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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1097384
審判番号 不服2001-6744  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-26 
確定日 2004-05-24 
事件の表示 平成 8年特許願第325574号「タッチパネルおよびそれを利用した表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月26日出願公開、特開平10-171599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成8年12月5日に特許出願されたものであって、平成13年3月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成13年4月26日に不服の本件審判請求がなされるとともに、明細書について平成13年5月25日付けで手続補正書が提出されたものである。

【2】手続補正について
平成13年5月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について、以下のとおり決定する。
[結論]
平成13年5月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、少なくとも特許請求の範囲の請求項1〜3に対して、以下のとおり補正された。
「【請求項1】 装置表面に近接する物体により引き起こされる物理量の変化を検出することにより装置表面上での前記近接する物体の位置の情報を電気信号に変換するタッチパネルにおいて、
一定の間隔に設けて配した2枚の透明基板と、前記透明基板の間に導電性多層透明層とを有し、
前記導電性多層透明層が金属酸化物層の第1層と、酸可溶性の金属またはその金属の合金層の第2層と、酸可溶性の金属酸化物層の第3層から構成して高透過率性を持たせるとともに、
前記第1層、第2層、第3層の各層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたときに、n2とn3の比と、n1とn2の比を調整し、アンチリフレクション機能を併用させたことを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】 装置表面に近接する物体により引き起こされる物理量の変化を検出することにより装置表面上での前記近接する物体の位置の情報を電気信号に変換するタッチパネルにおいて、
前記タッチパネルの表面にタッチパネルを保護するタッチパネル保護板を持ち、前記タッチパネル保護板が透明基板と、前記透明基板の上面となる表面に金属酸化物層の第1層と、酸可溶性の金属またはその金属の合金層の第2層と、酸可溶性の金属酸化物層の第3層から構成して高透過率性を持たせるとともに、
前記第1層、第2層、第3層の各層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたときに、n2とn3の比と、n1とn2の比を調整し、アンチリフレクション機能を併用させたことを特徴とするタッチパネル。
【請求項3】 装置表面に近接する物体により引き起こされる物理量の変化を検出することにより装置表面上での前記近接する物体の位置の情報を電気信号に変換するタッチパネルにおいて、
前記タッチパネルの表面にタッチパネルを保護するタッチパネル保護板を持ち、前記タッチパネル保護板が透明基板と、前記透明基板の下面となる液晶表示装置側に金属酸化物層の第1層と、酸可溶性の金属またはその金属の合金層の第2層と、酸可溶性の金属酸化物層の第3層から構成して高透過率性を持たせるとともに、
前記第1層、第2層、第3層の各層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたときに、n2とn3の比と、n1とn2の比を調整し、アンチリフレクション機能を併用させたことを特徴とするタッチパネル。」
この補正の内容は、請求項1〜3の構成要件である補正前の「第1層、第2層、第3層の層厚および屈折率を調整し、アンチリフレクション機能を併用させた」について、本件補正により補正後は「第1層、第2層、第3層の各層の屈折率をそれぞれn1、n2、n3としたときに、n2とn3の比と、n1とn2の比を調整し、アンチリフレクション機能を併用させた」とするものである。
しかしながら、この補正前の「第1層、第2層、第3層の層厚および屈折率を調整し」の構成は、調整に関して「層厚」と「屈折率」との両者により調整行う構成であり、この両者を併せた調整によるものから「層厚」を削除して「屈折率」のみにより調整を行う構成のものに補正しており、これは特許請求の範囲を拡張するものであって、請求項を削除し、また特許請求の範囲を限定的に減縮するものでも、さらには誤記の訂正あるいは明瞭でない記載の釈明にあたるものでもなく、補正の目的のいずれにも該当しないものであるから、当該補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。
したがって、平成13年5月25日付けの手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願は前記のとおり平成13年5月25日付け手続補正が却下されたので、本願の請求項1〜12に係る発明は、平成12年12月15日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、当該請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 装置表面に近接する物体により引き起こされる物理量の変化を検出することにより装置表面上での前記近接する物体の位置の情報を電気信号に変換するタッチパネルにおいて、
