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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63B
管理番号 1098072
異議申立番号 異議2003-71752  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-12-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-14 
確定日 2004-04-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3365746号「ゴルフボール」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3365746号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3365746号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成11年6月1日の出願であって、平成14年11月1日にその特許権の設定の登録がなされ、その特許について、橋本厚志より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年12月26日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否

(1)訂正の内容
特許権者の求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、「【請求項1】球面に複数個かつ直径が異なる4種類以上のディンプルを配したゴルフボールであって、前記球面の最大円周長をなす第1の大円と、この第1の大円の最大円周長を4等分してこの第1の大円に直交する第2の大円と、第3の大円とにより、前記球面を、前記各大円の交点を頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形に仮想区分し、かつ前記球面に、前記8個の球面正三角形のうち、6つの球面正三角形を通りそれらの各球面正三角形を区分しかつディンプルが交差しない最大円周長からなる1本のみのパーティングラインを設けるとともに、前記球面正三角形の一辺を共有して隣接する2つの球面正三角形のディンプル配列を、前記一辺に対して非線対称とし、該パーティングラインが通る6つの球面正三角形は、同一のディンプル配列を有する3個の第1の球面三角形と、この第1の球三角形と球面の中心点について点対称の位置に配されかつ該第1の球面三角形のディンプル配列と球面の中心点について点対称になる同一のディンプル配列を有する3個の第3の球面正三角形とからなり、しかも前記第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和を、ともに等しくし、かつ前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するデインプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていないことを特徴とするゴルフボール。」と訂正する。
b.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
c.訂正事項c
明細書の段落【0010】を、「【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1記載の発明は、球面に複数個かつ直径が異なる4種類以上のディンプルを配したゴルフボールであって、前記球面の最大円周長をなす第1の大円と、この第1の大円の最大円周長を4等分してこの第1の大円に直交する第2の大円と、第3の大円とにより、前記球面を、前記各大円の交点を頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形に仮想区分し、かつ前記球面に、前記8個の球面正三角形のうち、6つの球面正三角形を通りそれらの各球面正三角形を区分しかつディンプルが交差しない最大円周長からなる1本のみのパーティングラインを設けるとともに、前記球面正三角形の一辺を共有して隣接する2つの球面正三角形のディンプル配列を、前記一辺に対して非線対称とし、該パーティングラインが通る6つの球面正三角形は、同一のディンプル配列を有する3個の第1の球面三角形と、この第1の球三角形と球面の中心点について点対称の位置に配されかつ該第1の球面三角形のディンプル配列と球面の中心点について点対称になる同一のディンプル配列を有する3個の第3の球面正三角形とからなり、しかも前記第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和を、ともに等しくし、かつ前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するディンプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていないことを特徴としている。」と訂正する。
d.訂正事項d
明細書の段落【0015】を削除する。
e.訂正事項e
明細書の段落【0030】の2行目の「ディンプル2を配列していないものが例示される。」を「デインプル2を配列していない。」と訂正する。
f.訂正事項f
明細書の段落【0031】の1行目の「なお本例では」を「なお」と訂正する。
g.訂正事項g
