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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01J
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  H01J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01J
管理番号 1098142
異議申立番号 異議2002-72947  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-09 
確定日 2004-05-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3289626号「色選別機構及びカラー陰極線管」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3289626号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3289626号に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成8年12月5日 特許出願
平成14年3月22日 特許権の設定の登録
平成14年6月10日 特許掲載公報の発行
平成14年12月9日 三菱電機株式会社から特許異議の申立て
平成15年6月18日付 取消理由の通知
平成15年8月26日 意見書及び訂正請求書の提出
平成15年9月30日付 訂正拒絶理由の通知及び特許権者への審尋
平成15年12月9日 意見書の提出

第2.訂正の適否について
1.平成15年9月30日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、下記のとおりである。

本件訂正請求には、訂正前の請求項1及び請求項2における「弾性支持手段に端部が固定された細線」の記載を「ダンパーワイヤ」と訂正することが含まれているが、この訂正は、「細線」を「ダンパーワイヤ」と具体的に特定するだけでなく、「弾性支持手段に端部が固定された」という規定を削除することにより、弾性支持手段に端部が固定されていないものをも包含するように訂正するものであるから、特許請求の範囲の一部を拡張するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるということはできない。
また、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものであるとも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるとも認められない。

2.これに対して、特許権者は、平成15年12月9日付け意見書において、何の応答もしておらず、上記の訂正拒絶理由は妥当なものと認められる。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものではないので、本件訂正請求は認められない。

第3.本件発明
前項に記載したとおり、本件訂正請求は認められないから、本件特許に係る発明は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものと認める。以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。(なお、AないしDは、検討の際の便宜のために、当決定において付したものである。)
「【請求項1】
A.互いに平行に配された複数のテープ状グリット素体を有するフラットア パーチャグリルを架張し、上記テープ状グリット素体が並列する方向と直 交する方向に所定の曲率半径Rzを有するアパーチャグリルを備え、
上記テープ状グリット素体に略直交して架張され、上記アパーチャグリル の中心線から水平方向に距離L離間した最端の位置にあるテープ状グリッ ト素体からさらに外側に距離L1離間した位置であって、上記テープ状グ
リット素体の最端の位置から上記アパーチャグリルの曲率半径Rzに沿う 延長線Rとの交点に至る上記中心線に平行な方向に距離ΔZ下がった位置 よりさらに上記中心線と平行な方向にZ分下がった位置で弾性支持手段に 端部が固定された細線を有する色選別機構において、
B.次式で示す最端テープねじれ係数αが0.4以上1.0以下であること を特徴とする陰極線管の色選別機構。
【数1】(式の記載を省略する。)
【請求項2】
C.互いに平行に配された複数のテープ状グリット素体を有するフラットア パーチャグリルを架張し、上記テープ状グリット素体が並列する方向と直 交する方向に所定の曲率半径Rzを有するアパーチャグリルを備え、
上記テープ状グリット素体に略直交して架張され、上記アパーチャグリル の中心線から水平方向に距離L離間した最端の位置にあるテープ状グリッ ト素体からさらに外側に距離L1離間した位置であって、上記テープ状グ
リット素体の最端の位置から上記アパーチャグリルの曲率半径Rzに沿う 延長線Rとの交点に至る上記中心線に平行な方向に距離ΔZ下がった位置 よりさらに上記中心線と平行な方向にZ分下がった位置で弾性支持手段に 端部が固定された細線を有する色選別機構を有するカラー陰極線管におい て、
D.次式で示す最端テープねじれ係数αが0.4以上1.0以下であること を特徴とするカラー陰極線管。
【数2】(式の記載を省略する。)」

第4.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、下記の検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証、並びに甲第1ないし12号証を提出し、本件発明1、2は、本件出願前に公然実施された発明であるので、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、本件の請求項1、2に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである、と主張している。

検甲第1号証:M49KHH16Xの色選別機構(i)
甲第1号証:検甲第1号証を撮影した写真、検甲第1号証が使用されている ナナオ製カラーディスプレイを撮影した写真、及び検甲第1号 証をナナオ製カラーディスプレイから取り出す作業を撮影した 写真
検甲第2号証:M49KHH16Xの色選別機構(ii)
甲第2号証:検甲第2号証を撮影した写真、検甲第2号証が使用されている ナナオ製カラーディスプレイを撮影した写真、及び検甲第2号 証をナナオ製カラーディスプレイから取り出す作業を撮影した 写真
甲第3号証:平成5年2月20日株式会社モリサワ発行請求書
甲第4号証:検甲第1号証の各部位の測定値、及び【数1】、【数2】に従 って算出した各計算値
甲第5号証:検甲第2号証の各部位の測定値、及び【数1】、【数2】に従 って算出した各計算値
検甲第6号証:M36LDJ15Xの色選別機構
甲第6号証:検甲第6号証を撮影した写真、及び検甲第6号証が使用されて いるSONY製モニターを撮影した写真
甲第7号証:1995年8月3日三菱電機エンジニアリング株式会社発行納 品書
甲第8号証:検甲第6号証の各部位の測定値、及び【数1】、【数2】に従 って算出した各計算値
検甲第9号証:A46JNL10Xの色選別機構
甲第9号証:検甲第9号証を撮影した写真、検甲第9号証が使用されている SONY製カラーテレビを撮影した写真、及び検甲第9号証を SONY製カラーテレビから取り出す作業を撮影した写真
甲第10号証:昭和63年9月10日中川無線電機株式会社日本橋四丁目店 発行KV-19GT2保証書
甲第11号証:TV・ビデオ回路図集、第23集、第507頁、第516頁 、電波新聞社1989年10月31日発行
甲第12号証:検甲第9号証の各部位の測定値、及び【数1】、【数2】に 従って算出した各計算値

