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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F25B |
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管理番号 | 1098010 |
異議申立番号 | 異議2003-70187 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-01-24 |
確定日 | 2004-03-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3305653号「吸収式冷凍機のプレート型蒸発器及び吸収器」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3305653号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3305653号の請求項1〜6に係る発明は、平成10年6月8日に特許出願され、平成14年5月10日にその特許権の設定登録がなされ、その後、大坪秀樹(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年12月26日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1訂正の内容 2-1-1 特許請求の範囲の記載について 訂正事項a 特許明細書の【請求項1】を次のとおりに訂正する。 「【請求項1】板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を被冷却流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を冷煤液の流下面として、冷媒液供給部からの供給冷媒液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下冷媒液を前記板間隙間における流動被冷却流体と熱交換させながら蒸発させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器であって、前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部を他方の前記流下板の平面部分に接触させて、前記板間隙間における被冷却流体の流路を細分化し、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型蒸発器。」 訂正事項b 同【請求項2】を削除する。 訂正事項c 同【請求項3】を次のとおりに訂正する。 「【請求項2】前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある請求項1に記載した吸収式冷凍機のプレート型蒸発器。」 訂正事項d 同【請求項4】を次のとおりに訂正する。 「【請求項3】板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を冷却用流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を吸収液の流下面として、吸収液供給部からの供給吸収液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下吸収液を前記板間隙間における流動冷却用流体と熱交換させながら周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用させる吸収式冷凍機のプレート型吸収器であって、前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部を他方の前記流下板の平面部分に接触させて、前記板間隙間における冷却用流体の流路を細分化し、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型吸収器。」 訂正事項e 同【請求項5】を削除する。 訂正事項f 同【請求項6】を次のとおりに訂正する。 「【請求項4】前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある請求項3に記載した吸収式冷凍機のプレート型吸収器。」 2-1-2 発明の詳細な説明について 訂正事項g 特許明細書の段落【0005】の第8行(同公報第2頁右欄第31行〜32行)における「窪み部」を「半球状の窪み部」に訂正する。 訂正事項h 同段落【00091の第2行〜第3行(同公報第3頁左欄第18行〜第19行)における「〔2〕請求項2に係る発明では、上記した請求項1に係る発明の実施において、」を「また、請求項1に係る発明では、」に訂正する。 訂正事項i 同段落【0012】の第2行〜第3行(同公報第3頁左欄第34行〜第35行)における「〔3〕請求項3に係る発明では、上記した請求項1又は2に係る発明の実施において、」を「〔2〕請求項2に係る発明では、上記した請求項1に係る発明の実施において、」に訂正する。 訂正事項j 同段落【0014】の欄の第2行(同公報第3頁左欄第50行)における「請求項1〜3に係る発明」を「請求項1,2に係る発明」に訂正する 訂正事項k 同段落【0015】の第2行(同公報第3頁右欄第11行)における「〔4〕請求項4に係る発明では、」を「〔3〕請求項3に係る発明では、」に訂正する。 訂正事項l 同段落【0015】の第8行(同公報第3頁右欄第20行)における「窪み部」を「半球状の窪み部」に訂正する。 訂正事項m 同段落【0019】の第2行〜第3行(同公報第4頁左欄第6行〜第7行)における「〔5〕請求項5に係る発明では、上記した請求項4に係る発明の実施において、」を「また、請求項3に係る発明では、」に訂正する。 訂正事項n 同段落【0022】の第2行〜第3行(同公報第4頁左欄第22行〜第23行)における「(6)請求項6に係る発明では、上記した請求項4又は5に係る発明の実施において、」を「〔4〕請求項4に係る発明では、上記した請求項3に係る発明の実施において、」 に訂正する。 訂正事項o 同段落【0024】の第2行(同公報第4頁左欄第38行)における「請求項4〜6に係る発明」を「請求項3,4に係る発明」に訂正する 訂正事項p 同段落【0047】の第1行〜第4行(同公報第6頁左欄第36行〜右欄第2行)における「【0047】各窪み部・・・・・形成してもよい。」を削除する。 訂正事項q 同段落【0048】の第1行〜第5行(同公報第6頁右欄第3行〜第7行)における「【0048】窪み部33・・・・・・採用できる。」を次のとおりに訂正する。 「【0047】窪み部33の板間隙間側凸部どうしの対向接触部の配列、または、窪み部33の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部の配列は、必ずしも流下板26の板面視で千鳥状の配列に限られるものでなく、その他、種々の配列形態を採用できる。」 訂正事項r 同段落【0049】の第1行〜第5行(同公報第6頁右欄第8行〜第13行)における「【00491前述の実施形態・・・・・採用してもよい。」を次のとおりに訂正する。 「【0048】前述の実施形態では、胴8の内部の蒸発器領域において複数の冷媒液流下パネル5Aを並設し、この蒸発城領域に隣合う吸収器領域において複数の吸収液流下パネル7Aを並設する構造を示したが、これに代え、冷煤液流下パネル5Aと吸収液流下パネル7Aを交互に配置して並設する構造を採用してもよい。」 訂正事項s 同段落【0050】の第1行〜第4行(同公報第6頁右欄第14行〜第17行)における「【0050】冷煤液Rw・・・・・使用できる。」を次のとおりに訂正する。 「【0049】冷煤液Rwは水に限定されるものではなく、その他、種々の液体を冷媒液Rwとして使用でき、吸収液Lも臭化リチウム水溶液に限定されるものではなく、その他、種々の液体を吸収液Lとして使用できる。」 訂正事項t 同段落【0051】の第1行〜第3行(同公報第6頁右欄第18行〜第20行)における「【0051】また、・・・・・限定されるものではない。」を次のとおりに訂正する。 「【0050】また、被冷却流体Cも水やブラインに限定されるものではなく、冷却用流体Wも水に限定されるものではない。」 