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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08L
管理番号 1098082
異議申立番号 異議2003-71518  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-09 
確定日 2004-06-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第3355210号「ゴム組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3355210号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由
【1】手続きの経緯

本件特許第3355210号は、平成5年1月27日に特許の出願がなされ、平成14年9月27日に特許権の設定登録がなされ、その後、小池美紀代より特許異議の申立てがなされたものである。

【2】本件発明

本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、請求項1、2に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 原料ゴム100重量部に対して軟化剤15重量部以上が配合され、さらに脱硫工程を経て得られた、トルエン溶解分が25%以上の再生ゴムが配合されてなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】 前記再生ゴムの配合量が前記原料ゴム100重量部あたり30重量部以下である請求項1記載のゴム組成物。」

【3】特許異議の申立ての理由の概要

特許異議申立人は、甲第1号証(「ポリマーダイジェスト」1981年3月発行 p.2〜14)、甲第2号証(特開昭55-99938号公報)、甲第3号証(日本合成ゴム株式会社・合成ゴム事業本部管理部技術課編集「JSR EP 技術資料」日本合成ゴム株式会社発行 p.78〜79)、及び、甲第4号証(社団法人高分子学会行事委員会企画「自動車と高分子材料」初版第1刷 2002年6月26日 株式会社エヌ・ティー・エス発行 p.042〜045)を提出し、概略、以下の主張をしている。
主張1:本件発明1、2は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
主張2:請求項1、2に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

【4】判断

1.主張1に対する判断
本件発明1、2は、原料ゴムに脱硫工程を経て得られた再生ゴムを配合するにあたり、再生ゴムのトルエン溶解分を25%以上とすることを構成要件として具備する発明である(以下、この構成要件を「本件要件」という)。そして、本件要件と、原料ゴム100重量部に対して軟化剤15重量部以上が配合されるという構成要件を採用することにより、再生ゴムを配合しても破壊特性の大幅な低下をまねくことがないという効果を奏するものと認められる。
そこで、本件要件に関して、甲第1〜4号証の記載を検討する。
甲第1号証の第2頁下欄には、バリを脱硫処理しこれを再びゴム材料に配合することが記載され、同第4頁には、乗用車タイヤ粉末100部にアロマ系オイル10部、再生油5部を添加し解重合することが記載され、同第3頁の第2表には、No.1〜No.5の各種再生油のアセトン抽出量とクロロホルム抽出量が記載され(例えば、No1の再生油では、アセトン抽出量が27.4%、クロロホルム抽出量が8.0%であることが記載されている。)、同第4頁下欄には、再生油の配合量が増加するにつれクロロホルム抽出量がほぼ直線的に増大することが記載されている。
しかし、甲第1号証には本件要件については記載も示唆もされていない。
なお、特許異議申立人は、甲第1号証にはアセトン抽出量とクロロホルム抽出量の和が25%以上であることが記載され、クロロホルム抽出量は再生油の配合量に比例して増加することも示されており、クロロホルム抽出量又はアセトン抽出量とクロロホルム抽出量(アセトン抽出後)の和は、トルエン溶解分に相当することは当業者において技術常識であるから、甲第1号証にはトルエン溶解分が25%以上であることを示唆する記載がなされている旨の主張をしている。しかし、上記技術常識の主張には根拠がなく、したがって、この主張は採用できない。
甲第2号証には、加硫スクラップゴムの粉砕物100重量部に石油系プロセス油50〜200重量部を混合し、100〜200℃の温度で前記粉砕物を膨潤させその表面を部分溶解させて得られた部分溶解物を原料ゴムに配合し、加硫剤等を適宜配合する加硫スクラップゴム組成物の製造方法が記載されている(特許請求の範囲の請求項1、第2頁右上欄〜左下欄)。
しかし、甲第2号証には本件要件については記載も示唆もされていない。
なお、特許異議申立人は「この「石油系プロセス油」は、本件特許発明の「軟化剤」に相当する。また、この「軟化剤」(石油系プロセス油)は、加硫スクラップゴム100部に対して15部以上配合していると考えられ、又はトルエン溶解分が25%以上相当配合された再生ゴムになっているとも考えられる。」と主張しているが、再生ゴムがトルエン溶解分が25%以上となっていると考えられるとの主張は根拠がないから採用できない。
甲第3号証には、JSR EP96、JSR EP103A等にパラフィン系プロセス油を配合した配合処方、及び、JSR EP103A等にパラフィン系プロセス油を配合した配合処方が記載され、甲第4号証には、ゴムのリサイクル機構が記載されているが、本件要件については記載も示唆もされていない。
以上のとおり、甲第1〜4号証には本件要件について記載も示唆もされていないから、本件発明1、2は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

2.主張2に対する判断
特許異議申立人は「廃タイヤゴムとオイルパン法についてしか説明されていないので、他の廃ゴムや再生方法についても同様なことが示されるのかは不明確であり、特許法第36条第4項に違反する」と主張している。
しかし、本件特許明細書の段落【0012】には、「本発明において使用することのできる、トルエン溶解分が25%以上の再生ゴムは、オイルパン法、リクレメーター法等の一般に知られている方法で製造することができ、脱硫時間の延長、脱硫温度の上昇、脱硫濃度の高濃度化等、様々な方法で目的とする再生ゴムを得ることができる。」と記載されているから、廃タイヤゴムとオイルパン法についてしか説明されていないとは言えない。
したがって、主張2は採用できない。

【5】むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1、2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1、2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-05-20 
出願番号 特願平5-29647
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 531- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 平塚 政宏
石井 あき子
登録日 2002-09-27 
登録番号 特許第3355210号(P3355210)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 ゴム組成物  
代理人 本多 一郎  

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