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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1097875
審判番号 不服2002-15578  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-05-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-15 
確定日 2004-06-11 
事件の表示 平成 2年特許願第267346号「MRI用2重形コイル」拒絶査定不服審判事件〔平成 4年 5月19日出願公開、特開平 4-144543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成2年10月4日の出願であって、その請求項1,2に係る発明のうち、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年5月19日付、平成14年8月15日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。

「2.内コイル及びマグネットセンターに対して該内コイルよりも離れて配置されている外コイルを有し、
前記内コイル及び外コイルは、渦状の電流路を有しており、
前記マグネットセンターに対する前記内コイルの内側で主磁場方向に対して垂直な方向に勾配磁場を発生させるとともに前記マグネットセンターに対する前記外コイルの外側で漏洩磁場が存在しないように、前記勾配磁場の勾配が形成される方向における前記マグネットセンターから離れた前記内コイル及び外コイルの各々の端部で各々の内コイル及び外コイルの電流路が複数箇所接続されていて、該各々の内コイル及び外コイルにおいて1つの電流路が形成されていることを特徴とするMRI用2重形コイル。」

2.刊行物

原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-318721号公報(以下、「刊行物」という。)には、核磁気共鳴断層撮影装置の横勾配磁場発生コイルに関して、以下の事項が記載・図示されている。

「均一な勾配磁場を発生する核磁気共鳴断層撮影装置の横勾配磁場発生コイルにおいて、同心円筒状に設置した大小半径の異なる2個のコイルボビンと、小半径の前記コイルボビンに巻き付けた磁場形成部と、大半径の前記コイルボビンに巻き付けたリターンパス部とを具備することを特徴とする核磁気共鳴断層撮影装置の横勾配磁場発生コイル。」(特許請求の範囲)、
「(従来技術)核磁気共鳴(以下NMRという)現象を用いて特定原子核に注目した被検体の断層像を得る核磁気共鳴断層撮影装置(以下NMR-CTという)は従来から知られている。・・・・Z軸方向の静磁場H0の中におくと、・・・・このため静磁場に線形の勾配磁場を重畳させて、位置によって異なる強さの磁場を与え、共鳴周波数を変化させて位置情報を得ている。従って、正確な位置を得るためにはリニヤリティの良い磁場勾配を重畳させることが必要である。勾配磁場を与えるための横勾配(X)磁場発生コイルの一般形状を第2図に示す。・・・(ロ)は電流分布型コイルの図である。」(1頁左下欄18行-2頁左下欄1行)、
「コイル外に漏洩磁場があると、勾配磁場の切り替え時に例えば超電導型磁石のヘリウム槽等高電導率材に渦電流を発生し、この渦電流によって生ずる磁束により勾配磁場が打ち消されて弱くなるという現象を生ずる。・・・
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、リニアリティが良好で、且つ漏洩磁場が少なく、特に超電導型マグネットのヘリウム槽等の高電導材に誘起される渦電流の発生を低減する横勾配磁場発生コイルを実現することにある。」(3頁右上欄18行-左下欄15行)、
「(作用)磁場形成部を内層に巻き、リターンパス部を外層に巻いた2層のコイルにしてコイル内部には均一磁場を与え、コイル外部には漏洩磁場を減少させる。」(3頁右下欄4-8行)、
「第1図は、本発明の一実施例のコイルの構成図である。第1図(イ)は平面上に展開したコイルの1/4の領域をエッチング等の方法で製作するコイルパターンの図で、(ロ)は(イ)図のコイルパターンで作ったコイルの1/4領域の図である。図において、1はエッチング又は銅線を絶縁物平面上に貼り付け等して作った複数の巻線からなるパターン(A)2とパターン(B)3をそれぞれ開放端で接続して渦巻状にしたコイルパターンである。各コイルパターンは、例えば第3図のコイルの磁場形成路のパターンに準じて形成される。・・・(ロ)図において、4はコイルパターン1のパターン(A)2を巻き付け貼付するための半径がRSのボビン(A)、5はパターン(B)3を巻き付け貼付するための半径がRLのボビン(B)で、6はそれぞれパターン(A)2とパターン(B)3とを巻き付け貼付して、ボビン(B)5の中にボビン(A)4を同心に保持している勾配磁場コイル半部である。完成した勾配磁場コイルを第7図に示す。図は勾配磁場コイル7の正面図で、ボビン(B)5にパターン(B)3を4個取り付けてある。4個のパターン(A)2を取り付けたボビン(A)4はボビン(B)5の内部に同心に保持されている。・・・コイルパターン1においては、第1図(イ)に示すように、パターン(A)2とパターン(B)3とは接続した開放端から見た間口の長さが異なっていて、線間の間隔がパターン(B)の方が広くなっている。これを直径の異なる同心に保持されたボビン(A)4とボビン(B)5に巻くと、線間の間隔を適当に選べば円筒の長手方向に平行する巻線の部分は円筒の中心から見て同一半径上に存在するようにすることができる。長手方向に直角な部分はパターン(A)2とパターン(B)3の開放端からの距離が等しいため同様に同一半径上に存在させることができ、このように配置すれば、勾配磁場コイル7を円筒中心に向かって透視すると、略重なっている。従って、勾配磁場コイル6の内部における磁場はパターン(A)2がパターン(B)3に比べて距離的に近いのでパターン(A)2の影響を大きく受けた磁場を構成している。リターンパス部のパターン(B)3には逆向きの電流が流れていてコイル内部に対してはパターン(A)2の磁場を打ち消すが、距離が遠いので影響は小さく、又、均一に重なっているため影響も均一でリターンパス部のパターン(B)3によって生ずる不均一磁場の発生は極めて少ない。又、外部に対してはパターン(A)2による漏洩磁場をパターン(B)3の逆電流によって生ずる磁場が打ち消す方向に働く。従って半径RLとRSとの比を適当に定めることによって渦電流を発生する場所である超電導コイルのヘリウム槽における勾配磁場を従来の単一ボビンだけの場合に比べて小さくすることができる。」(3頁右下欄12行-4頁左下欄9行)、
「以上説明したように、本発明によれば、第5図におけるZ0が小さい場合でもリニアリティが良いためボビン長の短いものが実現できる。・・・漏洩磁場が低減されているため、静磁場用磁石に用いられている高電導率材(例えば超電導磁石のヘリウム槽等)に誘起される渦電流を大幅に低減でき、渦電流に起因する種々の画質劣化を効果的に防ぐことができる。」(4頁左下欄10-19行)、
第1図、第2図、第3図、第7図。

