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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1097113
審判番号 不服2002-2437  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-14 
確定日 2004-05-13 
事件の表示 平成 9年特許願第105509号「液晶表示装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月13日出願公開、特開平10-301139〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年4月23日の出願であって、平成13年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年2月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年3月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の発明
平成14年3月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「絶縁性基板上に、絶縁膜を介して互いに交差するゲート信号配線およびソース信号配線と、該ゲート信号配線およびソース信号配線のそれぞれに接続されたゲート電極およびソース電極とを有するスイッチング素子とが設けられたアクティブマトリクス基板を搭載した液晶表示装置において、
陽極酸化膜が、少なくとも前記ゲート信号配線またはゲート電極のパターン表面および前記陽極酸化膜の厚さよりも長い距離の近傍の前記基板表面を被覆することを特徴とする液晶表示装置。」
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「陽極酸化膜」について、少なくともゲート信号配線またはゲート電極のパターン表面のほかに「陽極酸化膜の厚さよりも長い距離の近傍の前記基板表面を」被覆するとの限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。
(2)引用例に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-188422号公報(以下、「引用例」という)には、次のように記載されている。
「(1)付加容量用透明電極及び画素用透明電極間に陽極酸化タンタル膜からなる絶縁膜を介した薄膜トランジスタアレイの製造方法に於て、
(a)ガラス基板上にタンタルでゲート電極とゲート電極を共通に結線した補助電極を形成する工程、
(b)前記ゲート電極及び補助電極を形成したガラス基板上全面にタンタル膜を形成する工程、
(c)前記補助電極上のタンタル膜を陽極酸化用電極とし、タンタルを陽極酸化し絶縁膜とする工程、
少なくとも以上の工程を具備する薄膜トランジスタアレイの製造方法。」(特許請求の範囲)
「本発明は、例えば液晶表示装置のスイッチング素子等に用いられる薄膜トランジスタアレイに関するものである。」(第1頁右下欄第1〜3行)
「薄膜トランジスタアレイは、十数万個の画素を駆動する為に、ゲート電極及びソース電極をX-Yマトリクス状に配線する。この為、ゲート電極とソース電極との交差部でのショートが大きな問題となる。」(第1頁左下欄第10〜14行)
「・・・・第1図は本発明による薄膜トランジスタアレイのゲート電極パターンを示す平面図であり、第2図は薄膜トランジスタアレイの構成例を示す断面図、・・・・ガラス基板1上にITOによる付加容量用透明電極2(厚さ1500Å)をパターニングした後、スパッタ法によりタンタルを2000Å成膜しゲート電極3に加工する。このときゲート電極パターンは・・・・第1図に示す各々のゲート電極を共通結線した補助電極4を有するパタンとする。次に同様の方法にてタンタルを1000Å成膜する。
前記補助電極上のタンタル膜に電源を接続し、陽極酸化用電極とし、0.1重量%クエン酸溶液中で180Vまで化成することにより、全面透明な陽極酸化タンタルである第一絶縁膜5を形成した。・・・・
次に、P-CVD法により、第二絶縁膜6であるSiNxを3000Å、アモルファスシリコン膜による半導体層7を2000Å、リンドープアモルファスシリコンによるオーミック接触用半導体層8を500Å連続的に成膜した。次に半導体層7及びオーミック接触用半導体層8を島状に加工し、さらに、ITOを1500Å積層し、画素用透明電極9を形成し、Crを2000Å積層し、ドレイン電極10及びソース電極11を作製した。最後に、P-CVD法によりパッシベーション膜12であるSiNxを3000Å成膜して、薄膜トランジスタアレイを完成した。」(第2頁左下欄第14行〜第3頁左上欄第8行)
また、第1図に薄膜トランジスタアレイのゲート電極と補助電極パターンの一実施例の平面図が、また第2図に薄膜トランジスタアレイの構成の断面図が示されている。
