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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1097116
審判番号 不服2001-18241  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-11 
確定日 2004-05-13 
事件の表示 平成5年特許願第11667号「簡易電子出版方式」拒絶査定に対する審判事件[平成6年8月12日出願公開、特開平6-225041]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年1月27日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
なお、平成13年4月9日付け及び平成13年10月11日付けの手続補正はいずれも要旨を変更するものであるという理由で却下されている。
「情報媒体による情報を携帯型情報再生装置によって再生する簡易電子出版方式において、公衆電話回線網を介した情報転送記録装置を、情報の提供者および利用者の双方の個人にそれぞれ用意し、前記情報の提供者から利用者への伝達は、用意された利用者の前記携帯型情報再生装置の情報媒体に新しい情報を上書きし、情報媒体の再利用を可能としたことを特徴とする簡易電子出版方式。」

2.引用例
(1)これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平4-104557号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
イ.「(1)少なくとも、システム制御機能、I/Oデバイス、通信機能、メモリーなどからなるポータブル通信端末において、該メモリーの一部が着脱式で記録と再生が可能なランダムアクセスメモリーであることを特徴とするポータブル通信端末。
(2)着脱式で記録と再生が可能なランダムアクセスメモリーがICカードあるいはビデオフロッピーであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のポータブル通信端末。
(3)ICカードでは2値画像、モノクロ静止画像、文書画像、文書ファイルなどを扱うことを特徴とする特許請求の範囲第2項記載のポータブル通信端末。」(1頁左下欄、特許請求の範囲第1項〜第3項)
ロ.「第1図は本発明のポータブル通信端末のブロック図であり、破線内1がその対象となる。2はシステム全体を制御するホストプロセッサとなるCPUである。・・・ディスプレイユニット6は表示コントローラ、メモリー、ドライバー、表示デバイスなどからなり、・・・7は、ISDN(・・・)のレイヤ3の制御およびマン/マシーンインターフェースに係わるマウス、キーボード、タブレットなどの制御入力手段である。・・・13は音声に係わるユニットであり、マイク、スピーカ、符号/復号化器などを含む。」(2頁左下欄17行目〜3頁左上欄4行目)
ハ.「今後は記録容量の増大とともに書換えが可能なICカードの普及が見込まれる。当然、これらのシステムおよびパーソナルコンピュータの外部記憶装置としても使われる。例えば、このようなシステムで作成された各種文書類、アプリケーションソフトウェア、ユーザー主体のデータベースなどが記録されたICカードを、本発明のポータブル通信端末のICカードユニットに用いて相互通信するとともに、相互のコミュニケーションの中でお互いが必要とするデータの形態あるいは内容に変更することができる。」(3頁右上欄4〜14行目)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「ポータブル通信端末」は「ICカードユニット」を備え、「ISDN」を通じて相互通信し、「ICカード」即ち「情報媒体」に「必要とするデータ」例えば「文書情報」を記録するとともに、「ディスプレイユニット」を用いて前記「情報媒体」に記録された前記「文書情報」を再生し、表示する、いわゆる「携帯型情報再生装置」であり、「情報転送記録装置」である。また、「文書情報」を記録するとともにに、記録された「文書情報」を再生する方式はいわゆる「文書情報記録再生方式」である。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「情報媒体による文書情報を携帯型情報再生装置によって再生する文書情報記録再生方式において、ISDNを介して、文書情報が記録された着脱式情報媒体および情報転送記録装置を用いて相互通信するとともに、相互のコミュニケーションの中でお互いが必要とするデータの内容に変更する文書情報記録再生方式。」

(2)また、原審の拒絶査定に引用された実願昭62-97934号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭64-5553号公報、考案の名称「押しボタンダイヤル電話機」、以下、「周知例1」という。)には、下記イ.〜ニ.が記載されており、同じく、原審の拒絶査定に引用された特開平3-237846号公報(発明の名称「電話システム」、以下、「周知例2」という。)には、下記ホ.〜ト.が記載されている。
イ.「ICカードリードライタを内蔵し、ICカード差込スリットを電話機ケースに開口させ、上記リーダライタを電話機の押しボタンダイヤルで操作可能に構成した押しボタンダイヤル電話機」(1頁、実用新案登録請求の範囲)
ロ.「本考案はICカードに記憶されている情報を手近にある電話回線を利用して必要な端末機に伝送でき、あるいは電話回線を介して端末機から情報を受取ってICカードに書込みもできるようにすることを目的とする。」(2頁3〜7行目)
ハ.「なお、電話回線によってはモデム装置を必要とする場合があるが、その場合のモデム装置は電話機に内蔵させる。」(3頁6〜9行目)
ニ.「また受取ってICカードに書込むことも可能で、データベース、電子出版、TVゲーム用ソフトなどの各種情報の伝送・書換えにも利用できる」(3頁19行目〜4頁2行目)
ホ.「この転送処理は転送元の電話端末の使用者が転送先の電話端末を電子電話帳より選択して転送を指示することにより自動的に実行される。また転送先の電話端末は当該端末情報を電子電話帳に自動的に登録して格納する」(3頁左下欄3〜7行目)
ヘ.「この電話システムでは電子電話帳10を記憶する記憶媒体にICカード211を用いる」(3頁右下欄15〜16行目)
ト.「接続される回線がISDN等のディジタル通信網でなく通常の電話網(アナログ通信網)である場合はモデムが付属している。」(4頁左上欄20行目〜右上欄3行目)

