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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1098014
異議申立番号 異議2003-71974  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-04 
確定日 2004-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3372622号「観察用光学機器」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3372622号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3372622号の請求項1〜3に係る発明は、平成5年12月27日に出願されたものであって、平成14年11月22日に設定登録がなされ、その後、小嶋武雄より特許異議申立がなされ、取消理由通知に対して、応答期間内である平成16年1月13日に特許異議意見書の提出と共に訂正請求がなされたものである。

【2】訂正の適否についての判断
【2-1】訂正の要旨
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項a:
請求項1の記載を、「並設された一対の対物光学系と、前記各対物光学系により形成される光学像の振れを補正する一対の補正光学系と、前記各補正光学系からの光を正立像が形成されるよう反射する一対の正立プリズムと、前記各正立プリズムからの光を観察側へ導く一対の接眼光学系と、前記対物光学系と前記補正光学系と前記正立プリズムと前記接眼光学系とを収容した光学機器本体と、該光学機器本体の振れを検出する振れ検出手段と、前記一対の補正光学系を駆動するアクチュエータと、該振れ検出手段の検出出力に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、該制御手段を含む電気回路を実装した回路基板とを具備し、前記光学機器本体内に該回路基板および前記アクチュエータに電力を供給するバッテリーを収容し、該バッテリーと前記回路基板を、前記一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置し、前記回路基板を、光軸方向については、前記対物光学系と前記正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置し、かつ前記回路基板を前記光軸に対して直交するように配置すると共に前記回路基板の片側または両側を、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成したことを特徴とする観察用光学機器。」と訂正し、訂正前の請求項2及び請求項3を削除する。
訂正事項b:
段落【0005】の記載を、「【0005】【課題を解決するための手段】本発明の観察用光学機器は上述の目的を達成するためのもので、並設された一対の対物光学系と、前記各対物光学系により形成される光学像の振れを補正する一対の補正光学系と、前記各補正光学系からの光を正立像が形成されるよう反射する一対の正立プリズムと、前記各正立プリズムからの光を観察側へ導く一対の接眼光学系と、前記対物光学系と前記補正光学系と前記正立プリズムと前記接眼光学系とを収容した光学機器本体と、該光学機器本体の振れを検出する振れ検出手段と、前記一対の補正光学系を駆動するアクチュエータと、該振れ検出手段の検出出力に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、該制御手段を含む電気回路を実装した回路基板とを具備し、前記光学機器本体内に該回路基板および前記アクチュエータに電力を供給するバッテリーを収容し、該バッテリーと前記回路基板が、前記一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置され、前記回路基板が、光軸方向については、前記対物光学系と前記正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置され、かつ前記回路基板は前記光軸に対して直交するように配置されていると共に前記回路基板の片側または両側は、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成されている。」と訂正する。
訂正事項c:
段落【0006】の記載を、「【0006】なお、本発明は、回路基板の左右片側端部あるいは両側端部を、光線を遮ることがないように光束の形に概略添った基板形状に設けているので、所定の基板面積を確保した上で左右の光軸間距離を最小とすることができる。」と訂正する。
訂正事項d:
