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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1099066 |
審判番号 | 不服2002-24031 |
総通号数 | 56 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-07-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-12 |
確定日 | 2004-06-23 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第361547号「送受信端回路装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 7月22日出願公開、特開平 6-204912〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年12月29日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年6月11日付、平成13年11月19日付、平成14年7月22日付、平成15年1月14日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のものと認める。 「高周波帯で使用される送受信端回路装置において、 第1のフィルタ及び高周波スイッチの内の少なくとも第1のフィルタを含んで構成されるアンテナ回路系と、 第2のフィルタ、高周波アンプ、及び第1のミキサ回路の内の少なくとも第2のフィルタを含んで構成され、前記アンテナ回路系が入力側に接続された受信回路系と、 前記の回路系を支持する積層基板と、 前記積層基板の側面の一部の上に形成され、前記の回路系の所定の箇所と接続された非接地電極と、 前記積層基板の側面の一部の上に形成され、前記の回路系の所定の接地される箇所と、及び内部の接地層と電気的に接続された接地電極と、を具備し、 前記アンテナ回路系及び前記受信回路系は、それらの内の一部の回路が前記積層基板の内部に形成され、かつ、それらの内の他の回路が当該積層基板上に実装されることによって、前記回路系の少なくとも一部が単一の前記積層基板において積層方向に集積され、 前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、前記積層基板と一体的に形成された積層方向に対向する容量電極層を有するコンデンサをそれぞれ含み、及び 前記積層基板と容量電極層が一体的に形成された当該コンデンサの内少なくとも2つは、それらのコンデンサをそれぞれ構成する対向する2つの容量電極層の内の1つの容量電極層を共有する ことを特徴とする送受信端回路装置。」 なお、請求項1には「内部の設置層と電気的に接続された接地電極」と記載されているが、本願明細書及び図面の記載において、「接地電極」に電気的に接続されているものは「設置層」ではなく「接地層」であり、「設置層」は存在していないので、「設置層」は「接地層」の誤記と認め、本願の請求項1に係る発明を上記のように認定した。 2. 引用例 (1)これに対して、原査定の拒絶理由に引用された刊行物「坂井孝治 他2名、“高周波多層セラミック部品とモジュール”、電子技術、第34巻、第10号、p.14-19、1992年9月、日刊工業新聞社」(以下「引用例1」という。)には、「高周波多層セラミック部品とモジュール」という表題の下に次の事項が記載されている。 A.「今日,携帯電話に使われる電子部品には,利用周波数の高周波化のほか,小型・軽量・複合化などが求められている。 本稿では,これらの要求に応えて開発された多層セラミック部品と複合化を実現するための多層セラミック基板技術,また,それを応用したモジュールの代表例を紹介する。 携帯電話市場は220cc,330gの小型携帯電話の登場により,小型・軽量化に拍車がかかり,わずか2年足らずで150 cc,230gまで小型化が進んでいる。 この小型・軽量化の流れに沿って携帯電話の需要の伸びも著しく,首都圏では現行のアナログ方式のまま加入者数を増やすことが不可能に近い状態になりつつある。 この問題の解消を目的として,利用周波数の高周波化,デジタル化(多重化)が検討されている。加えてセットはさらに小型・軽量化が指向され,従来以上に高密度実装とすることが必要となっている。このような背景のもとに,部品についてもSMD化,究極的な小型,軽量,複合化が求められている。 ここでは,携帯電話のこの要求に応えるべく開発された,多層セラミック部品と,複合化を実現するための多層セラミック基板技術,それを応用したモジュールの代表例を紹介する。」