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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07B
管理番号 1099163
審判番号 不服2001-17183  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-09-27 
確定日 2004-06-24 
事件の表示 平成 6年特許願第327435号「料金収受用車載機」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月16日出願公開、特開平 8-185548〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成6年12月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年4月2日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「車両に搭載され、料金所の路上アンテナと無線通信を行い料金収受に伴う情報を処理するCPUを備えた回路部、情報選択スイッチ及び表示部を有する車載機本体と、同車載機本体内の前記回路部にケーブルで接続され、前記路上アンテナとの間でマイクロ波の送受信を行う前記車載機本体から分離した平面状のアンテナ部と、前記車載機本体に設けられ、前記回路部との接続端とからなるカード挿入口と、車種を示すIC情報、料金所入口情報及び履歴情報からなる車両情報を保有すると共に前記カード挿入口に挿入されて前記回路部に接続し、前記平面状のアンテナ部からの料金収受情報を記録し、必要時に同情報及び前記車両情報を送出するCPUを備えたICカードとを具備し、前記情報選択スイッチは前記ICカードより情報読み出しが選択可能であり、前記表示部は前記ICカードより読み出した情報を表示することを特徴とする料金収受用車載機。」

2.引用例

(1)当審の拒絶の理由に引用した特開平6-60237号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「本発明は、車両が比較的-少なくとも安全面での考慮から許容される限り-高速で特別に設計された料金所を通過することを可能にするシステムに関するものである。運転者は料金所に接近するとスマートカードをトランスポンダユニットに挿入する。このトランスポンダユニットは、スマートカードにストアされた識別情報を読み取って高周波によって側路リーダ(RSR)宛に送信する。この側路リーダは、一対のある間隔を有して設置されたアンテナと料金所における電子料金支払いに関して機能するコンピュータ(プラザサーバ)とを有している。RSRは、応答として、カードに対して借方記入するかあるいは料金を運転者の口座に対して課金する。この取り引きの詳細は、その後、側路コントローラからトランスポンダに対して返送され、記録がスマートカードに書き込まれる。」(段落【0012】)

・「図5は、支払いをしかつ挿入されたスマートカード500との間のデータ伝送を行なう、アンテナ1及び2と通信する、車両内にマウントされたトランスポンダ600の概観を示した図である。トランスポンダ600は、種々の設置位置に対して適合するように回転するマウンティング装置610によって、車両のダッシュボードあるいは風防内に取り付けられている(図4を参照)。トランスポンダの前面には、スマートカードを受容するためのスロット及び運転者に対してビジュアルな指示を提供するためのライト621、622、及び623が設けられている。スマートカードがリーダ/ライタ8ユニット700に挿入されると、トランスポンダに電力を供給するスイッチが動作させられる。」(段落【0019】)

・「マイクロコントローラ650(具体的には、インテル(Intel)社製87C51FC型8ビットマイクロプロセッサ)は、トランスポンダの動作を制御する制御命令をストアしているメモリ(ROM及びRAM)を有している。マイクロコントローラ650は、LED621、622、623(図5参照)よりなるビジュアルインジケータ620、及びピエゾ電気トランスジューサとそれに関連している発振器及びタイマよりなるオーディオインジケータ630を制御する。マイクロコントローラ650は、公称キャリア周波数915MHzのRFモジュレータ670に対してデジタルデータを送出する。変調されたRF信号は増幅器665によって増幅されて送信アンテナ680へ伝達される。アンテナ690は、図3に示された装置からRF信号を受信する。このRF信号は増幅器675によって増幅され、RF復調器670によって復調されてその結果得られたデータがマイクロコントローラ650に供給される。ある種のデータはスマートカード向けのものであり、あるいは処理されるものまたはスマートカードにおいてストアされるものである;このデータはシリアルデータバス710を介してリーダ/ライタユニット700に伝達される。」(段落【0020】)

・「図7は、本発明に関連して用いられているスマートカード500及びリーダ/ライタユニット700のブロック図を示した図である。その詳細に関しては米国特許第4,797,898号及び第4,898,322号に記載されているが、ここでは簡潔にその内容を示す。スマートカード500内に配置されている基本的な素子は、マイクロプロセッサ560、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)550、アナログインターフェース回路540、トランス920の2次巻線521、及び容量板541-544である。」(段落【0021】)

・「マイクロプロセッサ560は、中央処理ユニット及びランダムアクセスメモリとリードオンリメモリとからなるメモリ手段を含んでいる。インテル社製の80C51マイクロプロセッサが適切なプログラミングを行なった上で用いられうる。(中略)データは、動作電力が供給されている間、EEPROMに対して反復して読み出し/書き込みされる。動作電力が取り除かれると、EEPROM内のデータに対してなされた全ての変更が保持され、スマートカード500に対して再び電力が供給された場合に必ず回復可能な状態になる。」(段落【0022】)

