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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1098090
異議申立番号 異議2003-70389  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-08-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-10 
確定日 2004-05-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第3313297号「新規アスファルト組成物、及び新規アスファルト改質用ブロック共重合体組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3313297号の請求項に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第3313297号は、平成9年1月30日に出願され、平成14年5月31日にその特許の設定登録がなされ、その後、ジェイエスアール クレイトン エラストマー株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、それに対し特許異議意見書とともに、その指定期間内である平成15年8月12日に訂正請求書が提出され、訂正拒絶理由通知がなされ、それに対し意見書とともにその指定期間内である平成15年12月4日に訂正請求書の補正がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正請求の補正について
補正の内容は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2において、(A)の含有量の「98〜50重量%」を、「98〜60重量%」に、(B)の含有量の「2〜50重量%」を、「2〜40重量%」に、また、(ヘ)の要件中の「47重量%」を「45重量%」と補正するものである。
そのうち、(A)の含有量の「98〜50重量%」を、「98〜60重量%」とする補正、及び、(B)の含有量の「2〜50重量%」を、「2〜40重量%」とする補正は、明白な誤記の訂正でもなく、また、訂正事項の削除でもないので、訂正請求の要旨を変更するものと言わざるを得ない。
よって、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第131条第2項の規定に適合しないので、上記補正は認められない。
イ、訂正の内容及び適否
上記補正は認められないものであるので、訂正の内容は、特許請求の範囲の請求項1において、
(A)の含有量の「98〜20重量%」を、「98〜50重量%」とする訂正、及び、(B)の含有量の「2〜80重量%」を、「2〜50重量%」と、それぞれ訂正するものでる。
しかしながら、上記訂正は、平成15年9月25日付けの訂正拒絶理由通知書に記載されるとおり、明細書のいずれの箇所にも記載されておらず、また、自明の事項とも言えないものであるから、明細書に記載した事項の範囲内においてするものとは言えないものである。
ウ、まとめ
よって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア、本件請求項1及び2に係る発明
上記のとおり、訂正は認められないものであるから、本件請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算でブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(B)とよりなるブロック共重合体組成物2〜15部と、アスファルト85〜98部よりなるアスファルト組成物であって、
(イ)ブロック共重合体組成物中における(A)の含有量が98〜20重量%、(ロ)(B)の含有量が2〜80重量%であり、 (ハ)ブロック共重合体組成物中の、全アルケニル芳香族化合物の含有量(TS)から、四酸化オスミウムとt-ブチルハイドロパーオキシドによる酸化分解法によって求められるモノアルケニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量(BS)を差し引いたアルケニル芳香族化合物含有量(TS-BS)が2〜30重量%の割合で含有し、 (ニ)ブロック共重合体組成物中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量(TS)が10〜50重量%、 (ホ)ブロック共重合体組成物中の、前記BS含有量が10重量%以上、48重量%以下、 (ヘ)共役ジエン中のビニル結合含有量が0重量%より大きく50重量%以下であり、 (ト)ブロック共重合体組成物のMI(G)が0.3〜15.0であって、 (チ)静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、アスファルト組成物。
【請求項2】 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算でブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(B)とよりなるブロック共重合体組成物であって、(イ)ブロック共重合体組成物中における(A)の含有量が98〜20重量%、(ロ)(B)の含有量が2〜80重量%であり、 (ハ)ブロック共重合体組成物中の、全アルケニル芳香族化合物の含有量(TS)から、四酸化オスミウムとt-ブチルハイドロパーオキシドによる酸化分解法によって求められるモノアルケニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量(BS)を差し引いたアルケニル芳香族化合物含有量(TS-BS)が2〜30重量%の割合で含有し、 (ニ)ブロック共重合体組成物中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量(TS)が10〜50重量%、 (ホ)ブロック共重合体組成物中の前記BS含有量が10重量%以上、48重量%以下、 (ヘ)共役ジエン中のビニル結合含有量が0重量%より大きく50重量%以下であり、 (ト)ブロック共重合体組成物のMI(G)が0.3〜15.0であって、 (チ)静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、アスファルト改質用ブロック共重合体組成物。」
イ、引用刊行物の記載事項
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平6-41439号公報、特許異議申立人提出甲第1号証)及び刊行物2(特開平9-12898号公報、同甲第2号証)には、次のとおりの記載が認められる。
a、刊行物1
「【請求項1】 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個の共役ジエン化合物よりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体混合物3〜15部と、アスファルト85〜97部よりなり、
ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、共役ジエン化合物中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、かつブロック共重合体混合物のMI(G)が0.5〜10であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体混合物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、道路舗装用アスファルト組成物。」(特許請求の範囲請求項1)
「【産業上の利用分野】本発明は、新規なスチレン-ブタジエンブロック共重合体組成物に関するものである。特に、本発明は、特定の構造を有するブロック共重合体組成物を改質剤とする、高い軟化点を有し、機械的強度、低温での伸度等の耐寒性などの物性と加工性とのバランスに優れるアスファルト組成物、例えば排水舗装用に適したアスファルト組成物を提供する。」(第2頁左欄25〜31行、段落【0001】)
