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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1097067
審判番号 不服2003-18872  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-25 
確定日 2004-05-06 
事件の表示 平成 6年特許願第204953号「木構造図作成装置及び木構造図作成方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 3月12日出願公開、特開平 8- 69489]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年8月30日の出願であって、平成15年8月20日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年10月24日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月24日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月24日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲については、
「【請求項1】 作成された木構造図の一部を出力する出力手段と、
上記出力手段が出力する木構造図の一部の所望のノードを指定する指定手段と、
上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図を上記出力手段により出力させる処理手段と、
上記出力手段の出力範囲外に、上記指定されたノードと同じ階層のノードが存在する場合、当該存在する全てのノードを、個別に識別可能な状態で、かつ、上記指定手段により指定可能な形態で、上記出力範囲内に常に表す図を、上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図と共に上記出力手段に出力させるノード情報出力手段とを備えたことを特徴とする木構造図作成装置。
【請求項2】 請求項1に記載の木構造図作成装置において、
上記ノード情報出力手段は、更に、指定されたノードの1つ下の層、及び、指定されたノードと同じ層に位置するノードであって出力範囲内にあるノードの1つ下の層の内、少なくとも上記指定されたノードの1つ下の層を含む1以上の層より下位の木構造図の代わりに、上記1以上の層に位置する全てのノードを識別可能な状態で、かつ、上記指定手段により指定可能な形態で常に表す図を、上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図と共に上記出力手段に出力させる木構造図作成装置。
【請求項3】 作成された木構造図の一部を表示する第1表示手段と、
少なくとも指定されているノードの階層、及び、上下の階層の各々に存在するノードの数を表す数値及び上記指定されているノードを特定する数値を表示すると共に、表示に基づく数値を指定することにより所望のノード指定を受付ける指定手段と、
上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図を上記第1表示手段により表示させる処理手段とを備えることを特徴とする木構造図作成装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項の一部である「当該存在する各々のノードを識別可能な状態」について「当該存在する全てのノードを、個別に識別可能な状態」との限定を付加し、同じく「常に表す図」について「上記出力範囲内に常に表す図」との限定を付加したものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原審の拒絶理由に引用された、特開平5-189177号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0009】【発明が解決しようとする課題】従来においては、要素数,階層数が極めて多い広大な階層構造100から目的の要素102を捜し出す場合、ウィンドウ非表示の構造部分に関する表示がウィンドウ枠と交わるリンク線108の表示に限られるので、そのリンク線108を追いながらウィンドウスクロールの操作を繰り返すことが必要となる。従って、目的の構造要素へ到達するまでの操作がめんどうであるという問題があった。
【0010】本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、階層構造が広大な場合であっても任意の構造要素へ容易に到達することが可能となる装置を提供することにある。
【0011】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明にかかる階層構造表示装置は図1のように構成されている。
【0012】同図の階層構造展開手段10は階層構造100の要素102を全て取り込んで展開し、分岐線分生成手段12は階層構造100の分岐点より全ての分岐先へ至る線分104(108)を展開された要素102から生成する。
【0013】また、表示領域移動手段14は展開された要素102により示される階層構造100上で定寸の領域106を入力操作に従って移動し、表示領域切出手段16は領域106の内側に存在する全ての要素102を抽出する。
【0014】そして階層構造部分表示手段18は、抽出された要素102から引き出される全ての線分104と抽出された要素102とを合成表示する。」(引用例1の2頁2欄9〜38行、段落【0009】〜【0014】)
(イ)「【0017】【実施例】図3には実施例の構成が示されており、キーボード20,マウス22の操作で階層構造データ格納部24のデータがアクセス部26からリードアクセスされ、メモリ部28に展開される。
【0018】このデータは表示制御部30に読み出されてディスプレイ32でウィンドウ表示され、ウィンドウ表示のデータはキーボード20,マウス22の操作で横方向,縦方向へスクロールされる。」(引用例1の3頁3欄3〜11行、段落【0017】、【0018】)
