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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01J
管理番号 1097945
異議申立番号 異議2003-70562  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-25 
確定日 2004-03-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3320959号「ランプおよびランプの製造方法ならびに照明装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3320959号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3320959号「ランプおよびランプの製造方法ならびに照明装置」の請求項1ないし6に係る発明は、平成7年10月30日に特許出願され、平成14年6月21日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、平成15年2月25日に小木野秀介により請求項1ないし6に係る特許について特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その所定の期間内である平成15年8月5日に特許異議意見書と共に、訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否について
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1ないし3および6を削除する。
イ.訂正事項b
訂正前の特許請求の範囲の請求項4および5の項番号を繰り上げてそれぞれ請求項1および2とする。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて;
請求項を削除することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
訂正事項bについて;
当該訂正は、上記訂正事項aに基づき請求項の項番号を整理するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
(3)むすび
上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上述のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)
【請求項1】 ガラスバルブの同一円周面上に離隔して内方側に局部的に突出してほぼ等間隔で3か所以上の凸部を形成する工程と;
電極を有するリード線をガラスビードに固定して形成したビードマウントを上記ガラスバルブ内に挿入するとともに、このガラスビード部を局部的に突出した複数個の凸部上に載置する工程と;
上記バルブの開口部側端部を排気ヘッドに接続して、上記の複数個の凸部およびガラスビード間に形成される隙間を介してバルブ内を排気する工程と;
ついで内部にガラスビードが位置するバルブ部分を外方から加熱して、バルブとビードマウントのガラスビードとを溶着して封止する工程と;
を備えたことを特徴とするランプの製造方法。
【請求項2】 バルブ内を排気した後、バルブ内に希ガスを封入する工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載のランプの製造方法。
(2)引用刊行物に記載された発明
当審が平成15年5月26日付けで通知した取消しの理由において引用した刊行物1および2にはそれぞれ次のとおりの発明が記載されている。
イ.刊行物1:特開平3-64853号公報(甲第10号証)
a.「本発明は、ビードシール型ランプの製造方法(真空排気、および不活性ガスの封入)の改良に関するもので、真空排気時間および不活性ガスの封入時間の短縮ならびに真空度レベルの向上および不活性ガスの封入圧の安定させるビードシール型ランプに関する。
従来技術
従来のビードシール型ランプの排気方法を放電ランプを例にして、第1図〜第2図により説明する。
第1図に示すように、ランプ部(2a)とフォーミング部(2b)と排気管部(2c)とから成るガラス管(2)内に、給電用のリード線(3a)に、ガラスから成るの封着用のビード(3b)を一体に溶着して成るビードマウント(3)を挿入し、排気ヘッド(1)にガラス管(2)の排気管部(2c)を挿入セッティングし、ガラス管(2)のランプ部(2a)と排気管部(2c)との間に絞り形成されにフォーミング部(2b)に、ビードマウント(3)の有する重さによりビード(3b)が接触して保持されて、ビードマウント(3)の位置決めがなされている。
