• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B65D
管理番号 1098791
審判番号 無効2002-35425  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-04 
確定日 2004-04-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2957930号発明「易開性カン蓋」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2957930号の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2957930号の発明は、平成7年9月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年9月15日、米国)を国際出願日とする出願(特願平7-262287号)であって、平成11年7月23日に特許の設定登録がなされたものであり、平成14年10月4日に本件特許に対する無効審判請求がなされ、平成15年4月24日付けで答弁書の提出とともに、訂正請求がなされ、平成15年7月8日に口頭審理が行われたものである。
口頭審理においては、請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、その後、被請求人より平成15年8月28日付け上申書、請求人より平成15年9月10日付け意見書、更に、再度、被請求人より平成15年9月19日付けで上申書が提出された。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成15年4月24日付けの訂正請求は、以下のア.〜カ.の事項を訂正しようとするものである。
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項2を削除するとともに、請求項3乃至5を順次繰り上げて、以下の請求項2乃至4とする訂正。
「【請求項2】 請求項1において、破裂板が、刻線の湾曲部分の外周に略沿った部分を有する上方へ突出している閉ビードを含んでいることを特徴とする易開性カン蓋。
【請求項3】 請求項2において、ビードが、タブの鼻部とリベットとの間を通過していることを特徴とする易開性カン蓋。
【請求項4】 請求項3において、ビードが、レンズがリベットに向かって突出するような眼球の水平断面形状のような概略形状とされていることを特徴とする易開性カン蓋。」
イ.訂正事項b
【0013】の記載に関し、訂正前の「好ましい実施例において」を「本発明では」とする訂正。
ウ.訂正事項c
【0015】の記載に関し、「圧印範囲(coined area)・・・・・・・・望ましい。」を削除するとともに、訂正前の「突出部」を「前記突出部」とする訂正。
エ.訂正事項d
【0032】の記載に関し、「厳密には必要とされないが、・・・・・使用に適している。」及び「好ましい実施例に拠れば、」を削除する訂正。
オ.訂正事項e
【0033】の記載に関し、訂正前の「当該圧印範囲48」を「当該圧印領域48」とする訂正。
カ.訂正事項f
【0034】の記載に関し、訂正前の「閉塞いたり」及び「閉塞したビーズ」を、それぞれ、「閉塞したり」及び「閉塞したビード」とする訂正。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項aについて
請求項2を削除する訂正であるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、この訂正は、明らかに願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ.訂正事項bについて
請求項1で開口の面積を限定していることに対応させるための訂正であるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ.訂正事項cについて
請求項2の削除に伴う訂正であるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ.訂正事項dについて
請求項1で開口の面積を限定していることに対応させるべく、発明の詳細な説明で矛盾が生じないように一部記載の削除と訂正を行った訂正であるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ.訂正事項e及びfについて
明らかに誤記の訂正であり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
よって、平成15年4月24日付け訂正請求による訂正は、特許法第134条第2項及び特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
上記訂正により請求項2に係る発明は削除されたので、請求人が主張する対象は、訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下、「第1発明」及び「第2発明」という。)である。
請求人は、下記の甲第1号証乃至甲第9号証を提出するとともに、第1発明及び第2発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり(以下、「主張1」という。)、また、証人による証拠調べを申請するとともに、甲第5号証乃至甲第8号証に示される公知のカン蓋と、甲第2号証に記載された事項から、当業者が容易に発明することができたものであるから(以下、「主張2」という。)、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨主張している。

-請求人の提出した証拠-
1.甲第1号証:米国特許第5129541号明細書
甲第1号証の1(要部翻訳文)
2.甲第2号証:実公平3-44661号公報
3.甲第3号証:特開昭60-34334号公報
4.甲第4号証:特開昭61-178841号公報
5.甲第5号証:請求人カン蓋の製作図面
6.甲第6号証:平成5年度における請求人のSB650Wと称するカンの納入実績一覧表
7.甲第7号証の1及び甲第7号証の2:平成5年10月および平成6年2月における請求人からサッポロビール株式会社群馬工場へのSB650カンの出荷伝票
8.甲第8号証:昭和60年6月21日付けで請求人がサッポロビール株式会社に提出した書面
9.甲第9号証:特公平4-65731号公報

4.被請求人の主張
本件発明は、請求項に記載された(a)〜(b)で具体的に特定される広い開口を設けた点に特徴があり、どの証拠にもそのような開口を開示したものはないので、請求人の主張は失当である旨主張している。

5.本件特許発明
第1発明及び第2発明は、平成15年4月24日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】 注いだり飲んだりするのに適した開口を形成するためのタブがリベットによって分離不能状態に取り付けられた金属製の易開性カン蓋であって、
円形の蓋と、
取り外し不能な破裂板の外周の大部分を仕切って前記蓋内で破ることができる刻線であって、一方で、破裂板の最大長さより実質的に短い長さの一体的なヒンジを破裂板と蓋の残りの部分との間に残し、前記刻線はヒンジの一端から、ヒンジから離れた湾曲部分を回って、ヒンジの他端に戻るように延出し、前記破裂板は前記円形の蓋の一の直径の範囲内に位置する長さを有しているものと、
前記蓋の面とほぼ平行かつ接近して延出するタブであって、そのタブの後部は上方向へ持ち上げ可能に係合するとともに、そのタブの前部はその前端の鼻のところで途切れているものと、
前記一の直径上であって刻線の近傍に配置されたリベットであって、当該リベットは蓋とタブを分離不能に接合するとともに、タブの後部を蓋から持ち上げ可能にするものと、を有し、
タブの後部が持ち上げられた時に、タブの前部が破裂板を押し下げるように構成されていて、破裂板とリベットとの間で相対的な垂直移動を起こして、リベットに近接した刻線の初期の破れを起こし、ヒンジの一端から離れ、前記湾曲部分を回ってヒンジの他端に戻るように破裂が広がって、開位置にまでヒンジを中心にした破裂板を下方へ揺動させるような蓋であって、
破裂板と、これによる注いだり飲んだりするための開口と、を備え、当該開口は、
(a)実質的に楕円形状を有し、
(b)前記蓋の前記一の直径と直交する最大幅を有し、
(c)0.5平方インチ-0.75平方インチの範囲を有し、
前記破裂板は実質的に円形の蓋の中心に延びる、
ことを特徴とする金属製易開性カン蓋。
【請求項2】 請求項1において、破裂板が、刻線の湾曲部分の外周に略沿った部分を有する上方へ突出している閉ビードを含んでいることを特徴とする易開性カン蓋。」

