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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1099194
審判番号 不服2003-16012  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-20 
確定日 2004-06-24 
事件の表示 平成6年特許願第315196号「人参種子の被覆造粒方法および被覆造粒人参種子」拒絶査定不服審判事件〔平成8年7月2日出願公開、特開平 8-168305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年12月19日に出願されたものであって、平成15年7月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年9月17日に手続補正がなされたものである。

2.平成15年9月17日に提出された手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年9月17日に提出された手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、
「【請求項1】
人参種子の被覆造粒方法において、前記人参種子を被覆造粒する前工程として、該種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式物理的手法によって除去する工程を含むことを特徴とする人参種子の被覆造粒方法。
【請求項2】
人参種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式物理的手法によって除去した種子を被覆造粒して得られる被覆造粒人参種子。」
と補正された。
上記補正は、請求項1及び3に記載した発明を特定する事項である「種子」を「人参種子」と限定し、また、種子の種子皮上にある刺状構造物を除去する手法を「乾式物理的手法」に限定するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1及び2に記載された発明(以下、「本願補正発明1」及び「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用発明
(a)原査定の拒絶の理由に引用した米国特許第4261139号明細書(以下、「引用例1」という)には、以下の記載が認められる。
(a-1)「バッファローグラスやその他の棘状構造物(芒(のぎ))やひげ(毛)を有する種子は、種まきがあまりにも困難である。棘状構造物のために、種子が風で簡単に飛ばされるようになり、また、種子が集まって塊りをなす。」(1欄14〜17行)、
(a-2)「また、バッファローグラスの種子やこれに類似の種子は、一般に、種まきの前にクレー状の混合物によりコーティングされる。このコーティングは、種子の重量を増加させて飛び散るのを防ぐととともに、種まき作業を容易に行えるようにするものである。また、このコーティング材には、一般に、発芽を助けるための初期段階肥料が含まれる。棘状構造物は、コーティングに影響を及ぼし、種子に過剰量のコーティング材を保持させ、これが球状の塊を形成するようになる。球状の塊は、種子の寸法を均一にするのを妨げ、種まき装置に悪影響を与える。また、棘状構造物に起因して過剰量のコーティング材が種子に保持されるので、効率的な種まきを行うには種子がかさ高いものとなる。」(1欄18〜28行)、
(a-3)「棘状構造物やひげを有する種子は、標準的な種まき装置での種まきが、不可能でないとしても困難である。棘状構造物のために、送り機構が詰まり易く、また、種子が集まって塊をなすために、種まきを均一に行うことができない。手での種まきも行われているが、広い面積での種まきには現実的でない。広い面積での種まきは、空中散布により行われるが、空中散布装置は棘状構造物やひげを有する種子に適用できない。そのため、空中散布装置を含む標準的な種まき装置を使用可能にするためには、種子から棘状構造物やひげを除去する方法や装置を考案しなければならない。」(1欄29〜40行)、
(a-4)「サンドペーパーや他の摩耗材を用いて棘状構造物を除去することが提案されているが、これは種子に損傷を与えるおそれがある。
他の解決方法は、種子をスクリーンの上で振動させ、スクリーンを突き抜けた棘状構造物がせん断ブレードにより除去されるようにするものである。このような装置ではコストが高くなる蓋然性が高く、また、重量の少ない種子ではスクリーンを突き抜けることが出来ないであろうことから、他の解決方法を見つけることが求められる。」(1欄60行〜2欄2行)。
上記記載によると、引用例1には、
(i)棘状構造物やひげを有する種子は、種子が集まって塊になるために、種まき装置の送り機構が詰まり易く、種まきを均一に行うことができないという不都合があること(上記(a-3)参照。)、