第2図に、第1図の要部を拡大して、フォーミング部(2b)と、ビード(3b)の接触の状態を示し、フォーミング部(2b)は、ビード(3b)により栓をされたのに近い状態に成っているが、この間には僅かな隙間ができ通気があるので、この隙間よりランプ部(2a)の内部を真空に排気している。
その後、排気ヘッド(1)に接続した真空排気用電磁弁(7)を閉じ、封入ガス用電磁弁(8)を開いて、真空排気系ラインから封入ガスラインに切り替え排気管部(2c)を介して、前記の隙間より、ランプ部(2a)の内部に不活性ガスを流入させる。
不活性ガスの流入が終了後、フォーミング部(2b)を外部よりバーナー等で加熱しビード(3b)に溶着させて前記の隙間の通気を遮断し、ランプ部(2a)の封止を行なっている。」(公報第1頁右下欄第8行〜同第2頁右上欄第3行)
b.「従来の技術による方法では、下記の(1)、(2)項のような問題点があった。
(1)真空排気工程での到達真空度、ガス封入工程での封入ガス圧が、基準値を満たさないものが生じ、ランプの光学的特性・寿命特性に大きな影響をあたえ、品質の安定しないものが発生する。その理由を従来の技術第1図を参照して説明すると、
その理由としてはビード(3b)は、ビードマウント(3)の有する重さでフォーミング部(2b)に接触しており、部分的にできる僅かな隙間の通気によりランプ部(2a)の内部を真空に排気しているが、ビード(3b)の形状、フォーミング部(2b)の形状にも”ばらつき”が有るので、当該隙間のコンダクタンスは一定にならないために個々に真空排気速度が異なり、所定時間内ではランプ部内部の到達真空度が充分に高くならない場合があり、所定の基準値を満たさない真空度の低いものが発生する。
また、真空排気後に不活性ガスを封入する場合も、コンダクタンスが一定にならないため、個々にガス流入速度が異なり、所定時間内ではランプ部(2a)内部に封入ガスが充分入らない場合があり、所定の基準値を満たさない封入ガス圧の低いものが発生する。
(2)真空排気工程、ガス封入工程ともに長い時間を要し、生産性が低いため製造コストが高くなる。その理由を説明すると、
その理由としては前述記載の項のように、フォーミング部とビ-ドとの間の僅かな隙間よりランプ部の内部を真空に排気しているため、この隙間のコンダクタンスは非常に小さく、真空排気速度が遅く、ランプ部の内部を真空排気する真空排気工程に長い時間を要している。
また、真空排気後に不活性ガスを封入する場合も、コンダクタンスが非常に小さいために、封入ガスの流入速度が遅く、所定の封入ガス圧を入れるためのガス封入工程にも長い時間を要している。
上述の、(1)、(2)項に記載の問題点は、ランプ部(2a)の内部容積が大きいほど顕著になってくる。
そこで本発明は、従来のビードシール型ランプの製造方法において、真空排気時間および不活性ガス封入時間の短縮ならびに真空度の向上と不活性ガスの封入圧を容易になし、かつ安定的なビードシール型ランプの製造方法を提供することを目的としている。」(公報第2頁右上欄第5行〜同右下欄第9行)
c.「ランプ部(2a)の内部を真空に排気する際に、・・・ビード(3b)を、フォーミング部(2a)より離隔させて、この間の隙間を広くして、この間のコンダクタンスを大きくすることによって、真空排気速度および封入ガスの流入速度を速くし、真空排気および不活性ガスの封入を行うようにする。」(公報第2頁右下欄第20行〜同第3頁左上欄第7行)
d.「なお本発明方法においては、例えば蛍光放電ランプ、放電ランプ、白熱ランプ等に応用することは勿論なしうるものである。」(公報第3頁右下欄第8〜10行)
e.「3c・・・電極(第1図〜第5図の従来、本発明の実施例”放電ランプ”の場合)
3d…フィラメント(第7図〜第8図の本発明の他の実施例”白熱ランプ”の場合)」(公報第4頁右下欄第2〜5行)
前記摘記事項によると、上記刊行物1には、従来の技術として、
「ガラス管(2)のランプ部(2a)と排気管部(2c)との間にフォーミング部(2b)を絞り形成し、電極(3c)を有するリード線(3a)をビード(3b)に溶着してなるビードマウント(3)を上記ガラス管(2)内に挿入するとともに、このビード(3b)を前記フォーミング部(2b)に接触・保持し、上記ガラス管(2)の排気管部(2c)を排気ヘッド(1)に挿入セッティングして、上記フォーミング部(2b)およびビード(3b)間に形成される隙間よりランプ部(2a)内を排気し、ついでフォーミング部(2b)を外部より加熱して、フォーミング部(2b)とビード(3b)を溶着してランプ部(2a)の封止をするビードシール型ランプの製造方法」(以下、「引用発明」という。)の発明が記載されており、さらに、刊行物1には、フォーミング部とビード部との僅かな隙間の通気による排気には、真空排気が充分でない、真空排気に長時間を要する等の課題があること、及び該課題の解決手段として、該フォーミング部と該ビード部とを離間させて、この間の隙間を広くすることが記載されている。
