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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08G 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08G 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1098076 |
異議申立番号 | 異議2002-73028 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-07-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-12-20 |
確定日 | 2004-03-26 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3295588号「硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3295588号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3295588号の請求項1及び2に係る発明は、平成7年12月27日に特許出願され、平成14年4月5日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人アキレス株式会社及び伊藤廣美により特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月11日付けで特許異議意見書と訂正請求書が提出され、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成16年1月9日付けで意見書と手続補正書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正請求に対する補正の適否について 特許権者は、訂正請求書第4頁第1〜4行の訂正事項b.(新たな請求項3の加入に関する訂正)を削除し、これに対応して同請求書第4頁第17行〜第5頁第27行の訂正事項d.における訂正後の記載中の「請求項1、2及び3」を「請求項1、2」に、「1種類又は2種類以上を使用したものであり、前記、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-134aを使用したものである。」を「1種類又は2種類以上を使用したものである。」に補正するものであり、当該訂正請求に対する補正は訂正明細書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 (2)訂正の内容 <1>訂正事項a 請求項1及び2を削除するとともに、訂正前の請求項3及び4を、それぞれ請求項1及び2に繰り上げ、訂正前の請求項3(新請求項1)における「ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者を混合したフタル酸、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」を、「ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」と訂正し、 訂正前の請求項4(新請求項2)における「前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとしてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したことを特徴とする請求項3記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」を、「前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」と訂正する。 <2>訂正事項b 明細書の段落【0001】における「本発明は、主として断熱材等の用途に使用される硬質ポリウレタンフォームに関するものであって、オゾン層を破壊するフロンガスを使用せず、又、同時に難燃性に優れた特性を有するポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。」を、「本発明は、主として断熱材等の用途に使用される硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものであって、オゾン層を破壊するフロンガスを使用せず、又、同時に難燃性に優れた特性を有するポリウレタンフォームの製造方法に関する。」と訂正する。 <3>訂正事項c 明細書の段落【0007】を削除し、以下、段落番号を繰り上げ、訂正前の段落【0008】(新段落【0007】)における「そして、請求項3、4に記載の如く、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者を混合したフタル酸、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法に係るものであり、好ましくは、前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したものである。」を、「すなわち、請求項1、2に記載の如く、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法に係るものであり、好ましくは、前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したものである。」と訂正する。 <4>訂正事項d 訂正前の段落【0009】(新段落【0008】)における「更に、本発明の詳細を説明する。本発明者らが既に示した特定のポリエステルポリオールを使用する処方は、上記の如く、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はその両者を混合したフタル酸或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上を用いるもので、発泡剤としてHCFC-141bを使用しても難燃性を発揮するものである。本発明者らは、ここで発泡剤としてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-356eaのようなハイドロフロロカーボンの様に常温で液体でオゾン破壊係数=0のフロンの場合にも、CFC-11やHCFC-141bと同じ製造設備が使用出来、且優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られると言う驚くべき事実を知見したのである。」を、「更に、本発明の詳細を説明する。本発明者らが既に示した特定のポリエステルポリオールを使用する処方は、上記の如く、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上を用いるもので、発泡剤としてHCFC-141bを使用しても難燃性を発揮するものである。本発明者らは、ここで発泡剤としてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-356eaのようなハイドロフロロカーボンの様に常温で液体でオゾン破壊係数=0のフロンの場合にも、CFC-11やHCFC-141bと同じ製造設備が使用出来、且優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られると言う驚くべき事実を知見したのである。」と訂正する。 <5>訂正事項e 訂正前の段落【0010】(新段落【0009】)における「本発明で使用されるポリエステルポリオールの多塩基酸成分は、オルソ、メタ、パラの各フタル酸で、好ましくはメタ(イソ)、パラ(テレ)フタル酸のいずれか、或はジメチルフタレート等のフタル酸誘導体、又はそれらの混合物であり、全ヒドロキシ化合物成分中5〜100%使用する芳香族ヒドロキシ化合物としては、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールS等のベンゼン環含有ヒドロキシ化合物、又はそれらの誘導体化合物、若しくは水酸基にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1〜数モル開環付加重合させたものであり、各々単独或いは2種類以上組み合わせて使用出来る。