段落【0008】の記載を、「【0008】図1は本発明の前提技術例としての光学機器である双眼鏡を示す斜視図、図2は図1の平面断面図、図3は図1の正面断面図である。図7は図1の透視斜視図である。これらの図において、100は双眼鏡本体、300R、300Lは双眼鏡本体100に設けられた一対の接眼プリズムユニット本体である。」と訂正する。
訂正事項e:
段落【0025】の記載を、「【0025】図8は、上述の前提技術例とは別の前提技術例で、制御回路基板510を充電バッテリー収容部110の横に並べて配置したものである。」と訂正する。
訂正事項f:
段落【0016】の記載を、「【0016】接眼プリズムユニット本体300R、300Lは上述した接続鏡筒302とプリズム収容鏡筒308と接眼鏡筒310とから構成されている。プリズム収容鏡筒308内には、VAPユニット202、203を通過した光により形成される光学像を上下反転させる第1プリズム312とこの第1プリズム312からの光により形成される光学像を左右反転させる第2のプリズム314とが収容され保持されている。また接眼鏡筒310内には接眼レンズER、ELが収容され保持されている。」と訂正する。
訂正事項g:
段落【0026】の記載を、「【0026】図9は、本発明の実施例を示す透視斜視図で、制御回路基板610と充電バッテリー収容部110が、一対の対物レンズユニットの並設方向については該一対の対物レンズユニット間に配置されているとともに、制御回路基板610は、光軸方向については一対の対物レンズユニットと正立プリズムとの間に配置されている。さらに、制御回路基板610は充電バッテリー収容部110の後方(観察側)に、対物レンズの光軸と直交するように配置されている。図1ないし図3で説明した実施例では振れセンサ210、211を、制御回路基板410とは別に配置していたが、これは振れセンサを光軸と直交させて配置する必要があるためであり、これに対し図9に示す本実施例では、制御回路基板610の上に振れセンサを配置することができる。なお制御回路基板610は光軸を遮らないように基板の両側を、概略光束に沿って半円形状に設けている。」と訂正する。
訂正事項h:
【図面の簡単な説明】の記載を、
「【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の前提技術例の双眼鏡を示す斜視図
【図2】
図1の平面断面図
【図3】
図1の正面断面図
【図4】
図1、図2の視度・フォーカス調整機構を示す一部平面断面図
【図5】
ロック機構及びVAPユニットを示す斜視図
【図6】
ロック機構を示す正面図
【図7】
図1の透視斜視図
【図8】
本発明の前提技術例の双眼鏡を示す透視斜視図
【図9】
本発明の実施例の双眼鏡を示す透視斜視図
【符号の説明】
100...双眼鏡本体
110...充電バッテリー収容部
106R、L...対物レンズユニット
202、203...VAPユニット
220...ロック機構
224...振れ補正操作レバー
300R、L...接眼プリズムユニット
400...充電バッテリー
410...制御回路基板
412...振れ補正モード切換スイッチ
510...制御回路基板
610...制御回路基板」
と訂正する。

【2-2】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a〜hにおける、「該バッテリーと前記回路基板を、前記一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置し、前記回路基板を、光軸方向については、前記対物光学系と前記正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置し、かつ前記回路基板を前記光軸に対して直交するように配置すると共に前記回路基板の片側または両側を、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成した」の部分は、訂正前の請求項2、3の技術内容と、訂正前の段落【0006】、【0026】および図9に開示されていた技術事項に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項aにおける請求項の削除は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a〜hにおける上記の点以外の訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書に記載された事項の範囲内でする訂正である。
さらに、上記訂正事項a〜hは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

【2-3】むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項、同条第3項で規定する訂正について、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第第126条第1項ただし書き及び同条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】特許異議の申立てについての判断