ロ.刊行物2:特開昭56-162471号公報(甲第2号証)
f.「この発明は、電球の製造方法に関する。自動車用灯具や表示装置等に用いられる小型の電球は、バルブ内にビードマウントを挿入し、バルブ内を排気しながらバルブを外側から熱してビードに溶着封止することにより製造される。」(公報第1頁左下欄第13〜17行)
g.「ビードマウントを仮止めする際に突起部を設けたピンチャーで押え付け、該突起部に対応するバルブ部分をビードに固定することを要旨とし、これによりビードマウントを一定の状態で仮固定し、かつ完全なる排気作業を確保するものである。」(公報第1頁右下欄第15〜20行)
h.「第5図はチャック状の3片からなるピンチャー5’を示し、各片の内側湾曲面5’aには突起部5’bがそれぞれ形成されており、このピンチャー5’を用いて実施すると第6図に示すように、ビード3aに溶着するバルブ部分1aは突起部5’bの数に対応して3箇所となる。」(公報第2頁左上欄第15〜20行)
i.「この排気の際に、ビードマウント3のフィラメント3bが位置するバルブ1の先端部は、ビード3aとバルブ1との隙間Sから排気が完全になされ、」(公報第2頁右上欄第5〜8行)
j.「仮固定された部分におけるバルブとビードとの隙間がほぼ一定となり、後の排気工程に便利であり、しかもその確実性を保証することができる。」(公報第2頁左下欄第3〜5行)と記載されている。
4.対比・判断
〈本件発明1について〉
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「ガラス管(2)」、「電極(3c)」、「リード線(3a)」、「ビード(3b)」、「ビードマウント(3)」、「排気管部(2c)」及び「排気ヘッド(1)」は、それぞれ本件発明1における「ガラスバルブ」、「電極」、「リード線」、「ガラスビード」、「ビードマウント」、「開口部側端部」及び「排気ヘッド」に相当するものである。
また、引用発明における「フォーミング部」は絞り形成されてなるものであるから、引用発明においても、本件発明1と同様に、ガラスバルブの同一周面上に内方側に突出した凸部を形成している。
そして、刊行物1には、「載置」という具体的な記載はないものの、刊行物1に記載された「ビードマウント(3)の有する重さによりビード(3b)が接触して保持されて、ビードマウント(3)の位置決めがなされている」の記載から明らかなように、引用発明における「このビート(3b)を突出したフォーミング部(2b)上に接触・保持し」とは、本件発明1における「このガラスビード部を突出した凸部上に載置する」ことに相当するものである。
さらに、引用発明において、「ガラス管(2)の排気管部(2c)を排気ヘッド(1)に挿入セッティングする」ことは、本件発明1における「バルブの開口部側端部に排気ヘッドを接続する」ことに相当する。
よって、両者は次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
ガラスバルブの同一円周面上に内方側に突出して凸部を形成する工程と;
電極を有するリード線をガラスビードに固定して形成したビードマウントを上記ガラスバルブ内に挿入するとともに、このガラスビード部を突出した凸部上に載置する工程と;
上記バルブの開口部側端部を排気ヘッドに接続して、上記凸部およびガラスビード間に形成される隙間を介してバルブ内を排気する工程と;
ついで内部にガラスビードが位置するバルブ部分を外方から加熱して、バルブとビードマウントのガラスビードとを溶着して封止する工程と;
を備えたランプの製造方法。」
【相違点】
前記凸部の形成について、本件発明1では、「離隔して・・・局部的に突出してほぼ等間隔で3か所以上」としているのに対して、引用発明では、単に「絞り形成」とされているだけで、そのような3か所以上に形成する点については言及されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、「このピンチャー5’を用いて実施すると第6図に示すように、ビード3aに溶着するバルブ部分1aは突起部5’bの数に対応して3箇所となる。」と記載されており、第6図から明らかなように、ビード3aはガラスバルブ内面に突出して形成された3箇所のバルブ部分1aで溶着されていることが明らかである。また、刊行物2には、排気の際には、ビード3aとバルブ1とに形成された隙間Sから排気が完全になされることが記載されている。
ここで、刊行物2に記載の「突出して形成された3箇所のバルブ部分1a」は、本件発明1における「ガラスバルブの同一円周面上に離隔して内方側に局部的に突出してほぼ等間隔に形成された3か所の凸部」に相当するものであるが、刊行物2記載の発明では、該「突出して形成3された箇所のバルブ部分1a」は、ビード3aと仮固定されるものであって、引用発明のようにガラスビード部を載置するための凸部ではない。
