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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G02F
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効としない G02F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない G02F
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない G02F
管理番号 1098870
審判番号 無効2003-35158  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-18 
確定日 2004-06-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第2823993号発明「液晶表示装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件無効審判事件に係る特許第2823993号の手続の経緯は以下のとおりである。
平成 4年 8月 3日 特許出願
平成10年 6月15日 手続補正
平成10年 9月 4日 設定登録
平成14年 8月29日 ベンクジャパン株式会社より無効審判2002- 35360請求
平成15年 4月 7日 無効審判2002-35360につき、請求項2 にかかる特許を維持、請求項1,3に係る特許を 取り消すとの審決
平成15年 4月16日 無効審判2002-35360につきシャープ株 式会社出訴(平成15年(行ヶ)147号)
平成15年 4月18日 ベンキュージャパン株式会社より本件無効審判2 003-35158請求
平成15年 4月23日 シャープ株式会社より訂正審判2003-390 78請求
平成15年 4月30日 無効審判2002-35360につきベンクジャ パン株式会社出訴(平成15年(行ヶ)176号 )
平成15年 6月10日 訂正審判2003-39078につき訂正確定に より訂正を認めるとの審決
平成15年 8月 7日 平成15年(行ヶ)147号につき審決を取り消 すとの判決
平成15年11月14日 ベンキュージャパン株式会社より無効審判200 3-35468請求
平成16年 1月15日 本件無効事件において、訂正審判2003-39 078において訂正が確定した旨の通知書を送付平成16年 3月17日 ベンキュージャパン株式会社より無効審判200 4-35138請求
(上記において、請求人の名称は、それぞれの無効事件等において登録されているものを用いた。)

2.本件特許発明
請求項1ないし3に係る発明は、訂正審判2003-39078により訂正が確定した特許明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。
「【請求項1】液晶表示素子を照明する後方照明装置と、少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え、前記後方照明装置は、液晶表示素子の後方に配された導光板と、該導光板の端部に配された光源と、該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において、前記光源は、前記光源保持体に一体的に保持され、該光源保持体は、前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって、前記保持筺体および前記導光板に対して着脱自在とされたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】液晶表示素子を照明する後方照明装置と、少なくとも該後方照明装置を保持する保持筺体とを備え、前記後方照明装置は、液晶表示素子の後方に配された導光板と、該導光板の端部に配された光源と、該光源を保持する光源保持体とを備えた液晶表示装置において、前記光源は、前記光源保持体に一体的に保持され、該光源保持体は、前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって、前記保持筺体に対して着脱自在とされ、前記光源保持体に、前記光源の電力供給用配線の保持機構が設けられたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】前記光源保持体は、前記光源からの発散光を前記導光板へ向けて反射する反射体であることを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示装置。」(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)

3.無効理由の概要
無効理由の概要は以下のとおりである。
なお無効理由に関して、請求人に対し、訂正審決が確定した旨を通知し訂正に関する意見等を求めたが、請求人からは、訂正後の本件特許発明についても以下の無効理由が依然として存在する旨の回答があった。
3-1.無効理由1
願書に最初に添附した明細書(以下、「当初明細書」とする。)の記載によれば、その【0011】段落に、後方照明装置は、導光板12と、光源13と、反射体14と、保持筺体15とから成ることが明記されている。すなわち、保持筺体15は後方照明装置を構成する一部材であることが明記されている。
しかし、請求項1においては、「後方照明装置を保持する保持筺体」とあり、保持筺体が後方照明装置を保持する構成となっているので、請求項1に記載されたこの「保持筺体」が如何なる部材であるかが「発明の詳細な説明」の記載を精査しても不明である。
また、請求項1においては、「該光源保持体は、・・・前記保持筺体に対して着脱自在」と記載されている。
したがって、「保持筺体」は、後方照明装置を保持すると共に、光源を一体的に保持する光源保持体をも着脱自在とすることとなり、明細書の発明の詳細な説明の【0018】段落に記載されている、「反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている」との記載との対応関係が不明瞭であり、当業者はその技術的思想を把握することができず、したがって請求項1に記載された特許発明の技術的意義を理解することができないものであると言わざるを得ない。
したがって、本件特許の明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項、同第5項第1号、又は同第5項第2号の規定を満足しておらず、特許法第123条第1項第3号の規定により無効とすべきである。