明細書の段落【0033】の3〜4行の「このようなディンプル2の種類数は、例えば2種以上、好ましくは3種以上、さらに好ましくは本例のように4種以上」を「このようなディンプル2の種類数は、好ましくは本例のように4種以上」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」といい、願書に添付した図面を「特許図面」といい、これらをあわせて「特許明細書等」という。)の「本例のディンプルはいずれも外形が円形をなすとともに直径が異なる4種類のディンプルを含む」(段落【0020】)、「【請求項4】前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するデインプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくした」(【請求項4】)及び「第1〜第3の大円L1〜L3が交差する6つの頂点にも、デインプルを配列していない」(段落【0030】)の記載並びに図面の4種類のディンプル配列を示す正面図(特許図面の図10)の記載に基づいて、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1におけるディンプルの種類について直径が異なる4種類以上と限定すると共に同じく請求項1におけるディンプル配列について「かつ前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するデインプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていない」と限定するものである。
ゆえに、上記訂正事項aは、特許明細書等に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項bは、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項c乃至gは、上記訂正事項a及びbに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、発明の詳細な説明の記載を訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a乃至gは、いずれも、実質的に特許請求の範囲を拡張変更するものでない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申し立てについての判断

(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人橋本厚志は、証拠および参考資料として、以下の甲第1乃至甲第7号証、参考資料1乃至10を提出し、本件特許の請求項1乃至4に係る発明は、甲第1乃至3号証それぞれに記載された発明と同一であり、また、本件特許の請求項1乃至3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と同一であるから、本件請求項1乃至4に係る発明は特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、その特許は同法同条の規定に違反してされているので、取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証: 特開平4-109968号公報
甲第2号証: 特開平10-248955号公報
甲第3号証: 意匠登録第1004774号公報
甲第4号証: 特開平2-211184号公報
甲第5号証: 特開平3-80876号公報
甲第6号証: 特開平4-109968号公報
甲第7号証: 特開平4-347177号公報
参考資料1: 甲第1号証の第4図に開示されたゴルフボールのディンプル配列の全体構成を示す正面上方斜視図、正面図、背面図、平面図、底面図、正面下方斜視図
参考資料2:参考資料1の各図から各仮想線大円線3を削除し、代わりに、本件特許発明の第1の大円乃至第3の大円の条件を満たす仮想線L1、L2、L3を追加した正面上方斜視図、正面図、背面図、平面図、底面図、正面下方斜視図
参考資料3-1:共通するディンプル配列を有する球面正三角形Δa、Δc、Δeのディンプル配列を示す図
参考資料3-2:共通するディンプル配列を有する球面正三角形Δf、Δh、Δbのディンプル配列を示す図
参考資料4:ゴルフボールの中心点を中心として点対称に位置する球面三角形Δd、Δgのディンプル配列を上下に並べて示す図
参考資料5:大円Lの交点である頂点を共有する4つの球面三角形(Δa、Δc)、(Δb、Δd)と、4つの球面三角形(Δe、Δg)、(Δf、Δh)を夫々上下に並べて、各球面三角形のディンプル配列を示す図
参考資料6:参考資料5に示された球面正三角形(Δa、Δf)、(Δb、Δe)、(Δh、Δc)を各対毎に夫々上下に並べて、各球面正三角形のディンプル配列を示す図
参考資料7:「パーティングラインN」と、本件特許発明の第1の大円乃至第3の大円の条件を満たす仮想線L1、L2、L3を付記した甲第2号証の図5、図6に開示されたゴルフボールの平面図、正面図、並びに、これらと夫々対称に作成された底面図、背面図
参考資料8:「パーティングラインN」と、本件特許発明の第1の大円乃至第3の大円の条件を満たす仮想線L1、L2、L3を付記した甲第3号証に開示されたゴルフボールの平面図、底面図、左側面図、右側面図、正面図、背面図
参考資料9: 甲第4号証のFIG_5に開示されたゴルフボールのディンプル配列を示す、正面図、右側面図、左側面図、背面図、平面図、底面図
参考資料10: 甲第4号証のFIG_5に開示されたゴルフボールのディンプル配列を示す赤道円21を水平に配置した状態の正面図、右側面図、左側面図、背面図、平面図、底面図

(2)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1乃至3に係る発明は、前記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、「本件発明1乃至3」という。)