訂正事項u 同段落【0052】の第1行〜第3行(同公報第6頁右欄第21行〜第23行)における「【0052】前述の実施形態・・・・・適用できる。」を次のとおりに訂正する。 「【0051】前述の実施形態では単効用型の吸収式冷凍機を示したが、本発明は二重効用型を初めとする多重効用型の吸収式冷凍機にも適用できる。」 2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、訂正前の請求項1の発明に、訂正前の請求項2に記載の発明特定事項を付加するとともに、窪み部の構成につき、特許明細書段落【0040】の記載に基づいて、「半球状の窪み部」とするものである。 訂正事項bは、請求項全体を削除するものである。 訂正事項cは、訂正事項bによる請求項の削除に伴って、請求項の番号を繰り上げるものである。 訂正事項dは、訂正前の請求項4の発明に、訂正前の請求項5に記載の発明特定事項を付加するとともに、窪み部の構成につき、特許明細書段落【0040】の記載に基づいて、「半球状の窪み部」とするものであり、さらに、訂正事項bによる請求項の削除に伴って、請求項の番号を繰り上げるものである。 訂正事項eは、請求項全体を削除するものである。 訂正事項fは、訂正事項b、eによる請求項の削除に伴って、請求項の番号を繰り上げるものである。 訂正事項g〜uは、特許請求の範囲についての訂正である訂正事項a〜fの訂正に伴って、特許請求の範囲との整合を図るために、発明の詳細な説明の記載を訂正するものである。 したがって、訂正事項a〜fは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項g〜uは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項a、c、d、f〜o、q〜uは、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。2-3 むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立に対する判断 3-1 本件発明 特許第3305653号の請求項1〜4に係る発明は、訂正明細書の請求項1〜4に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本件発明1〜4」という。) 「【請求項1】板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を被冷却流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を冷煤液の流下面として、冷媒液供給部からの供給冷媒液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下冷媒液を前記板間隙間における流動被冷却流体と熱交換させながら蒸発させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器であって、前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部を他方の前記流下板の平面部分に接触させて、前記板間隙間における被冷却流体の流路を細分化し、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型蒸発器。 【請求項2】前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある請求項1に記載した吸収式冷凍機のプレート型蒸発器。 【請求項3】板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を冷却用流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を吸収液の流下面として、吸収液供給部からの供給吸収液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下吸収液を前記板間隙間における流動冷却用流体と熱交換させながら周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用させる吸収式冷凍機のプレート型吸収器であって、前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部を他方の前記流下板の平面部分に接触させて、前記板間隙間における冷却用流体の流路を細分化し、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型吸収器。 【請求項4】前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある請求項3に記載した吸収式冷凍機のプレート型吸収器。」 3-2 引用例に記載された発明 当審が通知した取消理由に引用された特開平9-138082号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】凹凸を有する2枚のプレートを前記凹凸の接触により内部に空間を形成するように重ね、その周縁部は重ねた時に全周にわたって接触し、その接触部の形状を変えることのない手段によって密閉し、上記プレートの両端部に形成された開口部と上記空間の間に流体流路を有する熱交換要素が構成され、この熱交換要素を上記開口部が互いに連通するように重ねて結合し、その熱交換要素の内外に流体を流して互いに熱交換させるようにしたことを特徴とするプレート式熱交換器。【請求項2】上記熱交換要素の上記凹凸の接触部を固着したことを特徴とする請求項1に記載のプレート式熱交換器。【請求項3】隣接する上記熱交換要素の上記凹凸を接触させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器。【請求項4】隣接する上記熱交換要素の凹凸の接触部を固着したことを特徴とする請求項3に記載のプレート式熱交換器。【請求項11】上記凹凸は断面が円形等のスポット的な凹凸であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のプレート式熱交換器。【請求項17】上記接触部及び/又は接触面を溶接又はろう接で固着したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のプレート式熱交換器の製造方法。」(特許請求の範囲) ・「本発明は、プレートを積層させてプレート間に交互に2流体を流して熱交換させるプレート式熱交換器に関し、特に、冷凍機の蒸発器、凝縮器、吸収冷凍機の温水器、低温再生器のような流体が相変化を伴う場合に好適なプレート式熱交換器およびその製造方法に関する。」(段落【0001】) ・「 図6は、従来のプレート式熱交換器を示すもので、両端部に開口部7を有する2枚のプレート4a,4bを内部に空間R1を形成するように重ね、周縁部を密閉して熱交換要素2を形成し、この熱交換要素2を上記開口部7が互いに連通するように重ねて結合して熱交換構造体を構成し、これをシェルの内部に収容して熱交換要素2の内外に流体を流して、互いに熱交換させるようにしたものである。熱交換要素2の内部の空間R1内には流れを乱して熱交換を促進させるために、波状、フィン状等のプレート20を取り付けている。」(段落【0002】) ・「本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、部品点数が少なくて製造や組立てのコストが軽減でき、しかも高い熱交換機能を有するようなプレート式熱交換器とその製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0006】) ・「・・・。熱交換要素2は、2つのプレート4を重ね合わせ、波状パターンの稜線の接触部5と周縁部の接触面8,9の間を溶接又はろう接することにより固着して作成されている。」(段落【0015】) ・「図2は、この発明の第2実施例を示すもので、上述した第1の実施例では円錐台状の隆起部6が波状凹凸部より高いものであったが、・・・(中略)・・・。この場合、隣接する熱交換要素2の接触部10と隆起部6の頂部6aどうしを溶接又はろう接することにより固着して組み立てられている。これにより、構造強度がさらに強くなるとともに、熱交換要素2どうしの間にもシェル内部の空間に連通する屈曲した流路が形成されており、熱交換能力が向上している。」