又、フタル酸誘導体としてはm-ジメチルフタレート、p-ジメチルフタレートなどが好適に使用される。」を、「本発明で使用されるポリエステルポリオールの多塩基酸成分は、テレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体であり、m-ジメチルフタレート、p-ジメチルフタレートなどが好適に使用される。又、全ヒドロキシ化合物成分中5〜100%使用する芳香族ヒドロキシ化合物としては、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールS等のベンゼン環含有ヒドロキシ化合物、又はそれらの誘導体化合物、若しくは水酸基にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1〜数モル開環付加重合させたものであり、各々単独或いは2種類以上組み合わせて使用出来る。」と訂正する。 <6>訂正事項f 訂正前の段落【0011】(新段落【0010】)における「尚ポリエステルポリオールの使用形態、粘度等の扱い易さと難燃効果を合わせて考慮した場合、芳香族ヒドロキシ化合物は全ヒドロキシ化合物成分中、20〜70%の範囲で使用してエステル化反応させるのがより好ましい。他方、ポリエステルポリオールと併用して使用出来るポリヒドロキシ化合物としては特に限定するものではなく、例えばグリセリン、シュークローズ、エチレンジアミン等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオール類等があり、各々単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することが出来るが、ポリエステルポリエステルポリオール化合物の反応活性が低い場合には、これを補う為にも反応活性の高いポリオールを使用することが望ましい。」を「尚ポリエステルポリオールの使用形態、粘度等の扱い易さと難燃効果を合わせて考慮した場合、芳香族ヒドロキシ化合物は全ヒドロキシ化合物成分中、20〜70%の範囲で使用してエステル化反応させるのがより好ましい。他方、ポリエステルポリオールと併用して使用出来るポリヒドロキシ化合物としては特に限定するものではなく、例えばグリセリン、シュークローズ、エチレンジアミン等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオール類等があり、各々単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することが出来るが、ポリエステルポリオール化合物の反応活性が低い場合には、これを補う為にも反応活性の高いポリオールを使用することが望ましい。」と訂正する。 <7>訂正事項g 訂正前の段落【0012】(新段落【0011】)における「発泡剤として使用するハイドロフロロカーボンは、常温で液体である方が取り扱いの面で好ましい。つまり、本発明の主旨は特殊な設備を使用せず、従来のCFC-11やHCFC-141bの場合と同様な方法で取り扱うことが出来るフッ素化合物系発泡剤であり、オゾン層破壊係数ゼロのものを示す。ここでいう常温とは0℃以上という意味であり、更に厳密には1気圧での沸点が0℃以上のハイドロフロロカーボンを示す。しかし、沸点があまり高すぎると硬質ウレタンフォーム用発泡剤として用をなさなくなるので沸点の範囲は好ましくは40℃以下に押さえるべきである。このような温度範囲にある沸点を持つものとしてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236ea等があり、これらのHFCの1種類又は2種類以上を使用することによって本発明のウレタンフォームを作ることが出来る。通常、HFCはそれ自身必ずしも不燃性とはいえない挙動を示すが、本発明で使用する限定されたポリヒドロキシ化合物成分をポリオールとして用いた場合には難燃性の優れたウレタンフォームを得ることが出来る。」を、「発泡剤として使用するハイドロフロロカーボンは、常温で液体であるものと常温で気体であるものとを併用するが、常温で液体であるものを使用するのは、取り扱いの面で好ましいからである。つまり、本発明の主旨は特殊な設備を使用せず、従来のCFC-11やHCFC-141bの場合と同様な方法で取り扱うことが出来るフッ素化合物系発泡剤であり、オゾン層破壊係数ゼロのものを示す。ここでいう常温とは0℃以上という意味であり、更に厳密には1気圧での沸点が0℃以上のハイドロフロロカーボンを示す。しかし、沸点があまり高すぎると硬質ウレタンフォーム用発泡剤として用をなさなくなるので沸点の範囲は好ましくは40℃以下に押さえるべきである。このような温度範囲にある沸点を持つものとしてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236ea等があり、これらのHFCの1種類又は2種類以上を使用することによって本発明のウレタンフォームを作ることが出来る。通常、HFCはそれ自身必ずしも不燃性とはいえない挙動を示すが、本発明で使用する限定されたポリヒドロキシ化合物成分をポリオールとして用いた場合には難燃性の優れたウレタンフォームを得ることが出来る。」と訂正する。 <8>訂正事項h 訂正前の段落【0013】(新段落【0012】)における「HFCの使用量は目的とする発泡体の密度によって任意に決定されるが、通常全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、特に20〜70重量部が好ましい。又必要に応じて、水、HCFC、塩化メチレンなどの併用も考えられるが、水の併用はフォームの難燃性を低下させる危険性があること、又HCFCや塩化メチレン等の併用は地球環境保護を目的とする本発明の主旨から言って極力最小限にすべきである。」を「常温で液体のHFCの使用量は目的とする発泡体の密度によって任意に決定されるが、通常全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、特に20〜70重量部が好ましい。又必要に応じて、水、HCFC、塩化メチレンなどの併用も考えられるが、水の併用はフォームの難燃性を低下させる危険性があること、又HCFCや塩化メチレン等の併用は地球環境保護を目的とする本発明の主旨から言って極力最小限にすべきである。」と訂正する。 <9>訂正事項i 訂正前の段落【0014】(新段落【0013】)における「一方HFCとして常温で気体のものも問題なく併用できる。例えばHFC-134aの場合、これ自身ポリオールに対する溶解性が少ないため多くの量を投入することは出来ないが、例えばポリヒドロキシ化合物100重量部当たり0〜10重量部で良く、その場合は予めHFC245fa等と混合した混合フロンの形で配合原料中に投入したり、又は第3成分として成分原液中に直接投入すること等の簡便な方法が使用できる。」を、「一方HFCとして常温で気体のものは、例えばHFC-134aがある。HFC-134aの場合、これ自身ポリオールに対する溶解性が少ないため多くの量を投入することは出来ないが、全ポリヒドロキシ化合物100重量部当たり10重量部以下で良く、予めHFC245fa等と混合した混合フロンの形で配合原料中に投入したり、又は第3成分として成分原液中に直接投入するという簡便な方法を使用する。」と訂正する。 <10>訂正事項j 明細書の段落【0019】〜【0022】を削除し、以下、段落番号を繰り上げる。 (3)訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 <1>訂正事項a 訂正事項aは、請求項1及び2を削除し、訂正前の請求項3及び4をそれぞれ請求項1及び2に繰り上げ(以下、「訂正事項a-1」という。)、 新請求項1において「この両者を混合したフタル酸」とあるを「この両者とフタル酸との混合物」と訂正し(以下、「訂正事項a-2」という。)、 新請求項1において「0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを使用する」とあるを「0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入する」と訂正し(以下、「訂正事項a-3」という。)