「【請求項1】球面に複数個かつ直径が異なる4種類以上のディンプルを配したゴルフボールであって、前記球面の最大円周長をなす第1の大円と、この第1の大円の最大円周長を4等分してこの第1の大円に直交する第2の大円と、第3の大円とにより、前記球面を、前記各大円の交点を頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形に仮想区分し、かつ前記球面に、前記8個の球面正三角形のうち、6つの球面正三角形を通りそれらの各球面正三角形を区分しかつディンプルが交差しない最大円周長からなる1本のみのパーティングラインを設けるとともに、前記球面正三角形の一辺を共有して隣接する2つの球面正三角形のディンプル配列を、前記一辺に対して非線対称とし、該パーティングラインが通る6つの球面正三角形は、同一のディンプル配列を有する3個の第1の球面三角形と、この第1の球三角形と球面の中心点について点対称の位置に配されかつ該第1の球面三角形のディンプル配列と球面の中心点について点対称になる同一のディンプル配列を有する3個の第3の球面正三角形とからなり、しかも前記第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和を、ともに等しくし、かつ前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するデインプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていないことを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記球面の中心点を挟んで向き合う2つの前記球面正三角形に配置されるディンプルのディンプル配列は、前記中心点を中心として点対称とするとともに、
前記一つの頂点を共有する4つの前記球面正三角形のディンプル配列は、該頂点について非点対称としたことを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記パーティングラインは、前記6つの球面正三角形の辺の中間点を通ることにより、該6つの球面正三角形を1つの球面二等辺三角形部と、1つの球面四角形部とに区分するとともに、
前記球面の中心点を挟んで向き合う前記球面二等辺三角形部、球面四角形部に配置されるディンプルのディンプル配列は、前記中心点を中心として点対称であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフボール。」

(3)甲各号証
申立人の提出した甲第1乃至7号証には、本件発明1乃至3に関連する事項として、以下の事項が記載されている。
甲第1号証には、申立人の提出した参考資料1乃至6の各図面に示される直径が異なる3種類のディンプル配列を有するゴルフボールが、甲第2号証には、同じく、参考資料7の各図面に示される直径が異なる4種類のディンプル配列を有するゴルフボールが、甲第3号証には、同じく、参考資料8の各図面に示される直径が異なる3種類のディンプル配列を有するゴルフボールが、甲第4号証には、同じく、参考資料9及び10の各図面に示される直径が異なる4種類のディンプル配列を有するゴルフボールが、それぞれ、記載されていると認められる。
また、甲第5乃至7号証のそれぞれには、パーティングラインをディンプルと交差しないように配置することが記載されている。

(4)対比判断
ア.本件発明1について、
本件発明1と甲第1乃至7号証に記載された発明とを対比する。
甲第1乃至7号証のいずれにも本件発明1の特定事項である「球面に直径が異なる4種類以上のディンプルを配したゴルフボールであって、前記球面の最大円周をなす第1の大円と、この大円の最大円周長を4等分してこの第1の大円に直交する第2の大円と、第3の大円は、交差するディンプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていない」の規定を満たすゴルフボールについて記載も示唆もない。
因みに、甲第1号証及び甲第3号証に記載のゴルフボールは、「球面に複数個かつ直径が異なる4種類以上のディンプルを配し」の規定を満たしていない、また、甲第第2号証に記載のゴルフボールは、「第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていない」の規定を満たしていない、さらに、甲第第4号証に記載のゴルフボールは、「第1〜第3の大円は、該大円に交差するディンプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし」の規定を満たしていない。
そして、これらの甲第1乃至4号証の各図面に記載されているゴルフボールのディンプルの配列は、いずれも、それ自体として、自己完結したものであるから、上記「」内の配列を部分的に満たしていても、これら相互を、単純に組み合わせて、上記「」内の配列が得られるものでもない。
したがって、本件発明1は、甲第1乃至7号証のいずれに記載されたものとも同一といえないばかりでなく、これらに記載されたものから、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ロ.本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を引用し、その発明を特定する事項を全て備えるものであるから、本件発明1の上記判断と同様な理由で、甲第1乃至7号証のいずれに記載されたものとも同一といえないばかりでなく、これらに記載されたものから、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議の申立ての理由によっては本件発明1乃至3についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1乃至3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゴルフボール
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面に複数個かつ直径が異なる4種類以上のディンプルを配したゴルフボールであって、
前記球面の最大円周長をなす第1の大円と、この第1の大円の最大円周長を4等分してこの第1の大円に直交する第2の大円と、第3の大円とにより、前記球面を、前記各大円の交点を頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形に仮想区分し、
