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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
管理番号 1098064
異議申立番号 異議2003-70317  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-09-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-05 
確定日 2004-02-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3310269号「薬剤包装装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3310269号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3310269号は、平成6年10月21日に出願した特願平6-256542号の一部を平成11年2月15日に新たな特許出願とした特願平11-35957号の一部を、さらに、平成13年1月26日に新たな特許出願としたものであって、平成14年5月24日に設定登録され、その後、申立人村田 元より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年6月30日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
そこで、特許権者が平成15年6月30日に行った訂正請求について検討する。請求の趣旨は、特許第3310269号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正するものであり、訂正の内容は次のとおりである。

(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の第10行目から第11行目の「前記錠剤容器に設けられた識別手段と、前記錠剤供給手段に装着された薬剤容器の識別手段より薬剤データを読み取る読取手段と、」を削除する。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1の第14行目の「前記錠剤供給手段」とあるのを、「前記錠剤処理手段」と訂正する。
ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1の第14行目の「薬剤容器」とあるのを、「錠剤容器」と訂正する。
エ.訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1の第16行目から第17行目の「前記錠剤供給手段」とあるのを、「前記錠剤処理手段」と訂正する。
オ.訂正事項e
特許請求の範囲の請求項2の第3行目の「処方に」とあるのを、「これにより、処方に」と訂正する。
カ.訂正事項f
特許請求の範囲の請求項2の第5行目の「ように」とあるのを、「ことを可能に」と訂正する。
カ.訂正事項g
明細書の段落0005の記載を削除する。
キ.訂正事項h
明細書の段落0006の記載を削除する。
ク.訂正事項i
明細書の段落0007の第7行目から第9行目の「前記錠剤容器に設けられた識別手段と、前記錠剤供給手段に装着された薬剤容器の識別手段より薬剤データを読み取る読取手段と、」を削除する。
ケ.訂正事項j
明細書段落0007の第11行目の「前記錠剤供給手段」とあるのを、「前記錠剤処理手段」と訂正する。
サ.訂正事項k
明細書段落0007の第11行目の「薬剤容器」とあるのを、「錠剤容器」と訂正する。
シ.訂正事項l
明細書段落0007の第13行目の「前記錠剤供給手段」とあるのを、「前記錠剤処理手段」と訂正する。
ス.訂正事項m
明細書段落0008の第2行目の「処方に」とあるのを、「これにより、処方に」と訂正する。
セ.訂正事項n
明細書段落0008の第5行目の「ように」とあるのを、「ことを可能に」と訂正する。
ソ.訂正事項o
明細書段落0045の第1行目の「(4)第4実施例」とあるのを、「(4)」と訂正する。
タ.訂正事項p
明細書段落0049の第1行目の「(5)第5実施例」とあるのを、「(5)」と訂正する。
チ.訂正事項q
明細書段落0050の第1行目の「(6)第6実施例」とあるのを、「(6)」と訂正する。
ツ.訂正事項r
図面の簡単な説明の図10の説明の「錠剤」とあるのを、「散薬」と訂正する。
テ.訂正事項s
図面の簡単な説明の図14の説明の「第4実施例の」とあるのを、「他の」と訂正する。
ト.訂正事項t
図面の簡単な説明の図15の説明の「第4実施例の」とあるのを、「他の」と訂正する。
ナ.訂正事項u
図面の簡単な説明の図16の説明の「第5実施例の」とあるのを、「他の」と訂正する。
ニ.訂正事項v
図面の簡単な説明の図17の説明の「第6実施例の」とあるのを、「他の」と訂正する。
ヌ.訂正事項w
図面の簡単な説明の図18の説明の「第6実施例の」とあるのを、「他の」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア.訂正事項a、e乃至wについて
訂正事項aは、発明を特定するための事項の記載が重複しているために、本件特許発明が不明瞭であったものを、当該記載を削除することにより、明りょうとするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項e及びfは、「錠剤収納棚」と「錠剤処理手段」との関係を明りょうにするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項g及びhは、本件特許発明と無関係な記載のために、本件特許発明が不明瞭であったものを、当該記載を削除することにより、本件特許発明を明りょうとするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項i乃至nは、特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項o乃至wは、実施例でないものを実施例としていたために、本件特許発明が不明瞭であったものを、当該訂正により明りょうとするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

また、上記訂正事項a、e乃至wは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ.訂正事項b、c、dについて
訂正事項b、c、dは、特許請求の範囲の請求項1の記載の「錠剤が収容された錠剤容器を装着して処方データに応じた量の錠剤を1分包づつ供給する比較的少数の錠剤処理手段」、「前記錠剤容器に設けられた識別手段」との記載からみて、「前記錠剤処理手段」、「錠剤容器」をそれぞれ「前記錠剤供給手段」、「薬剤容器」と誤記をしたものを訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。