、 新請求項2において「請求項3記載の」とあるを「請求項1記載の」と訂正する(以下、「訂正事項a-4」という。)ものである。 訂正事項a-1及びa-4は、請求項を削除し、それに伴って引用する請求項の項番を訂正するものであるから、それぞれ、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、訂正前の明細書に記載された事項の範囲内でされたものである。 訂正事項a-2は、訂正前の段落【0010】における「本発明で使用されるポリエステルポリオールの多塩基酸成分は、オルソ、メタ、パラの各フタル酸で、好ましくはメタ(イソ)、パラ(テレ)フタル酸のいずれか、或はジメチルフタレート等のフタル酸誘導体、又はそれらの混合物であり」との記載、即ち、ポリエステルポリオールの多塩基酸成分として、オルソ、メタ、パラの各フタル酸(註:「ベンゼン-o-ジカルボン酸、ベンゼン-m-ジカルボン酸及びベンゼン-p-ジカルボン酸」の意と解される。)の混合物が用いられる旨の記載に基づいて、訂正前の「この両者(註:テレフタル酸とイソフタル酸)を混合したフタル酸」という記載が「テレフタル酸(ベンゼン-p-ジカルボン酸)とイソフタル酸(ベンゼン-m-ジカルボン酸)とフタル酸(ベンゼン-o-ジカルボン酸)との混合物」の意味であることを明りょうにしたものであるから、訂正事項a-2は、明りょうでない記載の釈明を目的とし、訂正前の明細書に記載された事項の範囲内でされたものである。 訂正事項a-3は、訂正前の段落【0013】の「HFCの使用量は目的とする発泡体の密度によって任意に決定されるが、通常全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、・・・が好ましい。」なる記載及び訂正前の段落【0014】の「一方HFCとして常温で気体のものも問題なく併用できる。例えばHFC-134aの場合、これ自身ポリオールに対する溶解性が少ないため多くの量を投入することは出来ないが、例えばポリヒドロキシ化合物100重量部当たり0〜10重量部で良く、その場合は予めHFC-245fa等と混合した混合フロンの形で配合原料中に投入したり、又は第3成分として成分原液中に直接投入すること等の簡便な方法が使用できる。」なる記載に基づいて、ハイドロフロロカーボンの原料中への混合手段について限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正前の明細書に記載された事項の範囲内でされたものである。 <2>訂正事項b〜e、g〜j 訂正事項b〜e及びg〜jは、訂正事項aによる特許請求の範囲の訂正に伴い発明の詳細な説明の記載をこれと整合させるものであるから、これらは明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正前の明細書に記載された事項の範囲内でされたものである。 <3>訂正事項f 訂正事項fは「ポリエステルポリエステルポリオール化合物」とあるを「ポリエステルポリオール化合物」と訂正するものであるが、訂正事項fは、誤記の訂正を目的とすることは明らかである。 <4>そして、訂正事項a〜jは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)本件発明 本件特許第3295588号の訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正された本件特許明細書(以下、単に「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。 【請求項2】前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」 (2)特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人アキレス株式会社は、甲第1号証(The Society of the Plastics Industry, Inc.主催で1995年9月26日〜29日に開催された研究発表会にて頒布された講演集「POLYURETHANES 1995」,表紙,奥付,第2〜9頁)、甲第2号証(特開平2-142816号公報)、甲第3号証(特開平6-306132号公報)、甲第4号証(特開平5-239251号公報)、甲第5号証の1(「Stepan Product Bulletin STEPANPOL(R)(当審註:(R)はRの丸付き文字)」)、甲第5号証の2(STEPANPOL芳香族ポリエステルを紹介するURL頁http://www.brian-jones.co.uk/download/polyols.doc)、甲第6号証(「DOW Specialty Polyether Polyols」)、甲第7号証(「PRODUCT INFORMATION Terol 375」)及び甲第8号証(The Society of the Plastics Industry, Inc.主催で1988年10月18日〜21日に開催された研究発表会にて頒布された講演集「POLYURETHANES 88」,表紙,奥付,第374〜378頁)を提出し、訂正前の請求項1〜4に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるか、又は甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得た発明であるから、訂正前の請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項3号の規定に違反してされたものであるか、又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。 また、特許異議申立人伊藤廣美は、甲第1号証(特開平2-235982号公報)、甲第2号証(特開平3-152160号公報)、甲第3号証(特開平7-188375号公報)及び甲第4号証(特表平5-505850号公報)を提出し、訂正前の請求項1〜4に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得た発明であるから、訂正前の請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである旨主張している。 (3)取消理由 当審で通知した取消理由は次の(ア)〜(ウ)であり、引用した刊行物及びその記載事項は(4)に示すとおりである。 (ア)特許法第36条第4項違反 「フタル酸」とは、「ベンゼン-o-ジカルボン酸」、即ち、オルソ位に2つのカルボキシル基を有するベンゼンを意味するものである(「化学大辞典7 縮刷版」,共立出版(株), 1997.9.20,P.823「フタル酸」の項参照。)ところ、本件特許明細書の段落【0010】等には、「オルソ、メタ、パラの各フタル酸」のように「フタル酸」を単に「2つのカルボキシル基を有するベンゼン」の意味で用いていると解される記載が散見され、本件発明で使用されるポリエステルポリオールの構造が不明確である。 したがって、本件出願は、特許法第36条第4項に規定された要件を満たしていない。 (イ)特許法第29条第1項(第3号に該当)違反 本件請求項1〜4に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項(第3号に該当)の規定に違反し、特許を受けることができない。 (ウ)特許法第29条第2項違反 本件請求項1〜4に係る発明は、刊行物1〜8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。 (註:上記(2)及び(3)において「請求項」とは、訂正前の請求項を指す。) (4)刊行物及びその記載事項 刊行物1:The Society of the Plastics Industry, Inc.