【3-1】本件発明
訂正された本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のものである。
「【請求項1】並設された一対の対物光学系と、前記各対物光学系により形成される光学像の振れを補正する一対の補正光学系と、前記各補正光学系からの光を正立像が形成されるよう反射する一対の正立プリズムと、前記各正立プリズムからの光を観察側へ導く一対の接眼光学系と、前記対物光学系と前記補正光学系と前記正立プリズムと前記接眼光学系とを収容した光学機器本体と、該光学機器本体の振れを検出する振れ検出手段と、前記一対の補正光学系を駆動するアクチュエータと、該振れ検出手段の検出出力に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、該制御手段を含む電気回路を実装した回路基板とを具備し、前記光学機器本体内に該回路基板および前記アクチュエータに電力を供給するバッテリーを収容し、該バッテリーと前記回路基板を、前記一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置し、前記回路基板を、光軸方向については、前記対物光学系と前記正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置し、かつ前記回路基板を前記光軸に対して直交するように配置すると共に前記回路基板の片側または両側を、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成したことを特徴とする観察用光学機器。」

【3-2】申立ての理由の概要
申立人葛城範子は、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨主張する。なお、訂正前の請求項2及び請求項3は訂正により削除された。
刊行物1:特開平2-284113号公報
刊行物2:特開昭56-99316号公報

【3-3】刊行物の開示事項
刊行物1:特開平2-284113号公報
第3頁左上欄第2行に「la、lbは1対の対物レンズ」とあり、第1図にはこの1対の対物レンズが並設されていることが示されている。第3頁左上欄第14行〜右上欄第2行に「1対の第2反射鏡3a、3bには、…Z軸を回転軸として駆動制御されている。…第3反射部6には…Y軸を回転軸として駆動制御されている。」とある。第3頁右上欄第5行〜第8行に「9a、9bは1対の菱形プリズムであり…一対の接眼レンズ10a、10bに導光する形状より成っている。」とある。第3頁右上欄第8行〜第10行に「1対の接眼レンズ10a、10bは観察者の眼幅に対応した光軸間距離を隔てて配置されている。」とある。第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第1行に「第1図は本発明に係る双眼鏡の第1実施例の光学系の要部概略図である。」とあり、第1図には、1対の対物レンズ、1対の第2反射部、第3反射部、1対の菱形プリズム、1対の接眼レンズが示されている。第3頁左下欄第6行〜第10行に「双眼鏡が振動したりブレたりしたときは…そのときのブレを双眼鏡の一部に設けた例えば加速度センサー、振動ジャイロ、ジャイロコンバス等のブレ検出手段で検出する。」とある。第3頁左下欄第12行〜第14行に「アクチュエーター5、7を各々駆動させて1対の第2反射部3a、3bと第3反射部6を各々軸を中心に回動させている。」とある。第3頁左下欄第10行〜第12行に「該ブレ検出手段からの出力信号に基づいて防振手段の一要素であるアクチュエーター5、7を各々駆動させて…」とある。

刊行物2:特開昭56-99316号公報
第2頁左上欄第4行〜第5行に「プリント基板10を配設している」とあり、第7図〜第9図にはプリント基板10に形成されたプリント配線が示されている。第2頁左上欄第18行〜右上欄第2行に「電源の電池11は直列に接続されていて…電池接点板12bがプリント基板10のターミナル10aと10bの導通部に接続され、…」とあり、第2頁右上欄第14行〜第19行に「スイッチ3aを押込むと…ギヤモーター2を正転回転する回路が完成する」とあり、第2頁右下欄第4行〜第9行に「スイッチ3bを押込むことにより…ギヤモーター2を逆転回転させる回路が完成する」とある。第3図にはプリント基板10及び電池11が双眼鏡の一対の鏡筒の間に配設されることが図示され、第2図には双眼鏡を対物光学系の側から見た図が示されている。第3図には、プリント基板10の全体が一対のレンズ鏡筒の間に収容されている状態が示されている。

【3-4】刊行物記載の発明との対比・判断