(段落【0017】) ・「このようにして形成されたプレート式熱交換器においては、それぞれの供給・排出配管12,14に第1及び第2の流体を供給し、熱交換を行わせる。熱交換によって相変化を伴う場合には、その流体をより広いシェル1の内部空間R2に供給するようにすると流れが円滑になる。第1の流体は、図1に矢印Aで示すように、熱交換要素2中の流路を流れ、第2の流体は、矢印Bで示すように、熱交換要素2の間あるいは熱交換要素2とシェル1の間に形成された流路を流れる。流路を仕切るプレート4には上述のように波状パターンが形成され、しかも開口部7どうしを結ぶ流れの主方向に対して所定角度α傾斜しているので、この流路は上下左右に屈曲する複雑なものとなっており、従って、プレート4表面近傍の流れが乱流となって流れとプレート4との間の熱交換が効率的に行なわれ る。この実施例では、プレート表面を粗面となし、相変化する流体のプレート4表面における濡れ性を高めているので、熱交換効率が一層高められている。(段落【0020】、【0021】) ・「また、この実施例では、凹凸を一方向に延びる波状パターンとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば断面が円形のスポット的な凹凸を分散配置しても良く、あるいは、波状パターンとスポット的な凹凸を組み合わせたものとしてもよい。」(段落【0024】) 以上の記載によると、引用例には、プレート内面どうしを対向させた2枚のプレートどうしの間のプレート間隙間を第1の流体の流路とし、かつ、これらプレート夫々の外側表面を、第2の流体の流路とし、配管から供給される第2の流体をプレート夫々の外側表面に流すことで、その第2の流体を前記プレート間隙間における第1の流体と熱交換させながら相変化させる吸収式冷凍機のプレート式熱交換器であって、前記プレートに、外側表面では凹部となって前記プレート間隙間の側で凸部となるスポット的な凹凸を分散配置し、一方のプレートにおける凹凸部のプレート隙間側凸部を他方のプレート間隙間側凸部とを対向させ、接触させた凸部どうしをろう接して、前記プレート間隙間における第1の流体の流路を乱すようにした吸収冷凍機の熱交換器が記載されている。 本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-280692号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ・「本発明は、吸収式冷凍機に用いるプレート型蒸発・吸収器に関する。」(段落【0001】) ・「・・・。本発明に従えば、冷媒液または吸収液の分散トレーの好ましい形状が示されている。この形状は、本発明者らが実験の結果求めたもので、この範囲で冷媒液または吸収液が水平方向に均等の膜厚で波板外面を流下する。」(段落【0010】) ・「一方、冷媒液は、被冷却液入口ヘッダ24の上部に設けられた樋状の冷媒液分散トレー28に供給され、トレー28に設けられたスリット29から、波板の外側に沿って均一の厚さの膜状に流下しながら蒸発し、その蒸発潜熱によって、2枚の波板22a,22b間を下降する被冷却液を冷却する。図4は本発明の単独のプレート型吸収器31の正面図、図5は一部拡大断面図である。2枚の波板32a,32bは、凹部同志、凸部同志が対向するように設けられ、両側部33a,33bが閉じられている。また上部は冷却水出口ヘッダ34を形成しており、下部も同様の冷却水入口ヘッダ35を形成している。冷却水は、冷却水供給管36から冷却水入口ヘッダ35に入り、2枚の波板32a,32bの間を下降し、冷却水出口ヘッダ34から冷却水排出管37へ導かれ、さらに凝縮器4を冷却する。一方、吸収液は、冷却水出口ヘッダ34の上部に設けられた樋状の吸収液分散トレー38に供給され、トレー38に設けられたスリット39から、波板の外側に沿って均一の厚さの膜状に流下する。」(段落【0013】〜【0015】) 本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-273831号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ・「本発明は、希吸収液から冷媒蒸気を分離して濃吸収液を得る再生器と、前記冷媒蒸気を冷却し、冷媒液を得る凝縮器と、冷媒液を減圧下で蒸発させ、被冷却液を冷却する蒸発器と、蒸発器で発生した冷媒蒸気を濃吸収液で吸収する吸収器とを含み、吸収液を再生器と吸収器との間で熱交換器を介して循環する吸収式冷凍機において、水平に波状の凹凸を有し、両側部を閉じられた垂直な2枚の波板で構成され、上部に冷媒液分散トレーが設けられ、冷媒液分散トレーから冷媒液が、前記2枚の波板の外面に沿って流下し、2枚の波板で挟まれた内部に、被冷却液が一方側上部から供給され、他方側下部から排出されることを特徴とする吸収式冷凍機のためのプレート型蒸発器である。」(段落【0005】) ・「一方、冷媒液は、被冷却液入口ヘッダ24の上部に設けられた樋状の冷媒液分散トレー28に供給され、トレー28に設けられたスリット29から、波板の外側に沿って均一の厚さの膜状に流下しながら蒸発し、その蒸発潜熱によって、2枚の波板22a,22b間を下降する被冷却液を冷却する。」(段落【0013】) 本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-167581号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ・「この発明は、エバポレータ、コンデンサ、ヒータコア、ラジエータ等の積層型熱交換器に使用されるチューブエレメントに関するものである。」(段落【0001】) ・「上記ビード20は、図4において示めすように、成形プレートの内面より内側に突出しており、互いに接合される成形プレートのビードと接合し、熱交換媒体通路7を流れる熱交換媒体の熱交換効率の向上を図っている。」(段落【0019】) そして、図4,図5の記載によれば、ビードは、交互に互い違いに設けられているものが記載されている。 本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-145586号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ・「本発明は、1枚のプレートを折り曲げて、或いは、2枚のプレートを重ね合わせてなる熱交換器用偏平チューブに関する。」(段落【0001】)・「前記ビード16は、偏平チューブ2の幅方向に複数列設けられており、これらのビード16により、チューブ2内部に通流される熱交換媒体に乱流を起させて熱交換能力を高め、チューブ偏平面15の強度を高め耐圧性を向上させる構造にもたらされる。」(段落【0029】) 3-2 対比・判断 <本件発明1について> 本件発明1(前者)と引用例記載の発明(後者)とを対比すると、後者の「プレート」は前者の「板」及び「流下板」に、以下、「配管」は「流体供給部」に、「相変化」は「蒸発」に、「プレート式熱交換器」は「プレート型蒸発器」に、「スポット的な凹凸」は「窪み部」に、「乱す」は「細分化」に、「ろう接」は「ロウ付け連結」に、それぞれ相当している。 そして、後者のものにおいては、技術常識からみて、スポット的な凹凸は、外側表面で凹部となり、プレート間隙間の側で凸部となるとともに、プレート隙間側凸部が対向接触させているものと認められる。 したがって、両者は、板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を別流体の流下面として、別流体供給部からの供給別流体を流下板夫々の外側表面に沿わせ流下させることで、その流下別流体を前記板間隙間における流体と熱交換させながら蒸発させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器であって、前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間間の側で凸部となる窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、前記板間隙間における流体の流路を細分化し、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、ロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型蒸発器の点で一致し、次の点で相違している。 