主催で1995年9月26日〜29日に開催された研究発表会にて頒布された講演集「POLYURETHANES 1995」,表紙,奥付,第2〜9頁(特許異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第1号証) (1-1)「1994年のPolyurethane World Congressにおいてアライドシグナル(Allied Signal)は、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)がHFC-141bを代替するための液体HFC‘第三世代’発泡剤の第一位の候補であることを発泡した。この分子は、選択基準として物性、難燃性、発泡剤としての性能、経済性、環境許容可能性および予想される毒性を用いて数百の候補が等級付けされた厳密な選考過程の後に選択された、HFC-245faは、これら特質の最適な組合せを与えることが判った。」(第2頁左欄2段第1〜10行) (1-2)「いかなる発泡剤候補も受け入れられる可能性は、究極的には性能に基づくであろう。・・・HFC-245faのフォーム発泡剤としての実用性は証明されており、HFC-245faにより最適な性能を達成するための処方および製造条件を最適化するための研究は始まっている。これらのデータはフォーム処方設計者が専有処方の開発活動を始めうる出発点を提供するものと予測される。HCFC-141b発泡フォームのそれに近似するk-factor(熱伝導率)を有するフォームを得ることに加えて、我々の最新の評価は、HFC-245faの中間的な沸点(伝統的な液体発泡剤よりもより低いがガス状発泡剤よりはより高い)により、伝統的な注入フォームの優れた均質性および物性を有するだけでなく、フロスフォームに最も頻繁に関連する等方性のセル構造および優れた流れ特性を有するフォームが得られることを示している。」(第2頁右欄第3段第1〜17行) (1-3) 「ICIポリイソシアヌレートボード評価に用いられた処方 B成分 php Stepanpol P2352a .............100.0.......................100.0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ HFC-245fa............................. ・・・.....................40.5 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 (第6頁左欄表7) 刊行物2:特開平2-142816号公報(特許異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第2号証) (2-1)「ポリイソシアネート成分、芳香族ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分、触媒、発泡剤、整泡剤、その他の添加剤をミキシングヘッドにて高圧で混合してスプレー発泡させる・・・ことを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1) (2-2)「発泡剤として常温、常圧で液体の発泡剤と、沸点5℃以下の常温、常圧で気体の発泡剤を使用し、・・・請求項1記載のウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項2) (2-3)「〔課題を解決するための手段〕本発明はポリオールとして主に芳香族ポリエステルポリオールを使用し、特定の触媒を組み合わせて使用することにより低温時に於いても難燃性、接着性に優れたフォームを形成できることを見出し本発明を完成した。」(第2頁左下欄第6〜11行) (2-4)「本発明に使用されるポリオールとしては、芳香族ポリエステルポリオールを含有するポリオールを使用する。この芳香族ポリエステルポリオールは、例えば、PETスクラップ、DMTプロセス残渣、フタール酸などから作られるポリオールなどであり、」(第3頁左上欄第1〜6行) (2-5)「本発明に於いては常温、常圧で液体の発泡剤を予めポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分中に混合しておき、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをミキシングヘッドにて高圧で混合してスプレー発泡させることによりウレタン変性イソシアヌレートフォームを製造することができる。」(第3頁左下欄第19行〜同頁右下欄第5行) (2-6)「又、本発明では、常温、常圧で液体の発泡剤と沸点が5℃以下の常温、常圧で気体の発泡剤を併用したフロススプレー法を採用することもできる。」(第3頁右下欄第11〜13行) (2-7)「沸点が5℃以下の常温、常圧で気体の発泡剤はポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分の圧縮計量ポンプとミキシングヘッドの間の導管中に高圧をかけて液体状で混入させるか、又はミキシングヘッド中に直接混入させてもよい。」(第3頁右下欄第18行〜第4頁左上欄第2行) (3-1)「ポリイソシアネート成分と、ポリオール、触媒、難燃剤、発泡剤、整泡剤からなるポリオール成分とを混合して発泡させるウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法において、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ギ酸メチルを使用することを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1) (3-2)「ポリオールとして、ポリオール全量に対して50〜90重量%の芳香族ポリエステルポリオールを含むポリオールを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載のウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項3) (3-3)「【発明が解決しようとする課題】本発明者等はこれらの問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、低温時におけるスプレー発泡の際にも接着性に優れ、しかもJIS A 1321に準拠する難燃性試験において難燃3級に合格するウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法を開発した。」(段落【0005】) (3-4)「本発明に使用するポリオールとしては、芳香族ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を混合したものが挙げられるが、芳香族ポリエステルポリオールを全ポリオールに対して好ましくは50〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%混合し使用する。芳香族ポリエステルポリオールの使用量が50重量%未満ではJIS A 1321試験で難燃3級に合格することが困難である場合があり、一方90重量%を越えると、形成されたウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの寸法安定性が悪くなる場合がある。この芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートスクラップ、ジメチルテレフタレートプロセス残渣、フタール酸等から作られるポリオール等が挙げられ、これらの水酸基価は通常200〜500mgKOH/g程度が好ましい。」(段落【0009】) (4-1)「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤。」(特許請求の範囲の請求項1) (4-2)「発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項2) (4-3)「【発明が解決しようとする課題】本発明は、オゾン層を破壊する危険性がなく、不燃性であり、発泡体原料との相溶性に優れ、しかも得られる発泡体に優れた断熱性、機械的強度などを付与し得るプラスチック発泡体製造用発泡剤、および該発泡剤を用いたプラスチック発泡体の製造方法を提供することを主な目的とする。」(段落【0008】) (4-4)「また、本発明は、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(CF3 CH2 CHF2 ;以下、単にHFC-245faと記載する。)