(ウ)「【0022】第7図のようにウィンドウ106が開かれると、その内側で表示すべき構造要素102のデータがメモリ部28から読み出され(ステップ414)、読み出されたデータの示す構造要素102は階層レベル,読み出しの順序番号で決定された桁,行の位置に表示される(ステップ416,418,420,422)。
【0023】また図5において、表示中の構造要素102(その下部中心_図7参照)からその下位階層となる全ての構造要素102(表示されていないものも含まれる)へ向かう線分104(左部中心が終点となる_図7参照)が表示される(ステップ500,502,504,506)。
【0024】このようにしてウィンドウ表示が行なわれると、図7におけるスクロールバー200の左下位置と左上位置とが算出され(ステップ600,602)、各線分104とスクロールバー200の左辺との交点がスクロールバー目盛の位置として求められる(ステップ604)。
【0025】図8ではスクロールバー目盛の算出作用が説明されており、同図の直線aはウィンドウ106の底辺で、その直線aの上側に適当な間隔を介してこれに平行な非表示の直線bが定められる。
【0026】そして、各線分104のうち最も下側となる直線dと直線bとの交点eが算出されてスクロールバー200の左下基準点が求められ、スクロールバー200の左辺となる非表示の直線cが定められる。
【0027】また、各線分104のうち最も上側となる直線fとスクロールバー左辺の直線cとの交点gが算出され、その結果、スクロールバー200の表示位置及び高さが決定される。
【0028】さらに、直線d,fの中間に引かれた各線分104とスクロールバー左辺の直線cとの交点が算出され、スクロールバー各目盛となる直線h(直線a,bと平行)が求められる。
【0029】以上のようにしてスクロールバー200の表示位置,その高さ及び各スクロールバー目盛が定められると、これらがメモリ部28へ書き込まれてから、スクロールバー200,その目盛,スクロールカーソル202が第7図のようにディスプレイ部32で表示される(ステップ606,608)。
【0030】その後、表示終了の指示が入力されるとウィンドウ106が閉じられるが(ステップ610)、スクロールカーソル202の移動指示が入力されたときには、スクロールカーソル202の移動位置を基準としたウィンドウ表示が行なわれる(ステップ612,614)。
【0031】例えば、図7においてスクロールカーソル202を最下位置のスクロールバー目盛線にマウス操作で移動してマウスクリックを行なうと、構造要素102(JJJJJ)がウィンドウ106内に表示され、スクロールバー200の表示が更新される。
【0032】以上説明したように本実施例によれば、非表示の構造要素102へ向かう線分104がウィンドウ106内に表示されるので、階層構造100が広大な場合であっても、その全体を把握することが容易となり、したがって、目的の構造要素102をより迅速に捜し出すことが可能となる。
【0033】しかも、スクロールバー200中の目盛線にスクロールカーソル202を移動してクリックする簡単な操作で、任意の位置へただちに移動でき、このため、構造要素102の検索,追加,変更,削除などの作業を効率良く行なうことが可能となる。
【0034】なお、表示されていない構造要素102へ向かう線分104の色や線種をその構造要素102の属性(ファイルかディレクトリか,読み出しや書き込みが可能であるか否かなど)に応じたものとすることが好適である。
【0035】また、スクロールカーソル202の現在位置と対応した構造要素102の名称をガイド表示することも好ましい。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、表示されていない構造要素へ向かう線分も表示されるので、階層構造が広大な場合であっても、その全体把握が容易となり、目的の位置へ迅速に移動することが可能となる。」(引用例1の3頁3欄25〜同頁4欄50行、段落【0022】〜【0036】)
と記載されているから、これらの記載より引用例1には次のことが記載されている。
「階層構造100の要素102を全て取り込んで展開する階層構造展開手段10と、階層構造100の分岐点より全ての分岐先へ至る線分104を展開された要素102から生成する分岐線分生成手段12と、展開された要素102により示される階層構造100上で定寸の領域106を入力操作に従って移動する表示領域移動手段14と、領域106の内側に存在する全ての要素102を抽出する表示領域切出手段16と、抽出された要素102から引き出される全ての線分104と抽出された要素102とを合成表示する階層構造部分表示手段18とを有する階層構造表示装置において、
階層構造データを格納する階層構造データ格納部24と、キーボード20,マウス22の操作で該階層構造データ格納部24のデータがアクセス部26からリードアクセスされ、展開されるメモリ部28と、該データを読み出してディスプレイ部32でウィンドウ表示する表示制御部30と、ウィンドウ表示のデータを横方向,縦方向へスクロールするためのキーボード20,マウス22とを有し、
ウィンドウ106が開かれると、その内側で表示すべき構造要素102のデータがメモリ部28から読み出され、読み出されたデータの示す構造要素102は階層レベル、読み出しの順序番号で決定された桁,行の位置に表示され、
表示中の構造要素102からその下位階層となる全ての構造要素102(表示されていないものも含まれる)へ向かう線分104が表示され、
このようにしてウィンドウ表示が行なわれると、スクロールバー200の左下位置と左上位置とが算出され、各線分104とスクロールバー200の左辺との交点がスクロールバー各目盛となる直線hが求められ、
スクロールカーソル202の移動指示が入力され、スクロールカーソル202をスクロールバー目盛線hにマウス操作で移動してマウスクリックを行なうと、そのスクロールメモリと交差している線分104に接続させている構造要素102がウィンドウ106内に表示することを特徴といる階層構造表示装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1の発明とを比較すると、