(第14頁左欄第1行〜同頁右欄7行) B.「チップ積層LCフィルタ (1)チップ積層フィルタの開発の経緯 当社では当社では1984年に,それまで不可能とされていた誘電体上でのL(コイル)形成の技術的問題を解決することによって,単板のセラミック上にLとC(コンデンサ)をプリントしたLCフィルタを開発した。 1989年になって,銅とセラミックのコファイア(同時焼成)が可能な低温焼成セラミック原料が開発されると同時に,それまでの単板構造でのノウハウを多層セラミックに応用した国内コードレス電話用および携帯電話用のチップ積層LCフィルタLFシリーズを開発した。携帯電話用LFC 35シリーズの外観,概略構造および等価回路を図1に示す。 中央部にコイル部をおき,上下面にコンデンサ部とシールド部が配置されている。この上下面のコンデンサと中央部のコイルが外部電極で接続されることで共振器が形成されフィルタが構成されている。 コイル,コンデンサ,シールドは,いずれも誘電体シート上に印刷された銅電極によって形成されており,これらのシートを立体的に積み重ね,外部電極を塗布した後に誘電体,電極の同時焼成を行っている。」(第14頁右欄第8〜38行、及び図1参照) C.「 (2) チップ積層マイクロフィルタLFC30,LFJ30シリーズバンドパスフイルタ 図2,写真1,2にLFC 30,LFJ 30シリーズの外観を前述のLFC 35シリーズと比較して示す。また,表1 にこれらの主要特性を示す。さらに代表として,LFC30シリーズ820 MHzバンドパスフィルタ(国内デジタル携帯電話用)の特性を図3に,LFJ 30シリーズ1.9GHzバンドパスフィルタ(第二世代コードレス電話用)の特性を図4に示す。」(第15頁中央欄第1〜14行、及び図2〜4、写真1,2、表1を参照) D.「銅配線セラミック多層基板 前述のように,フィルタやカプラなど高周波の回路に不可欠な部品をセラミックの多層技術を使い商品化しているが,そのセラミック体を基板として利用し,半導体などの部品を搭載することで,小型で高機能な高周波モジュールを形成することが可能である。 多層基板の仕様を表3 に示す。数GHzの周波数でも使用に適するように導体としては銅電極を使用,その導電率は1GHzで4×107S/mであり,厚膜の電極であるにもかかわらず,純銅(5.7×107S/m)に近い性能を実現している。 」(第17頁中央欄第6行〜第18頁右欄第4行、及び表3を参照) E.「この基板を使用して携帯電話用のアンプ,ミキサ,VCO など小型化要求の強いモジュールの開発を行っている。写真4にアンプ,写真5にミキサの外観を示す。アンプは5×4mm,ミキサは8×5mmである。これらの代表例として図10にアンプの回路図と特性を示す。トランジスタ以外の素子はすべて基板に内蔵しており,プリント基板に形成した場合に比べ,約1/3の大きさとなっている。現在,700〜950 MHzの範囲で中心周波数の設定が可能で,Gain 12 dB,NF2dBを実現している。 今後は,フィル夕と一体化したアンプやミキサなど,より複合化を進めたモジュールを検討していく予定である。また,前述の設計データをまとめ,MMICなどの搭載基板として使えるように準備中である。多層基板では共振器,コンデンサ,スタブなどを多くの層を使ってコンパクトに形成でき,かつICパッケージも兼ねることが可能であり,ICと機能分担していくことで,互いの特徴を生かしたモジュールを生み出していけるのではないかと考えている。」(第18頁右欄第24行〜第19頁左欄第19行、及び写真4,5、図10を参照) ここで、上記Aの記載からみて、携帯電話における高周波回路を構成する電子部品の小型・軽量・復号化などの要求に応じて開発された多層セラミック部品と、複合化を実現するための多層セラミック基板技術及びそれを応用した高周波モジュールが記載されている。 上記B及び図1によれば、フィルタを構成するコイル、コンデンサ、シールドは、いずれもセラミック誘電体シート上に印刷された銅電極によって形成され、これらのシートを立体的に積み重ね、外部電極を塗布した後に誘電体,電極の同時焼成を行うことにより形成されたチップ積層LCフィルタが記載されており、図1、2及び写真1,2を参照すると、外部電極は積層したセラミック基板の側面の一部の上に形成されているものであり、かつフィルタを構成するコンデンサは積層されたセラミック基板と一体的に形成された積層方向に対向するコンデンサパターンにより形成されているものと認められる。 上記C、表1、及び図3,4によれば、上記フィルタの中心周波数は、国内デジタル携帯電話用の820MHzや第二世代コードレス電話用の1.9GHz帯であるので、上記フィルタは、携帯電話や第二世代コードレス電話の高周波帯の回路で使用されるものと認められる。 