を用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法を提供するものである。」(段落【0011】) (4-5)「HFC-245faの主な物性を第1表に示す。」(段落【0013】) (4-6) 「 第 1 表 分子量 134 沸点 12℃ オゾン破壊係数 0 本発明の発泡剤は、単独で使用しても良く、或いは他の発泡剤または水と併用しても良い。併用し得る他の発泡剤としては、例えば、CFC-11、CFC-12およびその他の低沸点ハロゲン化炭化水素;n-ペンタン,イソペンタンなどの低沸点炭化水素;不活性ガスなどが挙げられる。」(段落【0014】) (4-7)「本発明の発泡剤を用いて製造されるプラスチック発泡体としては、例えばイソシアネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノール/ホルムアルデヒド縮合物を原料とする発泡体などが挙げられる。本願発明による発泡材は、イソシアネートを原料とする発泡体の製造に適しており、特にポリウレタン発泡体およびポリイソシアヌレート発泡体の製造に好適である。」(段落【0030】) (4-8)「発泡原料としてのプラスチックに対する本発明発泡剤の使用量も、公知の発泡剤の場合と変わるところはない。この使用量は、発泡原料の種類、所望の発泡体の密度などにより適宜決定されるが、通常発泡原料と発泡剤の合計に対する発泡剤の割合として1〜40%程度、好ましくは2〜20%程度である。」(段落【0031】) (4-9)「本発明の発泡剤を使用して発泡体を製造する場合にも、公知の方法と同様にして行なえば良い。例えば、ポリウレタン発泡体を製造する場合には、常法に従って、ポリオールなどの活性水素含有基を2以上有する活性水素化合物とポリイソシアネート化合物とを触媒と発泡剤の存在下に反応させればよい。より具体的には、公知の1段階法、プレポリマー法、ブロック発泡法、二重ベルトコンベア法などによって、所望のプラスチック発泡体を製造することができる。」(段落【0032】) (4-10)「なお、本発明によるプラスチック発泡体の製造方法においては、公知の整泡剤、触媒などの添加剤を用いることもできる。整泡剤としては、シリコーン系整泡剤、含フッ素系整泡剤などが挙げられ、これらは発泡原料に対して0.1〜2%程度用いられる。また触媒としては、トリエチレンジアミンなどの3級アミン触媒、有機スズ化合物などの金属化合物系触媒などが挙げられ、これらは発泡原料に対して0.1〜5%程度用いられる。」(段落【0033】) (4-11)「本発明の発泡剤には、その他、必要に応じて水、充填剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる。」(段落【0034】) (4-12) 「 第 2 表 ポリオール HFC-245fa(%) 20 30 A ○ ○ B ○ ○ C ○ ○ 第2表の結果から、本発明の発泡剤は、実際に使用される混合割合でポリオールと良好な相溶性を示し、安定したプレミックスを形成することが確認された。」(段落【0046】) (4-13)「【実施例2】 *発泡体の製造 (1)ポリオールBを用いた発泡体の製造 ポリオールB 100g、シリコーン系整泡剤2g、水2g、触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン2gおよび本発明による発泡剤としてのHFC-245fa 13gを混合し、激しく攪拌した。この攪拌混合物と粗製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート148gとを混合して発泡させ、硬質ポリウレタン発泡体を得た。」(段落【0047】) (5-1)「噴射剤の存在下にプラスチックを発泡させることにより成るプラスチック発泡体組成物を形成する方法において、該噴射剤が、式、 CX3-CY2-R 式中、X基の各々は独立に水素又はフッ素を表し、Y基の各々は独立に水素、フッ素又はCF3を表し、Rは・・・、CHF2、・・・を表し、上記式のポリフルオロアルカンは、少なくとも2個のフッ素原子を含む、 のポリフルオロアルカンを少なくとも1種を含んで成ることを特徴とする方法。」(特許請求の範囲の請求項2) (5-2) 「 X3 Y2 R ・・・ F3 ................H2 ............CHF2 ・・・ 」 (第2頁右下欄表1) (5-3)「本発明に従う噴射剤を使用してイソシアネートをベースとする発泡体の製造には下記のものを使用することができる。 a)出発成分として、・・・ポリイソシアネート、・・・ b)出発成分は、更に、イソシアネートに対して反応性の少なくとも2個の水素原子を含む通常400-10,000の分子量の化合物であることができる。これらの化合物としては、・・・ヒドロキシル基を含有する化合物、・・・例えば、少なくとも2個、通常2-8個、好ましくは2-6個のヒドロキシル基を含む・・・ポリエステル・・・が挙げられる。・・・ e)場合により、他の助剤及び添加剤を同時に使用することができる。」(第3頁右下欄第10行〜第4頁右下欄第2行) (5-4)「・・・本発明に従って使用する噴射剤により製造される発泡体は、・・・地球の大気のオゾン層に悪影響をもはや及ぼさないことにより区別される。」(第5頁右上欄第11〜15行) (6-1)「(a)一種の有機および/または変性有機ポリイソシアネートと、b)少なくとも2個の反応性水素原子を有する少なくとも一種の高分子化合物、・・・d)発泡剤、e)触媒および必要の場合には、f)助剤および/または添加剤の存在で反応させる・・・ことを特徴とする熱伝導性僅少のポリウレタン硬質発泡プラスチックの製造法。」(特許請求の範囲の請求項1) (6-2)「b)少なくとも2個の反応性水素原子を有する高分子量化合物(b)としては、好適には、・・・ポリヒドロキシル化合物が、考えられる。・・・好適にはポリエステル-ポリオール・・・が使用される。・・・好適なポリエステル-ポリオールは、例えば、炭素原子数2乃至12個の有機ジカルボン酸、好適には炭素原子数4乃至6個の脂肪族ジカルボン酸と、多価アルコール、・・・から製造されることができる。ジカルボン酸として考えられるのは、・・・フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸である。」(第5頁右下欄第18行〜第6頁右上欄第2行) (7-1)「有機ポリイソシアナート、ポリオール、触媒、整泡剤及びその他の助剤を1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン及び/又は2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン発泡剤の存在下に発泡させて製造される硬質ポリウレタンフォームにおいて、ポリオール100重量部当たり30重量部以上が芳香族ポリエステルポリオールであり、かつ、ポリオール100重量部中に一般式R-COO-X(式中Rは1〜17個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基又はアリール基、Xはナトリウム又はカリウムを示す。)で表わされる1種類、又は2種類以上のカルボン酸金属塩を、0.1〜7重量部含有せしめることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。」(特許請求の範囲の請求項1) (7-2)「芳香族ポリエステルポリオールが、o-フタル酸及び/又は無水フタル酸をグリセリン及び/又はエチレングリコールと反応させて得られる平均官能基数3以上、水酸基価300〜600のものである請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム。」(特許請求の範囲の請求項2) (8-1)「有機ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、および触媒を含むフォーム形成混合物からの硬質独立気泡ポリイソシアヌレートフォームの製法において、(a)単独ポリオールとしてのポリエステルポリオール、・・・を使用することを特徴とする硬質独立気泡ポリイソシアヌレートフォームの製法。」