また、上記訂正事項b、c、dは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
(1)異議申立ての概要
特許異議申立人村田 元は、特許第3310269号の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であり、したがって同請求項1及び2に係る特許は、取り消されるべきものであり、また、同請求項1及び2に係る発明の「当該錠剤容器の予め固定された装着場所を前記表示手段で表示するようにした」という記載は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項ではないので、特許法第17条の2第2項の規定により特許を受けることができない発明であり、その特許は、取り消されるべきものであり、また、同請求項1及び2に係る発明は、特許法第36条第5項の規定により特許を受けることができない発明であり、その特許は、取り消されるべきものである旨主張している。

(2)本件発明
上記2.で示したように上記訂正は認められるから本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】処方に応じた薬剤を選択的に供給して包装する薬剤包装装置において、
処方データの入力手段と、
処方データに応じた量の散薬を1分包づつ分配して供給する散薬処理手段と、該散薬処理手段の上方後部に設けられ、錠剤が収容された錠剤容器を装着して処方データに応じた量の錠剤を1分包づつ供給する比較的少数の錠剤処理手段と、
前記散薬処理手段および錠剤処理手段から供給される薬剤を1分包づつ包装する包装手段と、
前記錠剤容器の装着場所を表示する表示手段と、
前記錠剤容器に設けられた識別手段と、
前記錠剤処理手段に装着された錠剤容器の識別手段より薬剤データを読み取る読取手段と、
前記読取手段の読取結果に基づいて、処方に該当する錠剤容器が前記錠剤処理手段に装着されているか否かを判断する手段とを備え、
処方に該当する錠剤が収容された錠剤容器が装着されていなければ、当該錠剤容器の予め固定された装着場所を前記表示手段で表示するようにしたことを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】前記薬剤包装装置とは離れた場所に、錠剤が収容された多数の錠剤容器を収納する錠剤収納棚を設置し、
これにより、処方に応じた錠剤が収容された錠剤容器を前記錠剤収納棚から取り出して、空いた錠剤処理手段に装着し、あるいは既に装着している錠剤容器と入れ換えて装着し、取り外した錠剤容器は前記錠剤収納棚に戻すことを可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。」

(3)引用刊行物
刊行物1:特開昭60-82130号公報(異議申立人村田元提出の甲第1号証)
刊行物2:特開昭60-172602号公報( 同 提出の甲第4号証)

当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物1(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下のような事項が記載されている。
記載ア.「多数の錠剤フィーダと、供給すべき錠剤に関する情報を入力する手段と、任意の前記錠剤フィーダを設置可能で、かつ作動時に、設置された錠剤フィーダから錠剤を排出させる多数の排出部材とを具えた錠剤供給装置において、前記入力手段を待行列可能に構成し、前記各排出部材にそれに設置された錠剤フィーダを識別する手段を設け、前記入力手段による錠剤情報と前記各識別手段による識別情報とを照合して、供給すべき錠剤情報に対応した排出部材を作動させる手段と、前記入力手段による待行列情報に対応した錠剤フィーダが前記各排出部材に設置されていないときそのことをあらわす手段と、前記入力手段により待行列情報において使用されない錠剤フィーダをあらわす手段とを設けたことを特徴とする錠剤供給装置。」(特許請求の範囲請求項5)
記載イ.「取扱う錠剤の種類に比べて排出部材の個数を少なくしてそれにより装置全体を小型化することのできる錠剤供給装置を提供する」(公報第2頁左下欄第14〜17行)
記載ウ.「各錠剤フィーダ(1)の底面には、・・・永久磁石片(ラバーマグネット)(12)が配設され、・・・また永久磁石片(13)(13)・・・は錠剤フィーダ(1)の識別情報を永久磁石片(12)による原点位置を基準として円周方向に8ビットのBCDコードで示すものである。」(公報第3頁左上欄第3〜13行)
記載エ.「錠剤フィーダ(1)(1)・・・から排出された錠剤は図示しないシュート等を落下し、共通ホッパ(4)の下端に設けた供給口(5)を通って、たとえば包装装置(6)の図示しない連続した袋状薬包紙に投入されて分包されるようになっている。」(公報第2頁右下欄第10〜14行)
記載オ.「(22)は処方メモリ(21)の待行列において錠剤の排出が予定された錠剤フィーダ(1)が排出部材(3)(3)・・・のどれにも設置されていないときその錠剤の品名等を表示する表示器、(23)(23)・・・はそれぞれ排出部材(3)(3)・・・に設けられたLEDであって、排出動作中の錠剤フィーダ(1)を設置している排出部材(3)のLED(23)は点灯し、また処方メモリ(21)の待行列において錠剤の排出が予定されていない(すなわち使用されない)錠剤フィーダ(1)(1)・・・を設置している排出部材(3)(3)・・・のLED(23)(23)・・・は点滅するようになっている。」(公報第3頁右下欄第5〜15行)」
記載カ.「表示器(22)に錠剤の品名等が表示された場合には、調剤オペレータがLED(23)の点滅している排出部材(3)に設置された錠剤フィーダ(1)を取外し、これに代えて、表示器(22)に表示されている錠剤が収容された錠剤フィーダ(1)を当該排出部材(3)に設置することによって、処方メモリ(21)の待行列にしたがって各錠剤の排出動作を中断なく続行できることとなり、したがって、取扱う錠剤フィーダ(1)(1)・・・の個数に比べて排出部材(3)(3)・・・の個数を少なくしてそれにより装置全体を小型化できることとなる。」(公報第4頁左上欄第2〜12行)
記載キ.「各排出部材に設置された錠剤フィーダを識別してそれにより供給すべき錠剤を間違いなく排出させることができ、そのため、たとえば錠剤の補給のため錠剤フィーダが排出部材から取外されて補給されたのちもとに戻される際別の排出部材に設置されても、間違いなく当該錠剤フィーダから錠剤を排出させることができて過誤投薬を未然にかつ確実に防止することができ、また、取扱う錠剤の種類に比べて排出部材の個数を少なくしてそれにより装置全体を小型化することができる等のすぐれた効果を有するものである。」(公報第4頁左下欄第4〜15行)