さらに、上記D、E、及び写真4,5によれば、フィルタやカプラなど高周波の回路に不可欠な部品をセラミックの多層技術を使いセラミック体として作り、さらにそのセラミック体を基板として利用して、このセラミック多層基板の上に半導体などの部品を搭載し形成された携帯電話用の高周波アンプなどの高周波モジュールが記載されているものと認められる。そして、上記モジュールは、セラミック体として形成されたフィルタと共に高周波回路として動作するためには、関連部品間が電気的に接続されていなければならないことは自明であるので、積層されたセラミック多層基板内に形成されたフィルタなどの回路と、セラミック多層基板上に搭載された半導体などの部品は上記の側面に形成された外部電極を介して電気的に接続されているものと認められる。 よって、上記A〜Eの記載事項、及び図1〜10、写真1〜5、表1〜3を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 携帯電話や第二世代コードレス電話用の高周波回路であるところの高周波モジュールであって、 セラミック多層基板の内部に高周波回路を構成するフィルタが形成され、そのセラミック多層基板の側面の一部には、前記フィルタを構成するコンデンサ及びコイルと接続された外部電極が形成され、前記セラミック多層基板上に高周波回路を構成する半導体などの部品が搭載され、この半導体などの搭載部品は、前記外部電極を介してフィルタを構成するコンデンサ及びコイルと電気的に接続され、 前記フィルタはセラミック多層基板と一体的に形成された積層方向に対向する銅電極により形成されたコンデンサパターンとシールドパターンを有するコンデンサを含むことを特徴とする携帯電話や第二世代コードレス電話用の高周波モジュール。 (2)同じく原査定の拒絶理由に引用された特開平4-301901号公報(平成4年10月26日公開、以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 F.「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、高周波モジュール用基板に関するものであり、特に携帯電話器やコードレス電話器等に用いられる、マイクロ波帯域用の高周波モジュール用基板に関するものである。」 G.「【0007】 【実施例】 図1は本発明による、高周波モジュール用基板を示したものである。図において、1は高誘電率の材料からなる第1の誘電体基板であり、この第1の誘電体基板の一方の面には、分布定数回路パターン2が、スクリーン印刷等によって形成されている。この分布定数回路フィルターパターン2は、フィルターパターン3、共振器パターン4、分波器用フィルターパターン5等から構成される。また第1の誘電体基板1の他方の面には接地導体層6が形成されている。 【0008】7は第1の誘電体基板1と同様に、高誘電率の材料からなる第2の誘電体基板であり、その一方の面には接地導体層8が設けられている。 【0009】9は、第1の誘電体基板1及び第1の誘電体基板7よりも低い誘電率の材料からなる第3の誘電体基板であり、その一方の面にはRF回路ブロック10が設けられている。 【0010】図2は本発明による高周波モジュール用基板の断面図を示したものである。本発明による、高周波モジュール用基板は、この図に示すように第1、第2及び第3誘電体基板1、7、9を積層し構成される。 【0011】このように、複数のフィルタパターンと分波回路を第1誘電体基板1に形成するとともに、第3誘電体基板9にRF回路ブロックを実装することにより、携帯電話器等に必要なRF回路部分をモジュール化することができ、著しい小型化と容易な取扱をする事ができるようになる。」 上記F、Gの記載事項からみて、引用例2には、携帯電話器やコードレス電話器等に使用される高周波モジュール基板であって、フィルターパターン3、共振器パターン4、分波器用フィルターパターン5等の複数のフィルタパターンから構成される分布定数回路フィルターパターン2が一方の面に形成された第1の誘電体基板1と、その上に積層された第2、第3の誘電体基板から構成された高周波モジュール基板であり、さらにこの高周波モジュール基板を構成する第3の誘電体基板上にRF回路ブロックを実装した高周波モジュール基板が記載されている。 3. 対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、 引用発明1における「高周波モジュール」は、高周波帯で使用される高周波回路装置を構成するものであるから、本願発明の送受信端回路装置と、高周波帯で使用する高周波回路装置の点において一致している。 