(特許請求の範囲の請求項1) (8-2)「ポリエステルポリオールが芳香族ポリエステルポリオールであり、芳香族ポリエステルポリオールが好ましくはポリカルボン酸成分と・・・脂肪族ジオールとの反応生成物であり、ポリカルボン酸成分は好ましくは・・・(e)テレフタル酸・・・(g)イソフタル酸・・・からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項2) 参考資料1:「Stepan Product Bulletin STEPANPOL(R)(当審註:(R)はRの丸付き文字)」(特許異議申立人アキレス株式会社が提出した甲第5号証の1) (5)特許法第36条第4項の規定違反について 上記のように、訂正前の本件明細書の請求項3(新請求項1)及び段落【0007】〜【0009】(新段落【0007】、【0008】)における「テレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者を混合したフタル酸」との記載が「テレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物」と訂正され、また、段落【0010】(新段落【0009】)の「オルソ、メタ、パラの各フタル酸で、好ましくはメタ(イソ)、パラ(テレ)フタル酸のいずれか、或はジメチルフタレート等のフタル酸誘導体、又はそれらの混合物であり、」との記載が「テレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体であり、m-ジメチルテレフタレート,p-ジメチルテレフタレートなどが好適に使用される。又、」と訂正された結果、「フタル酸」が限定的に「ベンゼン-o-ジカルボン酸」を意味するものであることが明らかになったので、もはや、本件発明1及び2で使用されるポリエステルポリオールの構造が不明確であるとはいえない。 よって、「本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1及び2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載していない」とすることはできない。 (6)特許法第29条第1項3号の規定違反について 取消理由に引用された刊行物1には、本件発明1及びこれを引用する本件発明2における、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入する点が記載されていない。 したがって、本件発明1及び2は、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。 (7)特許法第29条第2項の規定違反について 1)本件発明1について 刊行物4には、発泡剤として1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(以下、「HFC-245fa」と記載する。)を用いるプラスチック発泡体の製造方法(4-2)が記載されており、HFC-245faの沸点が12℃であること(4-6)、上記製造方法がポリウレタン発泡体の製造に好適であり(4-7)、ポリウレタン発泡体を製造する場合には、常法に従って、ポリオールなどの活性水素含有基を2個以上有する活性水素化合物とポリイソシアネート化合物とを触媒と発泡剤の存在下に反応させること(4-9)、上記発泡体の製造方法においては、公知の整泡剤、触媒などの添加剤を用いることもできること(4-10)及び上記発泡剤には、その他、必要に応じて、充填剤、着色剤、難燃剤などを配合できること(4-11)が記載されている。 そして、上記「HFC-245fa」は、その化学構造からみてフッ素化合物であるハイドロフロロカーボンの一種であり、また沸点が12℃であることから、0℃以上で液体であるといえる。 したがって、上記「HFC-245fa」は、本件発明1における「フッ素化合物系発泡剤」である「0℃以上で液体のハイドロフロロカーボン」に相当する。 また、上記「ポリオール」及び「充填剤、着色剤、難燃剤」は、それぞれ本件発明1における「ポリヒドロキシ化合物」(本件明細書の請求項1には、「ポリヒドロキシ化合物」がポリエステルポリオールを含有することが記載されている。)及び「その他の助剤」(本件明細書の段落【0017】には、任意の成分として、難燃剤及び充填剤が例示されている。)に相当する。 そこで、本件発明1と刊行物4に記載されたプラスチック発泡体の製造方法(以下、「引用発明4」という。)とを対比すると、両者は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させてポリウレタンフォームを製造するに際して、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを用いたことを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法である点で一致し、引用発明4は、本件発明1における以下の4点を備えていない点でこれらの発明には相違が認められる。 (相違点1)「ポリヒドロキシ化合物として、テレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用いる」点、 (相違点2)「0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部使用する」点、 (相違点3)「0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用する」点、及び、 (相違点4)「気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入する」点。 上記相違点について検討する。 (相違点1)刊行物2〜3及び6〜8に記載のように、テレフタル酸、イソフタル酸及び/又はフタル酸を多塩基成分としてエステル化したポリエステルポリオールは、ポリウレタンフォームを形成するためのポリオールとして周知慣用のものであり、また、該ポリエステルポリオールを用いることにより硬質ポリウレタンフォームが製造できることも、刊行物6〜8に記載されているように周知の事項である。 また、刊行物4には引用発明4におけるポリオールを特定のポリオールに限定する旨の記載はなく、引用発明4におけるポリオールとしては、周知慣用のものを適宜選択できるものと解されるから、該ポリオールの全部又は一部に上記ポリエステルポリオールを用いて硬質ポリウレタンフォームを得ることは、当業者が容易になし得たものであり、さらに、その使用量を全ポリオール100重量部を基準として、本件発明1のごとく5重量部以上程度に設定することは、当業者が適宜なし得たものというほかはない。 また、上記ポリエステルポリオールを用いることにより難燃性フォームが得られることは刊行物2((2-3))及び刊行物3((3-3)〜(3-4))に記載されているから、本件発明1の難燃性に優れたフォームを製造できるという効果は、刊行物2及び3の記載から予測し得る程度のものにすぎない。 (相違点2)刊行物4には、ポリオールとHFC-245faについて、相溶性試験の結果が良好な混合割合と、これが実際に使用される割合であること(4-12)が記載されており、さらに実施例においてポリオール100gに対してHFC-245faを13g用いること(4-13)が記載されているから、引用発明4において、全ポリオール100重量部に対するHFC-245faの使用量を、本件発明1のごとく10〜80重量部程度に設定することは当業者が容易になし得たものというべきである。 (相違点3)刊行物4には、HFC-245faを他の発泡剤と併用しても良く、他の発泡剤としてCFC-12及び不活性ガスが挙げられること(4-6)が記載されている。 そして、CFC-12及び不活性ガス(周知慣用の発泡剤用不活性ガスとしては、窒素及び空気が挙げられる。)はいずれも0℃以上で気体であるから、刊行物4には、引用発明4においてHFC-245faと0℃以上で気体の発泡剤を併用することが示唆されているものということができる。 さらに、その場合、引用発明4の課題は発泡剤によるオゾン層の破壊を防止することであるから(4-3)、引用発明4において、0℃以上で気体の発泡剤として、特定フロンであるCFC-12に代えて、硬質ポリウレタンフォーム用発泡剤として周知慣用の代替フロンを使用することは、当業者が容易に想到し得たものにすぎない。 