また、第8頁の段落【0048】の【表3】によれば、実施例5及び6において、全スチレン含量及びブロックスチレン含量が、それぞれ、両方とも30(%)及び28(%)であることが記載されている。
b、刊行物2
「【請求項1】 モノビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(以下「重合体ブロック」と略す)と、モノビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物からなるランダム共重合体ブロック(以下「ランダム共重合体ブロック」と略す)とからなるブロック共重合体において、(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)で測定した、標準ポリスチレン換算の分子量が5.0万〜15.0万の範囲に、重合体ブロックを1個有するブロック共重合体(以下「ブロック共重合体(I)」と略す)のピークを少なくとも1個有し、(b)GPCで測定した、標準ポリスチレン換算の分子量が10.0万〜30.0万の範囲に、重合体ブロックを2個以上有するブロック共重合体(以下「ブロック共重合体(II)」と略す)のピークを少なくとも1個有し、(c)全結合モノビニル芳香族化合物含量が23重量%〜45重量%であり、(d)重合体ブロック含有量(M)が18重量%〜35重量%であり、(e)重合体ブロックの、GPCで測定した標準ポリスチレン換算のピーク分子量が1.0万を越え3.0万以下であり、(f)ランダム共重合体ブロック中に含まれるモノビニル芳香族化合物の含有量(N)が、該ランダム共重合体ブロックの6重量%〜25重量%であり、(g)NとMの比(N/M)が0.2を超え1より小さく、(h)ランダム共重合体ブロック中のモノビニル芳香族化合物連鎖分布において、モノビニル芳香族化合物が1個のモノビニル芳香族化合物単連鎖(以下S1と略す)が、ランダム共重合体ブロック中の結合モノビニル芳香族化合物の50重量%以上で、モノビニル芳香族化合物が8個以上連なったモノビニル芳香族化合物長連鎖(以下S8〜と略す)がランダム共重合体ブロック中の結合モノビニル芳香族化合物の15重量%以下であり、(i)ジエン部分のビニル結合量が50重量%以下であり、(j)ブロック共重合体(I)の割合が、ブロック共重合体の20〜70重量%を占め、(k)ブロック共重合体(II)の割合が、ブロック共重合体の30〜80重量%を占めるブロック共重合体組成物3〜15重量%とアスファルト85〜97重量%よりなるアスファルト組成物。」(特許請求の範囲請求項1)
「【産業上の利用分野】本発明は、特定の構造を有するブロック共重合体組成物を改質材とする、軟化点と伸度、及び機械的強度等の物性に優れ、更に加工性、貯蔵安定性にも優れた新規なアスファルト組成物を提供する。」(第2頁左欄下から9〜6行、段落【0001】)
そして、第19頁の段落【0212】の【表3】によれば、実施例1〜6において、スチレン含量及びブロックスチレン含量が、すべて、本件発明1で特定する10〜50重量%及び10重量%以上、48重量%以下の範囲内であり、また、同じく「TS-BS」も、それぞれ、2.6、7.0、6.0、16.0、5.4及び10.8(重量%)となり、本件発明1の範囲内であり、さらに、アスファルトの貯蔵安定性も、すべて◎となっている。
e、対比・判断
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算でブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(B)とよりなるブロック共重合体組成物3〜15部と、アスファルト85〜97部よりなるアスファルト組成物であって、(イ)ブロック共重合体組成物中における(A)の含有量が85〜40重量%、(ロ)(B)の含有量が15〜60重量%であり、 (ニ)ブロック共重合体組成物中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量(TS)が10〜50重量%、(ヘ)共役ジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、 (ト)ブロック共重合体組成物のMI(G)が0.5〜10であって、 (チ)静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であるアスファルト組成物である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。
相違点1:本件発明1では、(ハ)ブロック共重合体組成物中の、全アルケニル芳香族化合物の含有量(TS)から、四酸化オスミウムとt-ブチルハイドロパーオキシドによる酸化分解法によって求められるモノアルケニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量(BS)を差し引いたアルケニル芳香族化合物含有量(TS-BS)が2〜30重量%の割合で含有するとするのに対し、刊行物1には、そういったことの記載がない点、
相違点2:本件発明1では、(ホ)ブロック共重合体組成物中の、前記BS含有量が10重量%以上、48重量%以下とするのに対し、刊行物1には、そういったことの記載がない点。
しかしながら、刊行物1の実施例5及び6に記載のブロックスチレン含量が28(%)というのは、本件発明1のBSに相当し、本件発明1で特定する範囲内であることが記載され、また、全スチレン含量(TS)との差(TS-BS)についても、2(%)となり、本件発明1の2〜30重量%との下限値に一致するものと認められる。
また、刊行物2の実施例1〜6には、BS及びTS-BSともに本件発明1の範囲内とすることが記載され、また、そのことによる作用効果である貯蔵安定性についても記載されており、当業者であれば、刊行物1におけるBS及びTS-BSの範囲を刊行物2に記載の範囲内とすることは、適宜容易になし得たところと認められる。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるか、あるいは、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2は、本件発明1におけるブロック共重合体組成物に相当するものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1に記載された発明であるか、あるいは、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、上記刊行物1に記載された発明であるか、あるいは、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1及び2の特許は、特許法第29条第1項あるいは第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明の特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-19 
出願番号 特願平9-29851
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (C08L)
P 1 651・ 121- ZB (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 寺坂 真貴子  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
登録日 2002-05-31 
登録番号 特許第3313297号(P3313297)
権利者 日本エラストマー株式会社
発明の名称 新規アスファルト組成物、及び新規アスファルト改質用ブロック共重合体組成物  
代理人 清水 猛  
代理人 井上 満  
代理人 川口 義雄  
代理人 伊藤 穣  
代理人 大崎 勝真  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 武井 英夫  
代理人 小野 誠  
代理人 一入 章夫  

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