(ii)棘状構造物やひげを有する種子は、種子にコーティング材を被覆すると、棘状構造物やひげが、過剰量のコーティング材を保持し、種子の粒径が大きくなり過ぎると共に均一にならないため、播種機に悪影響を与え、効率的な播種ができないという不都合があること(上記(a-2)参照。)、
(iii)上記(i)(ii)の不都合を解消するために、棘状構造物やひげを有する種子から棘状構造物やひげを除去する方法や装置を考案する必要があること(上記(a-3)参照。)、
(iv) 棘状構造物やひげを有する種子から棘状構造物やひげを除去する方法としては、サンドペーパーや他の摩耗材を用いて棘状構造物を除去すること等があること(上記(a-4)参照。)、が記載されていると認められる。
(b)同じく拒絶の理由に引用した「Seeds Yearbook of Agriculture、1961」THE UNITED STATES DEPARTMENT OF AGRICULTURE Laurence H.Purdy,Jesse E.Harmond,And G.Burns Welch 「Special Processing and Treatment of Seeds」 322〜329頁(以下、「引用例2」という)には、以下の記載が認められる。
(b-1)「多種の種子について造粒(ペレット化)が試みられており、成功の程度は相異なる。装置は、セメントミキサーから医薬錠剤用のコーティング装置に至るまで多岐に及ぶ。
造粒は、回転ドラム中での圧縮及びコーティングにより行うことができる。」(325頁右欄38行〜44行)、
(b-2)「造粒した種子は、通常の種子よりも、コストが高く、重さが2〜5倍重い。小さな種子では、造粒が最も効果的であるが、生理活性のない物により種子のない粒をなすこともあり、他方では、一つの粒に複数の種子が含まれることがある。」(326頁左欄23〜29行)、
(b-3)「造粒が効果的であった種子は、胡椒、カリフラワー、レタス、キャベツ、トマト、パセリ、セロリ、人参、…である。」(326頁左欄35〜40行)。
上記記載によると、引用例2には、人参種子をコーティングすることにより造粒する方法、及び、人参種子をコーティングすることにより造粒して得られる造粒人参種子(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(c)同じく拒絶の理由に引用した実願平3-13003号(実開平4-110407号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という)には、
(c-1)「【考案が解決しようとする課題】
上記のごとき微細針状突起を有する粒状の種子を、播種機によって均一に播種しようとすると微細針状突起相互が絡み合ったり、引っ掛かったりして、種子相互の分離性が悪くなり、均一な播種が困難になる問題がある。」(段落【0005】)、
(c-2)「図2に示す実施例は、人参の種子の例であり、この場合も微細針状突起6を除去し、外殻5の表面が滑らかになっている。・・・
のぎなどの微細針状突起を除去する手段としては、化学的な方法、物理的な方法および両方法を組み合わせた方法などがある。・・・
物理的な方法は、攪拌機・研磨機等内で攪拌し、種子相互の摩擦等により除去する方法である。」(段落【0010】〜【0013】)、と記載されている。
上記記載によると、引用例3には、微細針状突起を有する粒状の種子は、微細針状突起相互が絡み合ったり、引っ掛かったりして、種子相互の分離性が悪くなり、均一な播種が困難になるため、攪拌機・研磨機等内で人参の種子を攪拌し、人参の種子の表面にある微細針状突起6を、種子相互の摩擦等により除去すること、すなわち、人参の種子の表面にある微細針状突起6を物理的な方法により除去することが記載されている。

(3)対比・判断
(3-1)本願補正発明1について
(i)本願補正発明1と引用発明1との対比
引用例1に記載されている、棘状構造物やひげを有する種子から棘状構造物やひげを除去する方法や装置は、棘状構造物を有する種子にコーティング材を被覆する場合に生じる不都合(上記(a-2)(a-3)の記載参照)を解消するものであることは明らかであるから、棘状構造物を有する種子にコーティング材を被覆する前に、棘状構造物やひげを有する種子から棘状構造物やひげを除去する方法や装置によって、棘状構造物やひげを有する種子から棘状構造物やひげを除去するといえる。
そうすると、引用例1には、棘状構造物やひげを有する種子にコーティング材を被覆する前に、種子の種子皮上にある棘状構造物やひげをサンドペーパーや他の摩耗材を用いて除去する種子のコーティング材の被覆方法(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「棘状構造物やひげ」は本願補正発明1の「種子皮上にある刺状構造物」に対応し、また、引用発明1の「サンドペーパーや他の摩耗材を用いて除去」は「物理的手法によって除去」ということができ、さらに、引用発明1の「コーティング材の被覆方法」は、種子にコーティング材を被覆して粒状にするから、本願補正発明1の「被覆造粒方法」に相当するから、両者は、