第5.取消理由の概要
平成15年6月18日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1.取消理由1
検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証の色選別機構又はカラー陰極線管は、本件出願前に日本国内において公然実施をされたものである。
本件発明1或いは本件発明2と、検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証の色選別機構又はカラー陰極線管とを対比すると、両者の間に相違点はない。
よって、本件発明1及び本件発明2は、その出願前日本国内において公然実施された発明であるから、請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してなされたものである。

2.取消理由2
本件明細書によれば、本件発明1及び本件発明2は、テープ状グリッド素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力の値に関わらず、ねじれ係数αを0.4以上1.0以下と特定することのみによって、ダンパーワイヤによるテープ状グリット素体への加圧力不足を軽減し、最端のテープ状グリット素体のねじれにともなうダンパーワイヤ浮きによるテープ状グリット素体の長時間振動現象の発生を低減するという効果を奏する、とされている。
しかしながら、「テープ状グリット素体のねじれ」現象には、テープ状グリッド素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等が影響することが明らかであり、当業者が、これらの諸条件について何ら記載されていない本件明細書に基づいて本件発明1及び本件発明2を実施しようとしても、テープ状グリッド素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等の条件を無数の組み合わせで変化させて試行錯誤しない限り、明細書に記載された効果を得ることはできないと考えられる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1及び本件発明2を実施できる程度に記載されているとは認められないから、本件の請求項1乃至2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第6.甲号各証について
1.甲第1号証
甲第1号証には、検甲第1号証、検甲第1号証が使用されているナナオ製カラーディスプレイの写真、及び検甲第1号証をナナオ製カラーディスプレイから取り出す作業がそれぞれ示されている。
各写真の説明は以下の通り。
甲第1号証の1:
写真1:ナナオ製カラーディスプレイを観視側より向かって右斜前方から 撮影した外観
写真2:ナナオ製カラーディスプレイの観視側より向かって正面左下に付 されている前面銘番
甲第1号証の2:
写真3:ナナオ製カラーディスプレイの裏側に付されている裏面銘番
写真4:ナナオ製カラーディスプレイのカバーを外し、M49KHH16 Xを取り出す作業
甲第1号証の3:
写真5:ナナオ製カラーディスプレイから取り出したM49KHH16X 写真6:管種名等を表示するM49KHH16Xに付されているシール
甲第1号証の4:
写真7:取り出されたM49KHH16Xのファンネル部とパネル部を分 離する作業
写真8:パネル部からさらに検甲第1号証を取り出す作業
甲第1号証の5:
写真9:M49KHH16Xから取り出された検甲第1号証の全景
写真10:検甲第1号証の一部拡大写真

2.甲第2号証
検甲第2号証を撮影した写真、検甲第2号証が使用されているナナオ製カラーディスプレイを撮影した写真、及び検甲第2号証をナナオ製カラーディスプレイから取り出す作業がそれぞれ示されている。
各写真の説明は以下の通り。
甲第2号証の1:
写真11:ナナオ製カラーディスプレイを観視側より向かって右斜前方か ら撮影した外観
写真12:ナナオ製カラーディスプレイの観視側より向かって正面左下に 付されている前面銘番
甲第2号証の2:
写真13:ナナオ製カラーディスプレイの裏側に付されている裏面銘番
写真14:ナナオ製カラーディスプレイのカバーを外し、M49KHH1 6Xを取り出す作業
甲第2号証の3:
写真15:ナナオ製カラーディスプレイから取り出したM49KHH16 X
写真16:管種名等を表示するM49KHH16Xに付されているシール
甲第2号証の4:
写真17:取り出されたM49KHH16Xのファンネル部とパネル部を 分離する作業
写真18:パネル部からさらに検甲第1号証を取り出す作業
甲第2号証の5:
写真19:M49KHH16Xから取り出された検甲第2号証の全景
写真20:検甲第2号証の一部拡大写真