しかしながら、排気処理を行った後に加熱してバルブとガラスビードとを溶着・封止するランプの製造方法において、引用発明のように、ビードマウントの位置決めのために、バルブの内方側に突出した凸部にガラスビード部を載置することは慣用手段であり(例えば、特開昭51-51179号、特開昭57-196473号公報、特開昭50-61080号公報等参照)、ビードマウントの位置決めとして、引用発明のように凸部に載置するか、刊行物2記載の発明のように、仮固定するかは適宜選択しうる事項にすぎず、いずれの場合も、ビードとガラスバルブに形成された隙間から排気するものである。
そして、刊行物1には、該フォーミング部と該ビード部との僅かな隙間の通気による排気では真空排気に課題があるため、該フォーミング部と該ビード部とを離間させて、この間の隙間を広くする必要があることが記載されており、一方、刊行物2には、「排気の際に、・・・ビード3aとバルブ1aとの隙間Sから排気が完全になされ」という記載がある以上、当業者であれば、ガラスバルブの同一内周面に離隔して局部的に突出してほぼ等間隔で形成した3か所以上の凸部を設けることにより、刊行物1に記載された排気における課題を解決する程度のことは、刊行物2に記載された発明に基づいて容易に成し得る事項にすぎない。

〈本件発明2について〉
上記摘記事項aから、引用発明1がランプ部(2a)の内部を真空に排気した後、ランプ部(2a)の内部に不活性ガスを流入する工程を備えていることは明らかであり、また、ランプに封入する不活性ガスに希ガスを用いることは技術常識である。してみると、本件発明2と引用発明1とは上記相違点以外に相違する点はなく、該相違点については、上記項目〈本件発明1について〉で検討したとおりである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1および2は、上記刊行物1および2に記載された発明、慣用手段及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ランプの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ガラスバルブの同一円周面上に離隔して内方側に局部的に突出してほぼ等間隔で3か所以上の凸部を形成する工程と;
電極を有するリード線をガラスビードに固定して形成したビードマウントを上記ガラスバルブ内に挿入するとともに、このガラスビード部を局部的に突出した複数個の凸部上に載置する工程と;
上記バルブの開口部側端部を排気ヘッドに接続して、上記の複数個の凸部およびガラスビード間に形成される隙間を介してバルブ内を排気する工程と;
ついで内部にガラスビードが位置するバルブ部分を外方から加熱して、バルブとビードマウントのガラスビードとを溶着して封止する工程と;
を備えたことを特徴とするランプの製造方法。
【請求項2】バルブ内を排気した後、バルブ内に希ガスを封入する工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載のランプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は比較的小径のガラスバルブに、ビードマウントが封着されたランプの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶テレビ、パソコンなどに代表される液晶表示装置などのバックライト用の冷陰極形放電ランプあるいは車両やAV機器などの表示に使用される白熱電球は、価格の関係やバルブが小さいことからフレヤステムを用いることなく、電極を支持したリード線をガラスビード中に埋込んで形成したビードマウントをガラスバルブに封着して得るようにしている。そして、このビードマウントとガラスバルブとの封着は、通常バルブ内の排気と封着とがバルブ差し替えの必要がない同一装置で連続して行なわれている。
【0003】
この排気と封着とはたとえばつぎのようにして行われる。まず、一端が閉塞された円筒状のガラスバルブ(片端封着型)や、一端には予め一方のビードマウントを封着してある円筒状のガラスバルブ(両端封着型)の開口している他端側において内方に向け、封着しようとするビードマウントのガラスビード径より小径の突出した環状の小径部を形成する。つぎに、バルブ内の小径部上に封着するビードマウントを供給するとともにバルブの開口部側の端部を排気装置の排気ヘッドに気密に接続する。
【0004】