3-2.無効理由2
当初明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「液晶表示素子を照明する後方照明装置を備え、該後方照明装置は、液晶表示素子の後方に平行に配された導光板と、該導光板の端部に配された光源と、該光源からの発散光を導光板へ向けて反射する反射体とを備えた液晶表示装置において、前記光源は、反射体に一体的に保持され、前記反射体は、スライド機構により導光板に対して着脱自在とされたことを特徴とする液晶表示装置。」
ここでは、「前記反射体は、スライド機構により導光板に対して着脱自在とされた」と記載されている。この記載は、明細書の【0018】段落の、「反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている。」との記載と合致している。
また、当初明細書の記載から、願書に最初に添附した明細書の発明の詳細な説明に開示されている発明は、光源13と反射体14とは一体化されて光源ユニット25を構成しており、反射体14は導光板12に対して着脱自在とされており、保持筺体15の端部に形成された案内レールであるスライド機構22により反射体14を導光板12に対して容易に位置決めして着脱自在とした構成のものである。
しかるに、平成10年6月15日付け手続補正により「後方照明装置は保持筺体によって保持される」構成に変更されるとともに、「該光源保持体は、前記光源の長手方向に可動するスライド機構によって、前記保持筺体に対して着脱自在とされた・・・」と訂正された。
すでに説明したように当初明細書に開示されている発明は、反射体14を導光板12に対して着脱自在としたものであって、この着脱のための位置決めを容易ならしめるためにスライド機構22を用いたと言う構成となっている。そして、実施例にあっては、このスライド機構が、保持筺体の端部に案内レールとして形成されているというのである。
したがって、手続補正による補正後の、光源保持体はスライド構成によって保持筺体に着脱とされているという構成が、当初明細書の発明の詳細な説明の記載範囲外のものであることは明らかである。ここで、「光源保持体」とは、実施例の光源保持部18に対応していると解される。光源保持部18は、反射体14の一部分である(【0014】段落)。
しかし、当初明細書を精査してみても、反射体14がスライド機構22により導光板12に対して着脱自在となっている旨の記載はあるが(【0018】段落)、反射体14がスライド機構22により後方照明装置を保持するための保持筺体に着脱自在とされていることを開示する一切の記載はなく、また、これを示唆するような記載も一切ない。
また、反射体14の一部分である光源保持部18がスライド機構によって、後方照明装置を保持するための保持筺体に着脱自在とされている構成を開示する一切の記載はなく、また、これを示唆するような記載も一切ない。当初明細書に開示されているのは、反射体14の一部分である光源保持部18が、保持筺体の端部に形成された案内レールと協働して、反射体14が導光板12に着脱するのを容易ならしめているという構成である。
以上の次第で、平成10年6月15日付手続補正書でなされた特許請求の範囲の補正は、当初明細書の【0018】段落の、「反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている。該スライド機構22は、前記保持筺体15の端部に形成された案内レールであり、・・・」という開示内容を逸脱して特許請求の範囲を拡張、変更したものであることは明らかであるから、補正後の発明は、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものということはできない。
よって、平成10年6月15日付手続補正書でなされた手続補正は明細書の要旨を変更するものと認められるので、本件特許の出願日は特許法第40条の規定により平成10年6月15日とみなされることから、本件特許発明は下記甲第1号証に記載された発明と同一又は実質的に同一であるので、出願日が上記の如く繰り下がることにより特許法第29条第1項第3号の規定に該当することとなり、特許を受けることができないものであり、平成6年改正前の特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。

3-3.無効理由3
本件特許の出願日は、前述の理由によって明細書の要旨を変更する補正が行われたと認められるので、平成10年6月15日とされるべきである。
よって、請求項1〜3に係る各特許発明は、いずれも、下記甲第1,2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当することとなり、特許を受けることができないものであり、平成6年改正前の特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。

甲第1号証 特開平4-288526号公報(平成4年10月13日公開)
甲第2号証 特開平6-51293号公報(平成6年2月25日公開、本件特許発明に係る出願の公開公報)

4.被請求人の主張
被請求人の主張する答弁の要点は以下のとおりである。
4-1.無効理由1について
請求人の「『保持筺体』が如何なる部材であるかが…不明である」と主張する点については、明細書の段落0011の記載は、「後方照明装置は、…導光板12と、…光源13と、…反射体14とを備え、更に液晶表示装置は、これらを保持する保持筺体15とを備えている」と訂正されたので、請求人の主張はもはや前提において成り立たない。
また、反射体14を含む光源保持体が保持筺体15に対して出し入れ可能、即ち着脱自在であることは本件特許の明細書および図面に開示されている。
以上のとおり、本件特許の請求項の記載は明瞭であり、請求人の主張する無効理由1は成り立たない。