3.甲第3号証
甲第3号証は、株式会社モリサワが、三菱電機エンジニアリング株式会社に対して発行した平成5年2月20日付け請求書であり、同号証の表中、上から3列目の「商品名」の欄に「ナナオカラーデイスプレーT660I」、「数量」の欄に「4」、「単価」の欄に「598,0800」、「金額」の欄に「2,3 92,000」とそれぞれ記載されており、表中、上から8列目の「商品名」の欄に「ナナオカラーディスプレーT660I」、「数量」の欄にそれぞれ「7」、「単価」の欄に「598,000」、「金額」の欄に「4,186,000」と記載されており、上から14列目の「商品名」の欄に「ナナオカラーディスプレーT660I」、「数量」の欄に「6」、「単価」の欄に「598,000」、「金額」の欄に「3,588,000」と記載されている。

4.甲第4号証
甲第4号証は、検甲第1号証の最端テープねじれ係数αを算出するために必要な項目を測定した結果、並びに請求項1の【数1】、及び請求項2の【数2】に従って最端テープねじれ係数α(以下、単に「α」と称する場合もある。)を計算した結果を示すものである。
甲第4号証中の各図、および各表の説明は以下の通りである。
甲第4号証の1:
図1:検甲第1号証の最端テープねじれ係数αを算出するために必要な曲 率半径Rzの測定個所を示す説明図
図2:図1の1-1断面におけるA部拡大図
表1:各測定値から最端テープねじれ係数αを算出するために用いる計算 式の一覧表
甲第4号証の2:
表2:検甲第1号証の第1の細線についての各測定値及び各測定値から算 出した各計算値の一覧表
表3:検甲第1号証の第1の細線についての△Z、Z、αの計算結果の一 覧表
図3:検甲第1号証の第1の細線についてのαの分布図
甲第4号証の3:
表4:検甲第1号証の第2の細線についての各測定値及び各測定値から算 出した各計算値の一覧表
表5:検甲第1号証の第2の細線についての△Z、Z、αの計算結果の一 覧表
図4:検甲第1号証の第2の細線についてのαの分布図
各測定項目については、以下の通り。
Rz:テープ状グリット素体が並列する方向と直交する方向の曲率半径R z(テープ状グリット素体が溶接されたフレーム2個所)
2L:アパーチャグリルの中心線をはさみ水平方向に各々左右の最端の位 置にあるテープ状グリット素体の距離
L1:アパーチャグリルの中心線から水平方向に最端の位置にあるテープ 状グリット素体と、このテープ状グリッド素体からさらに外側にあ り、フラットアパーチャグリルを架張する細線の端部が固定された 弾性支持手段との水平方向の距離(左右各1個所ずつ合計2個所)
Z1:アパーチャグリルの中心線から水平方向に最端の位置にあるテープ 状グリット素体と、このテープ状グリッド素体からさらに外側にあ り、フラットアパーチャグリルを架張する細線の端部が固定された 弾性支持手段とのアパーチャグリルの中心線に平行な方向の距離( 左右各1個所ずつ10合計2個所)
各計算項目については以下の通り。
Rz(平均):2個所測定したRzの平均値
L:アパーチャグリルの中心線と当該中心線の水平方向に最端の位置にあ るテープ状グリット素体との距離
L1(平均):2個所測定したL1の平均値
Z1(平均):2個所測定したZ1の平均値
△Z:アパーチャグリルの中心線から水平方向に最端の位置にあるテープ 状グリット素体と、このテープ状グリッド素体からさらに外側にあ り、曲率半径Rzに沿うRと交わる点との、アパーチャグリルの中 心線に平行な方向の距離
Z:Z1と△Zの差分
α:Z、並びにRz、L、及びL1から算出した△Zにより求められる最 端テープねじれ係数

5.甲第5号証
甲第5号証は、検甲第2号証の最端テープねじれ係数αを算出するために必要な項目を測定した結果、並びに請求項1の【数1】、及び請求項2の【数2】に従って最端テープねじれ係数αを計算した結果を示すものである。 甲第5号証中の各図、および各表の説明は以下の通り。
甲第5号証の1:
表6:検甲第2号証の第1の細線についての各測定値及び各測定値から算 出した各計算値の一覧表
表7:検甲第2号証の第1の細線についての△Z、Z、αの計算結果の一 覧表
図5:検甲第2号証の第1の細線についてのαの分布図
甲第5号証の2:
表8:検甲第2号証の第2の細線についての各測定値及び各測定値から算 出した各計算値の一覧表
表9:検甲第2号証の第2の細線についての△Z、Z、αの計算結果の一 覧表
図6:検甲第2号証の第2の細線についてのαの分布図
なお、検甲第2号証の各測定項目、計算項目、及び計算式は甲第3号証中図1、図2、及び表1に示す通りである。

6.甲第6号証
甲第6号証には、検甲第6号証、及び検甲第6号証が使用されているSONY製モニターの写真がそれぞれ示されている。
各写真の説明は以下の通り。
甲第6号証の1:
写真21:SONY製モニターを正面から撮影した外観
写真22:SONY製モニターの観視側より向かって正面右上に付されて いるモニター名称。
甲第6号証の2:
写真23:SONY製モニターの側面カバーを外した状態
写真24:管種名等を表示するM36LDJ15Xに付されているシール甲第6号証の3:
写真25:M36LDJ15Xから取り出された検甲第6号証の全景
写真26:検甲第6号証の一部拡大写真