そして、引用発明1における「フィルタ」、「セラミック多層基板」、「コンデンサ」、「コンデンサパターン」と「シールドパターン」は、それぞれ本願発明の「フィルタ」、「積層基板」、「コンデンサ」、「容量電極層」に相当しており、引用発明1の「外部電極」はセラミック多層基板の側面の一部の上に形成され、セラミック多層基板の内部の回路と、外部の高周波回路とを電気的に接続するものであるので、本願発明の積層基板の側面の一部の上に形成された「電極」に対応している。 また、引用発明1においては、セラミック多層基板上に半導体などの高周波回路を形成する部品が搭載されているので、高周波回路の少なくとも一部がセラミック多層基板上に実装されることによって、単一のセラミック多層基板において積層方向に集積されているものと認められる。 したがって、本願発明と引用例1記載の発明とは、 高周波帯で使用される高周波回路装置において、 少なくともフィルタを含んで構成される第1の高周波回路と、 前記第1の高周波回路と接続され高周波部品から構成される第2の高周波回路と、 前記高周波回路を支持する積層基板と、 前記積層基板の側面の一部の上に形成され、前記高周波回路の所定の箇所と、及び内部の回路と電気的に接続された電極と、を具備し、 前記第1の高周波回路及び第2の高周波回路は、それらの内の一部の回路が前記集積回路の内部に形成され、かつ、それらの内の他の回路が当該積層基板上に実装されることによって、前記高周波回路の少なくとも一部が単一の前記積層基板において積層方向に集積され、 前記フィルタは、前記積層基板と一体的に形成された積層方向に対向する容量電極層を有する複数のコンデンサを含んでいる ことを特徴とする高周波回路装置。 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点 (a)高周波回路装置が、本願発明においては、送受信端回路装置であるのに対して、引用発明1においては、携帯電話や第二世代コードレス電話用の高周波モジュールである点。 (b)高周波回路装置を構成する高周波回路が、本願発明においては、「第1のフィルタ及び高周波スイッチの内の少なくとも第1のフィルタを含んで構成されるアンテナ回路系」と「第2のフィルタ、高周波アンプ、及び第1のミキサ回路の内の少なくとも第2のフィルタを含んで構成され、前記アンテナ回路系が入力側に接続された受信回路系」であるのに対して、引用発明1においては、セラミック多層基板の内部に形成されたフィルタと、セラミック多層基板上に搭載された半導体などの部品からなる高周波回路である点。 (c)積層基板の側面の一部の上に形成された電極が、本願発明においては、回路系の所定箇所と接続された非接地電極と、回路系の所定の接地される箇所と、及び内部の接地層と電気的に電気的に接続された接地電極の2種類に区分されているのに対して、引用発明1においては、セラミック多層基板の内部に形成されたフィルタ回路と外部の高周波回路とを接続する外部電極であって、非接地電極と接地電極との区分は明らかではない点。 (d)本願発明においては、第1のフィルタ及び第2のフィルタそれぞれにおいて積層基板と容量電極層が一体的に形成されたコンデンサの内少なくとも2つは、それらのコンデンサをそれぞれ構成する対向する2つの容量電極層の内の1つの容量電極層を共有しているのに対して、引用発明においては、複数のコンデンサを構成する容量電極層が積層基板と一体的に形成されているものの少なくとも2つのコンデンサについて、対向する2つの容量電極層の内の1つの容量電極層を共有することは明らかではない点。 4. 当審の判断 上記相違点について検討する。 相違点(a)、(b)について、 引用発明1が対象とする携帯電話や第二世代コードレス電話において、アンテナ、受信回路、送信回路、アンテナ共用器あるいはアンテナ切換スイッチ回路、バンドパスフィルタ等、アンテナを介して基地局との間で送受信を行う電波の周波数に相当する高周波信号を扱う高周波回路、つまり本願発明に係るアンテナ回路系、受信回路系等からなる送受信端回路を備えていることは当業者にとって周知(要すれば、特開昭62-171327号公報(特に第2図)、実願昭63-144141号(実開平2-64204号)のマイクロフィルム(特に第1図)、特開平4-213926号公報(特に図1,4)、を参照。)の事項である。 また、上記のアンテナ回路系を構成する高周波回路がフィルタ及び高周波スイッチを備えていること、及びアンテナ回路系が受信回路系の入力側に接続されることは周知(要すれば、上記の実願昭63-144141号(実開平2-64204号)のマイクロフィルム(特に第1図)を参照。)であり、受信回路系を構成する高周波回路がフィルタ、高周波アンプ、ミキサ回路等を備えていることは周知(要すれば、上記の特開昭62-171327号公報(特に第2図)、特開平4-213926号公報(特に図1,4)、を参照。)