6.当審の判断
先ず、請求人の主張1について検討する。
主張1:【第1発明及び第2発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである】

(1)甲第1号証乃至甲第4号証に記載された事項
a.甲第1号証(米国特許第5129541号明細書、以下、「引用例1」という。)
甲第1号証の1に拠れば、引用例1には、以下の事項が記載されている。
記載イ:
「本発明は、開口容易な金属缶蓋等用の引っ張りタブに関し、特に開口後に引っ張りタブが缶蓋に付着して残る開口容易な缶蓋に関する。」(第1欄第5〜8行参照)
記載ロ:
「図1に、側壁24,缶蓋板26,および缶蓋板26に側壁24を接合する巻締部28を有する、参照番号22によって示される缶の天蓋20の説明図が示される。参照番号30によって示される引っ張りリングタブは、缶蓋板26にそれに平行な面に、回動可能にリベット32によって固着されている。缶蓋板26は、例えば鋼のような金属から作製される。このような蓋板26の典型的な厚さは、0.0072〜0.0105インチである。
板26は押圧などによって、上方に延びる強化用リッジ34,34、下方に延びる把持のための凹部域36,上方に延びるほぼ三角形状の強化部分38,上方に延びるピボット・リッジ39、および厚さ方向部分的に切断された一対の刻線、すなわち主刻線40および破断防止刻線41を有するように形成される。」(第2欄第45〜61行参照)
記載ハ:
「好ましくは図1および図2の蓋の図面に最も良く示されるように、本発明の刻線40,41は、平面的にほぼU字形をしていて、点Aから、点Bとして示される拡大部まで走っている。しかし本発明は、刻線40,41のいかなる平面形状にも制限されない。刻線40,41の終点AおよびBの間にある蓋板26の部分は、ヒンジ46を形成する。次に破裂板48は、ヒンジ46を終点とする刻線40,41によって包囲される缶蓋板26の部分、および強化部分38並びにピボット・リッジ39を含む。破裂板48は事実上、開口の際に主刻線40に沿って缶蓋板26から切断される。」(第3欄第20〜33行参照)
記載ニ:
「特殊な形状をした引っ張りリングタブ30は、鼻部52,指かけ開口部56を有する把持部54,および部分的に切り取られたりベット・フランジ部58を含む。リベット部58は、鼻部52(図3を見られたい)の外端がピボット・リッジ39の上にあるように、リベット32を介して缶蓋板26に、リングタブ30を蝶番的に板26にほぼ垂直な面に固着するために用いられる。リベット部58のために、リングタブ30がリべット32の周りに上下に蝶番式動きができるようになっている。」(第3欄第38〜47行参照)
記載ホ:
「タブの把持部54(リベット部58,リベット32およびヒンジ線Lの周りに揺動する)の上昇運動は、タブの鼻部52を缶蓋板26の破裂板48および特にピボットリッジ39に対して押し下げる。」(第3欄第52〜56行参照)
記載へ:
「このようにして、図9に見られるように、オフセットU字型かぎ70によって作られた最初の”はじき”圧力のために、最初の破裂開口が刻線の点Aに隣接するほぼU字形の刻線40の初め側に沿って行われる。
その後、リングタブ30に引き上げ力(図10における引き上げ力の矢印を見られたい)を続けて加えると、刻線40の破裂が終わる;この破裂は、刻線40の開口側にある最初の開□点から点Bにおける刻線40の最終端に向かって起こる、次に破裂は、刻線40の残りを巡って最後まで連続的に続く。すなわち図11に見られるように、開口破裂動作は、十分に加えられる引き上げ力によって、刻線40が、刻線出発点Bから終点Aに向かって完全に破裂するまで続く。次にこの破裂動作によって、破裂板48は、缶22の内方に延びるように完全に押し下げられる(図11を見られたい)。その後、リングタブ30は、缶蓋26上のパッド50に平坦に横たわる最初の位置まで(タブフランジ部58の周りに)押し下げられる(図1および図8を見られたい)。」(第4欄第60〜第5欄第12行参照)

引用例1の缶蓋は、飲料用に用いられるものであることは明らかであり、開口容易な金属製のもの(記載イ参照)である。また、図面から見て、缶蓋の形状は円形である。リングタブ30はリベット32を介して固着されている(記載二参照)。
破裂板48は、ヒンジ46を終点とする刻線40,41によって包囲され、開口の際に主刻線40によって缶蓋板から切断される(記載ハ参照)。そして、その形状は平面的にU字型をしており、破裂板48は、円形蓋の一の直径の範囲内に位置する長さを有しているものといえる。そして、破裂板は、図面からも明らかなように、円形蓋の中心に延びている。
タブ30は、缶蓋板26に平行な面に固着されており(記載ロ参照)、図から見て明らかに、蓋面に接近して設けられている。また、タブを上に持ち上げることができるように把持部54が設けられており(記載ホ参照)、タブ30は鼻部52のところで途切れている。(記載ニ及び図面参照)
タブ30はリベット32の周りに上下に蝶番式動きができるようになっており(記載二参照)、タブの後部にある把持部54を持ち上げ可能となっており、タブが持ち上げられることで、タブの鼻部が押し下げられ、破裂板が押し下げられる。(記載補ホ参照)
刻線の初期の破れが生じると、破裂は、刻線40の開口側にある最初の開口点から刻線の最終端に向かって起き、破裂動作によって、破裂板48は、缶の内方に完全に押し下げられる。(記載へ参照)