7.甲第7号証
甲第7号証は、三菱電機エンジニアリング株式会社が、菱光エレクトロ株式会社に対して発行した1995年8月3日付納品書であって、同号証の表中、「品名」の欄に「CPD-15SF7」、「数量」の欄に「2」、「単価」の欄に「5 5,000」、「税抜価格」の欄に「110,000」、「消費税額」の欄に「3,300」、「御請求額」の欄に「113,300」とそれぞれ記載されている。

8.甲第8号証
甲第8号証は、検甲第6号証の最端テープねじれ係数αを算出するために必要な項目を測定した結果、並びに請求項1の【数1】、及び請求項2の【数2】に従って最端テープねじれ係数αを計算した結果を示すものである。 甲第8号証中の各図、および各表の説明は以下の通りです。
表10:検甲第6号証の細線における各測定値及び各測定値から算出した 各計算値の一覧表
表11:検甲第6号証の細線における△Z、Z、αの計算結果の一覧表。
図7:検甲第6号証の細線におけるαの分布図
なお、検甲第6号証の各測定項目、計算項日、及び計算式は甲第3号証中図1、図2、及び表1に示す通りである。

9.甲第9号証
甲第9号証には、検甲第9号証、検甲第9号証が使用されているSONY株式会社製20型カラーテレビ(機種名:KV-19GT2、以下「SONY製カラーテレビ」と称す。)の写真、及び検甲第9号証をSONY製カラーテレビから取り出す作業がそれぞれ示されている。
各写真の説明は以下の通り。
甲第9号証の1
写真27:SONY製カラーテレビを観視側より向かって右斜前方から撮 影した外観
写真28:SONY製カラーテレビの観視側より向かって正面右下に付さ れている前面銘番
甲第9号証の2:
写真29:SONY製カラーテレビの側面に付されている製造年月を示す シール
写真30:SONY製カラーテレビのカバーを外し、A46JNL10X を取り出す作業
甲第9号証の3:
写真31:SONY製カラーテレビから取り出したA46JNL10X
写真32:管種名等を表示するA46JNL10Xに付されているシール
甲第9号証の4:
写真33:取り出されたA46JNL10Xのファンネル部とパネル部を 分離する作業
写真34:パネル部からさらに検甲第1号証を取り出す作業
甲第9号証の5:
写真35:A46JNL10Xから取り出された検甲第9号証の全景
写真36:検甲第9号証の一部拡大写真

10.甲第10号証
甲第10号証は、中川無線電機株式会社日本橋四丁目店が発行した保証書であり、同号証中、「品名」の欄に「トリニトロンカラーテレビ」、「型名」の欄に「KV-19GT2 製造番号NO 5092911」、「保証期間」の欄に「本体 1年、ブラウン管 2年、お買い上げ日 昭和63年9月10日」、「販売店」の欄に「〒556 浪速区日本橋4丁目12番7号 中川無線電機株式会社日本橋四丁目店 電話06(641)4720(代)」とそれぞれ記載されている。

11:甲第11号証
甲第11号証の第516頁には、「KV-19GT2」の回路図が掲載されている。

12.甲第12号証
甲第12号証は、検甲第9号証の最端テープねじれ係数αを算出するために必要な項目を測定した結果、並びに請求項1の【数1】、及び請求項2の【数2】に従って最端テープねじれ係数αを計算した結果を示すものである。
甲第12号証中の各図、および各表の説明は以下の通り。
表12:検甲第9号証における各測定値及び各測定値から算出した各計算 値の一覧表
表13:検甲第9号証における△Z、Z、αの計算結果の一覧表
図8:検甲第9号証におけるαの分布図
なお、検甲第9号証の各測定項目、計算項目、及び計算式は甲第3号証中図1、図2、及び表1に示す通り。

第7.当審における判断
1.取消理由1について
1.1.意見書における特許者の主張について
(1)取消理由1に対して、特許権者は平成15年8月26日付特許異議意見書において、以下のように主張している。
“特許異議申立人が述べる「株式会社ミツトヨ製三次元測定器(機種名:CNCKN815)」を用いて各部位の測定を行っているとしているが、検甲各号証の具体的な製品との対応で、いずれの位置を基準として、具体的にどのように測定しているのか不明であり、・・・検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証のカラー陰極線管は、・・・本件特許の請求項1、2に係る発明と同一であるということはできないものである。なお、本件特許権者は、特許異議申立人が提示する検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証のカラー陰極線管についての最端テープねじれ係数αについての測定を準備し、その測定結果を提出する用意があることを申し添えます。”(特許異議意見書第3頁第6〜25行参照)
上記意見書によると、検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証及び検甲第9号証のカラー陰極線管検が、本件出願前に日本国内において公然実施されたものであること自体については否定していない。