上記周知例1、2の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、電話回線を介して端末機から情報を受取ってICカードに書込みができるようにした電話機において、電話回線として通常の電話網即ち公衆電話回線網を使うかISDNを使うかは単なる設計的事項である。
また、上記ニ.の記載によれば、ICカードに書込む情報には電子出版の情報が含まれている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「文書情報」は本願発明の「情報」の一形態であり、本願発明の「簡易電子出版方式」と引用発明の「文書情報記録再生方式」はいずれも「情報転送方式」であるという点で一致している。
また、本願発明の「公衆電話回線網」と引用発明の「ISDN」はいずれも「電話回線」であるという点で一致している。
また、引用発明の「文書情報が記録された着脱式情報媒体および情報転送記録装置を用いて相互通信するとともに、相互のコミュニケーションの中でお互いが必要とするデータの形態あるいは内容に変更する」という構成は「情報転送記録装置」を「情報の提供者および利用者の双方にそれぞれ用意し」、相互通信の結果「情報の提供者から利用者への伝達は、用意された利用者の前記携帯型情報再生装置の情報媒体に新しい情報を上書きし、情報媒体の再利用を可能と」するものであるから、引用発明の当該構成と本願発明の「情報転送記録装置を、情報の提供者および利用者の双方の個人にそれぞれ用意し、前記情報の提供者から利用者への伝達は、用意された利用者の前記携帯型情報再生装置の情報媒体に新しい情報を上書きし、情報媒体の再利用を可能とした」という構成は「情報転送記録装置を、情報の提供者および利用者の双方にそれぞれ用意し、前記情報の提供者から利用者への伝達は、用意された利用者の前記携帯型情報再生装置の情報媒体に新しい情報を上書きし、情報媒体の再利用を可能とした」という構成の点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、
「情報媒体による情報を携帯型情報再生装置によって再生する情報転送方式において、電話回線を介した情報転送記録装置を、情報の提供者および利用者の双方にそれぞれ用意し、前記情報の提供者から利用者への伝達は、用意された利用者の前記携帯型情報再生装置の情報媒体に新しい情報を上書きし、情報媒体の再利用を可能とした情報転送方式。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(1)「情報」に関し、本願発明の情報は単に「情報」であるのに対し、引用発明の情報は「文書情報」である点。
(2)「情報転送方式」に関し、本願発明の方式は「簡易電子出版方式」であるのに対し、引用発明の方式は「文書情報記録再生方式」である点。
(3)「電話回線」に関し、本願発明の回線は「公衆電話回線網」であるのに対し、引用発明の回線は「ISDN」である点。
(4)「情報の提供者および利用者」に関し、本願発明は「個人」であるのに対し、引用発明は不明である点。

4.当審の判断
(1)上記相違点(1)の「情報」および(2)の「情報転送方式」について
一般に「出版」とは「文書・図画などを印刷して発売・頒布すること」(大辞林第2版、三省堂)であるところ、引用発明の「文書情報記録再生方式」は通信を介して文書を電子的に頒布するものであるから、当該方式は本願発明でいう「簡易電子出版」に他ならないものである。したがって、本願発明の「簡易電子出版方式」と引用発明の「文書情報記録再生方式」の間に実質的な差異はない。また上記周知例1の記載によれば、ICカードに書込む情報には電子出版の情報が含まれるのであるから、この点からも両者の間に実質的な差異はない。
また、本願発明の「情報」は、上記したとおり、頒布する「文書・図画」が含まれるから、「情報」の内容の点でも本願発明と引用発明の間に実質的な差異はない。

(2)上記相違点(3)の「電話回線」について
例えば上記周知例1、2に開示されているように、電話回線を介して端末機から情報を受取ってICカードに書込みができるようにした電話機において、電話回線として通常の電話網即ち公衆電話回線網を使うかISDNを使うかは単なる設計的事項であるから、引用発明の「ISDN」を本願発明のような「公衆電話回線網」に変更する程度のことは当業者であれば容易なことである。

(3)上記相違点(4)の「情報の提供者および利用者」について
電子出版方式(文書情報記録再生方式)のユーザから法人やグループを排除する格別の理由は見あたらず、また、ユーザを個人に限定する格別の理由も見あたらないから、「情報の提供者および利用者」を「個人」に限定する程度のことは当業者であればいかようにも設定し得る単なる設計的事項である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1〜2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-09 
結審通知日 2004-03-16 
審決日 2004-03-29 
出願番号 特願平5-11667
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大日方 和幸宮田 繁仁  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 浜野 友茂
吉田 隆之
発明の名称 情報転送記録装置および簡易電子出版システム  
代理人 村山 光威  

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