であり、さらにこのような送受信端回路を構成する複数の高周波回路をモジュール化して一体にすることも周知(要すれば、上記の特開昭62-171327号公報(特に第1,2図、を参照。)である。 さらに、引用例2には、携帯電話器やコードレス電話器等に使用される高周波モジュール基板であって、高周波回路を構成する複数のフィルタを基板内に形成すると共に、その基板上にRF回路ブロックを実装することにより、複数のフィルタを含む複数の高周波回路をモジュールとして一体化する技術が開示されているものと認められる。 そして、引用例1において開示されているバンドパスフィルタの通過中心周波数は、国内デジタル携帯電話用にあっては820MHzであり、第二世代コードレス電話用にあっては1.9GHzと記載されており、これらの周波数はアンテナを介して基地局との間で送受信する電波の周波数と一致しているのであるから、引用発明1の高周波モジュールが対象とする高周波回路が、携帯電話や第二世代コードレスの送受信端回路装置を構成する高周波回路を包含していることは当業者にとって自明である。 したがって、引用発明1の、セラミック多層基板の内部に形成されたフィルタと、セラミック多層基板上に搭載された半導体などの部品からなる高周波回路の高周波モジュールにおいて、「第1のフィルタ及び高周波スイッチの内の少なくとも第1のフィルタを含んで構成されるアンテナ回路系」と「第2のフィルタ、高周波アンプ、及び第1のミキサ回路の内の少なくとも第2のフィルタを含んで構成され、前記アンテナ回路系が入力側に接続された受信回路系」を含むように構成すること、すなわち送受信端回路装置となるように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 相違点(c)について 積層型のフィルタにおいて、フィルタを形成する積層基板の側面に、非接地の端子電極と、内部のアース接続電極に接続されたアース電極とを形成することは周知(要すれば、実願平3-5567号(実開平4-103013号)のマイクロフィルム(特に、図1〜3、を参照。)であり、また、引用例1において、セラミック多層基板で形成されたチップ積層LCフィルタを示す図1の下段に示されている等価回路をみると、このフィルタを外部の回路と接続するためには、接地されていない入出力部に接続される端子と、接地部に接続される端子が必要であることが理解されるので、積層基板の側面の一部の上に形成された外部電極として、このフィルタに接続される回路系の所定の箇所とフィルタの入出力部とを接続する非接地電極、及び前記回路系の所定の接地される箇所と内部の接地層とを電気的に接続する接地電極の二種類の電極を形成することは、当業者にとって格別なことではない。 相違点(d)について 引用例1において、図1の中段に示されているこのフィルタの概略構造を示す図をみると、この図の上半部において、左右2箇所に、波線で2つのコンデンサを直列に接続した記号が記載されており、トリミングパターンとシールドパーターンにより1つのコンデンサを形成し、かつ前記シールドパターンとコンデンサパターンにより他の1つのコンデンサを形成することが示されており、直列接続された2つのコンデンサの形成にあたって、シールドパターンという容量電極層を共有することが示唆されているものと認められる。 そして、積層基板と容量電極層が一体的に形成されたコンデンサにおいて、2つのコンデンサをそれぞれ構成する対向する2つの容量電極層の内の1つの容量電極層を共有することは、周知(要すれば、実願平3-5567号(実開平4-103013号)のマイクロフィルム(特に、図2及び3)、特開平4-163906号公報(特に、第1〜9図)、を参照。)であるので、第1のフィルタ及び第2のフィルタそれぞれにおいて積層基板と容量電極層が一体的に形成されたコンデンサの内少なくとも2つは、それらのコンデンサをそれぞれ構成する対向する2つの容量電極層の内の1つの容量電極層を共有するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明1及び上記周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2004-04-21 |
結審通知日 | 2004-04-26 |
審決日 | 2004-05-10 |
出願番号 | 特願平4-361547 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 江口 能弘 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
山中 実 橋本 正弘 |
発明の名称 | 送受信端回路装置 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 三澤 正義 |
代理人 | 中村 稔 |