上記記載ア及びエによると、供給すべき錠剤に関する情報を入力する手段から得られた錠剤情報と各識別手段による識別情報とを照合して、供給すべき錠剤情報に対応した排出部材を作動させる手段により、錠剤を排出し、分包して包装しているので、処方に応じた量の錠剤を選択的に供給して1分包づつ包装する錠剤包装装置が、引用刊行物1には記載されているといえる。
上記記載アによると、排出部材に錠剤フィーダが設置され、排出部材により錠剤フィーダから錠剤が1分包づつ供給されているといえ、この排出部材は、記載イによると、取扱う錠剤の種類に比べて排出部材の数が比較的少数のものといえる。
また、記載ア、オによると、処方メモリの待行列において錠剤の排出が予定された錠剤フィーダが排出部材のどれにも設置されていないとき、その錠剤の品名等を表示することから、識別する手段の読取結果に基づいて、処方に該当する錠剤フィーダが排出部材に装着されているか否かを判断する手段を備えていることは、明らかである。
さらに、上記記載ア、カによると、待行列において錠剤の排出が予定されていない錠剤フィーダを設置している排出部材のLEDを点滅させることにより、調剤オペレータがLEDの点滅している排出部材に設置された錠剤フィーダを取外し、これに代えて、表示器に表示されている錠剤が収容された錠剤フィーダを当該排出部材に設置するものであるので、LEDは、錠剤フィーダの装着場所を表示しているといえる。

したがって、上記記載ア〜キによると、引用刊行物1には、「処方に応じた錠剤を選択的に供給して包装する錠剤包装装置において、
供給すべき錠剤に関する情報を入力する手段と、
錠剤が収容された錠剤フィーダを装着して処方データに応じた量の錠剤を1分包づつ供給する比較的少数の排出部材と、
排出部材から供給される錠剤を1分包づつ包装する包装装置と、
錠剤フィーダの装着場所をあらわす、待行列情報において使用されない錠剤フィーダを表示するLEDと、
錠剤フィーダに設けられた永久磁石片と、
排出部材に装着された錠剤フィーダの永久磁石片より薬剤のデータを読み取る読取手段と、
読取手段の読取結果に基づいて、処方に該当する錠剤フィーダが排出部材に装着されているか否かを判断する手段とを備え、
処方に該当する錠剤が収容された錠剤フィーダが装着されていなければ、待行列において錠剤の排出が予定されていない錠剤フィーダを設置している排出部材のLEDを点滅させる錠剤包装装置。」の発明(以下、「引用刊行物1記載の発明」。)が記載されている。

当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物2(以下、「引用刊行物2」という。)には、処方データに応じた量の散薬を1分包づつ分配して供給する散薬処理手段の上方後部に錠剤処理手段を並置することが記載されている(第1、2図参照。)。

(4)対比・判断
(4)-1.本件発明1について
本件発明1と引用刊行物1記載の発明を対比すると、引用刊行物1記載の発明における「錠剤」、「供給すべき錠剤に関する情報」、「入力する手段」、「錠剤フィーダ」、「排出部材」、「包装装置」、「LED」、「永久磁石片」は、それぞれ、本件発明1における「薬剤」、「処方データ」、「入力手段」、「錠剤容器」、「錠剤処理手段」、「包装手段」、「表示手段」、「識別手段」に相当する。
したがって、本件発明1と引用刊行物1記載の発明は、本件発明1の用語を用いて表現すると、両者は、「処方に応じた薬剤を選択的に供給して包装する薬剤包装装置において、
処方データの入力手段と、
錠剤が収容された錠剤容器を装着して処方データに応じた量の錠剤を1分包づつ供給する比較的少数の錠剤処理手段と、
錠剤処理手段から供給される薬剤を1分包づつ包装する包装手段と、
前記錠剤容器の装着場所を表示する表示手段と、
前記錠剤容器に設けられた識別手段と、
前記錠剤処理手段に装着された錠剤容器の識別手段より薬剤データを読み取る読取手段と、
前記読取手段の読取結果に基づいて、処方に該当する錠剤容器が前記錠剤処理手段に装着されているか否かを判断する手段とを備え、
処方に該当する錠剤が収容された錠剤容器が装着されていなければ、当該錠剤容器の装着場所を前記表示手段で表示するようにした薬剤包装装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1
本件発明1は、処方データに応じた量の散薬を1分包づつ分配して供給する散薬処理手段を有するとともに、散薬処理手段の上方後部に錠剤処理手段を設けているのに対し、引用刊行物1記載の発明では、散薬処理手段を有していない点。

・相違点2
本件発明1は、処方に該当する錠剤が収容された錠剤容器が装着されていなければ、当該錠剤容器の予め固定された装着場所を表示手段で表示するのに対し、引用刊行物1記載の発明では、処方メモリの待行列において錠剤の排出が予定されていない装着場所を表示する、すなわち当該錠剤容器の装着場所は、予め固定されていない点。

次に、相違点について検討する。
・相違点1について
処方データに応じた量の散薬を1分包づつ分配して供給する散薬処理手段の上方後部に錠剤処理手段を並置することは、引用刊行物2に記載されているように公知であり、また、錠剤と散薬の両者の分包を行えるようにすることも当業者において、当然に想到し得る課題である。
したがって、引用刊行物1記載の発明において、相違点1における本件発明1の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

・相違点2について
本件発明1では、装着場所を「予め固定」すればよく、その具体的な事項は、本件発明1において何等特定されていない。
すなわち、装着場所を予め固定しさえすればよく、その決め方も当業者が適宜決め得るものと認められる(例えば、下方から、例えば、上から、例えば、薬の名称の50音順、例えば、各錠剤の属性に応じた適正装着場所等々)。
一方、引用刊行物1記載の発明では、処方メモリの待行列において錠剤の排出が予定されていない(すなわち使用されない)装着場所を表示しており(上記記載オ、カ参照)、このことは、装着場所を予め固定せず、その都度可変的に求めているものといえる。
そうすると、引用刊行物1記載の発明において、従来、可変的に錠剤容器の装着場所を表示していたものを、単に「予め固定」することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明1は、錠剤処理手段における装着場所を「予め固定」することにより、格別な効果を奏するものとも認められない。

したがって、本件発明1は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)-2.本件発明2について
また、本件発明2は、本件発明1を「前記薬剤包装装置とは離れた場所に、錠剤が収容された多数の錠剤容器を収納する錠剤収納棚を設置し、これにより、処方に応じた錠剤が収容された錠剤容器を前記錠剤収納棚から取り出して、空いた錠剤処理手段に装着し、あるいは既に装着している錠剤容器と入れ換えて装着し、取り外した錠剤容器は前記錠剤収納棚に戻すことを可能にしたこと」でさらに特定したものである。