本件発明は、光学像の振れを補正する一対の補正光学系を備えた観察用光学機器において、「バッテリーと…回路基板を、…一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置し、前記回路基板を、光軸方向については、前記対物光学系と…正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置し、かつ前記回路基板を前記光軸に対して直交するように配置すると共に前記回路基板の片側または両側を、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成したこと」ことを技術事項として含むものである。
これに対して、刊行物1は、光学像の振れを補正する一対の補正光学系を備えた観察用光学機器を開示し、刊行物2は、観察光学機器のバッテリーと回路基板を一対のレンズ鏡筒の間に配置したものが示されているが、いずれも、バッテリーと回路基板を、一対の対物光学系が並設された方向については一対の対物光学系の間に配設し、回路基板を、光軸方向については、対物光学系と正立プリズムの間であってバッテリーの収容部よりも観察側に配置し、かつ回路基板を前記光軸に対して直交するように配置すると共に回路基板の片側または両側を、対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成することについては、何ら示唆するところがない。
そして、本件発明は、この点で明細書の段落【0027】記載の効果を生じるものと認められる。
よって、刊行物1、2に記載された発明を根拠として、本件発明が特許法第29条第2項に違反して特許されたものということはできない。

【3-5】むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
観察用光学機器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 並設された一対の対物光学系と、前記各対物光学系により形成される光学像の振れを補正する一対の補正光学系と、前記各補正光学系からの光を正立像が形成されるよう反射する一対の正立プリズムと、前記各正立プリズムからの光を観察側へ導く一対の接眼光学系と、前記対物光学系と前記補正光学系と前記正立プリズムと前記接眼光学系とを収容した光学機器本体と、該光学機器本体の振れを検出する振れ検出手段と、前記一対の補正光学系を駆動するアクチュエータと、該振れ検出手段の検出出力に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、該制御手段を含む電気回路を実装した回路基板とを具備し、前記光学機器本体内に該回路基板および前記アクチュエータに電力を供給するバッテリーを収容し、該バッテリーと前記回路基板を、前記一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置し、前記回路基板を、光軸方向については、前記対物光学系と前記正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置し、かつ前記回路基板を前記光軸に対して直交するように配置すると共に前記回路基板の片側または両側を、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成したことを特徴とする観察用光学機器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光学機器の振れ量を検出し、この検出出力に基づいて光学機器の光学像を常に一定の位置に保持するように光軸を偏向させる像振れ補正機能を有する望遠鏡、双眼鏡等の観察用光学機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、観察用光学機器の像振れを解消する装置として、特開昭50-5058号に記載されているような、ジンバルで支持された正立プリズムにジャイロスコープを接続した像安定装置付き双眼鏡が知られている。またバッテリーの配置に関する従来技術として、特開平3-264908号や、実開昭55-128008等に記載されているものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現状では補正光学系を駆動制御して光学機器の像振れを補正する装置は比較的大きな回路基板とバッテリーを必要とするため、光学機器が大型化するという問題がある。
【0004】