3.対比・判断

刊行物に記載された核磁気共鳴断層撮影装置の横勾配磁場発生コイルにおいて、「パターン(A)2」及び「パターン(B)3」からなる2層の横勾配磁場発生コイルが、マグネットセンターに対する「パターン(A)2」の内側で静磁場(H0)方向に対して垂直な方向に横勾配磁場を発生させていること、また、同心に保持される「小径のボビン(A)4」、「大径のボビン(B)5」のそれぞれに「パターン(A)2」、「パターン(B)3」が巻き付け貼付されていることから、「パターン(B)3」は、マグネットセンターに対して「パターン(A)2」よりも離れて配置されていることは当業者にとって自明の事項である。

本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された、エッチング又は銅線を絶縁物平面上に貼り付け等して作った複数の巻線からなる「パターン(A)2」、「パターン(B)3」、これらから構成される核磁気共鳴断層撮影装置に用いられる「横勾配磁場発生コイル」及び「静磁場(H0)方向」は、本願発明における、「内コイル」、「マグネットセンターに対して内コイルよりも離れて配置されている外コイル」、「MRI用2重形コイル」及び「主方向磁場」に相当する。

さらに、刊行物に記載された発明において、「パターン(A)2」及び「パターン(B)3」が、それぞれの開放端で接続された複数の巻線により渦巻状のコイルパターンを形成していることは、本願発明における、「内コイル及び外コイルは、渦状の電流路を有して」いることに相当し、また、コイル外部の漏洩磁場が小さくなるように、「パターン(A)2」及び「パターン(B)3」の各々の開放端で各々の「パターン(A)2」及び「パターン(B)3」を構成する複数の巻線が複数箇所で接続されていて、「パターン(A)2」及び「パターン(B)3」の接続された複数の巻線により、渦巻状のコイルパターンが形成されているということは、本願発明における、「マグネットセンターに対する内コイルの内側で主磁場方向に対して垂直な方向に勾配磁場を発生させるとともにマグネットセンターに対する外コイルの外側で漏洩磁場が小さくなるように、勾配磁場の勾配が形成される方向におけるマグネットセンターから離れた内コイル及び外コイルの各々の端部で各々の内コイル及び外コイルの電流路が複数箇所接続されていて、該各々の内コイル及び外コイルにおいて1つの電流路が形成されている」ことに相当する。

してみると、本願発明と刊行物に記載された発明は、
「内コイル及びマグネットセンターに対して該内コイルよりも離れて配置されている外コイルを有し、
前記内コイル及び外コイルは、渦状の電流路を有しており、
前記マグネットセンターに対する前記内コイルの内側で主磁場方向に対して垂直な方向に勾配磁場を発生させるとともに前記マグネットセンターに対する前記外コイルの外側で漏洩磁場が小さくなるように、前記勾配磁場の勾配が形成される方向における前記マグネットセンターから離れた前記内コイル及び外コイルの各々の端部で各々の内コイル及び外コイルの電流路が複数箇所接続されていて、該各々の内コイル及び外コイルにおいて1つの電流路が形成されているMRI用2重形コイル。」である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
本願発明においては、マグネットセンターに対する外コイルの外側で漏洩磁場が小さくなるようにする程度として、漏洩磁場が存在しないような程度としているのに対して、
刊行物に記載された発明においては、マグネットセンターに対する外コイルの外側で漏洩磁場が小さくなるようにするとしか記載されていない点。

上記(相違点)について検討する。
刊行物に記載された発明において、マグネットセンターに対する外コイルの外側での漏洩磁場は、小さければ小さい程好ましいものあり、刊行物に記載された発明において、マグネットセンターに対する外コイルの外側で漏洩磁場が小さくなるようにする程度として、漏洩磁場が存在しない程度とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

よって、本願発明は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項2に係る発明は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-22 
結審通知日 2004-03-30 
審決日 2004-04-16 
出願番号 特願平2-267346
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁伊藤 幸仙  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 河原 正
福島 浩司
発明の名称 MRI用2重形コイル  

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