しかしながら、薬剤包装装置と離れた場所に、単に錠剤容器を収納する錠剤収納棚を設けることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件発明2は、(4)-1に記載したのと同様の理由により、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過装置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
薬剤包装装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 処方に応じた薬剤を選択的に供給して包装する薬剤包装装置において、
処方データの入力手段と、
処方データに応じた量の散薬を1分包づつ分配して供給する散薬処理手段と、
該散薬処理手段の上方後部に設けられ、錠剤が収容された錠剤容器を装着して処方データに応じた量の錠剤を1分包づつ供給する比較的少数の錠剤処理手段と、
前記散薬処理手段および錠剤処理手段から供給される薬剤を1分包づつ包装する包装手段と、
前記錠剤容器の装着場所を表示する表示手段と、
前記錠剤容器に設けられた識別手段と、
前記錠剤処理手段に装着された錠剤容器の識別手段より薬剤データを読み取る読取手段と、
前記読取手段の読取結果に基づいて、処方に該当する錠剤容器が前記錠剤処理手段に装着されているか否かを判断する手段とを備え、
処方に該当する錠剤が収容された錠剤容器が装着されていなければ、当該錠剤容器の予め固定された装着場所を前記表示手段で表示するようにしたことを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】 前記薬剤包装装置とは離れた場所に、錠剤が収容された多数の錠剤容器を収納する錠剤収納棚を設置し、
これにより、処方に応じた錠剤が収容された錠剤容器を前記錠剤収納棚から取り出して、空いた錠剤処理手段に装着し、あるいは既に装着している錠剤容器と入れ換えて装着し、取り外した錠剤容器は前記錠剤収納棚に戻すことを可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は薬剤包装装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、錠剤等の薬剤を収容した多数の薬剤カートリッジをそれぞれ薬剤フィーダに装着し、各薬剤フィーダから選択的に薬剤を供給して1分包づつ自動的に包装する薬剤包装装置が提供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の薬剤包装装置は、多数の薬剤フィーダが円筒形や引出し形に配置されて非常に大型である。このため、小さな病院の薬剤室や薬局に設置するには多き過ぎるうえ、薬剤カートリッジの抜き差しが困難である。
また、各薬剤カートリッジはそれが装着される薬剤フィーダが予め定められている。したがって、例えば薬剤補充のために複数の薬剤カートリッジを取り出したときには、それらが間違った薬剤フィーダに装着されて処方と異なる薬剤が包装される恐れがある。
さらに、従来の薬剤包装装置では、各薬剤フィーダで供給される薬剤の名称が予め登録されている。このため、ある薬剤フィーダに装着されている薬剤カートリッジを他の薬剤のものと交換する毎に、薬剤の名称を入力し直さなければならず、煩雑である。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、コンパクトで取り扱いが容易な薬剤包装装置を提供することを目的とする。
【0005】
【0006】
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、第1の発明は、処方に応じた薬剤を選択的に供給して包装する薬剤包装装置において、処方データの入力手段と、処方データに応じた量の散薬を1分包づつ分配して供給する散薬処理手段と、該散薬処理手段の上方後部に設けられ、錠剤が収容された錠剤容器を装着して処方データに応じた量の錠剤を1分包づつ供給する比較的少数の錠剤処理手段と、前記散薬処理手段および錠剤処理手段から供給される薬剤を1分包づつ包装する包装手段と、前記錠剤容器の装着場所を表示する表示手段と、前記錠剤容器に設けられた識別手段と、前記錠剤処理手段に装着された錠剤容器の識別手段より薬剤データを読み取る読取手段と、前記読取手段の読取結果に基づいて、処方に該当する錠剤容器が前記錠剤処理手段に装着されているか否かを判断する手段とを備え、処方に該当する錠剤が収容された錠剤容器が装着されていなければ、当該錠剤容器の予め固定された装着場所を前記表示手段で表示するようにしたものである(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記薬剤包装装置とは離れた場所に、錠剤が収容された多数の錠剤容器を収納する錠剤収納棚を設置し、これにより、処方に応じた錠剤が収容された錠剤容器を前記錠剤収納棚から取り出して、空いた錠剤処理手段に装着し、あるいは既に装着している錠剤容器と入れ換えて装着し、取り外した錠剤容器は前記錠剤収納棚に戻すことを可能にしたものである(請求項2)。
【0009】
第3の発明は、前記第2の発明において、前記錠剤処理手段と前記錠剤収納棚にそれぞれ装着または収納される錠剤容器を識別する識別装置と、処方データに対応する錠剤の錠剤容器の装着または設置場所を探査する探査手段と、該探査手段により探査された錠剤容器の場所を表示する表示手段とをさらに備えたものである(請求項3)。
【0010】
第4の発明は、前記第2の発明において、前記錠剤処理手段と前記錠剤収納棚にそれぞれ装着または収納された錠剤容器の場所を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された錠剤容器の記憶場所に基づいて、処方データに対応する錠剤の錠剤容器の装着または設置場所を探査する探査手段と、該探査手段により探査された錠剤容器の場所を表示する表示手段とをさらに備えたものである(請求項4)。
【0011】
【実施例】
次に、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
(1)第1実施例
図1は本発明に係る薬剤包装装置の全体配置を示す。本装置は、錠剤と散薬の両方を包装することができる装置であり、錠剤及び散薬の収納場所が任意で、錠剤の装着場所が固定されている例である。
この薬剤包装装置は、錠剤収納棚1、散薬収納棚2、包装装置3、制御装置4から構成されている。
【0012】
錠剤収納棚1には、多数の錠剤カートリッジ11収納されている。