本発明は上述した従来の課題を解決するためのもので、良好な像安定状態を得ることができ、機器の小型化を有効に図ることのできる観察用光学機器を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の観察用光学機器は上述の目的を達成するためのもので、並設された一対の対物光学系と、前記各対物光学系により形成される光学像の振れを補正する一対の補正光学系と、前記各補正光学系からの光を正立像が形成されるよう反射する一対の正立プリズムと、前記各正立プリズムからの光を観察側へ導く一対の接眼光学系と、前記対物光学系と前記補正光学系と前記正立プリズムと前記接眼光学系とを収容した光学機器本体と、該光学機器本体の振れを検出する振れ検出手段と、前記一対の補正光学系を駆動するアクチュエータと、該振れ検出手段の検出出力に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、該制御手段を含む電気回路を実装した回路基板とを具備し、前記光学機器本体内に該回路基板および前記アクチュエータに電力を供給するバッテリーを収容し、該バッテリーと前記回路基板が、前記一対の対物光学系が並設された方向については、前記光学機器本体内の前記一対の対物光学系の間に配置され、前記回路基板が、光軸方向については、前記対物光学系と前記正立プリズムの間であって前記バッテリーの収容部よりも観察側に配置され、かつ前記回路基板は前記光軸に対して直交するように配置されていると共に前記回路基板の片側または両側は、前記対物光学系の光束を遮らないように該光束の形に概略添った形状に形成されている。
【0006】
なお、本発明は、回路基板の左右片側端部あるいは両側端部を、光線を遮ることがないように光束の形に概略添った基板形状に設けているので、所定の基板面積を確保した上で左右の光軸間距離を最小とすることができる。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0008】
図1は本発明の前提技術例としての光学機器である双眼鏡を示す斜視図、図2は図1の平面断面図、図3は図1の正面断面図である。図7は図1の透視斜視図である。これらの図において、100は双眼鏡本体、300R、300Lは双眼鏡本体100に設けられた一対の接眼プリズムユニット本体である。
【0009】
双眼鏡本体100は上シェル102と下シェル104とから構成されている。下シェル104には、その対物側である一端側に一対(右眼用R、左眼用L)の対物レンズユニット106R、106Lが配設されており、接眼側である他端側には上述の一対の接眼プリズムユニット本体300R、300Lが配設されている。対物レンズユニット106R、106Lは図2および図4の要部拡大図に示すように、対物レンズ鏡筒162R、162Lを有しており、この対物レンズ鏡筒162R、162Lには対物レンズLR1、LL1が保持されている。対物レンズ鏡筒162R、162Lの接眼側にはガイド鏡筒164R、Lが保持されており、このガイド鏡筒164R、164L内にはフォーカスレンズLR2、LL2を保持したフォーカスレンズ鏡筒166R、166Lが収容されている。対物レンズ鏡筒162R、162Lのフランジ部ガイド鏡筒164R、164Lの突出部との間にはそれぞれ一対のガイドバー168a、168bとが配設されており、フォーカスレンズ鏡筒166R、Lのスリーブ166a、166aにガイドバー168a、168aが挿通され、フォーカスレンズ鏡筒166R、166LのU字突出部166b、166bにはガイドバー168b、168bが挿通されている。これによりフォーカスレンズ鏡筒166R、166Lは光軸方向に移動自在に支持されている。
【0010】
対物レンズユニット106R、106Lとの間には視度・フォーカス調整機構108が設けられている。視度・フォーカス調整機構108は図3、図4に示すように、上シェル102の調整機構収容部122に収容され、上シェル102に保持されたガイド支持板180を有している。ガイド支持板180にはフォーカスガイド軸182と回転規制軸184とが固定されている。フォーカスガイド軸182は、右眼側のフォーカスレンズ鏡筒166Rを光軸方向に駆動するフォーカスレンズ駆動板186Rのスリーブ186aと、左眼側のフォーカスレンズ鏡筒166Lを光軸方向に駆動するフォーカスレンズ駆動板187Lのスリーブ187aとに挿通されている。回転規制軸184は、フォーカスレンズ駆動板186Rの回転規制穴186bと、フォーカスレンズ駆動板187Lの回転規制穴187bとに挿通されている。フォーカスレンズ駆動板186Rにはフォーカス送り用のねじ穴186cが設けられている。このねじ穴186cには視度調整軸188のねじ部188aが噛合されており、ねじ部188aの一端にはねじ部188aの径より小径とされた連結軸部188bが形成されている。ねじ部188aの他端には回転規制平面部が形成されたスライド軸部188cが形成されている。上シェル102の調整機構収容部122の半円支持部122aには視度調整リング189が定位置回転自在に支持されており、視度調整リング189のスライド穴189aには視度調整軸188のスライド軸部188cが軸方向でスライド自在に挿入されている。フォーカスレンズ駆動板186Rには駆動係合突起186dが形成されており、この突起186dはフォーカスレンズ鏡筒166Rのスリーブ166aに形成された係合溝166cに係合されている。
【0011】