してみると、引用例1には、「注いだり飲んだりするのに適した開口を形成するためのタブがリベットによって分離不能状態に取り付けられた金属製の易開性カン蓋であって、円形の蓋と、取り外し不能な破裂板の外周の大部分を仕切って前記蓋内で破ることができる刻線であって、一方で、破裂板の最大長さより実質的に短い長さの一体的なヒンジを破裂板と蓋の残りの部分との間に残し、前記刻線はヒンジの一端から、ヒンジから離れた湾曲部分を回って、ヒンジの他端に戻るように延出し、前記破裂板は前記円形の蓋の一の直径の範囲内に位置する長さを有しているものと、前記蓋の面とほぼ平行かつ接近して延出するタブであって、そのタブの後部は上方向へ持ち上げ可能に係合するとともに、そのタブの前部はその前端の鼻のところで途切れているものと、前記一の直径上であって刻線の近傍に配置されたリベットであって、当該リベットは蓋とタブを分離不能に接合するとともに、タブの後部を蓋から持ち上げ可能にするものと、を有し、タブの後部が持ち上げられた時に、タブの前部が破裂板を押し下げるように構成されていて、破裂板とリベットとの間で相対的な垂直移動を起こして、リベットに近接した刻線の初期の破れを起こし、ヒンジの一端から離れ、前記湾曲部分を回ってヒンジの他端に戻るように破裂が広がって、開位置にまでヒンジを中心にした破裂板を下方へ揺動させるような蓋であって、破裂板と、これによる注いだり飲んだりするための開口と、を備え、破裂板は実質的に円形の蓋の中心に延びることを特徴とする金属製易開性カン蓋。」に関する発明が開示されているものと認められる。

b.甲第2号証(実公平3-44661号公報、以下、「引用例2」という。)
引用例2には、カン蓋の開口に関して、以下の事項が記載されている。
記載ト:
「また第3第4のスコア線8,9は夫々の始端8a,9aを第2スコア線7の至端7bに連接し、かつ夫々の始端8a,9aから互いに反対方向に延びパネル面2の周縁部10に沿って屈曲して引き上げレバー5の側縁5b外方に向かう屈曲部8b,9bを介して引き上げレバー5の側縁5b外方に沿って夫々の至端8c、9cが第1スコア線6の端部6a近傍に至るまで形成した略円弧状のものである。」(第4欄第37行〜第5欄第2行参照)

c.甲第3号証(特開昭60-34334号公報、以下、「引用例3」という。)
引用例3には、以下の事項が記載されている。
記載チ:
「現在、販売されている缶ビールにおいては、そのビールの流出口の大きさは、おおよそ3.5〜4.0cm2 で上記したビールの味覚を味わえるような流量が得がたく、一方この点を解消するために、缶ぶたの開口率の増大を計ることが考えられるが」(第2欄第7〜12行参照)
d.甲第4号証(特開昭61-178841号公報、以下、「引用例4」という。)
引用例4には、以下の事項が記載されている。
記載リ:
「ここで、209DIAのアルミリキッドボーエンドを例にとって説明すると、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
開口部を押し上げる力は、開口面積(396.4mm2)×・・・・」(第2頁左上欄第10行〜右上欄第5行参照)

(2)対比・判断
-第1発明に関して-
第1発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、「注いだり飲んだりするのに適した開口を形成するためのタブがリベットによって分離不能状態に取り付けられた金属製の易開性カン蓋であって、円形の蓋と、取り外し不能な破裂板の外周の大部分を仕切って前記蓋内で破ることができる刻線であって、一方で、破裂板の最大長さより実質的に短い長さの一体的なヒンジを破裂板と蓋の残りの部分との間に残し、前記刻線はヒンジの一端から、ヒンジから離れた湾曲部分を回って、ヒンジの他端に戻るように延出し、前記破裂板は前記円形の蓋の一の直径の範囲内に位置する長さを有しているものと、前記蓋の面とほぼ平行かつ接近して延出するタブであって、そのタブの後部は上方向へ持ち上げ可能に係合するとともに、そのタブの前部はその前端の鼻のところで途切れているものと、前記一の直径上であって刻線の近傍に配置されたリベットであって、当該リベットは蓋とタブを分離不能に接合するとともに、タブの後部を蓋から持ち上げ可能にするものと、を有し、タブの後部が持ち上げられた時に、タブの前部が破裂板を押し下げるように構成されていて、破裂板とリベットとの間で相対的な垂直移動を起こして、リベットに近接した刻線の初期の破れを起こし、ヒンジの一端から離れ、前記湾曲部分を回ってヒンジの他端に戻るように破裂が広がって、開位置にまでヒンジを中心にした破裂板を下方へ揺動させるような蓋であって、破裂板と、これによる注いだり飲んだりするための開口と、を備え、破裂板は実質的に円形の蓋の中心に延びることを特徴とする金属製易開性カン蓋。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:
第1発明は、開口が実質的に楕円形状を有し、蓋の一の直径と直交する最大幅を有しているのに対し、引用例1の発明は、その開口の形状に関して格別の特定がなされておらず、また、図面からも、蓋の一の直径と直交する最大幅を有する楕円形状であるとは窺えない点。
相違点2:
第1発明は、開口面積が0.5平方インチ〜0.75平方インチの範囲にあるものと特定されているのに対し、引用例1の発明は、開口面積が具体的に特定されていない点。