各錠剤カートリッジ11は、図2,図3に示すように、摺鉢状の底を備えた錠剤を収容するケース12と、該ケース12の底に回転自在に取り付けられ外周に複数の錠剤ポケット13を有するロータ14と、前記ケース12を着脱可能に蓋する蓋体15とからなっている。
【0013】
また、この錠剤カートリッジ11には、図2,図4に示すように、内部に収容された錠剤を識別する識別装置16が設けられている。この識別装置16は、反射板からなり、後述する読取装置17,40のそれぞれの発光素子17a,40aからの光を反射する部分と反射しない部分(図4において○で示す)を設けることによって、錠剤を識別化するようになっている。
【0014】
錠剤収納棚1の各収納場所には、図2(A)に示すように、読取装置17が埋設されるとともに、表示ランプ18が正面から視認可能に取り付けられている。
前記読取装置17は、本発明の読取手段を構成するものであり、発光素子17aと受光素子17bを一体にした複数のユニットからなっている。そして、図7に示すように、前記錠剤カートリッジ11が収納場所に載置されたときに、発光素子17aから放射した光を錠剤カートリッジ11の識別装置16の反射板で反射させて受光素子17bで受光することにより、錠剤データを読み取るようになっている。
前記表示ランプ18は、本発明の収納場所表示手段を構成するものである。
【0015】
散薬収納棚2には、多数の散薬瓶21が載置収納されている。
各散薬瓶21の底には、図5に示すように、台座22が取り付けられている。台座22の下面に形成された凹部22aには、電池23と、該電池23を電源とする発信器24と、前記電池23から発信器24への電源ラインを断続するスイッチ25とからなる散薬識別装置26が組み込まれている。凹部22aは蓋体22bによって蓋されている。
前記スイッチ25は、散薬瓶21が棚から取り出されて傾くとオンし、棚に戻されるとオフするようになっている。前記発信器24は、当該散薬瓶21に収容された散薬の名称をコード化された識別信号として出力するものである。
【0016】
前記散薬収納棚2の各棚の収納場所には、図8に示すように、受信器27が埋設されるとともに、表示ランプ28が正面から視認可能に取り付けられている(図1参照)。受信器27は、本発明の読取手段を構成するものであり、前記散薬瓶21が収納場所に載置されたときに散薬瓶21の識別装置26の発信器24より識別コードを受信して散薬データを読み取るようになっている。表示ランプ28は、本発明の収納場所表示手段を構成するものである。
また、散薬収納棚2のテーブルには、図1に示すように、散薬を調剤するための調剤容器Bや計量器Mが載置されるとともに、受信器29が埋設されている。この受信器29は、本発明の読取手段を構成している。
【0017】
包装装置3は、図1,図6に示すように、錠剤処理機構31と、散薬処理機構32と、包装機構33とからなっている。
【0018】
錠剤処理機構32は、複数の錠剤フィーダ34と錠剤ホッパ35とからなっている。
錠剤フィーダ34は、いわゆる円筒形のもので、回転軸oの回りに複数個環状に配置され、かつ、上下に複数段配置されて、当該回転軸oの回りに回転自在になっている。各錠剤フィーダ34には、前記錠剤収納棚1に収納された錠剤カートリッジ11が装着されるようになっている。この錠剤フィーダ34には比較的少数設けられ、必要な錠剤カートリッジ11しか装着できないようになっている。大部分の錠剤カートリッジ11は前記錠剤収納棚1に収納されている。
【0019】
各錠剤フィーダ34には、図2(B)に示すように、錠剤カートリッジ11が装着されたときに当該カートリッジ11のロータ14の軸とギヤ36を介して連結される駆動モータ37と、カートリッジ11から排出される錠剤を中央通路38に導くシュート39とが設けられている。
【0020】
また、各錠剤フィーダ34には、カートリッジ11の識別装置16と対応する位置に配置されて当該識別装置16より錠剤データを読み取る読取装置40と、表示ランプ41とが設けられている。前記読取装置40は、本発明の読取手段であり、図2(A)に示す前記錠剤収納棚1の読取装置17と同一の構成である。すなわち、前記錠剤カートリッジ11が錠剤フィーダ34に装着されたときに錠剤カートリッジ11の識別装置16の反射板に光を送る発光素子40aと、当該反射板で反射した光を受ける受光素子40bとを一体化した複数のユニットからなっている。表示ランプ41は、本発明の装着場所表示手段を構成するものである。
【0021】
錠剤ホッパ35は、図6に示すように、前記錠剤フィーダ34から供給される錠剤を後述する包装機構33の包装ホッパ55に導くようになっている。
【0022】
散薬処理機構32は、図6に示すように、2つの散薬ホッパ42a,42bと、外周に環状溝からなる分配皿43を備えた2つの分配盤44a,44bと、分割機45とから構成されている。
【0023】
各散薬ホッパ42a,42bは、投入された散薬を分配盤44a,44bの分配皿43上に均等に供給するために上下方向に振動するシュート46を備えている。また、散薬ホッパ42a,42bおよびそれらのシュート46は、いずれかの分配盤44a,44bの分配皿43に散薬を供給することができるように、上下方向に昇降可能になっている。さらに、各散薬ホッパ42a,42bには、それぞれの空き状況を検出する検出器47a,47bと、散薬を投入可能なホッパを表示する表示ランプ48a,48bとが設けられている。
【0024】
2つの分配盤44a,44bは、上下重ねて配置され、それぞれ回転軸a,bの回りに独立して回転可能であり、またそれらの軸a,bの中間に設けた共通の旋回軸cの回りに旋回可能であり、さらに上下方向に一体に昇降可能になっている。これにより、散薬ホッパ42a,42bから供給される散薬が分配皿43に分配されるように分配皿43の一端が散薬ホッパ42a,42bの下方に位置する分配位置と、分配皿43上の散薬が分割機45によって定量ずつ分割して掻き出されるように分割機45下方に位置する分割位置とに移動するようになっている。
【0025】
分割機45は、前記分配盤44a,44bの分配皿43の曲面に一致する径を有する円板49の前面に掻出し板50を設け、該円板49が前記分配皿36に嵌入する位置とそこから退避する位置とに移動するようにアーム51によって起伏可能にするとともに、該円板49を回転駆動可能にしたものである。
【0026】
包装機構33は、図6に示すように、ロール52に巻回された包装紙53を3角板54を介して長手方向に2つ折りし、該2つ折り部分に前記錠剤処理機構31又は前記散薬処理機構32から包装ホッパ55を介して供給される錠剤及び/又は散薬を1包分ずつ投入した後、ヒートシール装置56によって当該2つ折り部分以外の3辺を溶着して包装して、外部に排出するものである。なお、前記包装ホッパ55の上方開口部には、前記散薬処理機構32の分割機45から排出される散薬および前記錠剤処理機構31から排出される錠剤をそれぞれ一時的に受け止めるドア57a,57bが設けられている。
【0027】