またフォーカスレンズ駆動板187Lにはコ字状の軸受け板部187d、187eとが形成されている。軸受け板部187dには視度調整軸188の連結軸部188bが、駆動板186Rのねじ穴186cの端面と軸受け板部187dとの間に止めリング190、押圧バネ191を介して挿通されている。軸受け板部187eにはフォーカスねじ軸192が非回転状態で固定されている。上シェル102の調整機構収容部122の半円支持部122bにはフォーカス調整リング193が定位置回転自在に支持されており、このフォーカス調整リング193のねじ穴193aにはフォーカスねじ軸192が噛合している。フォーカスレンズ駆動板187Lには駆動係合突起187cが形成されており、この突起187cはフォーカスレンズ鏡筒166Lのスリーブ166aに形成された係合溝166cに係合されている。
【0012】
これにより、フォーカス調整リング193を回転させると、フォーカスねじ軸192が光軸方向に移動されてフォーカスレンズ駆動板187Lが光軸方向に移動され、これによりフォーカスレンズ鏡筒166Lが移動される。またこれと同時に軸受け板部187dに支持され押圧バネ191に押圧された視度調整軸188が光軸方向に移動され、ねじ連結されたフォーカスレンズ駆動板186Rが移動されフォーカスレンズ鏡筒166Rが移動される。なおこの時視度調整リング189は非回転でありスライド穴189a内を調整軸188のスライド軸部188cがスライド移動する。これらのフォーカスレンズ鏡筒166R、166Lの移動によりフォーカス調整が行われる。また、視度調整リング189を回転させると、スライド連結された視度調整軸188が定位置回転されこの回転により、ねじ部188aに噛合されたフォーカス送り用ねじ穴186cが光軸方向に移動され、これにより右眼側のフォーカスレンズ鏡筒166Rが移動され視度調整が行われる。
【0013】
下シェル104の各対物レンズユニット106R、106Lと接眼プリズムユニット本体300R、300Lとの間には、可変頂角プリズム(VAP)ユニット202、203が下シェル104に形成されたユニット支持板142に配設されている。VAPユニット202、203の本体202a、203aの対物側には遮光筒204、204が固定されている。本体202a、203a内にはVAP素子205、205が収容されている。VAP素子205、205は、図5にも示すように、2枚の透明板の間がベローズにより液密的に接続され、その中に所定の屈折率を有する透明液体が収容されている。VAP素子205はそれぞれ保持枠207a、bに保持され、この保持枠207a、bに形成されたコイル部208a、bおよび本体202a、203aに形成されたマグネット部209、209とで電磁アクチュエータを構成し、その駆動により左右の各VAP素子205、205の対物側の透明板がヨー(水平)方向に傾けられ接眼側の透明板がピッチ(垂直)方向に傾けられる。これによりVAP素子を通過する光線が偏向させられる。また本体202aには双眼鏡本体100の垂直方向の振れを検出する振れ検出センサ210が固定され、本体203aには双眼鏡本体100の水平方向の振れを検出する振れ検出センサ211が固定されている。
【0014】
VAPユニット202、203の間には図5および図6に示すように、ユニット支持板142に支持されたロック機構220が配設されている。ロック機構220は連動アーム221を有しており、連動アーム221はその中心がユニット支持板142に回転自在に取り付けられている。連動アーム221の両端部にはそれぞれロックアーム222が支持板142に回転自在に設けられており、連動アーム221の端部の係合溝部221a、221aとロックアーム222の係合突起222aとが係合自在とされている。ロックアーム222の一端にはVAP素子205、205の保持枠207a、207bに形成されたロックピン212、212を係合する円錐状のロック溝222b、222bが形成されている。ロックアーム222の他端にはバネ止め突起222cが設けられており、突起222cにはロックアーム222の回転軸に巻装されたバネ223の一端が当接され、ロック溝222bが保持枠207a、bのロックピン212を係合する方向に付勢されている。また左眼側のVAPユニット203側のロックアーム222上には上シェル102にその一端が回転自在に取り付けられた振れ補正操作レバー224が配置されている。操作レバー224の一端の回転軸にはバネ225が巻装されており、バネ225の付勢力により上シェル102に当接する方向に押圧されている。また操作レバー224の他端側のVAPユニット203に対向する面にはロックアーム222に接触し操作レバー224が押圧操作されたときにロックアーム222のロック溝222bとVAP素子205のロックピン212との係合が解除されるよう作用する操作突起224aが形成されている。また操作レバー224の操作突起224aの近傍にはスイッチ作動突起224bが形成されており、突起224bは操作レバー224が押圧操作されたときに、操作レバー224とVAP素子205との間に配置された振れ補正操作スイッチ226を作動させるように構成されている。
【0015】
