチ17をONまたはOFFする」事項と、「レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する」事項の両者が包含されていると主張している。
この主張は、上記した段落の記載から「電源スイッチ」が「電源スイッチ17とスイッチングレギュレータ16」を含むものとの認識に立つものであるが、上記(1)及び(2)で記載したように、「電源スイッチ」は「電源スイッチ17」であり、「スイッチングレギュレータ」は「電源スイッチ17がONした後に、通電され、ON、OFF動作により直流供給電圧をレンジに応じて可変制御する」ものであることが明らかであるから、「スイッチングレギュレータ」に電圧制御のためのスイッチが内在するとはいえ、それがここで云う電源回路の電源スイッチとみることができず、「スイッチングレギュレータ」が「電源スイッチ」に包含されるとまではいえない。
また、被請求人は、口頭審理陳述要領書の中で「スイッチングレギュレータ16がON、OFF機能をも兼ね備えることについては、明細書に記載するまでもない技術的事項であって、例えば同時期に出願した同一発明者および同一出願人の関連する特許(参考資料1の0014、図4および参考資料2の0015、図4)の記載からも明らかである」(第5頁2〜6行)旨主張する。参考資料1及び2には、本件特許明細書と同様「スイッチングレギュレータをON、OFFさせる」ことは記載されているが、これはあくまで電圧制御のためのスイッチングレギュレータのスイッチのON、OFF操作であって、電源回路の電源スイッチのON、OFFとはいえない。このことは参考資料1,2に「電源スイッチ」が用いられていることからも明らかである。そして、たとえ、スイッチングレギュレータのスイッチをOFF継続させると電源回路がOFFされることが技術的にみれば理解できるとしても、また、被請求人が提示した乙第1号証の記載(a)からスイッチングレギュレータで出力のON・OFF制御することが知られ、乙第2号証の記載(a)からスイッチングレギュレータの制御範囲がゼロから任意の電圧まで可能であることが知られているとしても、請求人が提示した甲第1、2、6〜10号証の記載事項からみて、スイッチングレギュレータが電源安定化装置、或いは出力電圧の可変制御装置としては極めて周知であるとはいえるものの、本件発明に関連する技術分野においてスイッチングレギュレータで電源のON・OFF制御することが周知とまではいえなく、また、訂正前明細書にはスイッチングレギュレータがどういうものか不明であって甲第10号証には記載事項(b)から必ずしも電圧がゼロにならないスイッチングレギュレータもあることが伺えることから、スイッチングレギュレータのスイッチをOFF継続させて電源回路のON、OFFさせることが、訂正前明細書において自明の事項とまではいえない。
なお、被請求人は、「適確に電解槽に通電」に関し、「電源スイッチ17」のみでは電界強度のレンジ切換スイッチの信号により電解槽の通電を制御できない旨主張するので、この点について触れておくと、訂正前明細書の段落「0009」の「適確に電解槽に通電」は被請求人が述べるような「レンジ切換スイッチの信号に応じた電解強度の通電」ではなく、あくまでその段落に記載されるように「電解と非電解の場合の電源スイッチのON、OFF」であるから、この主張は採用できない。
ただ、もちろん通電されると、スイッチングレギュレータによってレンジ切換スイッチの信号に応じた電界強度に電圧制御されて通電されることは訂正前明細書の記載から明らかであるから、制御ユニットについて「スイッチングレギュレータによって電圧制御する」ものに限定する訂正であれば新規事項の追加に該当しないことは云うまでもない。
(5)以上のことから、本件明細書には「スイッチングレギュレータで電源回路のON、OFFさせる」ことは記載も示唆もなく、また、そのことが明細書及び図面全体からみて自明な事項ともいえない。したがって、本件訂正は「通電、非通電を判断して電源スイッチ17のONまたはOFFする」から「電解の要否を判定するとともに、前記レンジ切換スイッチの操作に応じて設定されるパルス信号に基づき前記スイッチングレギュレータをON、OFF動作する」ことによって、新たに「スイッチングレギュレータで電源回路をON、OFFさせる」という新規事項を追加したものといえることは明らかである。
したがって、本件訂正は、訂正前の明細書または図面に記載した事項の範囲内においてなされていないものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書の規定に違反するものである。
1-2.無効理由2について
上記1-1.(2)で述べたように、本件発明1は、本件訂正に係る訂正事項イによって「スイッチングレギュレータで電源スイッチをON,OFFさせる」ことに構成が置き換わり、技術内容からみて「電源スイッチ17を電源回路をON、OFFさせる」から「スイッチングレギュレータにより電源回路をON、OFFさせる」に、すなわち、「電源スイッチ」が「スイッチングレギュレータ」という技術の内容及び機能等を異にするものに置換されているといえる。そして、被請求人の主張も上記1-1.(4)でみたように認めることができないものである。
したがって、本件訂正は、本件特許の技術的範囲が変更されており、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に違反するものである。
1-3.無効理由3について
本件訂正に係る訂正事項アの、訂正前の「電源回路」を「スイッチングレギュレータ」に訂正する訂正については、「スイッチングレギュレータ」は甲6号証〜甲第10号証及び乙第2号証からみて、一種の「電源回路」としてみれるのであるから、電源回路の下位概念としてスイッチングレギュレータに限定したものとしていえるから、特許請求の範囲の減縮に該当するもので、実質上特許請求の範囲を変更するとまではいえない。
1-4.無効理由4について
無効理由4は、本件特許は記載要件の不備に基づく独立特許要件を満たさないというものであるが、特許異議申立は平成13年9月26日であるから、平成11年改正特許法第120条の4第3項が適用されので、異議申立が請求された請求項(本件の場合全請求項)には独立特許要件は適用されないことは明らかである。また、仮に無効理由が特許法第123条第1項第4号の規定によるものとしても、本件明細書は、スイッチングレギュレータのON、OFF動作について明記はないが、技術的にみれば本件発明1を実施するようにスイッチングレギュレータをON、OFF制御させ、通電・非通電を行うようには設計上対応し得るものであるから、当業者が実施できる程度に記載されていないとまでいえない。
2.本件発明2乃至4について
本件発明2乃至4は、本件発明1を引用する従属形式のものであって、本件発明1の訂正部分以外に訂正前と違いはなく、本件発明2乃至4においても、本件訂正に係る訂正事項イを含むものであから、本件発明1(上記「1.1-1.」及び「1.1-2.」)でみたと同様の理由により、本件発明2乃至4に係る訂正は、新規事項の追加には該当し、また、特許請求の範囲の変更にあたるものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書又は第2項の規定に違反するものである。
VII.結び
以上のとおりであるから、無効理由1及び2により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明についての特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書又は第2項の規定に違反するものであるから、平成6年法律第116号による改正前の特許法第123条第1項第7号に該当し、無効とすべきである。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-12 
結審通知日 2004-03-18 
審決日 2004-03-30 
出願番号 特願平3-289525
審決分類 P 1 112・ 831- Z (C02F)
P 1 112・ 855- Z (C02F)
P 1 112・ 841- Z (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 金 公彦
石井 良夫
登録日 2001-01-19 
登録番号 特許第3149138号(P3149138)
発明の名称 連続式電解イオン水生成器の制御装置  
代理人 西出 眞吾  
代理人 安藤 淳二  
代理人 前田 均  
代理人 宇田 浩康  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 辻村 和彦  
代理人 中川 文貴  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