制御装置4は、図7,図8に示すように、処方表示部61及び操作キー62と、収納場所記憶部63と、装着場所記憶部64と、適正装着場所記憶部65と、中央演算処理部(CPU)66とからなっている。
【0028】
処方表示部61は、ホストコンピュータ67から入力される処方箋に従って処方データを表示するものである。
操作キー62は、前記処方表示部61に表示された包装順序をオペレータ自らの判断で変更するためのものである。
【0029】
収納場所記憶部63は、前記錠剤収納棚1(図7参照)における錠剤カートリッジ11の収納場所と、前記散薬収納棚2(図8参照)における散薬瓶21の収納場所とを記憶しておくものである。
装着場所記憶部64は、前記各錠剤カートリッジ11がいずれの錠剤フィーダ34に装着されているかを記憶しておくものである。
適正装着場所記憶部65は、錠剤には落下した時の撥ね易さや、斜面の滑り易さ、転がり易さ等の属性が存在するので、装着位置から包装位置に到達するまでの時間が異なり、包装速度に影響を与える。そこで、本実施例では、各錠剤の属性に応じた適正装着場所(上下方向)が予め設定され記憶されている。
【0030】
中央演算処理部(CPU)66は、錠剤カートリッジ11や散薬瓶21の収納場所、装着場所を管理するとともに、前記処方表示部61に表示された処方データの包装順序にしたがって錠剤処理機構31、散薬処理機構32および包装機構33を駆動する。
【0031】
以下、このCPU66の動作を図に示すフローチャートに従って説明する。
図9は、錠剤処方に対するCPU66の動作を示す。
ステップ101では処方情報を読み込み、ステップ102で装着場所記憶部64に当該処方に対応する錠剤カートリッジ11の装着場所を問い合わせることによって当該錠剤カートリッジ11がいずれかの錠剤フィーダ34に装着されているか否かを判断する。装着されていなければ、ステップ103で収納場所記憶部63に問い合わせして当該錠剤カートリッジ11の収納場所を探査し、ステップ104で発見した収納場所の表示ランプ18を点灯することによって当該錠剤カートリッジ11の収納場所を表示するとともに、ステップ105で錠剤フィーダ34の表示ランプ41を点灯することにより当該錠剤処方に適した装着場所を表示する。
【0032】
ここで、オペレータ(調剤士)が錠剤収納棚1から表示された場所の錠剤カートリッジ11を取り出して表示された場所の錠剤フィーダ34に装着すると、錠剤フィーダ34の読取装置40によって錠剤カートリッジ11の識別装置16の錠剤データが読み取られ、該錠剤データとその装着場所が装着場所記憶部64に登録される。
【0033】
ステップ106では、装着場所記憶部64に再度問い合わせることによって該当する錠剤が装着されたかどうかを判断し、装着されていなければ装着されるまで待機する。装着されていれば、ステップ107で収納場所表示を消去し、ステップ108で装着場所表示を消去して、ステップ109で包装を行う。
なお、前記ステップ102で処方に該当する錠剤が既に装着されているならば、表示を行わずに、ステップ109に移行して直ちに包装を行う。
そして、ステップ110で次の処方情報があればステップ101に戻って以上のステップを繰り返し、なければ終了する。
【0034】
図10は、散薬処方に対するCPU66の動作を示す。
ステップ111で処方情報を読み込み、ステップ112で収納場所記憶部63に問い合わせして当該散薬瓶21の収納場所を探査し、ステップ113で発見された収納場所の表示ランプ28を点灯することによって当該散薬瓶21の収納場所を表示する。
【0035】
オペレータが表示された棚の散薬瓶21を取り出してテーブルの所定の位置に置くと、CPU66はステップ114で読取装置29に当該散薬瓶21の散薬データを読み取らせ、ステップ115で処方に該当する散薬かどうか検薬する。該当散薬でなければ、ステップ114に戻って正しい散薬瓶が取り出されるまで待機し、該当散薬であればステップ116で収納場所表示を消去する。
【0036】
次に、ステップ117で検出器47a,47bからの信号に基づいてホッパに空きがあるかどうかを判断し、空きがなければ待機し、空きがあればステップ118でその空きホッパの表示ランプ48a,48bを点灯することによって空きホッパを表示する。
この時点では、オペレータは計量器Mを使用して取り出した散薬の調剤を行い、これを調剤容器Bに入れて表示されたホッパに投入することができる。
【0037】
ステップ119では、検出器47a,47bからの信号に基づいて散薬がホッパに投入されたか否かを判断し、投入されていなければ投入されるまで待機し、投入されていればステップ120でホッパ空き表示を消去する。
次に、ステップ121で散薬処理機構32を駆動して投入された散薬の分配を行い、ステップ122で分割機45及び包装機構33を駆動して包装を行う。
そして、ステップ110で次の処方情報があればステップ101に戻って以上のステップを繰り返し、なければ終了する。
【0038】
以上説明した第1実施例では、錠剤及び散薬の収納場所が任意であるので、取り出した錠剤カートリッジ11や散薬瓶21を低くて近い場所に自由に置くことができ、また処方に応じた錠剤や散薬の収納場所が表示されるので、簡単に取り出すことができる。また、錠剤の属性に適した装着場所が表示されるので、装着場所に迷うことはない。
【0039】
なお、前記第1実施例における散薬処理は、オペレータ自身が調剤してそれをホッパに投入するようにしているが、これを錠剤のように自動化することも可能である。すなわち、前記錠剤カートリッジ11とほぼ同様の構造の散薬カートリッジと、該散薬カートリッジが着脱自在に装着されて処方に応じた量の散薬を排出できる散薬フィーダを複数設ける。この場合の散薬カートリッジの識別は、前記第1実施例の錠剤カートリッジの識別と全く同様に行うことができる。
【0040】
(2)第2実施例
図11は、錠剤の収納場所が予め固定され、その装着場所も固定されている例である。
この実施例では、錠剤収納棚1の各収納場所に第1実施例のような錠剤カートリッジ11の読取装置は設けられておらず、各収納場所に収納されべきる錠剤が予め収納場所記憶部63に登録されている。そして、処方に応じた錠剤の収納場所を表示ランプ18によって表示するようになっている。
この実施例におけるCPU66の動作は、図9と同様であるので、説明を省略する。
なお、散薬の収納場所も同様にして固定しておくことができる。
【0041】
(3)第3実施例
図12は、錠剤の収納場所が任意で、その装着場所が固定されている例であり、その収納場所については管理を行わないし表示も行わないが、処方に対応する錠剤カートリッジ11の番号を単に処方表示部61に表示するようにしたものである。したがって、この装置には、錠剤収納棚1に第1実施例のような読取装置や表示ランプが設けられていないし、収納場所記憶部も設けられていない。
【0042】