一定の間隔に設けて配した2枚の透明基板と、前記透明基板の間に導電性多層透明層とを有し、
前記導電性多層透明層が金属酸化物層の第1層と、酸可溶性の金属またはその金属の合金層の第2層と、酸可溶性の金属酸化物層の第3層から構成して高透過率性を持たせるとともに、
前記第1層、第2層、第3層の層厚および屈折率を調整し、アンチリフレクション機能を併用させたことを特徴とするタッチパネル。」
(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-68713号公報(以下「引用例」という。)には、従来技術と実施例、図面及びこれに係わる記載を参酌すると、以下のような技術的事項の記載が認められる。
(イ)「【0002】【従来の技術】In2O3、ZnO、SnO2等の導電材料を用いた透明導電薄膜は、液晶ディスプレイ、タッチパネル、センサ、太陽電池における透明電極等の分野において広く用いられており、今後の需要増加が予想される。透明導電薄膜の品質は膜の比抵抗値によって決まり、例えば液晶ディスプレイにおいては、大面積化、表示密度の向上に伴って、より比抵抗値の小さい透明導電薄膜が要求されるようになってきた。他の用途においても同様に、比抵抗値をより小さくすることが求められている。」(段落【0002】第2頁第1欄第11〜20行)
(ロ)「【0006】そこで本発明は、低い比抵抗(抵抗率)および高い透明性を有し、かつ耐候性に優れた透明導電膜を提供することを目的とする。」(段落【0006】第2頁第2欄第1〜3行)
(ハ)「【0008】すなわち本発明の透明導電膜は、基板上に順次、(1)Au、Ag、Cu、Al、Be、Co、Ni、Zn、Ir、Mo、Rh、RuおよびWから選ばれる少なくとも1種の金属を含む第1の層、および(2)Snを添加したIn2O3を含む第2の層を少なくとも有することを特徴とする。
【0009】本発明の透明導電膜は、基板上に順次上記の2種類の層が少なくとも設けられている多層膜である。第1の層と第2の層はこの順序で積層されることが必要であり、順序を逆にすると本発明の効果のうち、優れた透明性および耐候性を発揮することができない。必要ならば、基板と第1の層の間に下地層が設けられていてもよい。
【0010】本発明において使用する基板としては、ガラス、プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等(単独重合体の他に共重合体も含む)の基板が挙げられる。また、基板はこれらを2種以上含む積層体であっても良い。基板の厚さは、用途によって異なるが、通常1.0〜1000μmである。
【0011】下地層が設けられている場合には、下地層としては、従来の透明導電膜に使用されるのと同様の材料、例えばITO(Snを添加したIn2O3)、AZO(Alを添加したZnO)等;通常使用される保護膜の材料、例えばSiO2、Si3N4、ZnS、TiO2等から選ばれる材料を使用でき、また層厚は通常200〜3000オングストロームである。このような下地層は、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、スプレー法等公知の製膜法を用いて基板上に製造することができる。
【0012】次に第1の層について説明する。第1の層は、Au、Ag、Cu、Al、Be、Co、Ni、Zn、Ir、Mo、Rh、RuおよびWから選ばれる少なくとも1種の、高導電性金属の層である。前記金属の単体もしくは合金の単膜層であっても、またこれらの多層膜であってもよい。合金の例としては、例えばジュラルミン(Al-Cu)、真ちゅう(Cu-Zn)等が挙げられる。好ましくは金属単体もしくは合金の単膜層である。第1の層の厚さは好ましくは20〜300オングストローム、より好ましくは40〜200オングストロームである。20オングストロームより薄いと第1の層の高導電性の効果が得られない傾向があり、また300オングストロームより厚いと光透過率が著しく劣化する傾向がある。第1の層は、慣用の成膜手段、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、スプレー法等の公知の製膜法を使用して作製することができる。
【0013】第2の層は、Snを添加したIn2O3、すなわちITO膜である。Snの添加量は好ましくは3.0〜15.0原子%である。第2の層の厚さは好ましくは100〜5000オングストローム、より好ましくは200〜2500オングストロームである。100オングストロームより薄いと光透過率および耐候性が劣化する傾向があり、また5000オングストロームより厚いと第1の層の高導電性が得られず、また透過率が劣化する傾向がある。第2の層は、慣用の成膜手段、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、スプレー法等の公知の製膜法を使用して作製することができる。このような成膜法においては、反応ガスとして酸素または亜酸化窒素(N2O)を含有するガスの存在下で成膜を行う。
【0014】本発明の方法によって製造される透明導電膜は、太陽電池、光センサ等の光電変換用途;液晶、エレクトロルミネセンス、エレクトロクロミック、EL等の表示素子用途;建築物、自動車、航空機、炉ののぞき窓等の各種窓の熱線反射用途、可視光の可変遮光用途、防曇防氷用途;帯電防止用途;タッチスイッチ用途;光通信用途等の広い分野で使用することができる。
