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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G |
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管理番号 | 1097259 |
審判番号 | 不服2000-15977 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-07-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-10-05 |
確定日 | 2004-05-20 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第259783号「ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーの精製方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 7月12日出願公開、特開平 6-192422]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯及び本願発明 本願は、平成5年10月18日(パリ条約による優先権主張1992年10月23日 米国)の出願であって、平成9年10月20日付け、平成12年5月16日付け、平成12年10月5日付け、及び、平成12年11月6日付けで手続補正がなされたが、平成12年11月6日付けの手続補正に対しては、平成15年5月14日付けで補正の却下の決定がなされ、該決定は既に確定している。 それゆえ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成12年10月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「低分子量部分および高分子量部分を含むポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーから低分子量部分を選択的に除去するための方法であって、 (a) 前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと、極性有機化合物と、そして水、アルカリ金属塩およびそれらの混合物からなる群から選択される促進剤とを、前記低分子量部分の一部を含む余り濃厚ではないポリマー-欠乏の液相および前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー中の本質的にすべての高分子量部分を含む一層濃厚なポリマー-リッチの液相を形成するに足る温度で接触させること、ここで、前記促進剤は前記極性の有機化合物に可溶性である; (b) 前記ポリマー-リッチな相から前記ポリマー-欠乏の相を分離し、そのようにして当該ポリマー-欠乏の相を除去すること; そして (c) 前記ポリマー-リッチな相から前記ポリマー中の前記高分子量部分を回収すること;の 各段階から成る、上記方法。」 【2】原査定の概要 原査定における拒絶理由には、概略、以下の理由1、2が含まれている。 理由1:本願発明は、本願の出願前に頒布された、特開昭61-111329号公報(以下、「刊行物1」という)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2:本願発明は、刊行物1及び特開昭59-1536号公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 【3】刊行物1の記載事項 刊行物1には、以下の記載事項がある。 [記載事項a] 「アミド系極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応せしめた後、有機スルホン酸金属塩、有機カルボン酸金属塩、多価アルコール類、ハロゲン化リチウム及びリン酸アルカリ塩から選ばれる少なくとも一種を添加し、次いで低分子ポリマーの濃厚層(I)とオリゴマーの濃厚層(II)とからなる生成樹脂液から該層(I)又は該層(II)を分別することを特徴とするポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法。」(第1頁特許請求の範囲) [記載事項b] 「本発明でいう「オリゴマー」とは、固有粘度0.05未満のアリーレンスルフィドオリゴマーの他に、・・・をも含む総称である。」(第2頁左下欄第1〜7行) [記載事項c] 「本発明で言う低分子量ポリマーとは、固有粘度0.05〜0.20のアリーレンスルフィドポリマーである。」(第2頁左下欄第8〜10行) [記載事項d] 「本発明で用いられる分散剤としての有機スルホン酸金属塩は下記一般式I〜IVに示される群から選ばれる。 ・・・ (式中、・・・をあらわし、Mは・・・から選ばれたアルカリ金属をあらわし・・・を示す。)」(第4頁左上欄第1行〜右上欄第6行) [記載事項e] 「有機カルボン酸金属塩は・・・である。また、有機カルボン酸金属塩の金属原子は・・・から選ばれ、特にアルカリ金属が好ましい。」(第4頁左下欄第1〜10行) [記載事項f] 「リン酸アルカリ塩は下記一般式V〜VIに示される群から選ばれる。 ・・・ 式中・・・、Mはアルカリ金属好ましくはナトリウムである。」(第5頁右上第6〜15行) [記載事項g] 「これらの分離剤は・・・溶解限度以上に使用しても分離を促進しない。・・・分離剤の添加時期は重合反応終了時が好ましい。」(第5頁右下欄第1〜13行) [記載事項h] 「分別取出の方法には特に制限はない。たとえば攪拌停止状態または層流攪拌状態下でストロー方式でサンプル管により低分子量ポリマー層またはオリゴマー層を選択的に取出すことも可能であり、あるいは釜下部より両層を選択的に順次分別して取出すことも可能である。」(第6頁右上欄第17行〜左下欄第2行) [記載事項i] 「本発明に於いて、低分子量ポリマー濃厚層とオリゴマー濃厚層との分離は、通常主として低分子量ポリマーを含有する分離液中のオリゴマー含有率(対ポリマー重量%)が3%以下であり、かつポリマー分が全ポリマーの97重量%以下含む如く行われるのが好ましい。」(第6頁左下欄第13〜18行) [記載事項j] 「主としてオリゴマーを含む分別液には、オリゴマー成分の他に、・・・低分子量ポリマーの少量を含有しており」(第6頁右下欄第5〜7行) [記載事項k] 「本発明によって取り出された主に低分子ポリマーを含む樹脂液からポリマーを採取する方法は通常の方法で差しつかえない。