この実施例のCPU66の動作を図13のフローチャートに従って説明すると、ステップ301で処方情報を読み込み、ステップ302で処方に該当する錠剤カートリッジ11が錠剤フィーダ34に装着されているかどうかを判断し、装着されていなければステップ303で属性に応じた装着場所を表示するとともに、ステップ304で当該錠剤のカートリッジ番号を処方表示部61に表示する。
【0043】
これにより、オペレータはその処方表示部61に表示された番号の錠剤カートリッジ11を錠剤収納棚1から探して取り出し、それを表示された装着場所の錠剤フィーダ34に装着することができる。
そこで、CPU66はステップ305で当該錠剤カートリッジ11が装着されるまで待機し、装着されればステップ306で装着場所表示を消去するとともにステップ307でカートリッジ番号表示を消去して、ステップ308で包装を行う。
【0044】
そして、ステップ309で次情報あればステップ301に戻って以上のステップを繰り返し、なければ終了する。
なお、散薬瓶21に対しても同様に、収納場所を自由にし、表示も管理も行わずに単に薬瓶番号を表示してオペレータが探すようにしてもよい。
【0045】
(4)
図14に示す装置は、錠剤の収納場所が任意で、その装着場所が固定されておらず、自由に装着することができる例である。
各錠剤フィーダ34に表示ランプがなく、適正装着場所記憶部の代わりに分包条件記憶部68を設けた以外は、図7に示す第1実施例と同様の構成になっている。
【0046】
この装置のCPU66の動作を図15のフローチャートに従って説明すると、ステップ401で処方情報を読み込み、ステップ402で装着場所記憶部64に問い合わせて該当する錠剤のカートリッジ11が装着されているか否かを判断し、ステップ403で収納場所記憶部63に問い合わせすることにより処方に該当する錠剤カートリッジ11を探査し、ステップ404で発見された収納場所を表示ランプ18に表示する。
【0047】
そして、オペレータが表示された場所の錠剤カートリッジ11を取り出して錠剤フィーダ34の任意の場所に装着すると、その装着場所において錠剤カートリッジ11の識別装置16が読取装置40によって読み取られ、その装着場所が装着場所記憶部64に登録される。
そこで、CPU66はステップ405で装着場所記憶部64に再度問い合わせして、そこに該当錠剤カートリッジ11の装着場所が登録されているかどうかによって該当カートリッジ11が装着されたか否かを判断する。そして、装着されていなければ装着されるまで待機し、装着されていればステップ406で収納場所表示を消去する。
【0048】
次に、ステップ407で、分包条件記憶部68に問い合わせして当該錠剤カートリッジ11に収容された錠剤の属性及び装着場所に応じて分包条件を選定する。ここでは、撥ね易い性質を有する錠剤の場合、装着場所が高いときは大きく撥ねて包装位置に達するまで時間がかかるので遅い分包速度を選定し、逆に装着場所が低いときは早い分包速度を選定する。
そして、ステップ408で前記分包条件の下で包装を行い、ステップ409で次情報があれば以上のステップを繰り返し、なければ終了する。
【0049】
(5)
図16は、錠剤の収納場所が予め固定され、その装着場所が固定されていない例である。
この実施例では、錠剤収納棚1の各収納場所には錠剤カートリッジ11の読取装置は設けられておらず、各収納場所に収納されべきる錠剤が予め収納場所記憶部63に登録されている。そして、処方に応じた錠剤の収納場所を表示ランプ18によって表示するようになっている。
この実施例におけるCPU66の動作は、図15と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
(6)
図17は、錠剤の収納場所が任意で、その装着場所も任意である例であり、その収納場所については管理を行わないし表示も行わないが、処方に対応する錠剤カートリッジ11の番号を単に処方表示部61に表示するようにしたものである。したがって、この装置には、錠剤収納棚1には第4実施例のような読取装置や表示ランプが設けられていないし、収納場所記憶部も設けられていない。
【0051】
この実施例のCPU66の動作を図18のフローチャートに従って説明すると、ステップ601で処方情報を読み込み、ステップ602で処方に該当する錠剤カートリッジ11が錠剤フィーダ34に装着されているかどうかを判断し、装着されていなければステップ603で当該錠剤のカートリッジ番号を処方表示部61に表示する。
【0052】
これにより、オペレータはその処方表示部61に表示された番号の錠剤カートリッジ11を錠剤収納棚1から探して取り出し、それを任意の錠剤フィーダ34に装着することができる。これにより、その装着場所において錠剤カートリッジ11の識別装置16が読取装置40によって読み取られ、その装着場所が装着場所記憶部64に登録される。
【0053】
そこで、CPU66はステップ604で装着場所表示部64に再度問い合わせ、装着されていなければ当該錠剤カートリッジ11が装着されるまで待機し、装着されていればステップ605でカートリッジ番号表示を消去して、ステップ606で前記第5実施例と同様に錠剤の属性と装着場所に応じて分包条件を選定し、ステップ607で包装を行う。
そして、ステップ608で次情報あればステップ601に戻って以上のステップを繰り返し、なければ終了する。
【0054】
(7)錠剤カートリッジ又は散薬瓶の識別手段の具体例
前記実施例では、錠剤カートリッジ11の識別は、錠剤収納棚1に設けた発光素子17a及び受光素子17bからなる読取装置17、又は錠剤フィーダ34に設けた発光素子40a及び受光素子40bからなる読取装置40と、錠剤カートリッジ11に設けた反射板16とによって行われる。また、散薬瓶21の識別は、散薬収納棚2の各収納場所に設けた受信器27又はテーブルに設けた受信器29と、散薬瓶21に設けた発信器24とによって行われる。
これ以外に、以下に示す識別手段を利用することができる。なお、ここで、錠剤収納棚1、錠剤フィーダ34及び散薬収納棚2を固定側といい、これらに載置又は装着される錠剤カートリッジ11及び散薬瓶21を単に容器側という。
【0055】
a.磁気センサ(ホール素子,リードリレー)+磁石
固定側に複数のホール素子又はリードリレー等の磁気センサを配列し、容器側の前記各ホール素子と対向する位置に磁石の有無を施して薬剤名称をコード化し、磁気センサの出力により2進データとして薬剤を識別する。
b.発光素子及び受光素子+遮断板
固定側に発光素子と該発光素子の光を検出する複数の受光素子とを配列し、容器側に前記発光素子から受光素子への光を遮断する遮断板の有無を施して薬剤名称をコード化し、受光素子の出力により2進データとして薬剤を識別しする。
c.マイクロスイッチ+突起
固定側に複数のマイクロスイッチを配列し、容器側の前記マイクロスイッチと対向する位置にマイクロスイッチをオンする突起の有無を施して薬剤名称をコード化し、マイクロスイッチの出力により2進データとして薬剤を識別する。