このときの状態を冷陰極形低圧放電ランプを例にして図5に示す。この図5(a)は冷陰極形低圧放電ランプの排気、封着前の状態を拡大して示す要部の縦断面図、図(b)は図(a)のA-A線に沿って切断した部分を示す横断面図で、図示したようにガラスビード6中にリード線を封着したビードマウント5は、ガラスビード6部をガラスバルブ1の環状の小径部31に当接し、バルブ1内でのビードマウント5の位置決めがなされる。この状態でガラスバルブ1の上部側を保持部材で支持しながらバルブ1内を排気し、必要に応じバルブ1内にアルゴンなどの希ガスを充填する。そして、バルブ1の封着予定部すなわち内部にガラスビード6がある部分を外方からバーナによって加熱溶融せしめ、小径部31のガラスとマウント5のガラスビード6とを溶着して封着部を形成する。ついで、上記保持部材でバルブ1を引上げ封着部の下方で溶断するかあるいは封着部の下方をカッタなどで切断して除去しランプを得るようにしている。
【0005】
このような製造の場合、マウント5のガラスビード6をバルブ1の管軸方向から見たとき、円形状のガラスビード6はその形状が類似するバルブ1の環状の小径部31を形成する傾斜面において周方向に連続してほぼ合致して当接重合し、これらの間には僅かな隙間S1しか生じない。このため、バルブ1内を排気する工程において、ガラスバルブ1における電極8が存在する空間内では、排気ヘッドに連なる通路面積が極端に狭くなることからバルブ1内部の気体の除去が難くなり、このため上記バルブ1内の不純ガスが完全に排気されずに残留し、所望の高真空度を得ることが困難であった。このような状態で排気されたランプは、早期に黒化を生じ光束維持特性が低下したり短寿命になるなど、ランプの諸特性に影響を及ぼす不具合がある。
【0006】
なお、また、バルブ1内部の真空度を高めるには長時間に亘る排気が必要で、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
最近、液晶表示装置や車両の計器など機器の軽量化にともない、これら機器に組み込まれるランプも細径で小型化され低消費電力で、同時に高発光効率で長寿命など高品質のものが要求されている。ことに、これら機器は民生用のためにランプの交換が行われないのが原則で、1万時間以上の寿命が必要とされている。本発明は上記事情に鑑みなされたもので、排気時にバルブとガラスビードとの間に確実に排気通路が確保でき、バルブ内気体の置換が容易に行える高品質で信頼性の高いランプの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のランプの製造方法は、ガラスバルブの同一円周面上にほぼ等間隔で離隔して内方側に局部的に突出した凸部を複数個形成する工程と、電極を有するリード線をガラスビードに固定して形成したビードマウントを上記ガラスバルブ内に挿入するとともに、このガラスビード部を局部的に突出した複数個の凸部上に載置する工程と、上記バルブの開口部側端部を排気ヘッドに接続して、上記の複数個の凸部およびガラスビード間に形成される隙間を介してバルブ内を排気する工程と、ついで内部にガラスビードが位置するバルブ部分を外方から加熱して、バルブとビードマウントのガラスビードとを溶着して封止する工程とを備えたことを特徴としている。
【0009】
凸部をほぼ等間隔で複数個形成することにより、ビードマウントを傾きが少なくバルブの中心軸上に高い精度で安定して載置できるとともにバルブの突出した凸部間とビードマウントのガラスビードとの間には大きい隙間が形成でき、その通路面積を大きくしたことによってバルブ空間内の排気が確実、かつ、迅速に効率よくできるようになる。
【0010】
本発明のランプの製造方法は、バルブ内を排気した後、バルブ内に希ガスを封入する工程を備えていることを特徴としている。
【0011】
ガス入りランプに適用して上記と同様な作用を奏する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は冷陰極形の低圧放電ランプLの一部省略断面正面図である。
【0013】
この冷陰極形放電ランプLは、たとえば消費電力が約2W、外径が約4.8mm、長さが約220mmのソーダライムガラスあるいは鉛ガラスなどの軟質ガラスからなる直管形の管状バルブ1の両端にビードマウント5,5を封止した封着部2a,2bが形成してある。上記ビードマウント5,5はバルブ1と同種あるいは近似した材料からなるガラスビード6中に外径が約0.4mmの銅メッキした鉄線や鉄合金線などからなるリード線7を気密に封着し、その先端にニッケル(Ni)あるいはその合金などで形成した円筒状や板状などの冷陰極形の放電電極8を接続したものからなる。
【0014】
また、3,3,…はバルブ1の同一円周面上において互いに約90度の間隔を隔てて内方側に局部的に突出して形成された4個の凸部で、この凸部3,3,…上に上記ビードマウント5のガラスビード6が載置された安定した状態で係止して、凸部3,3,…と上記ガラスビード6とは融着している。