これらの相違点について検討をする。
相違点1について:
そもそもカン蓋の開口をどのような形状とするかは、口を開口に付けて飲むことを考慮してより飲みやすい形状を考えるものであり、対象となる飲料の理想的な飲み方とも関連し、適宜選択できる設計的事項である。
ところで、明細書には、従来技術の問題点として、「前述の無折込および角度不足の問題は、概して、刻線を裂くのに十分な純然たる剪断力を出して破裂板の全周に渡って刻線の破れを増進させるのに十分な剪断を加え続けるように破裂板に作用するには能力不足であるタブに起因する。美観上の理由、もしくは、より注ぎ易く飲み易くする目的で、より広い開口をカン蓋範囲内に形成しようとした場合、このような問題は悪化する。」(段落【0007】参照)との指摘がなされている。
相違点1が単なる設計事項でないとすれば、従来技術の問題点をどのように解決したかの具体的事実が存在すべきものであるところ、明細書には、「好ましくは閉じられた補強ビート12は、上面図において、楕円または長円形状に延出し、その長手すなわち主軸が開口20の3:00-9:00(横)方向となっている。」(段落【0022】参照)との記載があるだけで、楕円形状であることの意味が、「より注ぎ易く飲み易くする目的」からのみ選定された以上の記載はない。また、平成15年8月28日付けで提出された被請求人の審判事件上申書には、「無折り込み等の障害は、ひたすら製造技術の問題である。」(第6頁第5行参照)との説明があり、従来技術の問題点とは直接の因果関係がなく、相違点1の楕円形状であることにのみ意義があるとの説明を行っている。
してみると、引用例2には、カン蓋の開口を「略円弧状」とするとの記載があり、一般に略円弧状には楕円も含まれることは明らかであるので、第1発明において、開口の形状を楕円とし、その楕円形状を、相違点1のようなものとすることは、引用例2に記載された開口の形状を基に、より注ぎ易く飲み易くすることを目的として当業者が容易に選択できた程度のものであるといえる。
したがって、この点に格別の困難があったとは認められない。

相違点2について:
開口面積を相違点2のような数値の範囲に設定することの意味に関し、明細書には、「本明細書に使用されるように、「より広い開口(larger opening)」とは、およそ0.5-0.75平方インチの範囲にある破裂板で定義される開口範囲であって、カン製造業者の従来技術用語で用いられる略202-211の範囲にある直径を有するカン蓋において望ましいとされている。」(段落【0007】参照)と記載されている。
事実、引用例3には、「3.5〜4.0cm2」(0.54〜0.62平方インチに相当)の面積の開口が記載され、また、引用例4には「396.4mm2」(0.614平方インチに相当)の面積の開口が記載されていることからも、開口面積を「0.5-0.75平方インチの範囲」にすること自体は、すでに広く知られていたということができる。
被請求人は、平成15年8月28日付けで提出された被請求人の審判事件上申書において、「この数値限定は、市場に流通している通常の飲料缶の中央パネルにうまく配置することを可能としながら、かつ飲みやすく、注ぎやすい面積を、模索した結果得られた範囲である。」(第3頁第16〜19行参照)と主張している。
しかしながら、開口面積を相違点2のような範囲にすること自体は、引用例3や引用例4にも記載されており、新規なものではない。
更に被請求人は、答弁書において、「ステイオンタブ」と「リングプルタブ」との構造の違いを縷々述べ、数値だけでは測れないものがある旨を主張しているが(第4頁第11行〜第6頁第23行参照)、飲み易さ自体はタブの構造にかかわりなく開口面積で決まるものである。また、第1発明のような「ステイオンタブ」を採用した場合、相違点2のような範囲の開口面積をとることが従来困難であり、そのための解決を見出したのであればいざ知らず、上記平成15年8月28日付け審判事件上申書並びに平成15年9月19日付け審判事件上申書において被請求人自身が述べているように、従来の問題が単に製造技術の問題であるとすれば、「ステイオンタブ」の構造的問題を考慮すべきものでもない。
よって、被請求人の主張は採用しない。

以上の検討を踏まえると、第1発明は、引用例1乃至4に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである。

-第2発明に関して-
第2発明は、第1発明を「破裂板が、刻線の湾曲部分の外周に略沿った部分を有する上方へ突出している閉ビードを含んでいることを特徴とする」と特定したものである。
しかしながら、引用例1に記載されたカン蓋も、破裂板が、刻線の湾曲部分の外周に略沿った部分を有する上方へ突出している閉ビードを含んでいるので、第1発明に関して述べたと同様の理由により、第2発明は、引用例1乃至4に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである。