イ.前者が、板間隙間を流れる流体を被冷却流体とし、流下板の外側表面を流れる流体を冷媒液と特定しているのに対し、後者では、これらについての特定がない点。 ロ.前者では、流下板の外側表面を流下させる別流体(冷媒液)について、「膜状に流下させる」との構成を付しているのに対し、後者では、該構成についての記載が無い点。 ハ.前者が、窪み部を「半球状の」窪み部としているのに対し、後者では、窪み部について、「断面が円形の」としている点。 そこで、上記相違点について検討する。 まず、相違点イ.についてみると、プレート式熱交換器の蒸発器において、板間隙間を被冷却流体が流れるものとし、熱交換する他方の流体を冷媒液とした点は、本件出願前、周知の技術である(周知例1、周知例2参照。)。 したがって、後者において、板間隙間を流れる流体を被冷却流体とし、流下板の外側表面を流れる流体を冷媒液とした点は、当業者が容易に想到しえたことである。 次に、相違点ロ.について検討する。 プレート型蒸発器において、冷媒液を流下板(「波板」として記載されている。)の外側表面に膜状に流下させるようにした点は、本件出願前、周知の技術である(周知例1、周知例2参照。) したがって、後者において、冷媒液を流下板の外側表面に沿わせ膜状に流下させるようにした点は、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたことである。 さらに、相違点ハ.について検討する。 プレート型熱交換器において熱交換媒体の流れに乱れを与え、熱交換性能を向上させるために設ける窪み部(「ビード」として記載されている。)を半球状とした点は、本件出願前、周知の技術である(周知例3、周知例4参照。)。 そして、引用例に記載の窪み部の断面が円形であることを併せ考慮すると、引用例記載の窪み部を半球状の窪み部とした点は、当業者が、周知技術に基づいて、適宜採用しえたことである。 したがって、本件発明1は、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が、容易に発明をすることができたものである。 なお、特許権者は、特許異議意見書(平成15年12月26日付)において、「g.「また、板面方向に分散させて流下板に多数形成する窪み部を半球状のものにするから、例えば、液流下方向に対して傾斜する姿勢で流下板のほぼ全幅にわたって延びる溝状(畝状)の窪み部を流下板に形成するなどに比べ、流下板の下部へ向けての液流下をより安定的に保って、流下板への供給冷媒液(供給吸収液)を、流下板の外側表面上により安定的に保った状態で、かつ、流下板幅方向での分散状態をより安定的に保った状態で、流下板の外側表面に沿わせて良好に膜状流下させることができ、・・・、蒸発器性能(吸収器性能)を一層効果的に高めることができる。」」(第7頁第27行〜第8頁第6行)と主張している。 しかし、上記作用・効果は、特許明細書に記載のないものである。また、仮にこのような効果を奏するものであったとしても、引用例記載の発明における「断面が円形」の窪み部や、周知例記載の窪み部も同様の作用・効果を奏するものと考えられる。 よって、上記特許権者の主張は、採用できない。 <本件発明2について> 本件発明2は、本件発明1に、「前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある」との発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明2(前者)と引用例記載の発明(後者)とを対比すると、両者は、上記相違点イ.〜ハ.に加え、次の点で相違している。 ニ.前者が、窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部を、流下板の板面視で千鳥状に配置してあるのに対し、後者では、窪み部が分散配置しているとされている点。 相違点イ.〜ハ.については、既に<本件発明1について>において検討したので、相違点ニ.について検討する。 本件明細書によると、「千鳥状」について、「板間隙間において上流側に位置する上記対向接触部又は上記接触部により2流に分けた被冷却流体の流れの各々を、1段下流に位置する上記対向接触部又は上記接触部によりさらに2流に分ける形態で、流下板の板面方向における板間隙間の全体において、被冷却流体の流れに対し乱れを効果的に与えることができ、・・・熱交換の伝熱性を一層効果的に控除有為させることができて、・・・」(段落【0013】)との記載があり、図2及び図3からも把握できるように、「千鳥状」とは、熱交換流体に乱れを与えるために、互い違いに設ける形状を示すものと理解できる。 そして、このように、熱交換流体に乱れを与えるための部材を流路に沿って交互に設けることは、本件出願前に周知である(周知例3、周知例4参照。)こと、及び引用例にも熱交換要素の内部の空間内の流れを乱して熱交換を促進させることについての課題が示されていること、を勘案すると、引用例記載の発明において、窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部を、流下板の板面視で千鳥状に配置した点は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたことである。 したがって、本件発明2は、<本件発明1について>で示したのと同様に、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が、容易に発明をすることができたものである。 <本件発明3について> 本件発明3(前者)と引用例記載の発明(後者)とを対比すると、後者の「プレート」は前者の「板」及び「流下板」に、以下、「配管」は「流体供給部」に、「相変化」は「吸収作用」に、「プレート式熱交換器」は「プレート型吸収器」に、「スポット的な凹凸」は「窪み部」に、「乱す」は「細分化」に、「ろう接」は「ロウ付け連結」に、それぞれ相当している。 そして、後者のものにおいては、技術常識からみて、スポット的な凹凸は、外側表面で凹部となり、プレート間隙間の側で凸部となるとともに、プレート隙間側凸部が対向接触させているものと認められる。さらに、後者のプレート式熱交換器を吸収器とした場合、周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用をさせることも当然のことである。 したがって、両者は、板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を別流体の流下面として、別流体供給部からの供給別流体を流下板夫々の外側表面に沿わせ流下させることで、その流下別流体を前記板間隙間における流体と熱交換させながら周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用させる吸収式冷凍機のプレート型吸収器であって、前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間間の側で凸部となる窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、前記板間隙間における流体の流路を細分化し、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、ロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型吸収器の点で一致し、次の点で相違している。 ホ.前者が、板間隙間を流れる流体を冷却用流体とし、流下板の外側表面を流れる流体を吸収液と特定しているのに対し、後者では、これらについての特定がない点。 ヘ.前者では、流下板の外側表面を流下させる別流体(吸収液)について、「膜状に流下させる」との構成を付しているのに対し、後者では、該構成についての記載が無い点。 ト.前者が、窪み部を「半球状の」窪み部としているのに対し、後者では、窪み部について、「断面が円形の」としている点。 そこで、上記相違点について検討する。 まず、相違点ホ.についてみると、プレート式熱交換器の吸収器において、板間隙間を冷却用流体が流れるものとし、熱交換する他方の流体を吸収液とした点は、本件出願前、周知の技術である(一例として周知例1参照。)