【0015】
また、このバルブ1の内面には所定の発光領域を有する蛍光体膜4が形成されているとともにバルブ1内には放電媒体としてキセノン(Xe)やアルゴン(Ar)などの希ガスが数十〜200トール、たとえば100トール封入されている。
【0016】
そして、図2(a)は冷陰極形低圧放電ランプの排気、封着前の状態を拡大して示す要部の縦断面図、図(b)は図(a)のB-B線に沿って切断した部分を示す横断面図である。因みに、図1のランプLにおいてバルブ1の一方の端部は図5に示す従来の形態で封着部2bが形成されている。
【0017】
そして、他方は下述する方法によって封着部2aが形成される。この封着部2aの形成は、まず、ガラスバルブ1の同一円周面上において互いに約90度の間隔を隔てた4個所をバーナ炎などによって加熱して内方側に局部的に突出した4個の凸部3,3,…を形成する。
【0018】
つぎに、バルブ1の他方の開口部から放電電極8側を下にしてビードマウント5を挿入するとともに、ガラスビード6部を局部的に突出した4個の凸部3,3,…上に載置する。すなわち、ビードマウント5は凸部3,3,…よりバルブ1の開口部側に位置している。上記ガラスビード6はビード形成の際の加熱加工によってその表面は球面に近い曲面をなしているが、4個の凸部3,3,…に当接して係止されるのでほぼバルブ1の中心軸に合わせ安定した保持がなされる。
【0019】
つぎに、このバルブ1は開口部側端部が排気ヘッドに接続され、バルブ1内空間の排気が行われる。このとき、従来品のように凸部が環状に連続してなく、上記4個の凸部3,3,…およびガラスビード6間には隙間S2が形成されているので、この隙間S2を介してバルブ1内の空間を確実に排気することができる。この排気がすすみバルブ1内が所定の真空度に達したら、アルゴンなどの所定の放電ガスを所定圧封入する。(真空ランプの場合はガスの封入は行わない。)ついで、ガスバーナ(図示しない。)などを用い、封着予定部であるガラスビード6が位置する部分に対向したバルブ部分を外方から加熱して、バルブ1とビードマウント5のガラスビード6とを溶着させて封着部2aを形成する。
【0020】
上記の複数個の凸部3,3,…上にビードマウント5のガラスビード6を載せた構成とすることによって、凸部3,3,…間とガラスビード6との間には大きい隙間S2が形成でき、その通路面積を大きくしたことによってバルブ1空間内の不純ガスの排気が確実、かつ、迅速に効率よくできるようになる。
【0021】
なお、上記バルブ1側に形成した凸部3,3,…は封着によってガラスビード6のガラスと融合するが、凸部3,3,…全体がなくなることは少なく、何等かの痕跡が残り、凸部3,3,…形成の確認ができる。
【0022】
また、上記実施例では両端封止型の放電ランプL1について説明したが、本発明は片端封着型のランプにも適用できるもので、片端封着型の表示用の小型電球L2に適用した例について図3を参照して述べる。なお、図中、図1および図2と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0023】
図3においてはビードマウント5のガラスビード6は2本のリード線7,7を気密に封着し、その先端間に通電により発光するタングステン製のコイル状フィラメント9が接続してある。
【0024】
そして、この場合は円筒形状のガラスバルブ1は一端部が閉塞され中間にほぼ等間隔で形成した3個の凸部3,…を有していて、バルブ1内にビードマウント5が配設されている。
【0025】
このマウント5の配設はバルブ1の開口部を上側にして支持し、開口部から上記マウント5を挿入して、フィラメント9をバルブ1の頂部内面に当接させる。つぎに、このバルブ1の封着予定部近傍の円周上にたとえば約120度の間隔を隔てた3個所をバーナによって加熱し、凸部3,…を形成する。
【0026】
そして、上記ガラスバルブ1の開口部側を下方にして排気・封止装置に挿入するとビードマウント5のガラスビード6部が局部的に突出した3個の凸部3,…上に載置される。このときビードマウント5は上記実施例と同様に3個の凸部3,…に当接して係止されるのでほぼバルブ1の中心軸に合わせ安定した保持がなされる。
【0027】
つぎに、バルブ1内空間の排気が行われるが、このとき、従来品のように凸部が環状(小径部)に連続してなく、上記3個の凸部3,…およびガラスビード6間には隙間S2が形成されているので、この隙間S2を介してバルブ1内の空間を確実に排気することができる。
【0028】
この排気がすすみバルブ1内が所定の真空度に達したら、アルゴンなどの所定の不活性ガスを所定圧封入し、(真空電球の場合はガスの封入は行わない。)ついで、封着予定部であるガラスビード6が位置する部分に対向したバルブ部分を加熱して、バルブ1とビードマウント5のガラスビード6とを封着して小型電球L2を完成する。