(2)そこで、当審では、上記意見書に基づいて、特許権者へ以下の審尋をおこなった。
“特許権者が意見書において、提出する用意がある旨述べている「検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証のカラー陰極線管についての最端テープねじれ係数αについての測定結果」を提出して下さい。
なお、検甲各号証の具体的な製品との対応で、いずれの位置を基準として、具体的にどのように測定したかについても、併せて具体的に記載して提出して下さい。”

(3)上記審尋に対して、特許権者は、検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証のカラー陰極線管についての最端テープねじれ係数αについての測定結果を一切提出せず、平成15年12月9日付意見書において、概ね、以下のとおり主張している。
“本件特許発明は、フラットアパーチャグリルを用いることを前提するものです。このフラットアパーチャグリルは、陰極管の管面を従来の円筒型のものに比し平坦化したものであって、アパーチャグリルの曲率半径Rzを大きくしたものです。
ここで、フラットアパーチャグリルと、従来のアパーチャグリルである円筒型のアパーチャグリルの曲率半径Rzは、以下のとおりです。
対角線の大きさを15インチとする陰極線管においては、フラットアパーチャグリルの曲率半径Rzは、ほぼ915mmであり、従来型の円筒型のアパーチャグリルでは、ほぼ820mmです。
また、対角線の大きさを21インチとする陰極線管においては、フラットアパーチャグリルの曲率半径Rzは、ほぼ4520mmであり、従来型の円筒型のアパーチャグリルRzは、ほぼ1200mmです。
・・・(中略)・・・
本件特許発明では、所定の曲率半径Rzを有するアパーチャグリルに支持された互いに平行な複数のテープ状グリットの最も外側に位置にするテ一プ状グリット素体のねじれ係数に着目し、このねじれ係数を、テープ状グリット素体を支持する細線であるダンパー線のダンパースプリングへの溶接位置の関係で定めることにより、ダンパーワイヤによるテープ状グリット素体への加圧力不足を軽減しながら、ダンパーワイヤ浮きによるテープ状グリット素体の長時間振動現象の発生を低減することを見出したものです。
異議申立人が提示する検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証のカラー陰極線管は、本件特許権者において確認したところ、検甲第1号証、検甲第2号証は、異議申立人が提示する写真6、写真16の「20SA8V‐GIB」の表記から、20インチ型のものと認められます。
20インチ型の陰極線管に用いられるアパーチャグリルにおいて、甲第4号証の2の表2、甲第5号証の1の表6から明らかなように、曲率半径Rzの平均を1028.611mm若しくは1028.071mmとしています。
この曲率半径Rzから、検甲第1号証、検甲第2号証の陰極線管は、本件特許発明とは異なり、円筒型のアパーチヤグリルを用いたものです。
また、検甲第6号証は、異議申立人が提示する写真22の表記から、15インチ型のものと認められます。この検甲第6号証の陰極線管は、甲第8号証の表12に記載されるように、曲率半径Rzを819.151mmとしています。これは、上記表1に示す15インチのアパーチャグリルとの対比からしても、本件特許発明に用いられるフラットアパーチャグリルとは異なり、円筒型のアパーチャグリルを用いたものです。
さらに、検甲第9号証の陰極線管は、異議申立人が提示する写真28の表記、甲第10号証の「KV-19GT」から19インチ型のものと認められます。この検甲第10号証の陰極線管は、甲第12号証の表10に記載されるように、曲率半径Rzを931.709mmとしています。これは、本件特許発明に用いられるフラットアパーチャグリルとは異なり、円筒型のアパーチャグリルを用いたものです。
このように、異議申立人が提示する検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証のカラー陰極線管は、本件特許発明のように、フラットアパーチャグリルを用いるものではありません。
したがって、検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、検甲第9号証のカラー陰極線管においては、本件特許発明が解決しようとする課題もなく、また、フラットアパーチャグリルを前提とする構成もないものと思慮します。”

(4)そこで、本件明細書の記載を検討するに、本件明細書には、
「【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、アパーチャグリルを備えた色選別機構及びこの色選別機構を用いたカラー陰極線管に関する。
【0002】【従来の技術】
いわゆるトリニトロン型の陰極線管は色選別の為の機構として薄軟鉄板等の薄板にエッチングで縦縞状の開口(アパーチャ)を多数設けて、網枠(フレーム)に所定の張力を持たせた状態で溶接等により取り付けた多数のテープ状グリット素体を用いている。
【0003】上記開口と多数のテープ状グリット素体及びふち取りを有する薄板(エッチングされた後の薄板)は通常フラットアパーチャグリルと称される。」
と記載されているだけで、本件発明1及び本件発明2における「フラットアパーチャーグリル」が、「所定の曲率半径Rzを有する」旨の記載はない。
しかも、上記主張は、平成15年8月26日付意見書においては全く主張されていなかった事項である。
そこで、特許権者に対して、当該技術分野において「フラットアパーチャーグリル」とは上記の曲率半径Rzを有するものであることが良く知られた事実であることを示す文献等の提出を求めたが、何ら提出はされなかった。
してみれば、特許権者の平成15年12月9日付意見書における上記主張だけを以て、検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証のカラー陰極線管が、本件発明1及び本件発明2における「フラットアパーチャグリル」とは異なるものであるとすることは到底できない。