【0015】【作用】本発明の透明導電膜は、高導電率の金属層と高導電性でかつ保護効果の高いITO層をこの順序で組合せることによって、金属層単独のときと同等の低い抵抗率を維持しながら、金属層単独のときよりも高い光透過率を示し、しかも優れた耐候性を示す。これは、金属層にITO層を積層すると、両者の複素屈折率の差から光の干渉を利用して光透過率を向上でき、またこのITO層が、それ自体が高導電性であるので、金属層に従来の保護膜を組合せた場合より保護効果が高く、抵抗率劣化が軽減されるためである。」(第2頁第2欄第12行〜第3頁第3欄第41行)
(3)対比・判断
(対比)
本願発明と上記引用例に記載された発明(タッチパネル用)とを対比すると、引用例における「下地層が設けられた透明導電膜」は、発明の目的、効果、下地層の材料等からみて、当然、高透過率(高い光透過率)を持つものと解され、さらにこの「下地層」は、「基板と第1の層の間に下地層が設けられ」る(前掲段落【0009】)ものであり、その材質は「従来の透明導電膜に使用されるのと同様の材料、例えばITO(Snを添加したIn2O3)、AZO(Alを添加したZnO)等;通常使用される保護膜の材料、例えばSiO2、Si3N4、ZnS、TiO2等から選ばれる材料を使用でき」(前掲段落【0011】)と記載されているように、本願発明における「第1層」の具体的な実施の態様(本願の【請求項5】には「前記導電性多層透明層の第1層が、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物のうちの1つまたはこれらの混合物からなる層であり、前記導電性多層透明層の第2層が、銀、金、銅のうちの1つまたはこれらの合金からなる層であり、前記導電性多層透明層の第3層が、インジウム酸化物を主成分とする金属酸化物層からなる層である」旨記載されている。)である「シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物のうちの1つまたはこれらの混合物」からなるものと一致し、透明基板と第2層の金属との間に設けられるものであるから、前記した引用例の「下地層」と本願発明の「第1層」とは、同様材質により構成されて、単に表現上の差異を有しているに過ぎないものと認められる。同様に、引用例の「第1の層」「第2の層」も、本願発明の「第2層」「第3層」の前記した実施の態様におけると同様材質により構成されており酸可溶性の材質として差異がなく、したがって、引用例における「第1の層」「第2の層」及び「透明電極膜」は、それぞれ本願発明における「第2層」「第3層」及び「導電性多層透明層」に相当するものと認められる。
なお、本願発明として規定された「アンチリフレクション機能を併用させた」とは、何と何を併用するのか明確ではないものの、当該請求項など明細書全般の記載からみて「高透過率とともにアンチリフレクション機能を持たせた」と解される。
したがって、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものである。
(一致点)
「装置表面に近接する物体により引き起こされる物理量の変化を検出することにより装置表面上での前記近接する物体の位置の情報を電気信号に変換するタッチパネルにおいて、
一定の間隔に設けて配した2枚の透明基板と、前記透明基板の間に導電性多層透明層とを有し、
前記導電性多層透明層を金属酸化物層の第1層と、酸可溶性の金属またはその金属の合金層の第2層と、酸可溶性の金属酸化物層の第3層から構成して高透過率性を持たせたタッチパネル。」
(相違点)
本願発明にあっては、導電性多層透明膜の第1層、第2層、第3層の層厚および屈折率を調整し、アンチリフレクション機能を併用させているのに対して、引用例にあっては、この点が明らかでない点、
(検討)
前記相違点について検討すると、表示装置と一体のタッチパネルにおいて、反射防止や透過性を高めて視認性を改善することは当業者に自明の技術課題であり、例えば、導電性多層透明層の各層の層厚及び屈折率を調整し、アンチリフレクション機能(反射防止効果)を持たせて併用させることにより前記技術課題を改善することは従来より周知の技術的事項(必要であれば、特開昭62-88426号公報、特開昭63-266401号公報、特開平6-316442号公報、特開平7-56004号公報参照)であるから、上記引用例に記載されたものにおいても、前記周知の技術的事項を参酌して本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明により奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
(4)むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-30 
結審通知日 2004-04-01 
審決日 2004-04-13 
出願番号 特願平8-325574
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁水野 恵雄  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 治田 義孝
内田 正和
発明の名称 タッチパネルおよびそれを利用した表示装置  
代理人 池内 寛幸  
代理人 鎌田 耕一  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 佐藤 公博  
代理人 黒田 茂  
代理人 乕丘 圭司  

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