・「図4に示されているように、運転者はスマートカードを電子支払いをしなければならなくなる少し前にトランスポンダ600に挿入する。この状況は、通常、運転者が料金所があると思われる場所に近づいた場合に発生する。カードが挿入されると、トランスポンダは種々のメッセージを提供する。赤いライト622が点灯して長いブザー音が鳴った場合には、カードが正しく挿入されていない。カードが正しく挿入された場合には、2度ビープ音がしてトランスポンダはそのカードで利用することが可能な残高を示す。そのカードで利用可能な残高をドルで近似して表すために、ライトが点滅する。緑のライト621が1度光ることは100ドルを意味しており、赤いライト622が1度光ると10ドル、黄色のライト623が1度光ると1ドルである。カードが挿入されている場合に運転者がその残高を知ろうとする場合には、それを一度取り出して再び挿入すれば良い。残高がある一定量を下回ると、黄色のライトが点滅を開始する。」(段落【0026】)

・「図8は、移動中の車両と料金プラザ装置との間の、車両が高速支払いレーンを通過する際のデータ交換の概略を示した図である。(中略)起動信号に応答して、トランスポンダは、スマートカードからトランスポンダ内のマイクロコントローラへ予めロードされた、図10及び図11に示されたデータフレームを有するデータを送信する。」(段落【0027】)

・「高速道路などの場合のように車両が入った位置に依存する場合もある。各々の料金所は、スマートカードが備え付けられた車両が通過した日時をスマートカードにその位置とともに書き込むようにプログラムされている。よって、車両が次の料金所に到達すると、料金は適切に計算される。このデータを用いて、受容メッセージ(図14に示されている)が移動中の車両への伝達のために暗号化される。この情報には、現在の料金所の位置、現在の日時、ブラックリストビット、及びカードからデビットされた金額が含まれていることに留意されたい。(デビットカードの代わりに)クレジットカードが用いられる場合には、処理金額がストアされて記録としてのみ用いられる。」(段落【0029】)

・「運転者には、処理が成功裡に終了したかそうではなかったかが料金所のメッセージディスプレイによって通知される。デビットカードの残高が不適切であったり、(中略)処理が成功しないことになる。」(段落【0031】)

・「車両がまず料金支払い領域に入ると、(中略)起動信号に応答して、トランスポンダはスマートカード内のマイクロプロセッサに対する”目覚まし”通話を開始し、トランスポンダは128ビットの”トランスポンダデータフレーム”をアンテナ1に対して送信する。トランスポンダデータフレームは、40ビットからなる固定フレーム(図10参照)、72ビットよりなる可変フレーム(図11参照)、及び16ビットのエラー修正コードよりなる。この時点においては暗号化はなされておらず、車両識別、スマートカード識別及び位置情報は平文で送信される。この情報は、プラザサーバによって料金計算に用いられる。位置情報は、通常、高速道路の入り口に位置するサーバによってスマートカードに書き込まれ、出口に位置するサーバによって読み取られて可変料金の計算に用いられる。」(段落【0033】)

・「図14は、処理の最後にアンテナ2から車両に対して送信される可変データフレームを示した図である。上述されているように、現時点での位置及び日時情報はスマートカード内のメモリにストアされるために送信される。この種の情報は、有料高速道路の入り口の位置を識別するために非常に有用である。カードの残高及び徴収される金額も送信される。スマートカードがデビットカードである場合は、徴収される金額は残高を減少させるように用いられる;スマートカードがクレジットカードである場合は、徴収される金額は領収された額としてストアされる。」(段落【0041】)

したがって、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。

「車両に搭載され、料金所の路上アンテナと無線通信を行い料金収受に伴う情報を処理するCPUを備えた回路部及びライトを有するトランスポンダと、前記路上アンテナとの間で送受信を行う前記トランスポンダ内に設けられたアンテナと、前記トランスポンダに設けられ、前記回路部との接続端とからなるカード挿入口と、車両クラスを示す情報及び料金所入口情報からなる車両情報を保有すると共に前記カード挿入口に挿入されて前記回路部に接続し、前記アンテナからの料金収受情報を記録し、必要時に同情報及び前記車両情報を送出するCPUを備えたスマートカードとを具備し、前記ライトは前記スマートカードより読み出した情報をその点滅により報知することを特徴とする料金収受用車載機。」

(2)同じく、当審の拒絶の理由に引用した特開平5-324967号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「本発明は、チェックバリアを有する有料道路におけるノンストップで且つキャッシュレスな料金収受システムに関する。」(段落【0001】)