(5)また、平成15年8月26日付意見書において用意がある旨述べている「検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証のカラー陰極線管についての最端テープねじれ係数αについての測定結果」についても何ら提出がない以上、以下の本件発明1あるいは本件発明2と検甲号各証との対比・検討においては、特許異議申立人の提出した測定結果を採用することとする。

1.2.本件発明1と検甲第1号証との対比
(1)本件発明1と検甲第1号証とを対比すると、甲第1号証写真10が示すように、検甲第1号証は本件発明1の構成Aを備えている。また、甲第1号証写真9及び写真10が示すように、検甲第1号証は2本の細線が架張されている。
(2)検甲第1号証の各部位の測定値から【数1】に従って算出した最端テープねじれ係数αは、甲第4号証表3、同号証図3、同号証表5、及び同号証図4に示すように、一の値を除いて他はすべて本件発明1の構成Bの「0.4以上1.0以下」の範囲内の値となっている。
(3)したがって、検甲第1号証は本件発明1の構成を備えているので、検甲第1号証と本件発明1とは同一の発明である。
(4)さらに、甲第3号証からみて、本件の出願日である平成8年12月5日以前の平成5年2月20日頃に、株式会社モリサワから三菱電機エンジニアリング株式会社に検甲第1号証が使用されているナナオ製カラーディスプレイが譲渡されたものであり、この譲渡に際し、三菱電機エンジニアリング株式会社は検甲第1号証について何ら守秘義務を負わず、したがって、この譲渡により検甲第1号証は不特定多数人が認識できる状態におかれたことは明らかである。
(5)よって、本件発明1は、本件出願前に公然実施された発明である。

1.3.本件発明1と検甲第2号証との対比
(1)本件発明1と検甲第2号証とを対比すると、甲第2号証写真20が示すように、検甲第2号証は本件発明の構成Aを備えている。また、甲第2号証写真19及び写真20が示すように、検甲第2号証は2本の細線が架張されている。
(2)検甲第2号証の各部位の測定値から【数1】に従って算出した最端テープねじれ係数αは、甲第5号証表7、同号証図5、同号証表9、及び図6に示すように、すべて本件発明1の構成Bの「0.4以上1.0以下」の範囲内の値となっている。
(3)したがって、検甲第2号証は本件発明1の構成を備えているので、検甲第2号証と本件発明1とは同一の発明である。
(4)さらに、甲第3号証からみて、本件の出願日である平成8年12月5日以前の平成5年2月20日頃に、株式会社モリサワから三菱電機エンジニアリング株式会社に検甲第2号証が使用されているナナオ製カラーディスプレイが譲渡されたものであり、この譲渡に際し、三菱電機エンジニアリング株式会社は検甲第2号証について何ら守秘義務を負わず、したがって、この譲渡により検甲第2号証は不特定多数人が認識できる状態におかれたことは明らかである。
(5)よって、本件発明1は、本件出願前に日本国内において公然実施された発明である。

1.4.本件発明1と検甲第6号証との対比
(1)本件発明1と検甲第6号証とを対比すると、甲第6号証写真26に示すように、検甲第6号証は本件発明1の構成Aを備えている。
(2)検甲第6号証の各部位の測定値から【数1】に従って算出した最端テープねじれ係数αは、甲第8号証表11、同号証図7に示す通り、一部の値を除いて本件発明1の構成Bの「0.4以上1.0以下」の範囲内の値となっている。
(3)したがって、検甲第6号証は本件発明1の構成を備えているので、検甲第6号証と本件発明1とは同一の発明である。
(4)さらに、甲第7号証からみて、本件の出願日である平成8年12月5日以前の1995年8月3日頃に、菱洋エレクトロ株式会社から三菱電機エンジニアリング株式会社に検甲第6号証が使用されているSONY製モニターが譲渡されたものであり、この譲渡に際し、三菱電機エンジニアリング株式会社は検甲第6号証について何ら守秘義務を負わず、したがって、この譲渡により検甲第6号証は不特定多数人が認識できる状態におかれたことは明らかである。
(5)よって、本件発明1は、本件出願前に日本国内において公然実施された発明である。