また上シェル102および下シェル104の接眼側には接眼プリズムユニット保持プレート230が配設されており、保持プレート230には接眼プリズムユニット本体300R、300Lを回転自在に保持する保持穴230a、230aが形成されている。保持穴230a、230aには接眼プリズムユニット本体300R、300Lの筒状の接続鏡筒302、302が挿入されており、接続鏡筒302、302にはシェル102、103側から保持プレート230を介して取付リング304、304がネジ止めされ回転自在に取り付けられている。また取付リング304、304には扇形状の互いに噛合する連動ギア板306、306が固定されており、接眼プリズムユニット本体300R、300Lを回転させると双眼鏡本体100に対して同一角度に回転しとれにより眼幅調整を行えるようになっている。
【0016】
接眼プリズムユニット本体300R、300Lは上述した接続鏡筒302とプリズム収容鏡筒308と接眼鏡筒310とから構成されている。プリズム収容鏡筒308内には、VAPユニット202、203を通過した光により形成される光学像を上下反転させる第1プリズム312とこの第1プリズム312からの光により形成される光学像を左右反転させる第2のプリズム314とが収容され保持されている。また接眼鏡筒310内には接眼レンズER、ELが収容され保持されている。
【0017】
また、図3に示したように、双眼鏡本体100内の対物レンズユニット106R、Lとの間には、バッテリー収容部110が形成されており、収容部110にはVAPユニット202、203の駆動電力を供給する充電バッテリー(図示省略)が収容されている。収容部110にはバッテリー取り出し用の押し出しバネ112とバッテリーの接点に接続されるコネクタ114とバッテリー取り出し口の開閉蓋116とが設けられている。
【0018】
さらに図3に示したように、上シェル102には基板収容部102aが形成されており、基板収容部102a内にはVAPユニット202、203の駆動を制御する制御回路基板410が収容され保持されている。制御回路基板410にはバッテリーコネクタ114からの電力供給用のリード線(図示省略)が接続されている。さらに制御回路基板410には、VAPユニット202、203の振れ検出センサ210、211から振れ検出信号が入力され、この信号に基づいてVAPユニット202、203を駆動しVAP素子205、205を傾動させて観察すべき光線を振れを補正する方向に傾けるように駆動制御する。
【0019】
上シェル102の基板収容部102aには収容部をカバーするシェルカバー102bが配設されている。シェルカバー102bには、図1に示したように、振れ補正モード切換スイッチ412とバッテリーチェックボタン414とバッテリー残量表示LED416とが配設されこれらは上述の制御回路基板410に電気的に接続されている。振れ補正モード切換スイッチ412はOFFモード、通常振れ補正モード、パンニング状態振れ補正モードの3モードがある。バッテリーチェックボタン414を押圧操作すると充電バッテリー400の残量が制御回路基板410によりチェックされ、検出されたバッテリー残量に応じた表示がバッテリー残量表示LED416により行われる。
【0020】
図7は制御回路基板410と充電バッテリー収容部110の配置を示す透視斜視図で一対の対物レンズユニット106R、106Lの間に効率よく配置されている。
【0021】
次に、上述の実施例の双眼鏡の操作および動作について説明する。
【0022】
まず、観察者は双眼鏡本体100を把持し、接眼プリズムユニット本体300R、300Lを内側あるいは外側に回して眼幅調整を行う。次に、観察者は右眼を閉じ左眼を開いた状態で視度・フォーカス調整機構108のフォーカス調整リング193を回転させて左眼側の焦点合わせを行う。そして、左眼を閉じ右眼を開いた状態で視度・フォーカス調整機構108の視度調整リング189を回転させて右眼側の焦点合わせを行う。この状態で左右の焦点合わせおよび視度調整が行われたこととなり、これで観察者は双眼鏡を介して観察を良好に行うことができる。
【0023】
また、双眼鏡本体100の振れ補正モード切換スイッチ412を通常あるいはパンニング状態の振れ補正モードに設定した状態で、振れ補正操作レバー224を押圧操作すると、左眼側のVAPユニット203側のロックアーム222が押圧されるとともに振れ補正操作スイッチ226が押圧されてON状態となる。これにより連動アーム221が作動され各ロックアーム222のロック溝222bとVAP素子205のロックピン212との係合が解放されるとともに、VAPユニット202、203が振れ補正状態となり振れ検出センサ210、211の出力に基づいてVAP素子205、205が傾動され、手ぶれによる像の振れが補正された像を観察できる。またこの振れ補正状態から振れ補正操作レバー224の押圧を解除するとロックアーム222のバネ223および操作レバー224のバネ225の付勢力によりロックアーム222および操作レバー224が復帰し、ロック溝222bとロックピン212とが係合されてVAPユニット202、203がロックされるとともに、振れ補正操作スイッチ226がOFF状態にされ、これによりVAPユニット202、203への電力供給が停止される。なお、この状態でVAPユニット202、203はロック機構220のロックにより透明板205a、205aが平行状態に保持される。