以上の記載からすれば、引用例には、「ガラス基板1上に付加容量用透明電極2及びゲート電極3が間隔を置いて形成され、その上に陽極酸化膜からなる第一絶縁膜5が基板上全面に形成され、その上に第二絶縁層6が形成された上に半導体層7及びオーミック接続用半導体層8が形成加工され、画素用透明電極9、ドレイン電極10及びソース電極11が形成され、その上にパッシベーション膜12が形成された液晶表示装置のスイッチング素子等に用いられる薄膜トランジスタアレイ」が記載されているものと認められる。
(3)対比、判断
引用例に記載の薄膜トランジスタアレイは液晶表示装置のスイッチング素子に用いられるものであることが明記されているから、引用例にはこのスイッチング素子を用いた液晶表示装置が記載されているものと認める。また、引用例に記載のものにおいて、ゲート電極及びソース電極はスイッチング素子を駆動するためにX-Yマトリクス状に配線され、交差部において絶縁膜を介在させることは従来技術のものと同様であることは明らかであるから、引用例において記載されているものと把握できる。
そこで、本件補正発明と引用例に記載のものとを対比する。
引用例に記載のものにおける「ゲート電極」は、本件補正発明における「ゲート信号配線」及び「ゲート信号配線に接続されたゲート電極」に相当し、引用例に記載のものにおける「ソース電極」は、本件補正発明における「ソース信号配線」及び「ソース信号配線に接続されたソース電極」に相当し、引用例に記載のものにおける個々のトランジスタは本願発明におけるスイッチング素子に相当し、また、引用例に記載のものにおける「薄膜トランジスタアレイが形成された基板」は、本件補正発明における「アクティブマトリクス基板」に相当する。
また、引用例に記載のものにおける陽極酸化膜は、基板上全面に形成され、これを被覆するものであるから、少なくとも本件補正発明の「ゲート信号配線」及びそれに接続された「ゲート電極」のパターン表面を被覆すること、また、陽極酸化膜の厚さよりも長い距離の近傍の基板表面を被覆することは明らかである。
そうすると、本件補正発明と引用例に記載のものとは何ら相違するところはなく、本件補正発明は、実質的に引用例に記載された発明である。
したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(4)むすび
以上のとおり。本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成14年3月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成13年11月29日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜3に各々記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。
「絶縁性基板上に、絶縁膜を介して互いに交差するゲート信号配線およびソース信号配線と、該ゲート信号配線およびソース信号配線のそれぞれに接続されたゲート電極およびソース電極とを有するスイッチング素子とが設けられたアクティブマトリクス基板を搭載した液晶表示装置において、
前記ゲート信号配線またはゲート電極の少なくとも一方は、陽極酸化膜で被覆されており、
前記陽極酸化膜がさらに前記ゲート信号配線またはゲート電極の近傍の基板表面を被覆していることを特徴とする液晶表示装置。」
(1)引用例に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比、判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本件補正発明から陽極酸化膜が「陽極酸化膜の厚さよりも長い距離の近傍の前記基板表面を被覆する」との限定事項を省いたものであるが、この限定事項を含む本件補正発明が引用例に記載された発明であることは「2.(3)」に記載したとおりであるから、この限定事項を省いた本願発明も同様に引用例に記載された発明である。
なお、原査定における拒絶の理由は、本願発明が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものであるが、引用例に記載された発明に対する容易性及び進歩性を判断するに際し、引用例に記載された発明との一致及び相違が前提となるものであり、請求人も本願発明と引用例に記載された発明との一致及び相違をもとにして考慮した上で請求の理由を述べているのであるので、上記のとおり判断した。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-09 
結審通知日 2004-03-16 
審決日 2004-03-29 
出願番号 特願平9-105509
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小牧 修橿本 英吾  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 稲積 義登
町田 光信
発明の名称 液晶表示装置およびその製造方法  
代理人 木下 雅晴  
代理人 小池 隆彌  

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