1.5.本件発明1と検甲第9号証との対比
(1)本件発明1と検甲第9号証とを対比すると、甲第9号証写真36が示すように、検甲第9号証は本件発明1の構成Aを備えている。
(2)検甲第9号証の各部位の測定値から【数1】に従って算出した最端テープねじれ係数αは、甲第12号証表13、同号証図8に示すように、すべて本件発明1の構成Bの「0.4以上1.0以下」の範囲内の値となっている。
(3)したがって、検甲第9号証は本件発明1の構成を備えているので、検甲第9号証と本件発明1とは同一の発明である。
(4)さらに、甲第10号証からみて、本件の出願日である平成8年12月5日以前の昭和63年9月10日に、中川無線電機株式会社日本橋四丁日店において検甲第9号証が使用されているSONY製カラーテレビが販売されたものであり、この販売において、購入者は検甲第9号証について何ら守秘義務を負わず、したがって、この譲渡により検甲第9号証は不特定多数人が認識できる状態におかれたことは明らかである。
(5)また、甲第11号証は、検甲第9号証が使用されているSONY製カラーテレビが1989年10月31日頃には広く世の中に販売されていることを示しており、同時期に、守秘義務のない一般消費者に検甲第9号証が販売されていたことを疑う余地はなく、甲第11号証によっても検甲第9号証が本件の出願日以前に公然実施されたことは明らかである。
(6)よって、本件発明1は、本件出願前に日本国内において公然実施された発明である。

1.6.本件発明2と検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証との対比
本件発明2は、本件発明1で特定する色選別機構を有するカラー陰極線管であり、本件発明2の実態は、本件発明1と同一である。
したがって、前項「1.2」ないし「1.5」において示した証拠と同一の証拠により、本件発明2は検甲第1号証、検甲第2号証、検甲第6号証、及び検甲第9号証と同一の発明であり、本件発明2は、本件の出願日である平成8年12月5日以前に日本国内において公然実施された発明であることは明らかである。

2.取消理由2について
2.1.本件明細書の記載
(1)本件明細書における「ねじれ係数α」の定義
本件明細書の段落番号【0018】から【0022】までの記載によれば、「ねじれ係数α」は、Rzを「アパーチャグリルの曲率半径」、Lを「アパーチャグリルの中心線から最端の位置にあるテープ状グリット素体までの水平方向の距離」、L1を「アパーチャグリルの中心線から水平方向に距離L離間した最端の位置にあるテープ状グリット素体からさらに外側に距離」としたときに、α=Z/(√(Rz2-L2)-√(Rz2?(L+L1)2))と、概ね、定義されている。
このように、本件明細書における「ねじれ係数α」の値は、アパーチャグリルの曲率半径、最端位置のテープ状グリット素体までの水平方向距離及びさらに外側の距離のみによって規定され、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等には関係なく定まる値である。
(2)本件明細書における実施例及び比較例の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、「ねじれ係数α」を0.4以上1.0以下とした根拠として表1が示されているが、表1の実施例及び比較例において、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力について何ら具体的に開示されておらず、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力がどのような条件の場合に成立するものであるのか不明である。
(3)本件明細書における「発明の効果」の記載
本件明細書(段落番号【0028】及び【0029】)には、【発明の効果】として、「上述したように、本発明は、最端テープねじれ係数αを0.4以上1.0以下とすることにより、ダンパーワイヤによるテープ状グリット素体への加圧力不足を軽減し、最端のテープ状グリット素体のねじれにともなうダンパーワイヤ浮きによるテープ状グリット素体の長時間振動現象の発生を低減し、テープ状グリット素体の振動を素早く減衰させることができる。したがって、蛍光面への電子ビームのランディングを安定させることができ、映像画面の乱れを防止することができる。」と記載されている。

2.2.本件明細書の記載が不備である理由
(1)「テープ状グリット素体のねじれ」について
一般に、物体のねじれ量には、物体に働く力、材質、形状が寄与するものであり、これらの値が異なれば、ねじれ量も異なった値となることは明らかなことである。
これを、本件発明1及び本件発明2に当てはめてみると、例えば、テープ状グリット素体に加わる張力が同じ場合であっても、弾性率が大きければ、ねじれ量も大きくなり、また、張力・弾性率が同じであっても、テープ状グリット素体の幅が長ければ、ねじれ量が大きくなることになる。
すなわち、ダンパーワイヤの張力、テープ状グリット素体の弾性率、テープ状グリット素体の幅、厚さが、テープ状グリット素体のねじれ量に影響することは、上記一般技術常識を考慮すれば、当業者にとって明らかなことである。
(2)本件明細書によれば、本件発明1及び本件発明2は、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力の値に関わらず、ねじれ係数αを0.4以上1.0以下と特定することのみによって、ダンパーワイヤによるテープ状グリット素体への加圧力不足を軽減し、最端のテープ状グリット素体のネジレにともなうダンパーワイヤ浮きによるテープ状グリット素体の長時間振動現象の発生を低減するという効果を奏する、とされている。
しかしながら、上記(1)に示したように、「テープ状グリット素体のねじれ」現象には、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等が影響することが明らかであり、当業者が、これらの諸条件について何ら記載されていない本件明細書に基づいて本件発明1及び本件発明2を実施しようとしても、テープ状グリッド素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等の条件を無数の組み合わせで変化させて試行錯誤しない限り、明細書に記載された効果を得ることはできないと考えられる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1及び本件発明2を実施できる程度に記載されているとは認められない。