【0024】
なお、振れ補正操作レバー224の押圧操作および押圧解除の動作におけるロック機構220のロック作用タイミングおよび振れ補正操作スイッチ226のON、OFFのタイミングは、上述の説明のように押圧したときロック機構220のロックが解除され、続いて振れ補正操作スイッチ226がON状態となり、押圧解除すると振れ補正操作スイッチ226がOFF状態となりさらにロック機構220がロック状態となる。あるいは、ロック機構220のロックと振れ補正操作スイッチ226のON、OFF切換タイミングが同時でもよく、さらに操作レバー224が押圧されたときスイッチ226が最初にON状態となりVAPユニット202、203のVAP素子205の平行状態が保持された状態で次いでロック機構220のロックを解除しこの後VAPユニット202、203により振れ補正状態となる。また操作レバー224の押圧を解除するとVAPユニット202、203のVAP素子205、205の平行状態が保持された後ロック機構220によるロックが作動するようにしてもよい。なおこの場合は、振れ補正操作スイッチ226にたとえば2段スイッチを用いることがよい。
【0025】
図8は、上述の前提技術例とは別の前提技術例で、制御回路基板510を充電バッテリー収容部110の横に並べて配置したものである。
【0026】
図9は、本発明の実施例を示す透視斜視図で、制御回路基板610と充電バッテリー収容部110が、一対の対物レンズユニットの並設方向については該一対の対物レンズユニット間に配置されているとともに、制御回路基板610は、光軸方向については一対の対物レンズユニットと正立プリズムとの間に配置されている。さらに、制御回路基板610は充電バッテリー収容部110の後方(観察側)に、対物レンズの光軸と直交するように配置されている。図1ないし図3で説明した実施例では振れセンサ210、211を、制御回路基板410とは別に配置していたが、これは振れセンサを光軸と直交させて配置する必要があるためであり、これに対し図9に示す本実施例では、制御回路基板610の上に振れセンサを配置することができる。なお制御回路基板610は光軸を遮らないように基板の両側を、概略光束に沿って半円形状に設けている。
【0027】
このように、上述した実施例の観察用光学機器である双眼鏡では可変頂角プリズムにより良好な像安定状態を得ることができるとともに、普通の双眼鏡に比べて、それほど大型化せずに機器を構成することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の観察用光学機器は、良好な像安定状態を得ることができ、機器の小型化を有効に図ることが可能である。
【0029】
【0030】
すなわち、光学機器本体を大型化せずに、振れ補正制御を行う回路基板やバッテリーを内蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の前提技術例の双眼鏡を示す斜視図
【図2】
図1の平面断面図
【図3】
図1の正面断面図
【図4】
図1、図2の視度・フォーカス調整機構を示す一部平面断面図
【図5】
ロック機構及びVAPユニットを示す斜視図
【図6】
ロック機構を示す正面図
【図7】
図1の透視斜視図
【図8】
本発明の前提技術例の双眼鏡を示す透視斜視図
【図9】
本発明の実施例の双眼鏡を示す透視斜視図
【符号の説明】
100…双眼鏡本体
110…充電バッテリー収容部
106R、L…対物レンズユニット
202、203…VAPユニット
220…ロック機構
224…振れ補正操作レバー
300R、L…接眼プリズムユニット
400…充電バッテリー
410…制御回路基板
412…振れ補正モード切換スイッチ
510…制御回路基板
610…制御回路基板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-03-09 
出願番号 特願平5-333580
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田部 元史  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 向後 晋一
町田 光信
登録日 2002-11-22 
登録番号 特許第3372622号(P3372622)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 観察用光学機器  
代理人 水野 勝文  
代理人 岸田 正行  
代理人 岸田 正行  
代理人 小花 弘路  
代理人 水野 勝文  
代理人 水本 敦也  
代理人 小花 弘路  
代理人 水本 敦也  

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