【0056】
d.バーコード読取器+バーコード
固定側にバーコード読取器を設け、容器側に薬剤名称に対応するバーコードを設けて、該バーコードをバーコード読取器によって読み取ることにより薬剤を識別する。
e.磁気読取ヘッド+磁気記録媒体
固定側に磁気読取ヘッドを設け、容器側に薬剤名称に対応する磁気情報が記録された磁気記録媒体を設けて、該磁気記録媒体の磁気情報を磁気読取ヘッドによって読み取ることにより薬剤を識別する。
前記d及びeの場合、バーコードや磁気記録媒体には、薬剤名称だけでなく、落下条件等の情報を付加することができる。
【0057】
(8)その他の実施例
以上の実施例では、錠剤フィーダとして円筒形(図1参照)のものを使用したが、引出し形であってもよい。この引出し形の錠剤フィーダは、動作中には錠剤カートリッジを引き出して交換することができない。そこで、図19に示すように、各引出しラック71の正面に副錠剤フィーダ72を設けて、他の錠剤フィーダ73が動作中であっても、ラック71を引き出すことなく、副錠剤フィーダ72に錠剤カートリッジ11を装着することができるようにする。これにより、次の錠剤が錠剤フィーダ73に装着されていなくても、錠剤収納棚1より該当する錠剤カートリッジ11を取り出してその副錠剤フィーダ72に装着して次の包装に備えることができる。
【0058】
また、以上の実施例における包装装置は錠剤カートリッジを横から差し込むものであるが、図20に示すように、円筒形の錠剤カートリッジ81を格子形に配列された錠剤フィーダ82に上方から差し込む形式の包装装置80にも適用することができる。すなわち、各錠剤カートリッジ81の底に前記実施例と同様に識別装置83を設ける一方、錠剤フィーダ82に読取装置84を設ける。また、この包装装置80を出来るだけ小さくするために、錠剤フィーダ82を比較的少数にして頻繁に使用される錠剤カートリッジ81のみを装着可能にする一方、残りの多数の錠剤カートリッジ81を収納庫85に保管しておくのが好ましい。そして、この収納庫85に収納場所を格子形に分割した収納台86を設けるとともに、各収納場所に錠剤カートリッジ81の識別装置83を読み取る読取装置87と収納場所を表示する表示ランプ88とを設ける。
【0059】
しかし、この場合、収納庫85の収納台86に表示ランプ88を設けても、外部からは見ることができない。そこで、その収納台86に収納される各錠剤カートリッジ81の底面から上面まで光ファイバー89を配設し、この光ファイバー89を介して表示ランプ88の光を錠剤カートリッジ81の上面まで導くようにするのが好ましい。
なお、このような円筒形の錠剤カートリッジ81を格子配列した包装装置80では、各錠剤のホッパ90までの落下条件が同一であるが転がり条件が異なるので、それを加味して装着場所を固定するのが望ましい。
【0060】
さらに、前記実施例は、錠剤や散薬の薬剤の包装装置に関するものであるが、本発明は包装の必要のないアンプル等の薬瓶の払出し装置にも適用することができるものである。この払出し装置は、アンプル等の収容されたカートリッジを多数収納する収納棚と、比較的少数のカートリッジが装着できるフィーダを有しているので、前述の錠剤包装装置と同様の構成をとることができる。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、以下の効果を奏する。 比較的小数の薬剤容器しか装着されておらず、装置が小型化し、小さな病院の薬剤室や薬局でも使い易く設置することができる。
表示された場所に薬剤容器を装着するだけでよく、装着場所に迷うことはないので、迅速容易に装着することができる。
【0062】
【0063】
【0064】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の薬剤包装装置の第1実施例を示す全体斜視図である。
【図2】 (A)は錠剤カートリッジ及び錠剤収納棚の断面図、(B)は錠剤フィーダの断面図である。
【図3】 錠剤カートリッジ及び錠剤フィーダの斜視図である。
【図4】 錠剤カートリッジの底面図である。
【図5】 散薬瓶の部分断面図である。
【図6】 散薬処理機構、錠剤処理機構および包装機構の概略図である。
【図7】 第1実施例の錠剤処理動作のブロック図である。
【図8】 第1実施例の散薬処理動作のブロック図である。
【図9】 第1実施例の錠剤処理動作のフローチャートである。
【図10】 第1実施例の散薬処理動作のフローチャートである。
【図11】 第2実施例の錠剤処理動作のブロック図である。
【図12】 第3実施例の錠剤処理動作のブロック図である。
【図13】 第3実施例の錠剤処理動作のフローチャートである。
【図14】 他の錠剤処理動作のブロック図である。
【図15】 他の錠剤処理動作のフローチャートである。
【図16】 他の錠剤処理動作のブロック図である。
【図17】 他の錠剤処理動作のブロック図である。
【図18】 他の錠剤処理動作のフローチャートである。
【図19】 引出し式錠剤フィーダの水平断面図である。
【図20】 円筒形錠剤カートリッジを用いる包装装置とその収納庫の斜視図である。
【符号の説明】
1…錠剤収納棚、2…散薬収納棚、3…包装装置、4…制御装置、11…錠剤カートリッジ、16…識別装置、17…読取装置、18…表示ランプ(収納場所表示手段)、21…散薬瓶、26…散薬識別装置、27…受信器(読取手段)、28…表示ランプ(収納場所表示手段)、29…受信器(読取手段)、31…錠剤処理機構、32…散薬処理機構、33…包装機構、34…錠剤フィーダ(薬剤供給手段)、40…読取装置、41…表示ランプ(適正装着場所表示手段)、48a,48b…ホッパ、63…収納場所記憶部、64…装着場所表示部、65…適正装着場所記憶部、66…中央演算処理部(探査手段検薬手段)、68…分包条件記憶部。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-05 
出願番号 特願2001-18865(P2001-18865)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B65B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原 慧上尾 敬彦  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 勝司
山崎 豊
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3310269号(P3310269)
権利者 株式会社湯山製作所
発明の名称 薬剤包装装置  
代理人 青山 葆  
代理人 青山 葆  
代理人 古川 泰通  
代理人 古川 泰通  
代理人 前田 厚司  
代理人 前田 厚司  

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