かつ前記球面に、前記8個の球面正三角形のうち、6つの球面正三角形を通りそれらの各球面正三角形を区分しかつディンプルが交差しない最大円周長からなる1本のみのパーティングラインを設けるとともに、
前記球面正三角形の一辺を共有して隣接する2つの球面正三角形のディンプル配列を、前記一辺に対して非線対称とし、
該パーティングラインが通る6つの球面正三角形は、同一のディンプル配列を有する3個の第1の球面三角形と、この第1の球三角形と球面の中心点について点対称の位置に配されかつ該第1の球面三角形のディンプル配列と球面の中心点について点対称になる同一のディンプル配列を有する3個の第3の球面正三角形とからなり、
しかも前記第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和を、ともに等しくし、
かつ前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するディンプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、
しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていないことを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記球面の中心点を挟んで向き合う2つの前記球面正三角形に配置されるディンプルのディンプル配列は、前記中心点を中心として点対称とするとともに、
前記一つの頂点を共有する4つの前記球面正三角形のディンプル配列は、該頂点について非点対称としたことを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記パーティングラインは、前記6つの球面正三角形の辺の中間点を通ることにより、該6つの球面正三角形を1つの球面二等辺三角形部と、1つの球面四角形部とに区分するとともに、
前記球面の中心点を挟んで向き合う前記球面二等辺三角形部、球面四角形部に配置されるディンプルのディンプル配列は、前記中心点を中心として点対称であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディンプル配列、とりわけディンプルと交差しないパーティングラインの配設位置を改善することにより、空力学的対称性を向上しうるゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールは、球面をなすとともに、この球面に複数個のディンプルが凹設されている。このディンプルは、第一に、飛行中においてゴルフボール周囲の空気の乱流遷移を促進することにより、空気とゴルフボールとの境界層をボールの背後にまで伸ばして空気抵抗を低減し、第二に、飛行中のゴルフボールの上下において空気とボールとの剥離点の差を助長することにより揚力を向上する役割を果たす。従って、空力学的に優れたディンプルというのは、飛行中のゴルフボール周囲の空気をより乱すことができるものと言うことができる。
【0003】
また、ゴルフボールのディンプルは、半球状の成形面を有する上下一対の分割金型によって成形されるため、前記分割金型の合わせ面には一般的にディンプルを配列することが困難となる。このため、ゴルフボールには、やむを得ず球面の最大円周線をなすディンプルと交差しない1本以上のパーティングラインが形成されてしまう。
【0004】
他方、ディンプルの配列方法には、これまで種々のものが提案されているが、その多くは球面を、複数の領域に区画された多面体として捉え、その各領域に一定の基準に従いディンプルを配列するというものである。例えば、図14に示す如く、球面の最大円周線をなす第1の大円L1と、この第1の大円L1を4等分してこの第1の大円L1に直交する第2の大円L2と、第3の大円L3とにより、前記球面を、前記各大円の交点Pを頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形aに仮想区分したいわゆる正八面体とし、これらの各球面正三角形aを基準としてディンプルを配列するいわゆる正八面体配列が知られている。
【0005】
例えば各球面正三角形aに、同じディンプル配列αを配置する他、球面正三角形の一辺について互いに線対称となるディンプル配列や、さらには各頂点Pに対して点対称となるディンプル配列などが採用される。また例えば前記第1〜第3の大円L1〜L3を中心とした場合、いずれの大円についてもその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和をともに等しくすることなどが行われている。
【0006】
さらにこのような正八面体配列では、前記第1〜第3の大円L1〜L3すべてを、ディンプルと交差しないものとしたり、あるいはこれらの3本の大円L1〜L3のうちの1本、例えば図14において第2の大円L2だけを、ディンプルと交差しないものしている。この場合、前記第2の大円L2が、分割金型の合わせ面が位置する前記パーティングラインNとして利用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ゴルフボールは打撃した際、バックスピンを伴って飛行するが、バックスピンの回転軸がゴルフボールのどの位置にあっても、同様の飛行特性、即ち同じ弾道高さ、同じ滞空時間、同じ飛距離等が得られることが望ましいものである。しかしながら、図15(A)に示すように、バックスピンの周速が最も速い部分が前記パーティングラインNと一致するように打撃する「シーム打ち」を行った場合、パーティングラインNにはディンプルが交差していないため、例えば同図(B)に示す如く、パーティングラインNを含む仮想平面が、バックスピンの回転軸と平行になるよう打撃する「ポール打ち」に比べるとディンプル効果が低減し、弾道が低かったり或いは飛距離をロスしたりすることがある。
【0008】
