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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1097103 |
審判番号 | 不服2003-3010 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-09-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-02-26 |
確定日 | 2004-05-10 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 47846号「ネットワークシステム及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月16日出願公開、特開平 6-259342〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯、本願発明の要旨 本願は、平成5年3月9日の出願であって、その請求項1に係わる発明(以下、「本願発明」という)は、明細書及び図面の記載からみて、平成16年2月2日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「複数のホストコンピュータと複数の出力装置により構成されたネットワークシステムにおいて、 前記複数の出力装置は、複数の印字装置と、当該印字装置とは異なる外部の記憶手段から構成されており、 前記印字装置に前記ホストコンピュータがデータ伝送する前に、その印字装置の状態を検出する検出手段と、 その検出手段により得られた印字装置の状態に基づいて、その印字装置で伝送されるデータに対する出力動作が可能か否かを判断する判断手段と、 その判断手段により伝送されるデータに対する出力動作が出来ないと判断されたときには、伝送されるデータに対する出力動作が可能な他の印字装置にデータ伝送を切換える一方、伝送されるデータに対する出力動作が可能な印字装置が見つからなかった場合には、ホストコンピュータからのデータ伝送を前記記憶手段に切換える切換手段と、 前記記憶手段にデータ伝送後、伝送されるデータに対する出力動作が可能な印字装置が見つかった場合には、記憶手段からその印字装置にデータ伝送させるデータ伝送制御手段と、 前記切換手段が他の印字装置にデータ伝送を切換える場合に、切換える印字装置を表示させる表示制御手段とを備える ことを特徴とするネットワークシステム。」 2.引用例 2-1.引用例の記載事項 これに対して、当審における、平成15年11月27日付で通知した拒絶の理由に引用した引用例にはそれぞれ以下の点が記載されている。 第1引用例(特開平4-276816号公報) ・「図1は、本実施例のプリンタ装置が使用されるシステム構成を示す図で、図1の(A)は1台のホストコンピュータに複数(n台)のプリンタがワイヤレスで接続されている状態を示し、図1の(B)は複数(m台)のホストコンピュータに複数(n台)のプリンタ装置が接続されている状態を示している。」(明細書第2頁第2欄第40〜46行) ・「【0020】図9はホストコンピュータよりプリンタ装置への送信処理を示すフローチャートで、まずステップS1でオペレータがキーボード206よりプリンタへの出力指示を行なうとステップS2に進み、出力制御プログラム212が出力ジョブ制御テーブル213に出力ジョブ名と用紙名称を登録する。(図4参照)次にステップS3に進み、プリンタ管理テーブル214(図5参照)を調べ、FREE(未使用)状態にあるプリンタを探し、使用状態にないプリンタがあれば図6に示す形式のメッセージを作成し、通信制御プログラム211によりプリンタに送信する(ステップS4)。この時、コマンド62にはプリント要求を意味するコマンドが設定されている。 【0021】ステップS5では、プリンタからの応答待になっており、ある一定時間経過してもプリンタからの応答が無い場合はステップS13に進み、プリンタ管理テーブル214のプリンタ・ステータスにNot Ready(使用不可)を設定する。次にステップS14に進み、次のプリンタを選択して、前述の動作と同様にプリント要求コマンドを送信する。 【0022】ステップS5で、プリンタからの応答があった場合はステップS6に進み、その応答メッセージの内容を調べ、否定応答であればステップS15に進み、プリンタ管理テーブル214にBUSY(ビジー)をセットする。ステップS16では、送信可能な全てのプリンタがビジーかどうかを調べ、ビジーであればエラーを表示してステップS1に戻り、最初から処理をやり直す。全てのプリンタがビジーでなければステップS17に進み、次のプリンタを選択して前述と同様の処理を行う。 【0023】ステップS6で、プリンタよりの応答メッセージが肯定応答であればステップS7に進み、その応答メッセージの付加情報74(図7参照)に設定されている用紙名称と出力ジョブ制御テーブル213の該当ジョブの用紙名称とを比較し、一致していればステップS8に進み、出力ジョブ制御テーブル213に、そのプリンタのプリンタIDをセットする。しかし、一致していなければステップS13に進み、次のプリンタを選択してプリント要求を送信する。」(明細書第3頁第4欄第20行〜第4頁第5欄第8行) ・「【0028】ステップS23で、プリント要求コマンドを受信した時はステップS24に進み、プリント要求受付可能であるかどうかを調べる。受付られない時はステップ25に進み、そのコマンドを出力したホストコンピュータに否定応答を返す。 【0029】一方、ステップS24でプリント命令が受付可能であればステップS26に進み、図7に示す形式のメッセージにより肯定応答をホストコンピュータに返す。