引用例1の「階層構造」は、本願補正発明の「木構造図」に、
引用例1の「ディスプレイ部」は、本願補正発明の「出力手段」に、
引用例1の「構造要素」は、本願補正発明の「ノード」に、
引用例1の「マウス」は、本願補正発明の「指定手段」に、
引用例1の「表示制御部」は、本願補正発明の「処理手段」にそれぞれ相当し、
また、引用例1では、非表示の構造要素102へ向かう線分104がウィンド106内に表示され、各線分104とスクロールバー左辺の直線cとの交点がスクロールバーの各目盛直線hとなり、スクロールバー200中の目盛線hにスクロールカーソル202を移動してクリックすることにより任意の位置へただちに移動できるように装置を構成したものであるから、引用例1の階層構造表示装置は、下記の相違点を除いてノード情報出力手段に相当する機能を有し、
さらに、木構造図を作成する装置は周知のものであり、引用例1の階層構造も木構造であるから、階層構造表示装置を木構造図作成装置とすることは格別のことでないので、
両者は、
「作成された木構造図の一部を出力する出力手段と、
上記出力手段が出力する木構造図の一部の所望のノードを指定する指定手段と、
上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図を上記出力手段により出力させる処理手段と、
上記出力手段の出力範囲外に、上記指定されたノードと同じ階層のノードが存在する場合、上記指定手段により指定可能な形態で、上記出力範囲内に常に表す図を、上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図と共に上記出力手段に出力させるノード情報出力手段とを備えたことを特徴とする木構造図作成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
図が、本願補正発明では、当該存在する全てのノードを、個別に識別可能な状態で、かつ、指定手段により指定可能な形態で、出力範囲内に常に表されるのに対して、引用例1では、スクロールバー200と、表示中の構造要素102からその下位階層となる全ての構造要素102(表示されていないものも含まれる)へ向かう各線分104と、スクロールバー各目盛となる直線hとが表示されており、当該存在する全てのノードを、個別に識別可能な状態で表すとは明記されていない点。

(4)判断
上記相違点について、
引用例1には、スクロールバー各目盛となる各直線hが、各線分104とスクロールバー左辺の直線cとの交点から算出され求められたものであること、非表示の構造要素102へ向かう線分104がウィンド106内に表示され、階層構造100が広大な場合であっても、その全体を把握することが容易となり、目的の構造要素102をより迅速に捜し出すことができること、スクロールバー200中の目盛線にスクロールカーソル202を移動してクリックする簡単な操作で、任意の位置へただちに移動できること、また、スクロールカーソル202の現在位置に対応した構造要素102の名称をガイド表示することが好ましいことが記載されている。このように、引用例1には構造要素102を個別に識別することは明記されていないが、「目的の構造要素」、「構造要素102の名称をガイド表示する」等、構造要素102を個別に識別することを示唆することが記載されている。
また、スクロールバー各目盛となる各直線hの線だけでも、その直線hの位置から、下位の階層の構成要素を上から順に、例えば、1,2,3・・・あるいは、A,B,C,D・・・等と個別に識別することは可能である。
したがって、引用例1においては、当該存在する全てのノードを、個別に識別可能な状態で、かつ、指定手段により指定可能な形態で、出力範囲内に常に表す図を設けることは当業者が容易に考えられることである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という)は、平成15年5月30日付手続補正書の特許請求の範囲の請求書1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 作成された木構造図の一部を出力する出力手段と、
上記出力手段が出力する木構造図の一部の所望のノードを指定する指定手段と、
上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図を上記出力手段により出力させる処理手段と、
上記出力手段の出力範囲外に、上記指定されたノードと同じ階層のノードが存在する場合、当該存在する各々のノードを識別可能な状態で、かつ、上記指定手段により指定可能な形態で常に表す図を、上記指定手段により指定されたノードを含む部分の木構造図と共に上記出力手段に出力させるノード情報出力手段とを備えたことを特徴とする木構造図作成装置。」

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、限定事項(下線部分)である「当該存在する全てのノードを、個別に識別可能な状態」、「上記出力範囲内に常に表す図」との構成事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様な理由により、引用例1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-10 
結審通知日 2004-02-17 
審決日 2004-03-22 
出願番号 特願平6-204953
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子水野 恵雄田中 幸雄  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
井上 信一
発明の名称 木構造図作成装置及び木構造図作成方法  
代理人 青山 葆  
代理人 河宮 治  

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