7.むすび
以上のとおり、第1発明及び第2発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載されたものから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、主張2を検討するまでもなく、第1発明及び第2発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
易開性カン蓋
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 注いだり飲んだりするのに適した開口を形成するためのタブがリベットによって分離不能状態に取り付けられた金属製の易開性カン蓋であって、
円形の蓋と、
取り外し不能な破裂板の外周の大部分を仕切って前記蓋内で破ることができる刻線であって、一方で、破裂板の最大長さより実質的に短い長さの一体的なヒンジを破裂板と蓋の残りの部分との間に残し、前記刻線はヒンジの一端から、ヒンジから離れた湾曲部分を回って、ヒンジの他端に戻るように延出し、前記破裂板は前記円形の蓋の一の直径の範囲内に位置する長さを有しているものと、
前記蓋の面とほぼ平行かつ接近して延出するタブであって、そのタブの後部は上方向へ持ち上げ可能に係合するとともに、そのタブの前部はその前端の鼻のところで途切れているものと、
前記一の直径上であって刻線の近傍に配置されたリベットであって、当該リベットは蓋とタブを分離不能に接合するとともに、タブの後部を蓋から持ち上げ可能にするものと、を有し、
タブの後部が持ち上げられた時に、タブの前部が破裂板を押し下げるように構成されていて、破裂板とリベットとの間で相対的な垂直移動を起こして、リベットに近接した刻線の初期の破れを起こし、ヒンジの一端から離れ、前記湾曲部分を回ってヒンジの他端に戻るように破裂が広がって、開位置にまでヒンジを中心にした破裂板を下方へ揺動させるような蓋であって、
破裂板と、これによる注いだり飲んだりするための開口と、を備え、当該開口は、
(a)実質的に楕円形状を有し、
(b)前記蓋の前記一の直径と直交する最大幅を有し、
(c)0.5平方インチ-0.75平方インチの範囲を有し、
前記破裂板は実質的に円形の蓋の中心に延びる、
ことを特徴とする金属製易開性カン蓋。
【請求項2】 請求項1において、破裂板が、刻線の湾曲部分の外周に略沿った部分を有する上方へ突出している閉ビードを含んでいることを特徴とする易開性カン蓋。
【請求項3】 請求項2において、ビードが、タブの鼻部とリベットとの間を通過していることを特徴とする易開性カン蓋。
【請求項4】 請求項3において、ビードが、レンズがリベットに向かって突出するような眼球の水平断面形状のような概略形状とされていることを特徴とする易開性カン蓋。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
概して、本発明は飲み物容器の端部材に関し、具体的には、易開性のあるステイ・オン・タブ(SOT)カン蓋に関するものであって、そこにおいて、取り付けられたタブは、破られる破裂板を部分的に切断変位させるように持ち上げられて、タブとカンの蓋壁に残るように取り付けられた破裂板とで、注ぎあるいは飲み口を作り出している。
【0002】
【背景技術】
一般的に、ビ-ル、ソフトドリンク、お茶、ジュ-ス、水、濃縮品等を詰めたアルミニウム又はスチ-ルカンは、易開性のあるステイ・オン・タブカン蓋を備えて設けられ、ここにおいて、閉塞していない刻線が蓋に形成され、タブがリベット等の締結部材によって、刻線部分のすぐ外側位置で蓋に固定されている。このタイプの蓋においては、タブがリベットにヒンジ接続されている。作用時においては、力がタブによって、先ず刻線が破られるように、リベットによるヒンジを介してカン蓋の破られる破裂板部分に加えられる。この継続的に加えられる力が、破裂板を容器の中に落とし入れる。刻線の閉塞していない部分は破られた破裂板を蓋に留め、タブはリベットで取り付けられたままとなって蓋に残る。
【0003】
以下に続く説明における本発明をよりよく理解するために、蓋上のタブ、破裂板および刻線の各部位は、時計位置を参照して示す。本明細書に用いられているように、蓋がステイ・オン・タブの下に位置する破裂板を垂直面に保持しているとした場合、12:00位置は、タブを二分するようにリベットを通って延出する長手方向軸に沿ったタブの上方である。6:00位置は、同軸に沿った破裂板の下方であり、3:00位置および9:00位置は、それぞれ前述の長手方向軸と直交して延出する軸に沿った左右の端にある。
【0004】
蓋を開けようとすると、時としてある種の失敗が起きる。そのひとつは、「鼻部損傷(=nose failure)」と呼ばれるもので、タブの初期開口作用が刻線を「ポン」と開けられないことである。
【0005】
また、他のタイプは「無折込(non-turnunder)」と呼ばれるものであって、刻線の破れが破裂板をぐるりと回って前進しないで、通常は3:00位置の1箇所にだけ起こり、そこにおいては、タブが滑りはじめ部分的に開いた破裂板メタルの金属を曲げてしまい、タブは破裂板から滑り外れて使用不能となる。
【0006】
他の不都合な事項としては、不十分な角度での破裂板の開口に関するものであって、このことは、破裂板が初期位置から80度ないし90度あたりに完全に振り下ろされずに、開口の閉塞を回避できないことを意味する。このような問題が生じると、破裂板は不完全に、すなわち一般的にはカン蓋面より30度から40度だけ振り降ろされて、開口からの液体の自由な流れを部分的に規制することとなる。
【0007】
前述の無折込および角度不足の問題は、概して、刻線を裂くのに十分な純然たるせん断力を出して破裂板の全周に渡って刻線の破れを増進させるのに十分なせん断を加え続けるように破裂板に作用するには能力不足であるタブに起因する。美観上の理由、もしくは、より注ぎ易くまたは飲み易くする目的で、より広い開口をカン蓋範囲内に形成しようとした場合、このような問題は悪化する。本明細書に使用されるように、「より広い開口(larger opening)」とは、およそ0.5-0.75平方インチの範囲にある破裂板で定義される開口範囲であって、カン製造業者の従来技術用語で用いられる略202-211の範囲にある直径を有するカン蓋において望ましいとされている。「標準開口寸法(standard size opening)」とは、略0.5平方インチ以下の範囲であり、一般的には、0.4-0.47平方インチの範囲内である。より広い開口である場合には、破裂板の幾何学的に長い軌跡が、刻線にせん断応力を全開口工程を通じて適切に発生伝達させる上で必然的と思われ、また、本発明の意図するところである。また、本発明は、200-300の範囲を含む広範囲なカン蓋寸法の範囲に対して適用可能であると理解されるべきである。