また図14に示したように、特に正八面体配列のゴルフボールでシーム打ちを行った場合、パーティングラインNの各側には、バックスピン1回転中、4つの同じ球面正三角形aをなすディンプル配列区画が順番に現れるため、バックスピン中でのディンプルの現れ方が規則的なものとなりやすく、ゴルフボールの周囲の空気を乱す効果が十分に得られ難い傾向がある。その結果、このような正八面体配列のゴルフボールは、他の多面体配列のゴルフボールに比して、シーム打ちを行った場合のディンプル効果の低下代が大きいという問題がある。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、前記の如く球面を第1〜第3の大円により8個の球面正三角形に仮想区分し、これらの各第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和をともに等しくして各球面正三角形をディンプル配列の基準線として用いる一方、前記球面に、8個の球面正三角形のうち6つの球面正三角形を通りそれらの各球面正三角形を区分してのびるパーティングラインを設けることを基本として、シーム打ち、ポール打ちに拘わらず、飛行特性の差が少ない空力学的対称性に優れたゴルフボールを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、球面に複数個かつ直径が異なる4種類以上のディンプルを配したゴルフボールであって、前記球面の最大円周長をなす第1の大円と、この第1の大円の最大円周長を4等分してこの第1の大円に直交する第2の大円と、第3の大円とにより、前記球面を、前記各大円の交点を頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形に仮想区分し、かつ前記球面に、前記8個の球面正三角形のうち、6つの球面正三角形を通りそれらの各球面正三角形を区分しかつディンプルが交差しない最大円周長からなる1本のみのパーティングラインを設けるとともに、前記球面正三角形の一辺を共有して隣接する2つの球面正三角形のディンプル配列を、前記一辺に対して非線対称とし、該パーティングラインが通る6つの球面正三角形は、同一のディンプル配列を有する3個の第1の球面三角形と、この第1の球三角形と球面の中心点について点対称の位置に配されかつ該第1の球面三角形のディンプル配列と球面の中心点について点対称になる同一のディンプル配列を有する3個の第3の球面正三角形とからなり、しかも前記第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和を、ともに等しくし、かつ前記第1〜第3の大円は、該大円に交差するディンプルを具えるとともに、各大円と交差するディンプルとこの大円の両側で近接して配されるディンプルとの合計数を、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプルの合計数よりも少なくし、しかも前記第1〜第3の大円が交差する6つの頂点にはディンプルが配列されていないことを特徴としている。
【0011】
このようなゴルフボールは、いわゆる正八面体配列を基調としつつも、パーティングラインが6個の球面正三角形を区分してのびることにより、前記シーム打ちを行った場合、パーティングラインの各側に、ディンプル配列の基準の区画としてパーティングラインで区分された3つの球面三角形部と、これとは形状が異なる3つの球面四角形部とを順次現出させて多様化させうる。このため、本発明のゴルフボールは、パーティングライン周辺での空気の乱れを従来に比して促進することが可能となり、ディンプル効果の低減を抑制しうる。そして、このようなゴルフボールは、空力学的対称性を向上でき、その結果、シーム打ち、ポール打ちに拘わらず飛行特性を均一化しうる。
【0012】
また前記球面の中心点を挟んで向き合う2つの前記球面三角形に配置されるディンプルのディンプル配列は、前記中心点を中心として点対称とするとともに、前記一つの頂点を共有する4つの前記球面正三角形のディンプル配列は、該頂点について非点対称とすることも望ましい。
【0013】
また前記パーティングラインは、前記6つの球面正三角形の辺の中間点を通ることにより、該6つの球面正三角形を1つの球面二等辺三角形部と、1つの球面四角形部とに区分するとともに、前記球面の中心点を挟んで向き合う前記球面二等辺三角形部、球面四角形部に配置されるディンプルのディンプル配列は、前記中心点を中心として点対称であることも望ましい。
【0014】
このようにディンプルを配列することによって、シーム打ちを行った場合、パーティングラインの各側ではディンプル配列区画となる球面二等辺三角形部と球面四角形部とを交互にしかもバックスピン1回転中にそれぞれ3個づつ現出させることができ、パーティングライン周辺での空気の乱流遷移がさらに効果的に促進される。その結果、シーム打ち、ポール打ちに拘わらず飛行特性をより一層均一化できる。
【0015】
(削除)
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、ディンプルを省略した本実施形態のゴルフボールの斜視図を示している。図において本実施形態のゴルフボール1は、該ゴルフボール1の球面の最大円周長をなす本例では図1の赤道位置を通る第1の大円L1と、この第1の大円L1の最大円周長を4等分してこの第1の大円L1に直交する第2の大円L2と、第3の大円L3とにより、前記球面を、前記各大円L1〜L3の交点Pを頂点とし一辺が前記最大円周長の1/4の長さの辺を有する8個の球面正三角形Δa〜Δh(球面正三角形Δeは見えないため図1では示しておらず、また、単に球面正三角形を総称するときには「球面正三角形Δ」と称することがある。)に仮想区分される。そして、このような球面正三角形Δは、後述するディンプルを配列する際の一つの基準線として用いられる。
【0017】
本実施形態のゴルフボール1は、前記球面に、前記8個の球面正三角形Δa〜Δgのうち、本例では6つの球面正三角形Δa、Δb、Δc、Δf、Δe及びΔhを通りそれらの各球面正三角形を区分しかつ最大円周長からなるパーティングラインNを設けている。前記パーティングラインNには、該パーティングラインNに交差するディンプルを配置していない。したがって、前記パーティングラインNは、ゴルフボール1のディンプル成形時において、半球状を成形面を有する分割金型の合わせ面として用いることができる。