。 したがって、後者において、板間隙間を流れる流体を冷却用流体とし、流下板の外側表面を流れる流体を吸収液とした点は、当業者が容易に想到しえたことである。 次に、相違点ヘ.について検討する。 プレート型吸収器において、吸収液を流下板(「波板」として記載されている。)の外側表面に膜状に流下させるようにした点は、本件出願前、周知の技術である(一例として周知例1参照。) したがって、後者において、吸収液を流下板の外側表面に沿わせ膜状に流下させるようにした点は、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたことである。 さらに、相違点ト.について検討する。 プレート型熱交換器において熱交換媒体の流れに乱れを与え、熱交換性能を向上させるために設ける窪み部(「ビード」として記載されている。)を半球状とした点は、本件出願前、周知の技術である(周知例3、周知例4参照。)。 そして、引用例に記載の窪み部の断面が円形であることを併せ勘案すると、引用例記載の窪み部を半球状の窪み部とした点は、当業者が、周知技術に基づいて、適宜採用しえたことである。 したがって、本件発明3は、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が、容易に発明をすることができたものである。 <本件発明4について> 本件発明4は、本件発明3に、「前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある」との発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明4(前者)と引用例記載の発明(後者)とを対比すると、両者は、上記相違点ホ.〜ト.に加え、次の点で相違している。 チ.前者が、窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部を、流下板の板面視で千鳥状に配置してあるのに対し、後者では、窪み部が分散配置しているとされている点。 相違点ホ.〜ト.については、既に<本件発明3について>において検討したので、相違点チ.について検討する。 本件明細書によると、「千鳥状」について、「板間隙間において上流側に位置する上記対向接触部又は上記接触部により2流に分けた冷却用流体の流れの各々を、1段下流に位置する上記対向接触部又は上記接触部によりさらに2流に分ける形態で、流下板の板面方向における板間隙間の全体において、冷却用流体の流れに対し乱れを効果的に与えることができ、・・・熱交換の伝熱性を一層効果的に控除有為させることができて、・・・」(段落【0023】)との記載があり、図2及び図3からも把握できるように、「千鳥状」とは、熱交換流体に乱れを与えるために、互い違いに設ける形状を示すものと理解できる。 そして、このように、熱交換流体に乱れを与えるための部材を流路に沿って交互に設けることは、本件出願前に周知である(周知例3、周知例4参照。)こと、及び引用例にも熱交換要素の内部の空間内の流れを乱して熱交換を促進させることについての課題が示されていること、を勘案すると、引用例記載の発明において、窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部を、流下板の板面視で千鳥状に配置した点は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたことである。 したがって、本件発明4は、<本件発明3について>で示したのと同様に、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が、容易に発明をすることができたものである。 3-3 むすび 以上のとおり、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 したがって、本件発明1ないし4についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 吸収式冷凍機のプレート型蒸発器及び吸収器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を被冷却流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を冷媒液の流下面として、冷媒液供給部からの供給冷媒液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下冷媒液を前記板間隙間における流動被冷却流体と熱交換させながら蒸発させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器であって、 前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、 一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部を他方の前記流下板の平面部分に接触させて、前記板間隙間における被冷却流体の流路を細分化し、 対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型蒸発器。 【請求項2】 前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある請求項1に記載した吸収式冷凍機のプレート型蒸発器。 【請求項3】 板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を冷却用流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を吸収液の流下面として、吸収液供給部からの供給吸収液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下吸収液を前記板間隙間における流動冷却用流体と熱交換させながら周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用させる吸収式冷凍機のプレート型吸収器であって、 前記流下板に、外側表面では凹部となって前記板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、 一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部と他方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の前記流下板における前記窪み部の板間隙間側凸部を他方の前記流下板の平面部分に接触させて、前記板間隙間における冷却用流体の流路を細分化し、 対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結してある吸収式冷凍機のプレート型吸収器。 【請求項4】 前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、前記流下板の板面視で千鳥状に配置してある請求項3に記載した吸収式冷凍機のプレート型吸収器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、吸収式冷凍機で用いるプレート型蒸発器及びプレート型吸収器に関し、詳しくは、板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を被冷却流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を冷媒液の流下面として、冷媒液供給部からの供給冷媒液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下冷媒液を前記板間隙間における流動被冷却流体と熱交換させながら蒸発させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器、 