【0008】
従って、本発明の目的は、ヒンジ領域以外のところで等しく完全に破れるように、破裂板に対してタブが引き起こすせん断作用を刻線に沿って調整することにある。
【0009】
また、他の目的は、刻線の破れを増進する役目としての破裂板に作用するせん断応力の適用を制御することにある。
【0010】
更なる他の目的は、無折込および角度不足の問題に直面することなく、飲み物容器の蓋により広い寸法の開口の使用を可能とすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ステイ・オン・タブカン蓋を提供するものであって、そこにおいては、切断可能な破裂板部分を仕切る刻線がヒンジ部分を除いて正確かつ完全に破れ、破裂板が開いて蓋に残るようになっている。タブおよび破裂板は独特の方法で働き合うよう構成されているので、タブ開口動作中にこれらの部材間の多数かつ変更する接点が、破裂板が不都合に曲がってしまって無折込または角度不足となる張力に変わって、刻線を破るように作用するせん断応力を起こすようになっている。
【0012】
本発明の好ましい実施例においては、端壁にステイ・オン・タブカン蓋が形成され、取り外し不能な破裂板の外周の大部分を仕切る刻線が蓋に形成されている。同時に、前記板と蓋に残されている部分との間に一体的なヒンジを残している。刻線は、ヒンジの一端から、ヒンジから離れたところにある輪を通って、さらにヒンジの他端に戻って延出している。蓋の領域内に略平行しているとともに近接しているタブは、上方向への持ち上げを手動で行えるようにする後部および破裂板のわずかな部分に覆い被さる前鼻部を有している。取り付け手段は、刻線の近傍であって破裂板の外側で蓋の範囲内に設けられている。当該取り付け手段は、タブ上の接続手段に分離不能に固定されている。タブの後部が容器から部分的に持ち上げられた場合に、取り付けおよび接続手段がタブの枢軸移動を許容する一方で、タブの前鼻端が対応して振り下がることにより、刻線は最初の破れを起こすようになる。本発明によれば、ビードが破裂板の上面から上方に突出して形成されるとともに、タブの前鼻部下に延出している。概して蓋の広がり部分すなわち面に平行であって取り付け手段に近接している回転軸を中心としたタブの連続した枢軸移動は、ビード及びタブの先鼻部間における2番目の接点または部位を設けることで、12:00位置からの刻線の破れを進めるとともに、ヒンジを中心にして前記板を振り下げて開口状態とする。この2番目の接触部は、タブの長手方向軸から離れていて、しかも、リベットから離れる破れの広がりが起きるような軸の側に位置している(すなわち、破裂板が蓋の残りの部分に蝶番式に取り付けられる側とは反対の長手方向のタブ軸側)。
【0013】
本明細書で用いる方向的用語は、カンが起立してカンの端部にある注ぎ口が見る者に向けられているものとして用いられる。従って、タブは蓋壁上にあり、タブの長手方向軸はリベットを通過し、タブの長さは当該軸に沿い、タブの幅は前記軸に直交し、タブ先端は見る者に向けられる一方、後部は見る者から離れていることになる。また、破裂板及びビードの「長さ」、「幅」、「前」、「後」は、タブのそれと同一方向について言及し、破裂板とビードの長さがタブの長手方向軸に沿う蓋の一の直径に沿って当該直径の範囲内に位置し、それらの幅は蓋の弦に沿って位置する。
本発明では、前記刻線で限定される開口は広開口であって、名目上の202-211の範囲内のサイズを有する容器蓋内で0.5平方インチ以上の広い範囲を有している。
【0014】
従来より、破裂板におけるビードの目的は、刻みにより生じた金属におけるゆるみを取るためのものである。さらに、ビードはタブの下方の破裂板の部分においては好ましくは連続している。これは、しっかりと取り付けられた破裂板にタブの長手方向軸を横切るようにさせるためである。よって、当該軸を横切って曲がるような破裂板のそうした傾向は最小限のものであって、せん断応力を刻線に伝搬するのに役立つ。さらに、タブの下にビードを備えるとともに、ビードに2つの間隔を開けたタブの接触点または位置を備えることにより、破裂板に対するタブ荷重のより均一な分布とすることができるようになる。好ましい実施例においては、これらの2つの接点は、タブの鼻の中心における破裂板との接点からは隔てられている。ビードの高さは、破裂板の平坦部の上面から測定して.011インチである。一度、タブが鼻の中心に対してビード上のこれらの横の点と接すると、ビードとの少なくとも2つの前記接点を有するタブに起因して、刻線の破れば更に広がることができるということが理論的に想定される。望ましくは、上面図において、ビードは曲線を描いた眼球形状に形成され、概して切れ目の外形に沿っている。そのレンズ状の突出部はタブの先鼻部の下方に延出している。突出部は、好ましくは、ビードの他の部分と同様な断面深さ形状と実質的に同じものを有し、蓋の覆っている上面から十分に上方に出て、タブとの上述の接点をもたらしている。
【0015】
取り付け手段は、蓋の中心辺りに一体的に形成されているリベットを好ましくは備えている。
望ましくは、前記突出部は12:00位置においてリベットと最も接近し、12:00-6:00軸を中心にして対象であってもよい。
【0016】
タブの先鼻部が最初に押圧する破裂板上の場所は、ビードからも刻線からも離れている。リベットは刻線の近くにある。前記2番目の接点は、破れが3:00位置辺りを進んでいるときに、刻線にせん断力をかける最初の押圧点よりも3:00位置に近い。(当然に、切れ目はタブの長手方向軸を中心にして裏返されていて、その場合においては、3:00位置ではなくて9:00位置辺りで発生するが、本明細書における明瞭性および一貫性のために、時計進行方向を想定する)。
【0017】
鼻の中心と破裂板との間の接点よりもヒンジに近く位置されている鼻とビードとの間の他の接点は、せん断応力を刻線に伝達して端位置に伝わって(10:00〜11:00あたり)破裂板の完全な開口を確保するのに有用である。
【0018】
本発明における他の詳細、使用および効果は、添付の図面に表されている例示的実施例の以下の記載により明瞭となる。
【0019】
【実施例】