【0029】
この小型電球L2の場合も、バルブ1とビードマウント5との間には大きい隙間S2が形成でき、その通路面積を大きくしたことによってバルブ1空間内の不純ガスの排気が確実、かつ、迅速に効率よくできるようになる。
【0030】
そして、上記実施例構成のたとえば低圧放電ランプL1は、照明装置に組込まれ使用される。図4は照明装置Dの一例を示し、この図4においてD1は基体、D2はこの基体D1に設けられた反射鏡で放電ランプL1が図示されていないソケット装置などのランプ取着装置に装着されている。また、基体D1の背面には点灯装置D3が、反射鏡D2の開口部には光拡散板D4が取付けられている。そして、この照明装置Dは、パソコンやテレビなどの液晶表示装置のバックライトとして、あるいはディスプレイの表示板のバックライトや通常の照明用の器具として使用される。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。たとえば、低圧放電ランプは冷陰極形の電極を用いた希ガス封入の蛍光ランプに限らず、コイル状のフィラメントからなる熱陰極形の電極を用いた放電ランプあるいは水銀封入の蛍光ランプや紫外線放射ランプなど他の種類の低圧放電ランプにも適用でき、また、ランプの形状は直管形に限らずU字形、W字形、L字形などの屈曲したランプであってもよい。
【0032】
また、ガラスバルブに形成されるビードマウント係止用の内方に突出した凸部は3または4個に限らず、3個以上の複数個あればビードマウントを安定して保持できる。また、凸部の形成は局部的な加熱によるだけでなく押圧棒やモールドを用いて形成してもよく、このような治具を用いた場合は均一な形状の凸部が形成できる。
【0033】
さらに、本発明の照明装置は実施例記載のものに限らず、必ずしも基体、反射鏡および光拡散板の三者が揃っていなくてもよく、また、点灯装置が一体化されていなくてもよい。さらにまた、照明装置は液晶表示装置、液晶テレビや装飾装置などのバックライト用のほか、ファクシミリなどの読取り装置、複写機の露光用などのOA機器用あるいは通常の照明用の器具や灯具などに装着して、照明装置としてひろく使用できることはいうまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明のランプの製造方法によれば、簡単に局部的な凸部を形成することによりバルブ壁からビードマウントを強制的に離して大きい隙間が形成でき、その通路面積を大きくしてバルブ空間内の排気を確実、かつ、迅速に効率よくできるようにしたので、排気に要する時間の短縮がはかれて装置のインデックスアップなど生産性の向上ができる。また、複数個の凸部をほぼ等間隔で形成したことによりビードマウントを傾くことなく安定保持し、電極をバルブの中心に合わせ配設することができる。
【0035】
また、本発明の製造方法によれば、希ガス封入ランプに適用して上記と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係わる冷陰極形低圧放電ランプの一部切欠断面正面図である。
【図2】
図(a)は図1のランプの排気、封着前の状態を拡大して示す要部の縦断面図、図(b)は図(a)のB-B線に沿って切断した部分の横断面図である。
【図3】
本発明に係わる小型電球の排気、封着前の状態を拡大して示す要部の縦断面図である。
【図4】
本発明に係わる照明装置を分解して示す斜視図である。
【図5】
図(a)は従来の冷陰極形低圧放電ランプの排気、封着前の状態を拡大して示す要部の縦断面図、図(b)は図(a)のA-A線に沿って切断した部分を示す横断面図である。
【符号の説明】
L1:低圧放電ランプ
L2:小型電球
1:ガラスバルブ
2:封着部
3:凸部冷陰極(電極)
5:ビードマウント
6:ガラスビード
7:リード線
8:電極(放電電極)
9:電極(フィラメント)
D:照明装置
D1:基体
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-05 
出願番号 特願平7-281440
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 向後 晋一  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 三輪 学
服部 和男
登録日 2002-06-21 
登録番号 特許第3320959号(P3320959)
権利者 ハリソン東芝ライティング株式会社
発明の名称 ランプの製造方法  
代理人 大胡 典夫  
代理人 竹花 喜久男  
代理人 大胡 典夫  
代理人 竹花 喜久男  

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