そして、代替フロンであるHFC-134aは、周知慣用の硬質ポリウレタンフォーム用発泡剤であり(周知例:特開平7-149867号公報、特開平5-98061号公報、特開平7-33849号公報)かつ0℃以上で気体であるから、引用発明4においてHFC-134aをHFC-245faと併用することは、当業者が容易になし得たものというべきである。 さらに、刊行物4には、引用発明4における発泡剤の使用量は公知の発泡剤の場合と代わるところがなく、通常発泡原料と発泡剤の合計に対する発泡剤の割合が1〜40%程度、好ましくは2〜20%程度であること(4-8)が記載されており、また、上記(相違点2)で検討したとおり、引用発明4においてHFC-245faを全ポリオール100重量部に対して10〜80重量部に設定することは当業者が容易になし得たことであるから、発泡剤の総量からHFC-245faの量を差し引いて、全ポリオール100重量部に対するHFC-134aの量を、本件発明1のごとく10重量部以下程度に設定することは、当業者が適宜なし得た程度のことにすぎない。 (相違点4)刊行物2には、ポリイソシアネート成分、芳香族ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分、触媒、発泡剤、その他の添加剤をミキシングヘッドにて高圧で混合してスプレー発泡させることを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法(2-1)が記載されており、上記発泡剤として常温、常圧で液体の発泡剤と、沸点5℃以下の常温、常圧で気体の発泡剤を使用すること(2-2)、上記ポリオールとしては、芳香族ポリエステルポリオールを含有するポリオールを使用し、この芳香族ポリエステルポリオールは、例えば、PETスクラップ、DMTプロセス残渣、フタール酸などから作られるポリオールなどであること(2-4)、常温、常圧で液体の発泡剤を予めポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分中に混合しておき、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをミキシングヘッドにて高圧で混合してスプレー発泡させること(2-5)及び沸点が5℃以下の常温、常圧で気体の発泡剤はポリオール成分及び/又はポリイソシアネート成分の圧縮計量ポンプとミキシングヘッドの間の導管中に高圧をかけて液体状で混入させるか、又はミキシングヘッド中に直接混入させること(2-7)が記載されているが、上記方法は、常温、常圧で液体の発泡剤を予め混合させたポリオール成分及びポリイソシアネート成分中に、沸点が5℃以下の常温、常圧で気体の発泡剤を混入して発泡させているから、該方法は、気体の発泡剤を第3成分として成分原液中に直接投入する方法に該当するものということができる。 そして、引用発明4と刊行物2に記載の方法は、芳香族ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分及びポリイソシアネート成分を気体の発泡剤と液体の発泡剤を併用して発泡させる点で共通するから、引用発明4において、刊行物2に記載の方法と同様に、気体の発泡剤であるHFC-134aを第3成分として成分原液中に直接投入することは、当業者が容易になし得たものというほかはない。 以上のとおりであるから、本件発明1は、刊行物2〜4及び6〜8に記載された発明に基いて当業者が容易なし得たものである。 2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1において、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したものであるが、HFC-245faを使用する点については、上記「1)本件発明1について」で検討したように、刊行物2〜4及び6〜8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 硬質ポリウレタンフォームの製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。 【請求項2】 前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したことを特徴とする請求項1記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、主として断熱材等の用途に使用される硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものであって、オゾン層を破壊するフロンガスを使用せず、又、同時に難燃性に優れた特性を有するポリウレタンフォームの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、硬質ポリウレタンフォームはその優れた断熱特性、自己接着性等を有することから、住宅、冷蔵・冷凍庫等の断熱材として広く利用されている。この硬質ポリウレタンフォームは一般にポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを触媒、発泡剤、整泡剤、及びその他の助剤と共に混合・攪拌し、気泡を発生させつつ反応硬化させることによって製造されている。そしてこの場合の発泡剤としては熱伝導率が低いこと、沸点が常温付近にあること等からこれまではトリクロロモノフルオロメタン(CFC-11という)が用いられてきた。 【0003】 しかし近年、CFC-11は地球のオゾン層を破壊するという環境問題があることから全廃が決められ、代わってオゾン層破壊の少ないハイドロクロロフルオロカーボンが代替フロンとして使用、その中でも特にジクロロモノフルオロエタン(以下HCFC-141b)を使用する技術開発が進められ実用化に至っている。 【0004】 しかし、このHCFC-141bも小さいとは言えオゾン破壊係数を持っており、これも将来的には規制、全廃せねばならないとされており、最終的にはCFC-11同様の断熱特性と発泡特性を有し、且オゾン破壊係数ゼロの発泡剤を使用する技術及びその実用化が強く望まれていた。 【0005】 又、近年、硬質ポリウレタンフォームの吹き付け施工時等で反応硬化後のフォームに着火して火災になる危険性を防止する為にウレタンフォームを難燃化させることが社会的要請事項になっており、難燃性の優れた硬質ウレタンフォームが強く望まれていた。 【0006】 本発明者らは既にこれ以前の出願においてフタル酸を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを用いることによって、HCFC-141bを使用しても高度に難燃性の改良された硬質ウレタンフォームが得られることを示したが、オゾン破壊係数=0のハイドロフロロカーボンを使用しても優れた難燃性が得られること、この結果従来の硬質ウレタンフォームを取り巻く問題が解決出来ることを見い出し本発明を完成するに至ったのである。 【0007】 【課題を解決するための手段】 すなわち、請求項1、2に記載の如く、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とをフッ素化合物系発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上用い、かつ、フッ素化合物系発泡剤として0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、0℃以上で気体のハイドロフロロカーボンを全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10重量部以下で併用し、気体のハイドロフロロカーボンは、液体のハイドロフロロカーボンと予め混合した混合フロンの形で配合原料中に投入するか、又は第3成分として成分原液中に直接投入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法に係るものであり、好ましくは、前記、0℃以上で液体のハイドロフロロカーボンとして、HFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236eaのうちの1種類又は2種類以上を使用したものである。 