図1は、本発明の教示事項に基づいて作られた易開性のある上蓋10の典型的な実施例の上面図であって、容器側壁(図示しない)を既知の方法で固定させている。典型的な12オンス金属製飲物カンである容器の他の部分は、単一または二分割構造である実質的に円筒形の側壁に接合された底蓋を含む適当な従来構造となっている。以下に詳述するように、好ましい実施例において、本発明は独特な形状とされたビードを特徴としていて、それを参照番号12で示すとともに、タブ14を開く動作により、取り外し不能な破裂板16が、容器内容物が適切に出るような開口20を形成する刻線18全体に沿って、蓋から適切に切断されるようになっている。
【0020】
図1および図2を具体的に参照して詳細に述べれば、上蓋(top end wall)10には、取り外し不能な破裂板16の大体の外形を形成する刻線18が設けられている。タブ14は、例えば、Daniel F.Cudzikに付与されたアメリカ特許第3,967,752号(本発明の譲受人であるヴァージニア州リッチモンド所在のReynolds Metals社に譲渡されたもの)に教示されているように、リベット22によって分離不能状態で蓋10に取り付けられている。’752号特許は、参考文献としてここで用いる。タブ14は12:00位置に図示されているように、鼻24で終わっているとともに板16のほんの一部分に掛かっている前端部を備えている。また、タブ14はリベット22の反対側に後部26を備えている。この後部は容易に掴んで持ち上げできるようになっており、鼻24を板16の上面に対して下方に押し、リベット22及びヒンジ部18の他の部分に対して、板を先ず下方へ移動させる。ヒンジ部は、板をしっかりと保持し且つ板と蓋の他の部分間の折り曲げ領域又は一体的なヒンジを定める刻線18の両端30a,30b間に位置されている。このヒンジ28の長さは、周知のごとく破裂板16の最大長さよりも実質的に短い。
【0021】
刻線18は連続的な曲線状の軌跡に延出し、間隔をあけて設けられた端部30aおよび30bにあたるところで終わっている。刻線18は、リベット22および鼻24の間で波打った、あるいはカーブした部分32を有し、既に言及したようにタブの後部26を上方へ持ち上げて破裂板と圧接するように鼻24を下方向に旋回動させることで、刻線と板との最初の裂けが発生する領域を定めている(図4(A)参照)。以下により詳細に述べられるように、これは刻線に沿って、端30bから始まるように板を破る、すなわち切断するせん断作用の始まりである。
【0022】
好ましくは閉じられた補強ビード12は、上面図において、楕円または長円形状に延出し、その長手すなわち主軸が開口20の3:00-9:00(横)方向となっている。しかしながら、以下に詳述する本発明の独特な構成においては、リベット22にもっとも近い部位34は、残りの楕円部分よりもリベットに向かって突出していて、「レンズ(lens)」が突出部34となっている眼球の水平断面形状のようなビードを構成している。垂直断面深さ方向において、突出部を含むビード12は、破ることができる板16から軸方向外側もしくは上方向に延出し、その全範囲に沿って好ましくは同じ断面深さを有している。
【0023】
好ましい実施例において、突出部34を除き、ビード12は端部30a,30bおよびリベット22に近接した曲部32を除く刻線18に略近似する形状を有するように見える。
【0024】
図4(A)ないし図4(F)は、タブ14と、タブの鼻をタブの回転軸に対して下方向に回転させるようにタブの後部を継続的に持ち上げた結果によるカン蓋開口が増進する破裂板16とを示している。
【0025】
図4(A)及び(C)に示されるように、閉ビード12がタブの鼻部24とリベット22との間を通過し、タブの鼻部24の中心は、ビード12の突出部34の向こう側(すなわち、リベット22からみてビード12の反対側)にある点または部位40で破裂板と接する。この初期接触点40は、刻線の12:00位置におけるリベット22の近くで、刻線18の最初の引き裂け43を作り出す。この時の最初の引き裂きが、上述した「ポンという音」となる。
【0026】
タブ26の後部を引き上げ続けると、図4(B)に示されるように、タブの他の部分がビード12と交差するところに接触点42を形成する。こうして、刻線18の破れは、リベット22の近くのその最初の引き裂け43から時計回りに広がり始める。
【0027】
タブの後部を引き上げ続けると、ビード12とタブとの間の接触点42は、蓋10に対する破裂板16の相対的な垂直方向変位の結果として、刻線の破られた部分で解除される。破裂板16は、図4(C)に最もよく示されるように、タブの鼻24によって伝えられたせん断荷重により接触点40において下方に押されるようになっている。これにより、図4(C)に示されるように、破裂板は、切れ目が3:00位置に向かって広がるように、前記せん断荷重作用により通常の方法で開き始める。
【0028】
刻線18の破れが、図4(D)に示されるように、略3:00位置にまで広がり始めると、特徴的な突出部34がタブとの接触点42を再形成すると同時に、図4(D)において3:00位置にある前進途中の刻線破れの端47に最も近い接触点46をさらに形成している。接触点40および42と好適に組合わさる付加的な接触点46により、タブの先端部の下方向荷重は、どちらかといえば破裂板16を無折込してしまうような曲げ荷重から、3:00位置の前進中の刻線近くでせん断作用若しくは負荷となる荷重へと変換されることが理論的に想定される。
【0029】
このせん断作用は、少くともいくつかの要因の結果であると思われる。第一に、複数の接触点または部位に対する破裂板への荷重分布は、破裂板がタブの長手方向軸に対して曲がる傾向を減少させる。第二に、多数の接触点は、接触点42にその支点を持ち、点40および/または46で入力され、かつ3:00位置辺りの刻線に荷重を与える二番目のレバーをもたらしている。第三に、破裂板金属のがた、あるいはゆるみは、ビードの外側ではなくむしろタブの鼻が金属を変形させているビードの境界内で起こる曲げによって起こり、ある意味では、ビード内側のこの「良」曲げは、破裂板金属に張力を与えるとともに、刻線の破れを広げるように即座にかつ起爆的に放つエネルギーを内部に保っている。そのような曲げは、タブの鼻とビード内側の破裂板金属との間の接触部を必要とする点に留意する必要がある。タブの鼻のビードだけとの接触では、それを達成できない。つまり、ビードとタブの鼻の接触点(例えば、点42および/または46)が必要な機構及びてこの原理をもたらし、その一方で、ビードの内側の金属とタブの鼻の接触が、単独あるいはビードの接触点と組合わさって、必要な張力およびエネルギー保持をもたらすと思われる。いずれにせよ、図4(E)に示されるように、更にタブが回転する間、破裂ストリップは3:00位置を通過して9:00位置辺りまで確実に破れ続ける。