及び、板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を冷却用流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を吸収液の流下面として、吸収液供給部からの供給吸収液を前記流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下吸収液を前記板間隙間における流動冷却用流体と熱交換させながら周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用させる吸収式冷凍機のプレート型吸収器に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、この種のプレート型蒸発器やプレート型吸収器では、図5に示す如く、、対向させる2枚の流下板26どうしの間の板間隙間にデッキプレート状の芯材Xを縦溝姿勢で介装することにより、その芯材Xによる流路の細分化をもって板間隙間における被冷却流体Cや冷却用流体Wの流れに乱れを与え、これにより、流下板26を伝熱壁とする熱交換の伝熱性を高めて蒸発器性能や吸収器性能の向上を図り、また、この芯材Xを両側の流下板26の夫々に対しロウ付け連結することにより、板間隙間と両流下板26の外側域(すなわち、蒸発器では流下冷媒液Rwの蒸発域、吸収器では流下吸収液Lcの冷媒蒸気Rvに対する吸収作用域)との間での発生差圧に対する耐圧性を高く確保するようにしたものがある(特願平9-25057号参照)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上記の従来構造では、流下板とは別部材の芯材を両流下板の間に介装する為、部品点数が多くなって組み立て製作が煩雑になるとともに製作コストが高く付き、また、蒸発器や吸収器としての組み立てユニットが重量化して吸収式冷凍機の重量化を招く問題があった。 【0004】 以上の実情に対し、本発明の主たる課題は、流下板に対する簡単な改良により、上記問題を効果的に解消する点にある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 〔1〕請求項1に係る発明では、板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を被冷却流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を冷媒液の流下面として、冷媒液供給部からの供給冷媒液を流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下冷媒液を板間隙間における流動被冷却流体と熱交換させながら蒸発させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器において、流下板に、外側表面では凹部となって板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、そして、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部と他方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部を他方の流下板の平面部分に接触させて、板間隙間における被冷却流体の流路を細分化する。 【0006】 つまり、この構成では、板間隙間における被冷却流体の流路を上記の如く細分化することで、板間隙間における被冷却流体の流れに乱れを与え、これにより、その板間隙間を流れる被冷却流体と流下板の外側表面を膜状に流下する冷媒液との間での熱交換の伝熱性を高めて、蒸発器性能を効果的に向上させることができる。 【0007】 そして、その細分化にあたっては、流下板に窪み部を多数形成して、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部と他方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させることで、又は、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部を他方の流下板の平面部分に接触させることで、板間隙間における被冷却流体の流路を細分化するから、先述の従来構造の如く2枚の流下板の間に別部材の芯材を介装することで板間隙間における被冷却流体の流路を細分化するに比べ、そのような芯材を不要にして部品点数を少なくすることができ、これにより、製作を容易にするとともに製作コストを安価にすることができ、また、蒸発器としての組み立てユニットを軽小化することができて、吸収式冷凍機の軽小化も可能になる。 【0008】 しかも、外側表面では凹部となって板間隙間の側で凸部となる窪み部を板面方向に分散させて流下板に多数形成することから、流下板の大型化を伴うことなく伝熱面積も増大させることができて、上記板間隙間流路の細分化による伝熱性の向上と相まって蒸発器性能を一層効果的に高めることができ、この蒸発器性能の向上により蒸発器の小型化が可能になることからも、上記の如き芯材の不要化による蒸発器の軽小化と相まって、吸収式冷凍機の軽小化を一層効果的に達成できる。 【0009】 また、請求項1に係る発明では、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結する。 【0010】 つまり、この構成によれば、上記のロウ付けにより2枚の流下板どうしが連結されることで、板間隙間と両流下板の外側域(すなわち、流下冷媒液の蒸発域)との間での発生差圧に対する耐圧性を高く確保することができる。 【0011】 また、対向接触させた窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結するから、2枚の流下板の間に介装した芯材を両側の流下板の夫々にロウ付け連結する先述の従来構造に比べ、ロウ付け作業を容易にすることができる。 【0012】 〔2〕請求項2に係る発明では、上記した請求項1に係る発明の実施において、前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、流下板の板面視で千鳥状に配置する。 【0013】 つまり、この構成によれば、板間隙間において上流側に位置する上記対向接触部又は上記接触部により2流に分けた被冷却流体の流れの各々を、1段下流に位置する上記対向接触部又は上記接触部によりさらに2流に分ける形態で、流下板の板面方向における板間隙間の全体において、被冷却流体の流れに対し乱れを効果的に与えることができ、これにより、板間隙間を流れる被冷却流体と流下板の外側表面を膜状に流下する冷媒液との間での熱交換の伝熱性を一層効果的に向上させることができて、蒸発器性能の向上を一層効果的に達成できる。 【0014】 なお、請求項1,2に係る発明の実施において、前記流下板の外側表面に、流下冷媒液に対する親液性処理を施すようにすれば、冷媒液を膜状に流下させる流下板の外側表面において、流下冷媒液の膜が部分的に不存となる乾き部(略言すれば、膜切れ部)が発生することを上記の親液性処理により防止することができ、これにより、前記板間隙間流路の細分化による伝熱性の向上と相まって、板間隙間を流れる被冷却流体と流下板の外側表面を膜状に流下する冷媒液との間での熱交換の伝熱性を一層効果的に向上させることができて、蒸発器性能の向上をさらに効果的に達成できる。 【0015】 〔3〕請求項3に係る発明では、板面どうしを対向させた2枚の流下板どうしの間の板間隙間を冷却用流体の流路とし、かつ、これら流下板夫々の外側表面を吸収液の流下面として、吸収液供給部からの供給吸収液を流下板夫々の外側表面に沿わせ膜状に流下させることで、その流下吸収液を板間隙間における流動冷却用流体と熱交換させながら周囲の冷媒蒸気に対し吸収作用させる吸収式冷凍機のプレート型蒸発器において、流下板に、外側表面では凹部となって板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部を板面方向に分散させて多数形成し、そして、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部と他方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させて、又は、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部を他方の流下板の平面部分に接触させて、板間隙間における冷却用流体の流路を細分化する。 