2.3.意見書における特許権者の主張について
(1)取消理由2に対して、特許権者は、平成15年8月26日に提出した特許異議意見書において、以下のように、主張している。
“本件特許の請求項1、2に係る発明は、・・・ねじれ係数を・・・ダンパー線のダンパースプリングへの溶接位置の関係で定めることにより、ダンパーワイヤによるテープ状グリット素体への加圧力不足を軽減しながら、ダンパーワイヤ浮きによるテープ状グリット素体の長時間振動現象の発生を低減することを見出したものであり、この条件は普遍性を有するものであって、決して、単に特定の実験条件における好適値を選定したものではなく実現したものである。・・・本件特許発明に係る色選別機構のような構造体においては、信頼性をあげ、しかも量産性効果を実現するために、技術陣は製品に至るまでに何百ものファクターを組み替えて最適な条件出しをすることが一般的である。本件特許発明では、それらの幾多の条件出しの末に、バリエーションの多いファクターを排除でき、究極的に請求項1、請求項2に記載されるとおりの数式1で示される最端グリット素体のねじれ係数αを定義したことにより、製造条件の単純化に成功したのである。・・・であり、特許法36条を満たすものである”(特許異議意見書第4頁第4〜23行参照)

(2)そこで、当審では、上記意見書に基づいて、特許権者へ以下の内容の審尋をおこなった。
“特許権者は、意見書において、「数式1で示される最端グリット素体のねじれ係数αの条件は、普遍性を有するものであり、何百ものファクターを組み替える最適な条件出しの末に定義したものである」旨述べているが、本件特許明細書をみても、そのように多数のファクターを組み替えた場合に数式1で示される最端グリット素体のねじれ係数αの条件下で、特許明細書に記載された効果を奏することを示す実験データ等は記載されておらず、また、特許異議意見書にもそのようなことを示す証拠は記載されていない。したがって、最端グリット素体の材質や形状に関わらず、数式1で示される最端グリット素体のねじれ係数αの条件下で特許明細書に記載された効果を奏することを確認することができない。
そこで、最端グリット素体の材質や形状を、組み替えても、上記条件下で、特許明細書に記載された効果を奏することを示す実験データ等を提出して下さい。”

(3)上記審尋に対して、特許権者は、何の実験データも提出せずに、平成15年12月9日付意見書において、概ね、以下のとおり主張している。
“先の意見書においても述べましたように、本件特許発明に係る色選別機構のような構造体においては、信頼性をあげ、しかも量産性効果を実現するために、技術陣は製品に至るまでに何百ものファクターを組み替えて最適な条件出しを行っています。本件特許発明では、それらの幾多の条件出しの末に、バリエーションの多いファクターを排除でき、究極的に特許請求の範囲の数式1で示される最端グリット素体のねじれ係数αを定義したことにより、製造条件の単純化に成功したのです。
このとき、用いる素材は、陰極線管を構成するアパーチャグリルに一般的に用いられる素材を選択したもので、上述の改善前と改善後の比較では、同種の素材を用いたものである。”

(4)特許権者が提出した上記2回の意見書の内容を検討するに、これらだけでは、本件明細書の記載が不備であるとする理由を何ら解消していないものである。
すなわち、意見書では、単に、数式1で示される最端グリット素体のねじれ係数αの条件は、普遍性を有するものであり、何百ものファクターを組み替える最適な条件出しの末に定義したものである旨述べるにすぎず、使用した材料等については、「このとき、用いる素材は、陰極線管を構成するアパーチャグリルに一般的に用いられる素材を選択したもので」と主張するにとどまり、前項に記載した「『テープ状グリット素体のねじれ』現象には、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等が影響することが明らかであり、当業者が、これらの諸条件について何ら記載されていない本件明細書に基づいて本件発明1及び本件発明2を実施しようとしても、テープ状グリット素体の材質・形状や細線(ダンパーワイヤ)の張力等の条件を無数の組み合わせで変化させて試行錯誤しない限り、明細書に記載された効果を得ることはできないと考えられる。」という点については、何ら回答していない。
すなわち、依然として、「本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1及び本件発明2を実施できる程度に記載されているとは認められない」という理由を覆すに足りる主張や実験証明書等が提出されていない以上、本件の請求項1乃至2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとせざるを得ない。

第8.結び
したがって、本件発明1及び本件発明2は、その出願前に日本国内において公然実施された発明であるから、本件の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-18 
出願番号 特願平8-325620
審決分類 P 1 651・ 851- ZB (H01J)
P 1 651・ 112- ZB (H01J)
P 1 651・ 536- ZB (H01J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 村田 尚英  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 荒巻 慎哉
中塚 直樹
登録日 2002-03-22 
登録番号 特許第3289626号(P3289626)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 色選別機構及びカラー陰極線管  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 宮田 金雄  
代理人 小池 晃  
代理人 田村 榮一  

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