このとき、ホストID71は、ホストコンピュータよりのコマンドに含まれるホストID63に一致させ、プリンタID72は自機のプリンタIDである。また、応答内容73は、肯定応答を示すデータ、メッセージの付加情報74には、プリンタに現在セットされている用紙名称を、用紙名称テーブル314を参照して設定する。 【0030】尚、本実施例では、ホストコンピュータはプリンタ管理テーブル214に登録されている全てのプリンタに対してプリント要求を送信した結果、適合するプリンタが見つからなかった場合、何度もリトライを行なうようになっているが、オペレータによりコールしても良い。 【0031】また、該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するが、BUSY状態、即ち他のホストコンピュータにより使用されていた場合には、出力ジョブをホストコンピュータの磁気ディスク装置207又はプリンタ側の磁気ディスク装置等にスプールしておき、そのプリンタの状態がFREE状態になったとき、プリントをするようにしても良い。」(明細書第4頁第5欄第38行〜第6欄第16行) 第2引用例(特開平3-255519号公報) ・「プリンタ選択手段10は・・・(省略)・・・プリンタ52を選択する。 このようにして使用するプリンタが決まると、印字すべきデータをそのプリンタのキューに入れると共に、端末13iを通してオペレータに対して選択したプリンタがどれであるかを知らせる。」(公報第3頁右上欄第18行〜左下欄第6行) 2-2.第1引用例に記載された発明 一般に、ホストコンピュータや周辺装置をワイヤレスで接続されるシステムは一種のネットワークシステムであり、第1引用例に記載された複数のホストコンピュータに対してワイヤレスで接続できる複数のプリンタ装置を用いたデータ出力方法も、データの伝送がお互いの装置間で可能であるという点でネットワークシステムに該当すると認められるから、前記第1引用例には、 「複数のホストコンピュータに対して接続できる複数のプリンタ装置を用いたネットワークシステムにおいて、 オペレータが出力指示を行うと、プリンタへプリント要求を意味するコマンドを送信し、プリンタ側でプリント要求受付可能であるかどうかを調べ、否定応答かもしくは肯定応答とプリンタに現在セットされている用紙名称を付加情報としてホストコンピュータに返し、ホストコンピュータでは否定応答か肯定応答であるか、用紙名称が印刷ジョブと一致するかによりそのプリンタで印刷が可能か否かを判断し、 印刷が可能でない場合、印刷出力が可能な他のプリンタを選択して再びプリント要求を意味するコマンドを送信することを繰り返しデータ出力を行い、全てのプリンタに対してプリント要求を送信した結果、適合するプリンタが見つからなかった場合、何度もリトライを行う手段を備え 該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するがBUSY状態の場合には、出力ジョブをホストコンピュータの磁気ディスク装置又はプリンタ側の磁気ディスク装置にスプールしておき、そのプリンタで出力動作が可能な状態になったとき、プリントをする ことを特徴とするネットワークシステム」 なる発明が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比すると、第1引用例に記載された発明の「プリンタ」は本願発明の「印字装置」に相当し、第1引用例に記載された発明の「プリント要求を意味するコマンド」や「否定応答」「肯定応答」はデータ伝送する前にプリンタの状態を得るものであるから本願発明の「印字装置の状態を検出する検出手段」に相当し、第1引用例に記載された発明の「否定応答」や「肯定応答」,「用紙名称」に応じて印刷が可能か否かを判断する構成は本願発明の「出力動作が可能か否かを判断する判断手段」に相当し、第1引用例に記載された発明の「他のプリンタを選択して再びプリント要求を意味するコマンドを送信すること」は本願発明の「他の印字装置にデータ伝送を切換える」ことに相当し、第1引用例に記載された発明の“出力ジョブを磁気ディスク装置にスプールする”ことは、磁気ディスク装置にデータを切り換えて送り記憶することから第1引用例に記載された発明の「磁気ディスク装置」は外部に設けられるものである点を除き本願発明の「記憶手段」に相当する。 よって、両者は、 「複数のホストコンピュータと複数の出力装置により構成されたネットワークシステムにおいて、 前記複数の出力装置は、複数の印字装置から構成されており、 前記印字装置に前記ホストコンピュータがデータ伝送する前に、その印字装置の状態を検出する検出手段と、 その検出手段により得られた印字装置の状態に基づいて、その印字装置で伝送されるデータに対する出力動作が可能か否かを判断する判断手段と、 その判断手段により伝送されるデータに対する出力動作が出来ないと判断されたときには、伝送されるデータに対する出力動作が可能な他の印字装置にデータ伝送を切換える一方、記憶手段にデータ伝送を切り換えることが可能な切換手段とを備える ことを特徴とするネットワークシステム。」で一致し、下記の点で相違する。 相違点1)本願発明が“複数の出力装置は、複数の印字装置と当該印字装置とは異なる外部の記憶手段”から構成されているのに対して、第1引用例に記載された発明は、“ホストコンピュータと印字装置のみであり、記憶手段はホストコンピュータもしくは印字装置側にある”とする点。 