【0016】 つまり、この構成では、板間隙間における冷却用流体の流路を上記の如く細分化することで、板間隙間における冷却用流体の流れに乱れを与え、これにより、その板間隙間を流れる冷却用流体と流下板の外側表面を膜状に流下する吸収液との間での熱交換の伝熱性を高めて、吸収器性能を効果的に向上させることができる。 【0017】 そして、その細分化にあたっては、流下板に窪み部を多数形成して、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部と他方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部とを対向接触させることで、又は、一方の流下板における窪み部の板間隙間側凸部を他方の流下板の平面部分に接触させることで、板間隙間における冷却用流体の流路を細分化するから、先述の従来構造の如く2枚の流下板の間に別部材の芯材を介装することで板間隙間における冷却用流体の流路を細分化するに比べ、そのような芯材を不要にして部品点数を少なくすることができ、これにより、製作を容易にするとともに製作コストを安価にすることができ、また、吸収器としての組み立てユニットを軽小化することができて、吸収式冷凍機の軽小化も可能になる。 【0018】 しかも、外側表面では凹部となって板間隙間の側で凸部となる窪み部を板面方向に分散させて流下板に多数形成することから、流下板の大型化を伴うことなく伝熱面積も増大させることができて、上記板間隙間流路の細分化による伝熱性の向上と相まって吸収器性能を一層効果的に高めることができ、この吸収器性能の向上により吸収器の小型化が可能になることからも、上記の如き芯材の不要化による吸収器の軽小化と相まって、吸収式冷凍機の軽小化を一層効果的に達成できる。 【0019】 また、請求項3に係る発明では、対向接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結する。 【0020】 つまり、この構成によれば、上記のロウ付けにより2枚の流下板どうしが連結されることで、板間隙間と両流下板の外側域(すなわち、流下吸収液の冷媒蒸気に対する吸収作用域)との間での発生差圧に対する耐圧性を高く確保することができる。 【0021】 また、対向接触させた窪み部の板間隙間側凸部どうしを、又は、接触させた窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分とをロウ付け連結するから、2枚の流下板の間に介装した芯材を両側の流下板の夫々にロウ付け連結する先述の従来構造に比べ、ロウ付け作業を容易にすることができる。 【0022】 〔4〕請求項4に係る発明では、上記した請求項3に係る発明の実施において、前記窪み部の板間隙間側凸部どうしの対向接触部、又は、前記窪み部の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部を、流下板の板面視で千鳥状に配置する。 【0023】 つまり、この構成によれば、板間隙間において上流側に位置する上記対向接触部又は上記接触部により2流に分けた冷却用流体の流れの各々を、1段下流に位置する上記対向接触部又は上記接触部によりさらに2流に分ける形態で、流下板の板面方向における板間隙間の全体において、冷却用流体の流れに対し乱れを効果的に与えることができ、これにより、板間隙間を流れる冷却用流体と流下板の外側表面を膜状に流下する吸収液との間での熱交換の伝熱性を一層効果的に向上させることができて、吸収器性能の向上を一層効果的に達成できる。 【0024】 なお、請求項3,4に係る発明の実施において、前記流下板の外側表面に、流下吸収液に対する親液性処理を施すようにすれば、吸収液を膜状に流下させる流下板の外側表面において、流下吸収液の膜が部分的に不存となる乾き部(略言すれば、膜切れ部)が発生することを上記の親液性処理により防止することができ、これにより、前記板間隙間流路の細分化による伝熱性の向上と相まって、板間隙間を流れる冷却用流体と流下板の外側表面を膜状に流下する吸収液との間での熱交換の伝熱性を一層効果的に向上させることができて、吸収器性能の向上をさらに効果的に達成できる。 【0025】 【発明の実施の形態】 図1は吸収式冷凍機の概略構成を示し、 1は冷媒Rを含んだ希吸収液Lsを加熱器2により加熱して冷媒蒸気Rvを発生させることで吸収液Lと冷媒Rを分離する再生器、 3は再生器1で発生させた高温の冷媒蒸気Rvを冷却器4により冷却して凝縮させる凝縮器、 5は凝縮器3から冷媒供給路6を介して流下供給される冷媒液Rwを被冷却流体C(例えばブラインや水)からの気化熱奪取により蒸発させて被冷却流体Cを冷却する蒸発器、 7は蒸発器5で発生する冷媒蒸気Rvを濃吸収液Lcに吸収させる吸収器であり、 この吸収器7での冷媒蒸気Rvの吸収により、蒸発器5及び吸収器7を内蔵する胴8の内部を減圧して、蒸発器5での冷媒蒸発を減圧雰囲気中において低温レベルで行わせる。 【0026】 また、吸収器7では冷却用流体としての冷却水Wにより、冷媒吸収に伴い発生する吸収熱を除去し、その後、この冷却水Wは凝縮器3の冷却器4に供給して凝縮器3での高温冷媒蒸気Rvの冷却に使用する。 【0027】 なお、本実施形態では、冷媒Rに水を使用し、吸収液Lに臭化リチウム水溶液を使用している。 【0028】 9は胴8の内部における蒸発器領域から吸収器領域への冷媒蒸気Rvの移動は許容しながら、冷媒液Rwの液滴が蒸発器領域から吸収器領域へ侵入すること、また、吸収液Lの液滴が吸収器領域から蒸発器領域へ侵入することを防止するエリミネータ、 10は蒸発器5で蒸発し切らずに胴8の底部の冷媒液受け11に受け止められた冷媒液Rwを冷媒循環路12を介し蒸発器領域の上部に送って蒸発器5に循環供給する冷媒ポンプ、 13は吸収器7で冷媒蒸気Rvを吸収した後、胴8の底部の吸収液受け14に受け止められた希吸収液Lsを希吸収液路15を介して再生器1に送る吸収液ポンプである。 【0029】 16は再生器1で冷媒Rを分離した濃吸収液Lcを吸収器7に流下供給する濃吸収液路、 17は再生器1から吸収器7へ送る濃吸収液Lcの保有熱を回収して、再生器1へ戻す希吸収液Lsを予熱する吸収液熱交換器である。 【0030】 図2に示すように、蒸発器5及び吸収器7には夫々、プレート型を採用し、蒸発器5は、胴8の内部の蒸発器領域において平行な縦姿勢で並設した複数の冷媒液流下パネル5Aと、冷媒液供給部として各々の冷媒液流下パネル5Aの両面へ上縁側から冷媒液Rwをパネル横巾方向に均等に分散させて供給する冷媒液分散器18とで構成し、 同様に、吸収器7は、胴8の内部の吸収器領域において平行な縦姿勢で並設した複数の吸収液流下パネル7Aと、吸収液供給部として各々の吸収液流下パネル7Aの両面へ上縁側から濃吸収液Lcをパネル横巾方向に均等に分散させて供給する吸収液分散器19とで構成してある。 【0031】 20は冷媒流下パネル5A及び吸収液流下パネル7Aを支持する支持架台、 21は冷媒流下パネル5A及び吸収液流下パネル7Aを側方から支持する支持枠である。 【0032】 次に、蒸発器側の冷媒液分散器18及び冷媒液流下パネル5Aの具体構造、並びに、吸収器側の吸収液分散器19及び吸収液流下パネル7Aの具体構造について説明するが、これらは蒸発器側と吸収器側とでほぼ同様の構造であることから説明の簡略化の為、これらの構造を示す図3及び図4は蒸発器側と吸収器側とを兼ねて示すものとしてある。 【0033】 冷媒液分散器18及び吸収液分散器19は図3及び図4に示すように、冷媒液流下パネル5Aの並設列上方、及び、吸収液流下パネル7Aの並設列上方に配設した主供給樋22A,22Bと、各々の冷媒液流下パネル5Aの上縁側、及び、各々の吸収液流下パネル7Aの上縁側に連設されて、主供給樋22A,22Bから流出具23を介し落下により冷媒液Rwないし濃吸収液Lcの定量供給を受ける両端閉塞の樋状体24とで構成してあり、これら樋状体24の両側壁には夫々、液流出用スリット25を所定間隔で多数形成してある。 【0034】 つまり、樋状体24が受け入れた冷媒液Rwないし濃吸収液Lcを両側壁の多数の液流出用スリット25から流出させることにより、各冷媒液流下パネル5Aの両面に冷媒液Rwを、また、各吸収液流下パネル7Aの両面に濃吸収液Lcを、夫々、パネル横巾方向に均等に分散させた状態で上縁側から供給し、これにより、各冷媒液流下パネル5Aの両面夫々で冷媒液Rwをパネル表面に沿わせて膜状に流下させ、また、各吸収液流下パネル7Aの両面夫々で濃吸収液Lcをパネル表面に沿わせて膜状に流下させる。 