【0018】
本例のパーティングラインNは、前記6つの球面正三角形Δa、Δb、Δc、Δf、Δe及びΔhの各二辺の中間点C、Cを順次通ることにより、該6つの球面正三角形Δa、Δb、Δc、Δf、Δe及びΔhを、それぞれ1つの球面二等辺三角形部3と、1つの球面四角形部4とに区分するものを例示している。
【0019】
また図2には、前記パーティングラインNを垂直にした状態を示している。図1、図2から明らかなように、本実施形態のゴルフボール1は、シーム打ちを行った場合、パーティングラインNの各側において、ディンプルの配列区画となる前記球面二等辺三角形部3と球面四角形部4とを交互に、しかもゴルフボールのバックスピン1回転中に、それぞれ3個づつ現出させることができるなど、ディンプル配列区画を多様化しうる。これにより、本実施形態のゴルフボールは、パーティングラインNの周囲での空気の乱流遷移を従来に比して促進でき、ディンプル低減効果を補うことにより、空力学的対称性をさらに向上し、シーム打ち、ポール打ちに拘わらず飛行特性をより一層均一化しうる。
【0020】
また図3〜図9には、具体的なディンプル配列を記載したゴルフボール1を例示しており、図3はそのゴルフボールの正面図、図4は同平面図、図5は同右側面図、図6は同左側面図、図7は同底面図、図8は同背面図、図9はパーティングラインNを垂直状態とした線図をそれぞれ例示している。図において、前記各球面正三角形Δには、それぞれ前記球面から凹むディンプル2が配列され、本例のディンプルはいずれも外形が円形をなすとともに直径が異なる4種類のディンプルを含むものを例示している。これらのディンプルの総数は、本例では390個としている。
【0021】
前記ディンプル2は、前記各球面正三角形Δの輪郭線をほぼ一つの基準として配列される。具体的には、少なくとも前記各第1〜第3の大円L1、L2、L3を中心としたとき、いずれの大円L1、L2、L3を中心としても、その両側に配される全球面正三角形Δのディンプル2の総和がともに等しくなるように配列さる。このような構成は、バックスピンの周速が最も速い部分が前記いずれの大円L1〜L3と一致した場合であっても、空力学対称性を維持し飛行特性を均一化するのに役立つ。特に好ましくは、いずれの大円L1〜L3又はパーティングラインNを中心としたときでも、その両側に配されるディンプル2の種類毎の和についてもともに等しくなるように配列するのが望ましい。
【0022】
また本実施形態では、図11に略示する如く、ゴルフボール1の球面の中心点Oを挟んで向き合う2つの前記球面三角形、例えば球面正三角形Δaと球面正三角形Δfとに配置されるディンプル2の配列は、前記中心点Oを中心として点対称となっている。ここで、「ディンプルの配列が球面の中心点Oを中心として点対称になる」とは、例えば球面正三角形Δa内のディンプル2X(球面正三角形Δ内にディンプル2の一部が含まれる場合には、そのディンプルの一部で、以下同じ。)と、球面正三角形Δf内のディンプル2Yとがあるとき、これらのディンプル2X、2Y上の対応する2点が、常に前記中心点Oについて対称になっていることを言い、各球面正三角形に含まれる全てのディンプルについてこの関係が成立する。また、前記中心点Oを挟んで向き合う他の球面正三角形の組み合わせ、即ち球面正三角形ΔbとΔe、ΔcとΔh、ΔdとΔgの組み合わせにおいても、このような点対称の関係が成立している。
【0023】
また、本実施形態では、前記球面正三角形Δの前記一辺を共有して隣接する2つの球面正三角形のディンプル配列は、前記一辺について非線対称となるものが例示される。前記「非線対称」とは、前記共有する一辺についてディンプルの配列が正しく線対称にならないことであって、例えば前記共有する一辺について線対称とはならないディンプルが、いずれか一方又は両方の球面正三角形Δに1つ以上存在していることである。
【0024】
例えば図3の球面正三角形Δaについて見ると、球面正三角形Δaと球面正三角形Δbは、共有する一辺s1について、主にディンプル2a1の有無で非線対称となっている。同様に、球面正三角形Δaと球面正三角形Δdとは、共有する一辺s2について、主にディンプル2d1の有無により非線対称となっている。さらに図4の如く、球面正三角形Δaと球面正三角形Δhは、共有する一辺s3について、主にディンプル2hの有無により非線対称となっている。このような非線対称の関係は、全ての球面正三角形Δについて成立している。
【0025】
また本実施形態では、前記一つの頂点Pを共有する4つの前記球面正三角形Δは、該頂点Pについて非点対称となっているものが例示される。ここで「非点対称」とは、前記共有する一つの頂点Pについてディンプルの配列が正しく点対称になっていないことであり、例えば前記共有する頂点Pについて点対称を満たさないディンプルが1つ以上存在していることである。
【0026】
例えば図3の正面図において、中央に現れる頂点P1に関して球面正三角形Δa、Δcでは、主としてディンプル2a2の有無により点対称となっておらず、球面正三角形Δb、Δd間では、主としてディンプル2d2の有無により点対称となっていないものが示される。このような関係は、全ての頂点Pについて見た場合においても成立する。
【0027】
また本実施形態のゴルフボール1は、図1〜8に示す如く、同一のディンプル配列を有する3個の第1の球面正三角形Δ1(Δa、Δc、Δe)と、この各第1の球面正三角形Δ1のディンプル配列とは異なるディンプル配列を有する1個の第2の球面正三角形Δ2(Δd)と、前記第1の球面正三角形Δ1(Δa、Δc、Δe)と前記球面の中心点Oについて点対称の位置に配されかつ該第1の球面正三角形Δ1のディンプル配列と前記中心点Oについて点対称になる同一のディンプル配列を有する3個の第3の球面正三角形Δ3(Δf、Δh、Δb)と、前記第2の球面正三角形Δ2(Δd)と前記球面の中心点Oについて点対称の位置に配されかつ該第2の球面正三角形Δ2のディンプル配列と前記中心点Oについて点対称になるディンプル配列を有する1個の第4の球面正三角形Δ4(Δg)とからなるものが例示される。また前記パーティングラインNが球面正三角形Δの辺の中間点Cを通るため、区分されて得られた前記球面二等辺三角形部3のディンプル配列についても、前記中心点Oを中心として点対称となり、同様に、球面四角形部4のディンプル配列についても、前記中心点Oを中心として点対称に配列されることとなる。