相違点2)本願発明が、“伝送されるデータに対する出力動作が可能な印字装置が見つからなかった場合には、ホストコンピュータからのデータ伝送を前記記憶手段に切換え、外部の記憶手段にデータ伝送後、伝送されるデータに対する出力動作が可能な印字装置が見つかった場合には、外部の記憶手段からその印字装置にデータ伝送させる”のに対して、第1引用例に記載された発明は“全てのプリンタに対してプリント要求を送信した結果、適合するプリンタが見つからなかった場合、何度もリトライを行う手段を備え、該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するがBUSY状態の場合には、出力ジョブをホストコンピュータの磁気ディスク装置又はプリンタ側の磁気ディスク装置にスプールしておき、そのプリンタで出力動作が可能な状態になったとき、プリントをする”としている点 相違点3)本願発明が「前記切換手段が他の印字装置にデータ伝送を切換える場合に、切換える印字装置を表示させる表示制御手段」を備えるのに対して、第1引用例に記載された発明にはそのような手段が無い点。 4.当審の判断 4-1.相違点1について 一般に、印刷データを印字装置以外の外部の記憶手段に一時記憶することは、例えば「特開昭62-120532号公報」の第1図、「特開平2-259821号公報」の第2図、「特開平3-220624号公報」の第2図に記載されているように周知慣用技術である。 そして、第1引用例に記載された発明は、出力ジョブをホストコンピュータの磁気ディスク装置又はプリンタ側の磁気ディスク装置にスプールしておく構成であり、印刷データをホストコンピュータやプリンタの主メモリでない別の記憶手段に一時退避して記憶することを開示しているものと認められる。 よって、第1引用例に記載されたホストコンピュータもしくは印字装置側にある記憶手段を外部の記憶手段とすることに格別の困難性は認められない。 また、これにより奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。 4-2.相違点2について 引用例1に記載された発明は、全てのプリンタに対してプリント要求を送信した結果、適合するプリンタが見つからなかった場合、何度もリトライを行う構成である。 一方、引用例1に記載された発明は、“該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するがBUSY状態の場合には、出力ジョブをホストコンピュータの磁気ディスク装置又はプリンタ側の磁気ディスク装置にスプールしておき、そのプリンタで出力動作が可能な状態になったとき、プリントをする”構成も併せ持ち、これは印字装置が出力動作が可能でなかった場合、印刷データを記憶手段に一時記憶し、その後出力動作が可能となった場合には、記憶手段からその印字装置にデータ伝送させ印刷させる技術をも開示している。 ここで、「該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するがBUSY状態の場合」とは、現在「出力動作が可能な印字装置」ではないのは明らかであり、他に「出力動作が可能な印字装置」がある場合はその他の「出力動作が可能な印字装置」にデータ伝送し印刷処理を行うことがよいことは明らかである。すなわち「該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するがBUSY状態の場合」は、伝送されるデータに対する出力動作が可能な印字装置が見つからなかった場合において次の候補であるとすることができる。 このことから、引用例1に記載されている“全てのプリンタに対してプリント要求を送信した結果、適合するプリンタが見つからなかった場合、何度もリトライを行う構成”に“該当する用紙名称がセットされているプリンタが存在するがBUSY状態の場合には、出力ジョブをホストコンピュータの磁気ディスク装置又はプリンタ側の磁気ディスク装置にスプールしておき、そのプリンタで出力動作が可能な状態になったとき、プリントをする”技術を適用することは当業者が容易に想到できることと認められる。 また、出力動作が可能な印字装置が見つからなかった場合の印刷データを何処に記憶させておくかは、それぞれ(ホストコンピュータ、印字装置)に備わっている記憶手段の容量等や扱う印刷データの大きさ、システム構築のコスト、利便性等を考慮して決め得ることであり、この印刷データを前記した外部の記憶手段に記憶するようにする発想は当業者が容易に想到できることに過ぎない。 したがって、引用例1に記載された2つの技術を組み合わせ、かつ、記憶手段に関する周知事項を勘案することにより、全てのプリンタに対してプリント要求を送信した結果、適合するプリンタが見つからなかった場合、印刷データを外部の記憶手段に一時記憶し、その後何度もリトライを行い、出力動作が可能となったプリンタが見つかった場合には、該記憶手段からその印字装置にデータ伝送させ印刷させる構成とすることは、当業者が容易に発明できたものと認められる。 4-3.相違点3について 第2引用例に記載されているように、端末を通してオペレータに対して選択したプリンタがどれであるかを知らせる手段を設けることは周知慣用技術である。第1引用例に記載された発明に、この周知慣用技術を適用して、他の印字装置にデータ伝送を切り換える場合に、切り換える印字装置を表示させる表示制御手段を備えるように構成することは、当業者が容易に推考できたものと認める。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は第1引用例および第2引用例に記載された発明および当該技術分野において周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-27 |
結審通知日 | 2004-03-09 |
審決日 | 2004-03-23 |
出願番号 | 特願平5-47846 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 茂和、五十嵐 努 |
特許庁審判長 |
下野 和行 |
特許庁審判官 |
内田 正和 治田 義孝 |
発明の名称 | ネットワークシステム及び情報処理装置 |
代理人 | 田辺 政一 |
代理人 | 武藤 勝典 |