【0008】 【発明の実施の形態】 更に、本発明の詳細を説明する。本発明者らが既に示した特定のポリエステルポリオールを使用する処方は、上記の如く、ポリヒドロキシ化合物としてテレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体を多塩基酸成分としてエステル化反応させたポリエステルポリオールを全ポリヒドロキシ化合物100重量部に対して5重量部以上を用いるもので、発泡剤としてHCFC-141bを使用しても難燃性を発揮するものである。本発明者らは、ここで発泡剤としてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-356eaのようなハイドロフロロカーボンの様に常温で液体でオゾン破壊係数=0のフロンの場合にも、CFC-11やHCFC-141bと同じ製造設備が使用出来、且優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られると言う驚くべき事実を知見したのである。 【0009】 本発明で使用されるポリエステルポリオールの多塩基酸成分は、テレフタル酸、又はイソフタル酸、又はこの両者とフタル酸との混合物、或はこれらの誘導体であり、m-ジメチルフタレート、p-ジメチルフタレートなどが好適に使用される。又、全ヒドロキシ化合物成分中5〜100%使用する芳香族ヒドロキシ化合物としては、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールS等のベンゼン環含有ヒドロキシ化合物、又はそれらの誘導体化合物、若しくは水酸基にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1〜数モル開環付加重合させたものであり、各々単独或いは2種類以上組み合わせて使用出来る。 【0010】 尚ポリエステルポリオールの使用形態、粘度等の扱い易さと難燃効果を合わせて考慮した場合、芳香族ヒドロキシ化合物は全ヒドロキシ化合物成分中、20〜70%の範囲で使用してエステル化反応させるのがより好ましい。他方、ポリエステルポリオールと併用して使用出来るポリヒドロキシ化合物としては特に限定するものではなく、例えばグリセリン、シュークローズ、エチレンジアミン等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオール類等があり、各々単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することが出来るが、ポリエステルポリオール化合物の反応活性が低い場合には、これを補う為にも反応活性の高いポリオールを使用することが望ましい。 【0011】 発泡剤として使用するハイドロフロロカーボンは、常温で液体であるものと常温で気体であるものとを併用するが、常温で液体であるものを使用するのは、取り扱いの面で好ましいからである。つまり、本発明の主旨は特殊な設備を使用せず、従来のCFC-11やHCFC-141bの場合と同様な方法で取り扱うことが出来るフッ素化合物系発泡剤であり、オゾン層破壊係数ゼロのものを示す。ここでいう常温とは0℃以上という意味であり、更に厳密には1気圧での沸点が0℃以上のハイドロフロロカーボンを示す。しかし、沸点があまり高すぎると硬質ウレタンフォーム用発泡剤として用をなさなくなるので沸点の範囲は好ましくは40℃以下に押さえるべきである。このような温度範囲にある沸点を持つものとしてHFC-245fa、HFC-245ca、HFC-236ea等があり、これらのHFCの1種類又は2種類以上を使用することによって本発明のウレタンフォームを作ることが出来る。通常、HFCはそれ自身必ずしも不燃性とはいえない挙動を示すが、本発明で使用する限定されたポリヒドロキシ化合物成分をポリオールとして用いた場合には難燃性の優れたウレタンフォームを得ることが出来る。 【0012】 常温で液体のHFCの使用量は目的とする発泡体の密度によって任意に決定されるが、通常全ヒドロキシ化合物100重量部に対して10〜80重量部、特に20〜70重量部が好ましい。又必要に応じて、水、HCFC、塩化メチレンなどの併用も考えられるが、水の併用はフォームの難燃性を低下させる危険性があること、又HCFCや塩化メチレン等の併用は地球環境保護を目的とする本発明の主旨から言って極力最小限にすべきである。 【0013】 一方HFCとして常温で気体のものは、例えばHFC-134aがある。HFC-134aの場合、これ自身ポリオールに対する溶解性が少ないため多くの量を投入することは出来ないが、全ポリヒドロキシ化合物100重量部当たり10重量部以下で良く、予めHFC245fa等と混合した混合フロンの形で配合原料中に投入したり、又は第3成分として成分原液中に直接投入するという簡便な方法を使用する。 【0014】 又、本発明に使用されるポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート類及びそれらの粗製物等が使用出来る。 【0015】 本発明でいう硬質ポリウレタンフォームにはポリイソシアヌレートフォームを含んでおり、それを単に硬質ポリウレタンフォームといっているが、ポリヒドロキシ化合物及び水等の他の活性水素を有する化合物の全量に対するポリイソシアネート化合物の使用量、即ちイソシアネート指数は、通常の硬質ウレタンフォームを製造する場合は80〜130の範囲、イソシアヌレート変性硬質ウレタンフォームを製造する場合は100〜350の範囲とすることが望ましい。 【0016】 触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、鉛オクトエート、スタナスオクトエート等の有機金属系化合物、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等のアミン系化合物といったポリウレタンフォーム分野で用いられているものであれば特に制限はなく、又N,N′,N″-トリス(ジアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のイソシアヌレート変性化に用いられているものも利用出来る。 【0017】 整泡剤としては、硬質ポリウレタンフォーム製造用として効果のあるものは全て使用することが出来る。例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のシリコーン系化合物を通常の使用量で用いることが出来る。更に、本発明においては上記以外の任意の成分、例えば難燃剤、充填剤等も本発明の目的を妨げない範囲で使用することが出来る。 【0018】 【発明の効果】 以上、詳細に説明したように、本発明の硬質ウレタンフォームの製造方法によれば、オゾン層破壊係数ゼロのハイドロフロロカーボンを従来のCFC-11と同様な方法で使用して発泡させることで、その断熱性はもとより、難燃性の高い優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することが出来、その産業上の利用価値は極めて高いものである。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-02-04 |
出願番号 | 特願平7-340580 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZA
(C08G)
P 1 651・ 121- ZA (C08G) P 1 651・ 536- ZA (C08G) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 佐藤 健史 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
船岡 嘉彦 中島 次一 |
登録日 | 2002-04-05 |
登録番号 | 特許第3295588号(P3295588) |
権利者 | 株式会社ブリヂストン |
発明の名称 | 硬質ポリウレタンフォームの製造方法 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 中村 壽夫 |
代理人 | 鈴木 悦郎 |
代理人 | 加藤 勉 |
代理人 | 鈴木 悦郎 |