【0035】 なお、蒸発器5側の主供給樋22Aには、凝縮器3からの冷媒供給路6及び冷媒ポンプ10からの冷媒循環路12を接続してあり、吸収側7側の主供給樋22Bには、再生器1からの濃吸収液路16を接続してある。 【0036】 冷媒液流下パネル5A及び吸収液流下パネル7Aは、同図3及び図4に示すように、板面どうしを対向させて配置した2枚の流下板26どうしの間に板間隙間を形成して、下端一側の流体入口27aと上端一側の流体出口28aを残し板間隙間の周縁を閉塞した板状容器構造にしてあり、各パネル5A,7Aの下縁部には、下端一側の流体入口27aから供給される被冷却流体Cや冷却水Wを板間隙間の全巾に行き渡らせる導入用管状部27を形成し、一方、各パネル5A,7Aの上縁部には、被冷却流体Cや冷却水Wを板間隙間の全巾で受け入れて上端一側の流体出口28aへ導く導出用管状部28を形成し、これにより、冷媒液流下パネル5Aでは、2枚の流下板26どうしの間の板間隙間を蒸発器5における被冷却流体Cの流路とし、また、吸収液流下パネル7Aでは2枚の流下板26どうしの間の板間隙間を吸収器7における冷却用流体としての冷却水Wの流路にしてある。 【0037】 つまり、蒸発器5では、冷媒液Rwを冷媒液流下パネル5Aの両面(すなわち、2枚の流下板26夫々の外側表面)に沿わせて膜状に流下させるのに対し、被冷却流体供給ヘッダ29から分岐管29aを介して流体入口27aに供給する被冷却流体Cを冷媒液流下パネル5Aにおける板間隙間の流路(すなわち、2枚の流下板26夫々の裏面側)に通過させることで、流下冷媒液Rwを被冷却流体Cから気化熱奪取させながら蒸発させる。 【0038】 また、吸収器7では、濃吸収液Lcを吸収液流下パネル7Aの両面(すなわち、2枚の流下板26夫々の外側表面)に沿わせて膜状に流下させるのに対し、冷却水供給ヘッダ30から分岐管30aを介して流体入口27aに供給する冷却水Wを吸収液流下パネル7Aにおける板間隙間の流路(すなわち、2枚の流下板26夫々の裏面側)に通過させることで、流下吸収液Lcを冷却水Wにより冷却しながら周囲の冷媒蒸気Rvに対し吸収作用させる。 【0039】 31は冷媒液流下パネル5Aの流体出口28aから送出される被冷却流体Cを分岐管31aを介し集合させて導出する被冷却流体排出ヘッダ、 32は吸収液流下パネル7Aの流体出口28aから送出される冷却水Wを分岐管32aを介し集合させて導出する冷却水排出ヘッダである。 【0040】 冷媒液流下パネル5A及び吸収液流下パネル7Aを形成する2枚の流下板26には夫々、それらの外側表面で凹部となって板間隙間の側で凸部となる半球状の窪み部33を板面方向に分散させて多数形成してあり、冷媒液流下パネル5A及び吸収液流下パネル7Aとしての組み立てユニットの形成状態において、一方の流下板26における窪み部33の板間隙間側凸部と他方の流下板26における板間隙間側凸部とを対向接触させることで、冷媒液流下パネル5Aでは板間隙間における被冷却流体Cの流路を細分化し、また、吸収液流下パネル7Aでは板間隙間における冷却水Wの流路を細分化するようにしてある。 【0041】 つまり、このように板間隙間流路を細分化することにより、板間隙間における被冷却流体Cの流れや冷却水Wの流れに乱れを与え、これにより、冷媒液流下パネル5Aでは、板間隙間を流れる被冷却流体Cと各流下板26の外側表面に沿って膜状に流下する冷媒液Rwとの間での熱交換の伝熱性を高めて蒸発器性能を高め、また、吸収液流下パネル7Aでは、板間隙間を流れる冷却水Wと各流下板26の外側表面に沿って膜状に流下する濃吸収液Lcとの間での熱交換の伝熱性を高めて吸収器性能を高めるようにしてある。 【0042】 上記窪み部33は流下板26の板面視で千鳥状に配置して、一方の流下板26の窪み部33と他方の流下板26の窪み部33との板間隙間側凸部どうしの対向接触部が流下板板面視で千鳥状に並ぶようにし、これにより、板間隙間において上流側に位置する上記対向接触部により2流に分けた被冷却流体Cや冷却水Wの流れの各々を、1段下流に位置する上記対向接触部によりさらに2流に分ける形態で、流下板26の板面方向における板間隙間の全体において、被冷却流体Cや冷却水Wの流れに対し乱れを効果的に与えるようにしてある。 【0043】 また、上記の如く対向接触させる窪み部33の板間隙間側凸部どうしはロウ付けにより連結し、これにより、冷媒液流下パネル5Aでは、被冷却流体Cの流路としての板間隙間と冷媒液Rwの蒸発域としての外側域との間での発生差圧に対する耐圧性を高く確保し、また、吸収液流下パネル7Aでは、冷却水Wの流路としての板間隙間と濃吸収液Lcの冷媒蒸気Rvに対する吸収作用域としての外側域との間での発生差圧に対する耐圧性を高く確保するようにしてある。 【0044】 冷媒液流下パネル5A及び吸収液流下パネル7Aを形成する2枚の流下板26の外側表面には、流下冷媒液Rwや流下吸収液Lcに対する親液性処理として、鉄メッキした上での酸化処理、又は、銅粉粒体の焼き付け処理、又は、銅合金粉粒体の焼き付け処理、又は、鉄粉粒体の焼き付け処理のうちのいずれか1つ又は複数を選択して施すとともに、多数の細溝34を形成してあり、これにより、冷媒液Rwや濃吸収液Lcを膜状に流下させる流下板26の外側表面において、流下冷媒液Rwの膜や流下吸収液Lcの膜が部分的に不存となる乾き部(膜切れ部)が発生することを防止する。 【0045】 〔別の実施形態〕 次に別の実施形態を列記する。 【0046】 前述の実施形態では、一方の流下板26における窪み部33の板間隙間側凸部と他方の流下板26における窪み部33の板間隙間側凸部とを対向接触させて板間隙間の流路を細分化したが、これに代え、一方の流下板26における窪み部33の板間隙間側凸部を他方の流下板26の平面部分に接触させて板間隙間の流路を細分化する形態を採用してもよい。 【0047】 窪み部33の板間隙間側凸部どうしの対向接触部の配列、または、窪み部33の板間隙間側凸部と他方流下板の平面部分との接触部の配列は、必ずしも流下板26の板面視で千鳥状の配列に限られるものでなく、その他、種々の配列形態を採用できる。 【0048】 前述の実施形態では、胴8の内部の蒸発器領域において複数の冷媒液流下パネル5Aを並設し、この蒸発域領域に隣合う吸収器領域において複数の吸収液流下パネル7Aを並設する構造を示したが、これに代え、冷媒液流下パネル5Aと吸収液流下パネル7Aを交互に配置して並設する構造を採用してもよい。 【0049】 冷媒液Rwは水に限定されるものではなく、その他、種々の液体を冷媒液Rwとして使用でき、吸収液Lも臭化リチウム水溶液に限定されるものではなく、その他、種々の液体を吸収液Lとして使用できる。 【0050】 また、被冷却流体Cも水やブラインに限定されるものではなく、冷却用流体Wも水に限定されるものではない。 【0051】 前述の実施形態では単効用型の吸収式冷凍機を示したが、本発明は二重効用型を初めとする多重効用型の吸収式冷凍機にも適用できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 吸収式冷凍機の概略構成図 【図2】 蒸発器及び吸収器部分の斜視図 【図3】 流下パネルの正面図 【図4】 流下パネルの側面視断面図 【図5】 従来構造を示す一部破断斜視図 【符号の説明】 18 冷媒液供給部 19 吸収液供給部 26 流下板 33 窪み部 C 被冷却流体 Lc 吸収液 Rw 冷媒液 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-01-29 |
出願番号 | 特願平10-158857 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(F25B)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 荘司 英史 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
岡本 昌直 櫻井 康平 |
登録日 | 2002-05-10 |
登録番号 | 特許第3305653号(P3305653) |
権利者 | 日本発条株式会社 大阪瓦斯株式会社 |
発明の名称 | 吸収式冷凍機のプレート型蒸発器及び吸収器 |
代理人 | 北村 修一郎 |
代理人 | 北村 修一郎 |
代理人 | 北村 修一郎 |