例えば、・・・して精製ポリマーを得ることができる。」(第6頁左下欄第19行〜右下欄第4行) 【4】対比・判断 記載事項a、d〜h、kからみて、刊行物1には、「アミド系極性溶媒中で、ポリハロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを重合反応せしめ、重合反応が終了した後、分離剤である有機スルホン酸アルカリ金属塩、有機カルボン酸アルカリ金属塩、及びリン酸アルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種を添加し、次いで低分子ポリマーの濃厚層(I)とオリゴマーの濃厚層(II)とからなる生成樹脂液から層(II)を分別し、低分子ポリマーの濃厚層(I)から、ポリマーを採取する方法」(以下、「刊行物1の方法」という)が記載されている。 そして、刊行物1の方法における、「アミド系極性溶媒」、「分離剤である有機スルホン酸アルカリ金属塩、有機カルボン酸アルカリ金属塩、及びリン酸アルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種」は、それぞれ、本願発明における「極性有機化合物」、「アルカリ金属塩促進剤」に対応し、記載事項b、cからみて、刊行物1の方法における「低分子ポリマー」は、本願発明における、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーの高分子量部分に相当し、刊行物1の方法における「オリゴマー」は、本願発明における、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーの低分子量部分を含んでいる。また、低分子ポリマーの濃厚層(I)、オリゴマーの濃厚層(II)との各表現ぶりと、記載事項i、jからみて、刊行物1の方法におけるオリゴマーの除去は選択的であり、オリゴマーの濃厚層(II)には、オリゴマーの一部が含まれており、低分子ポリマーの濃厚層(I)には、本質的にすべての低分子ポリマーが含まれていると認められる。さらに、記載事項gからみて、刊行物1の方法における分離剤は、アミド系極性溶媒に可溶性である。 そこで、本願発明と刊行物1の方法の発明を対比すると、両者は、 「低分子量部分および高分子量部分を含むポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーから低分子量部分を選択的に除去するための方法であって、 (a)前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーと、極性有機化合物と、アルカリ金属塩促進剤とを、前記低分子量部分の一部を含むポリマー-欠乏の液相および前記ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー中の本質的にすべての高分子量部分を含むポリマー-リッチの液相を形成するに足る温度で接触させること、ここで、前記促進剤は前記極性の有機化合物に可溶性である; (b)前記ポリマー-リッチな相から前記ポリマー-欠乏の相を分離し、そのようにして当該ポリマー-欠乏の相を除去すること;そして (c)前記ポリマー-リッチな相から前記ポリマー中の前記高分子量部分を回収すること;の各段階から成る、上記方法。」である点で一致し、本願発明では、「ポリマー-欠乏の液相」について「余り濃厚ではない」と特定されるととともに、「ポリマー-リッチの液相」について「一層濃厚な」と特定されているのに対して、刊行物1の方法では、このような特定がなされていない点で一応相違する。 そこで、この点について検討するに、刊行物1の第8頁の表1の各実施例において、「低分子ポリマーの濃厚層」を採取した取出容器K1と、「オリゴマーの濃厚層」を採取した取出容器K2における各ポリマー(ここでいうポリマーとは、刊行物1の第7頁右下欄からみて、低分子ポリマーとオリゴマーからなるものである。)の濃度(重量%)を算出すると、下記、第1表のとおりとなり、いずれの実施例においても、取出容器K1のポリマー濃度が、取出容器K2のポリマー濃度より高いことがわかる。 第1表 してみれば、刊行物1の発明における「低分子ポリマーの濃厚層」(本願発明の「ポリマー-リッチの液相」に相当)が「一層濃厚な」ものであり、「オリゴマーの濃厚層」(本願発明の「ポリマー-欠乏の液相」に相当)が「余り濃厚ではない」ものであることは明らかである。 したがって、この相違点は実質的なものではない。 ゆえに、本願発明は、刊行物1に記載された発明と認められる。 仮に、この相違点が実質的なものであるとしても、高分子物質を高分子量部分と低分子量部分に相分離させると、一般に濃厚相に高分子量部分が、希薄相に低分子量部分が分配されることは技術常識であり(必要ならば、村橋俊介編著「高分子化学」初版 昭和41年4月1日 共立出版株式会社発行 p.174〜175参照)、刊行物1の発明においてもこのような分配が生じていることは、上記第1表から明らかであるから、本願発明において、この相違点に係る構成を採用することは容易であり、したがって、本願発明は刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、仮にそうでなくても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-28 |
結審通知日 | 2003-12-09 |
審決日 | 2003-12-25 |
出願番号 | 特願平5-259783 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08G)
P 1 8・ 113- Z (C08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 天野 宏樹 |
特許庁審判長 |
柿崎 良男 |
特許庁審判官 |
中島 次一 石井 あき子 |
発明の名称 | ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマーの精製方法 |
復代理人 | 松山 美奈子 |
代理人 | 狩野 剛志 |
代理人 | 栗田 忠彦 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 今井 庄亮 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 小林 泰 |