4-2.無効理由2及び3について
反射体14を含む光源保持体が保持筺体15に対して出し入れ可能、即ち着脱自在であることは本件特許の明細書および図面に開示されているから、平成10年6月15日付手続補正書でなされた手続補正は明細書の要旨を変更するものではなく、出願日は繰り下がらないので、請求人の主張する無効理由2及び3は成り立たない。

5.当審の判断
[無効理由1について]
訂正審判2003-39078に係る訂正により、訂正前の請求項の光源保持体が、保持筐体に対して着脱自在と規定されていたのを、「前記保持筺体および前記導光板に対して着脱自在」と訂正することにより、導光板に対しても着脱自在であることが規定された。
また、訂正前の特許明細書【0011】の記載が、特許明細書の【0007】等の記載に基づき「後方照明装置は、…導光板12と、…光源13と、…反射体14とを備え、更に液晶表示装置は、これらを保持する保持筺体15とを備えている」と訂正され、後方照明装置が、導光板12と、光源13及び反射体14から構成されること、並びに後方照明装置は保持筺体15に保持されたものであることが明りょうとなった。
上記訂正事項は、特許明細書の記載(「【0014】前記反射体14は、・・・内周が断面円弧状とされ光源13を一体的に保持する光源保持部18と、光源13の電力供給用リード線17の保持機構・・・19と、・・・前記導光板12の端部を挟み込んで保持する導光板保持部20とが設けられている。・・・【0018】そして、反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている。該スライド機構22は、前記保持筺体15の端部に形成された案内レールであり、該案内レール22の端部は、反射体14を出し入れ可能とするよう開放されている。」)に基づいており、該記載をみると、「反射体14」が「光源13」を保持していること及び「光源保持部18」が「光源13」を保持していることは明らかであって、これら「光源13,反射体14,光源保持部18」が一体のものとして保持筺体15及び導光板12に対して着脱自在とされているのであるから、光源保持体(光源保持部18)も保持筺体15及び導光板12に対して着脱自在になっていることになる。
また、図1は、本発明の一実施例の液晶表示装置を示す図であって、光源13および反射体14が、液晶表示素子11及び保持筐体15に対して、引き出されている様子がみてとれ、またその際に、導光板12が引き出されていないこともみてとれるが、これは上記記載と整合するものである。
よって、本件発明が、明細書の「反射体14は、スライド機構22により導光板12に対して着脱自在とされている」(【0018】)と対応関係が不明であるとはいえないから、本件特許の明細書及び図面の記載が、特許法第36条第4項、同第5項第1号及び同第5項第2号の規定を満たしていないとはいえない。

[無効理由2及び3について]
当初明細書の【0014】〜【0018】(特許明細書も同じ、上記[無効理由1について]参照)の記載及び図面(上記[無効理由1について]参照)を見ると、「反射体14」が「光源13」を保持していること及び「光源保持部18」が「光源13」を保持していることは明らかであって、これら「光源13,反射体14,光源保持部18」が一体のものとして保持筺体15及び導光板12に対して着脱自在とされているのであるから、光源保持体(光源保持部18)も保持筺体15及び導光板12に対して着脱自在になっていることになる。
訂正後の明細書及び図面から本件特許発明を見ると、上記事項は結局、請求人が当初明細書に開示されていたと主張する、「光源13と反射体14とは一体化されて光源ユニット25を構成しており、反射体14は導光板12に対して着脱自在とされており、保持筺体15の端部に形成された案内レールであるスライド機構22により反射体14を導光板12に対して容易に位置決めして着脱自在とした構成のもの」として記載されていることが理解できる。
よって、平成10年6月15日付手続補正は明細書の要旨を変更するものとはいえないから、本件特許の出願日は現実の平成4年8月3日と認められ、したがって甲第1,2号証は出願前公知の文献ではないので、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定に該当するものではなく、請求人のこれに関する主張は当たらない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-19 
結審通知日 2004-04-20 
審決日 2004-05-06 
出願番号 特願平4-206460
審決分類 P 1 112・ 534- Y (G02F)
P 1 112・ 532- Y (G02F)
P 1 112・ 113- Y (G02F)
P 1 112・ 121- Y (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 瀧本 十良三
町田 光信
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823993号(P2823993)
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 磯田 志郎  
代理人 伊藤 清國  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 山本 光太郎  
代理人 伊藤 高英  
代理人 永島 孝明  
代理人 高野 昌俊  

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