【0028】
本例では前記第2及び第4の球面正三角形Δ2、Δ4には、パーティングラインNが掛からない。このため、第2及び第4の球面正三角形Δ2、Δ4のディンプル配列は、前記第1及び第3の球面正三角形Δ1、Δ3のディンプル配列を基調とし、かつこれらのディンプル配列の前記パーティングラインNが通るパーティングライン相当位置に、1個の小ディンプルを付加して構成されている。例えば、前記第2の球面正三角形Δ2(Δd)のディンプル配列は、第3の球面正三角形Δ3(例えばΔb)のディンプル配列に、小さなディンプル2d2を付加していることがわかる。同様に、前記第4の球面正三角形Δ4(Δg)のディンプル配列は、第1の球面正三角形Δ3(例えばΔa)と比較すると、ディンプル2g(図4に示す)が付加されて構成されたものを示している。
【0029】
また本実施形態では、前記第1〜第3の大円L1、L2、L3は、該大円に交差するディンプルを具えている。このため、本実施形態のゴルフボール1は、ディンプルが交差しない最大円周長は、前記パーティングラインNだけであり、この箇所以外には、ディンプルが交差しない最大円周長の大円を引けないようにディンプルを配列しているものを示している。このように、パーティングラインNを1本だけとすることにより、ディンプル効果の低減を抑制しうる点で好ましい。
【0030】
またゴルフボール1は、前記第1〜第3の大円L1〜L3が交差する6つの頂点にも、ディンプル2を配列していない。一般に、大円L1〜L3の位置にはディンプル2を交差させて整列させやすいが、ディンプル2を密に配するよりも、適宜ディンプル2が配置されていないランド部分(球面の部分)を設けることで、ディンプル2の配列をよりランダム化するのに役立ち、上述したゴルフボール周囲の空気を乱すのに有効となる。
【0031】
なお、各大円L1〜L3と交差するディンプル2と、この大円L1〜L3の両側で近接して配されるディンプル2との合計数Daは、前記パーティングラインの両側で近接して配されるディンプル2の合計数Dbよりも少なく設定されている。これによっても、空力学的対称性が向上し、シーム打ちを行った場合と、バックスピンの周速が最も速い部分が前記大円L1〜L3と一致するように打撃した場合とにおいて、飛行特性の差を減じうるのに効果がある。
【0032】
本例の場合、図6に大円L3と交差するディンプル2及び近接するディンプル2をハッチングで示している。その数Daは、大円L3の全周で52個になる。この場合、「大円の両側で近接するディンプル2」には、図6の如く、大円に最も近いディンプルだけを計数する。他方、図7にパーティングラインNの両側で近接して配されるディンプル2をハッチングで示している。その数DbはパーティングラインNの全周で62個となる。なお、特に限定はされないが前記各ディンプル数Da、Dbの比(Da/Db)は、例えば0.75〜0.95、より好ましくは0.80〜0.90程度とするのが望ましい。
【0033】
また本実施形態のディンプル2は、直径が大きい順番に第1のディンプル2A、第2のディンプル2B、第3のディンプル2C、及び第4のディンプル2Dを含んでいる。このようなディンプル2の種類数は、好ましくは本例のように4種以上とするのが望ましく、そのディンプル総数は、例えば280〜540個、さらに好ましくは360〜440個とするのが望ましい。なおディンプル2は、球面の一部で凹ます他、種々の曲面などを用いて凹設しうる。
【0034】
図12には、パーティングラインNを水平に表したゴルフボール1の概略図を示している。本例では前記パーティングラインNを含む仮想平面を基準面とし、球面上の任意の点が前記基準面に対する球の中心角θの絶対値で30°以下の範囲となるパーティングラインの近傍領域A1と、前記中心角θの絶対値で60°〜90°の範囲に含まれるパーティングラインの遠方領域A2とを設定するとともに、前記各領域A1、A2に含まれるディンプルにおいて、各直径ごとのディンプルの平均容積を違えている。
【0035】
前記パーティングラインの近傍領域A1及び遠方領域A2は、それぞれ前記第1ないし第4のディンプル2A〜2Dを含む。そして、前記近傍領域A1に含まれるディンプルの同一の直径ごとに求めた各ディンプル平均容積Vsが、前記遠方領域A2に含まれるディンプルの同一の直径ごとに求めた各ディンプル平均容積Vpよりも大で構成される。すなわち、例えば近傍領域A1に配された第1のディンプルの平均容積Vs1は、遠方領域A2に配された第1のディンプルの平均容積Vp1よりも大であり、このような関係は第2ないし第4のディンプルについても同様である。
【0036】
一般に、ディンプル2は、その容積がゴルフボールの飛行特性に影響を与えるとともに、バックスピン時の周速が大きい所ほどディンプル効果が有効に発揮される。従って、シーム打ちのでのディンプル効果を向上させるためには、上述のようなパーティングラインの近傍領域A1には平均容積が大きなディンプルを配置することが空力学的対称性を向上させるためにも好ましいものとなる。このため本実施形態のゴルフボール1は、上述のパーティングラインNの配置の改善に加え、パーティングラインNの近傍と遠方とでディンプルの平均容積に差を設けることにより、シーム打ち、ポール打ち時の飛行特性の差をより一層解消でき、空力学的対称性を大幅に向上することが可能になる。
【0037】
ここで、このようなディンプル容積の違いによる空力学的対称性の向上効果は、前記近傍領域A1に含まれる同一の直径ごとに求めたディンプル平均容積Vsと、遠方領域A2に含まれる同一の直径ごとに求めたディンプル平均容積Vpとの比(Vs/Vp)を、それぞれ1.04よりも大かつ1.20以下、さらに好ましくは1.07〜1.17とすることによってより顕著に発揮される。