・「〔非接触ICカード〕 図5、図6は車両側装置としてのICカード2の例を示す。外観的には図5に示すように、ICカード2は平面状のアンテナ3の他、入力部26及び表示部27が設けられている。(中略)送受信回路31は路上機からの電波例えばマイクロ波信号を受信したり、路上機へ信号を送信する回路であり、(中略)なお、入力部26の操作により、残額や履歴データ(使用日時、通行料金、使用場所等)をメモリ30から読出し、CPU回路28を経て表示部27に表示できるようになっている。」(段落【0014】)

・「路上機6は新残金額及び履歴データを書込要求と共に送信し、ICカード2に記録させる。」(段落【0020】)

(3)同じく、当審の拒絶の理由に引用した特開平5-210774号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「本発明は、料金処理装置に関し、より詳しくは、例えば有料道路の利用料金を実際の利用時の後に支払い可能とした料金処理装置に関する。」(段落【0001】)

・「図2は前記料金処理装置1の具体的設置例を示すものであり、車両の室内の利用者(運転者)の近傍位置に前記磁気情報読取書替手段2及び前記信号処理部3を格納した本体15を配置し、また、車両のハンドルの位置に前記表示操作手段4を配置している。さらに、車両の外部に突出しているアンテナ7と前記本体15内の前記信号処理部3とを接続している。」(段落【0012】)

3.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「トランスポンダ」は本願発明の「車載機本体」に相当し、以下同様に、「アンテナ」は「アンテナ部」に、「車両クラス示す情報」は「車種を示すIC情報」に、また、「スマートカード」は「ICカード」にそれぞれ相当するから、

両者は、

「車両に搭載され、料金所の路上アンテナと無線通信を行い料金収受に伴う情報を処理するCPUを備えた回路部を有する車載機本体と、前記路上アンテナとの間で送受信を行うアンテナ部と、前記車載機本体に設けられ、前記回路部との接続端とからなるカード挿入口と、車種を示すIC情報及び料金所入口情報からなる車両情報を保有すると共に前記カード挿入口に挿入されて前記回路部に接続し、前記アンテナ部からの料金収受情報を記録し、必要時に同情報及び前記車両情報を送出するCPUを備えたICカードとを具備する料金収受用車載機。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「情報選択スイッチを有し、前記情報選択スイッチはICカードより情報読み出しが選択可能であり、表示部は前記ICカードより読み出した情報を表示する」のに対して、引用例1発明は、情報選択スイッチ及び表示部を有さず、「ライトを有し、ライトはICカードより読み出した情報をその点滅により報知する」点。

[相違点2]
本願発明は、「車載機本体内の回路部にケーブルで接続され、路上アンテナとの間でマイクロ波の送受信を行う前記車載機本体から分離した平面状のアンテナ部」を具備するのに対して、引用例1発明は、「路上アンテナとの間で送受信を行う車載機本体内に設けられたアンテナ部」を具備する点。

[相違点3]
本願発明では、ICカードは「車種を示すIC情報、料金所入口情報及び履歴情報からなる車両情報を保有する」と共に「必要時に前記車両情報を送出する」のに対して、引用例1発明では、ICカードは「車種を示すIC情報及び料金所入口情報からなる車両情報を保有する」が「履歴情報」を保有するか否かは不明な点。

4.判断

上記相違点について検討する。

相違点1について、

引用例2に、本願発明と同様の有料道路料金収受システムにおいて、入力部26の操作により、残額や履歴データ(使用日時、通行料金、使用場所等)をICカード2のメモリ30から読出し、CPU回路28を経て表示部27に表示する点が記載されている。

上記入力部26を情報選択スイッチとし、本願発明の上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものと認められる。

相違点2について、

引用例2に記載されるように、本願発明と同様の有料道路料金収受システムにおいて、車載機本体と路上アンテナとの間で送受信を行うのに、平面状のアンテナ部及びマイクロ波を用いることは、従来周知である(他の文献として、特開平5-314330号公報を参照のこと。)。

また、アンテナを感度の良い位置に設けるために、機器本体から分離することは一般に行われていることであり、引用例3には、本願発明と同様の料金処理装置において、車両の外部に突出したアンテナ7(「アンテナ5」の誤記と認められる。)と本体15内の信号処理部3とを接続した点が記載されている。

したがって、アンテナ部を車載機本体から分離して、本願発明の上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものと認められる。

相違点3について、

引用例2に、本願発明と同様の有料道路料金収受システムにおいて、ICカード2のメモリ30に履歴データを記録する点が記載されている。

したがって、ICカードに履歴情報を保有させ、本願発明の上記相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1ないし引用例3の記載及び従来周知の技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

5.むすび

本願発明は、引用例1ないし引用例3に記載された発明、及び、従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-22 
結審通知日 2004-04-27 
審決日 2004-05-10 
出願番号 特願平6-327435
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨岡 和人岩崎 晋  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 井上 哲男
櫻井 康平
発明の名称 料金収受用車載機  
代理人 石川 新  

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