【0030】
図4(E)において、破れはもう9:00位置に進んでいるので、接触点40及び46は破裂板16の下方向変位を結果として起こす。突出部34との鼻24の交差位置で残っている接触点42は、ヒンジ部28に最も近い端部30aにまで完全に破くようにすると同時に、90度すなわち垂直位置に向かってカン内側に完全に落ち込ませるように、適切なせん断作用が刻線18に加えられるよう好都合に位置されている。図4(D)〜図4(F)に進むにつれて、理論上の2番目のレバ-の入力が、46(もしくは42、40および46の組み合わせ)から42だけへと移動して、支点は42からヒンジ28に移動したことが解る。したがって、広がりが進むにつれて、支点と破れが進行している端での荷重との距離が増加する一方で、支点と入力との距離は縮まる。刻線における3:00位置での最大せん断力は主要考察事項であり、また、刻線での破裂板の3:00位置以降の最大下降移動が主要考察事項であるので、これが利点となる。
【0031】
図4(F)において、最終的な破れが起きる(破裂板が前述した90度位置に完全に落ち込む地点)と、破裂板16におけるタブの鼻24との最終接触部は、ヒンジ28方向に滑り戻りはじめる。
【0032】
名目上の直径206(カン製造業者従来技術用語)、一般に言うところの直径200-300の範囲以内のものを有するカン蓋においては、標準開口範囲は、0.42-0.475平方インチの範囲にある。しかしながら、本発明は広開口20を定める刻線18を有する大きいカン蓋に使用されるのに特に適している。本明細書で用いられたように、広開口は、略0.5-0.75平方インチ、好ましくは0.65-0.67平方インチの範囲を持っているものと考えられている。ここに開示されたように、それらは、図1及び図4から明らかなように、前記蓋の一の直径に沿うタブの長手方向軸と直交する主軸および当該軸に直交する副軸を有する実質的に楕円形状を有し、タブの幅よりも大きい最大幅となる状態でその主軸を備え、また、開口を形成する破裂板は実質的に円形の蓋の中心に延びる。そのような広い開口をもつ状況下においては、接触点40、42および46、特に46によってもたらされる付加的な技術的利点は、図4(F)で示されているような適切かつ完全な開口となるように、図4(D)における3:00位置を過ぎて刻線を広げることである。
【0033】
好ましい本実施例を更に考察した場合、突出部34は、製造工程中にリベット22の周辺で特徴的に形成される圧印領域48の範囲から半径方向外側で適切に位置している。圧印された範囲内の金属は相対的にもろいので、突出部34およびそれとの具体的接触部42および46が当該圧印領域48の外側にある場合に、より良いせん断作用が起きると理論上想定できる。
【0034】
突出部34は現状での好適な実施例を構成しているが、当業者により理解される全体として閉塞したりタブの長手方向軸に対して対象ではないビード形状を含む他のビード形状であってもよく、そのような他のビード形状が上述したようにして出されるせん断およびてこの力による多数点での接触点40,42および46となっていればよい。しかしながら、破裂板16を平坦に保ち、開けている最中に陥没したり曲がったりさせないようにするので、閉塞したビ-ドの方が好ましいことが理論上想定される。
【0035】
更に、開口中におけるタブと破裂板との間の理想的な接触、具体的には図4(D)に図示されている段階は、上方から見たビードの外形(例えば、図1,2および図4(A)〜(F)および横断面状態で見たビードの高さ(例えば、図3)によって先ず判断されるが、上方および横方から見たタブの鼻の形状も、開口工程の進展において所期の接触パターンを達成するように変更されることが望ましい。従来型のタブは本願で述べたが、タブの鼻は非円形状を有するもの、あるいは下方向突起を有するよう設計されていてもよい。
【0036】
当業者にとっては、本願が先に設定した目的の全てを満足することが容易に理解されると思われる。上述の明細書を読めば、当業者は、種々の変更、均等物との置き換え、およびここにおいて広範囲にあきらかにされたような本発明の様々な他の態様を可能とし得るであろう。従って、ここに許可された保護は、付記された特許請求の範囲およびその均等物に含まれる定義によってのみ限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の好ましい実施例に基づく上面図であって、容器蓋が寸法的に調整が取られた状態である。
【図2】
図1の2-2線に沿った寸法的に調整が取られた断面図である。
【図3】
図2に近似した図であって、破裂板の刻線を破るために最初に持ち上げられた状態のタブの断面図である。
【図4】
(A)-(F)は、破裂板が完全に開くような刻線の漸進的な破れを詳細に示す一連の作用図である。
【符合の説明】
10 蓋
12 ビード
14 タブ
16 破裂板
18 刻線
20 開口
24 鼻
28 ヒンジ部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-11-14 
結審通知日 2003-11-19 
審決日 2003-12-02 
出願番号 特願平7-262287
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 会田 博行  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 鈴木 公子
山崎 豊
登録日 1999-07-23 
登録番号 特許第2957930号(P2957930)
発明の名称 易開性カン蓋  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 山口 義雄  
代理人 中村 稔  
復代理人 黒田 博道  
復代理人 黒田 博道  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 山口 義雄  
代理人 吉田 和彦  
代理人 富岡 英次  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