【0038】
ディンプル容積を変化させる方法としては、例えばディンプル2の深さ、ディンプル2の凹部の曲面などの一方又は双方を変えることで容易になし得る。また同一領域に配された同一の直径を有するディンプル2は、すべて同一のディンプル容積である必要はなく、各領域内でもディンプル容積に変化を設けることもできる。また「ディンプル容積」とは、ディンプル2のエッジを含む平面から凹んだ容積であって、本例では接触式の表面形状測定機によりディンプルの形状を測定し、これを深さ方向に積算することにより求めている。また各領域A1又はA2に含まれるディンプルとは、そのディンプルの中心が該領域A1又はA2に含まれているディンプルを指す。
【0039】
本実施形態では、前記パーティングラインNは、6つの球面正三角形Δの辺の中間点Cを通ることにより、前記球面正三角形Δの辺との交差角度γ(図2に示し、小さい方とする)が45°となるものが例示した。この交差角度γは、前記パーティングラインNが球面正三角形Δをどのように区分するかによって変化するものである。よって、例えばパーティングラインNが、前記球面正三角形の辺の中間点C以外を通る場合には、例えば前記交差角度γは25°以上、より好ましくは40°以上かつ45°未満とするのが空力学的対称性を向上しうる点で好ましい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、例えば球面正三角形Δにはそれぞれ同一のディンプルを配列することも可能であり、またディンプルには、非円形ディンプルを含ませることなど種々変更しうる。
【0041】
【実施例】
図3〜図10に示したディンプル総数390個の本発明に係るゴルフボール(実施例)と、図13に示すディンプル総数336個(大円は3本)の従来の正八面体配列のゴルフボール(従来例)をそれぞれ表1、2に示す仕様にて試作した。なお各ゴルフボールともツーピースタイプとし、ディンプル以外の部分については同じ構成とした。実施例については、図10にディンプル配列の詳細を示している。そして、これらのゴルフボールについて、シーム打ち、及びポール打ちを行い、各ゴルフボールの飛行特性について調べた。なお各打撃は、ツルーテンパ社製のスイングロボットにメタルヘッド製ドライバー(#1)を取り付け、ヘッドスピードを49m/sとなるように調整して行うとともに、各々20球ずつ打撃して、打球が落下するまでの飛距離であるキャリー(単位:ヤード)を測定しその平均値で評価した。
【0042】
なお従来例では、3本の大円を有し、そのうち1本がパーティングラインと一致するボールを例示している。このボールの「ポール打ち」の打撃方法は、図15(B)にあるように、飛行方向に対して、ポール、シーム、ポール、シーム…と回転するように行う。このとき、パーティングライン以外の大円2本は飛行方向に対してランダムにセットされる(飛行方向に一致する場合もあり得る)。
テストの結果などを表1、表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
テストの結果、実施例のゴルフボールは、シーム打ち、ポール打ちのいずれの打撃方法に拘わらず、キャリーが実質的に同一で打撃方向の相違による弾道差を無くしており、従来例に比べて空力学的対称性を大幅に向上していることが確認できる。
【0046】
【発明の効果】
上述したように、本発明のゴルフボールは、球面を第1〜第3の大円により8個の球面正三角形に仮想区分し、これらの各第1〜第3の大円を中心としてその両側に配される全球面正三角形のディンプルの総和をともに等しくして各球面正三角形をディンプル配列の基準線としつつ、8個の球面正三角形のうち6つの球面正三角形を区分してのびるパーティングラインを設けることにより、空力学的対称性を大幅に向上でき、バックスピンの回転軸の相違による飛行特性の差が少なく、安定した飛行弾道を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ディンプルを省略した本実施形態のゴルフボールの斜視図である。
【図2】
そのパーティングラインを垂直に表した線図である。
【図3】
本実施形態のゴルフボールの正面図である。
【図4】
その平面図である。
【図5】
その右側面図である。
【図6】
その左側面図である。
【図7】
その底面図である。
【図8】
その背面図である。
【図9】
そのパーティングラインを垂直線に沿わせた図である。
【図10】
ディンプル配列の詳細を示す正面図である。
【図11】
ディンプルの球面の中心点についての点対称を説明する斜視図である。
【図12】
パーティングラインを水平に表したゴルフボールの概略図である。
【図13】
従来例のディンプル配列を示すゴルフボールの正面図である。
【図14】
従来の正八面体配列のゴルフボールを示す斜視図である。
【図15】
(A)はシーム打ち、(B)はポール打ちを説明する斜視図である。
【符号の説明】
1 ゴルフボール
2 ディンプル
3 球面二等辺三角形部
4 球面四角形部
L1、L2、L3 第1の大円、第2の大円、第3の大円
N パーティングライン
Δa〜Δh 球面正三角形
P 頂点
C 球面正三角形の辺の中間点
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-03-17 
出願番号 特願平11-154090
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A63B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 中村 圭伸
藤井 靖子
登録日 2002-11-01 
登録番号 特許第3365746号(P3365746)
権利者 住友ゴム工業株式会社
発明の名称 ゴルフボール  
代理人 苗村 正  
代理人 苗村 正  
代理人 住友 慎太郎  
代理人 住友 慎太郎  

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