刺状構造物等を有する種子の被覆造粒方法において、前記種子を被覆造粒する前工程として、該種子の種子皮上にある刺状構造物等を物理的手法によって除去する工程を含む種子の被覆造粒方法で一致し、
(A)種子が、本願補正発明1では、「人参種子」であるのに対し、引用発明1では、バッファローグラスやその他の棘状構造物(芒(のぎ))やひげ(毛)を有する種子である点、
(B)本願補正発明1では、「種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式物理的手法によって除去する」のに対し、引用発明1では、バッファローグラスやその他の棘状構造物(芒(のぎ))やひげ(毛)を物理的手法によって除去する点、
で構成が相違する。
上記相違点について検討する。
引用例2には、人参種子をコーティングする造粒方法が記載されている。
また、引用例3には、微細針状突起を有する粒状の種子を、播種機によって均一に播種しようとすると微細針状突起相互が絡み合ったり、引っ掛かったりして、種子相互の分離性が悪くなり、均一な播種が困難になる問題があるため(上記(c-1)の記載参照。)、人参の種子の刺状構造物(微細針状突起6)を物理的な方法により除去する(上記(c-2)の記載参照。)ことが記載されており、人参の種子の刺状構造物(微細針状突起6)は、引用例1に記載されている、バッファローグラスやその他の棘状構造物やひげと同様に、均一に播種することを困難とするものであり、除去した方がよいことは明らかである。
そうすると、引用発明1において、棘状構造物やひげを有する種子を、人参種子とし、人参種子の刺状構造物(微細針状突起6)を物理的手法により除去するように構成することは当業者が容易に想到できることであり、その際、物理的手法を乾式のものにすることは当業者が適宜できることである。
そして、本願補正発明1が奏する効果は、引用例1ないし3に記載された発明から予測できる程度であって格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明1は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ii)本願補正発明1と引用発明2との対比
本願補正発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「人参種子をコーティングすることにより造粒する方法」は本願補正発明1の「人参種子の被覆造粒方法」に対応するから、両者は、
人参種子の被覆造粒方法で一致し、
本願補正発明1では、「人参種子を被覆造粒する前工程として、該種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式物理的手法によって除去する工程を含」んでいるのに対し、引用発明2では、人参種子を被覆造粒する前工程として、該種子の種子皮上にある刺状構造物を除去する工程を含んでいない点で構成が相違する。
上記相違点について検討する。
引用例1には、棘状構造物やひげを有する種子は、種子が集まって塊になるために、種まき装置の送り機構が詰まり易く、種まきを均一に行うことができず(上記(a-3)参照。)、また、種子にコーティング材を被覆すると、棘状構造物によって過剰量のコーティング材が保持され、種子の粒径が大きくなり過ぎると共に均一なものとならず、播種機に悪影響を与え、効率的な播種ができない(上記(a-2)参照。)から、棘状構造物やひげを有する種子から棘状構造物やひげを除去することが示唆されている。しかも、引用例3には、刺状構造物(微細針状突起6)を有する人参種子は、刺状構造物相互が絡み合ったり、引っ掛かったりして、種子相互の分離性が悪くなり、均一な播種が困難になるため、人参種子の表面にある微細針状突起を物理的な方法により除去することが記載されている。
そうすると、人参種子を被覆造粒する、引用発明2において、被覆造粒する前工程として、人参種子の種子皮上にある刺状構造物を物理的手法により除去するように構成することは当業者が容易に想到できることであり、その際、物理的手法を乾式のものとし、上記相違点における本願補正発明1のように構成することは当業者が容易にできることである。
そして、本願補正発明1が奏する効果は、引用例1ないし3に記載され記載の発明から予測できる程度であって格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明1は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-2)本願補正発明2について
本願補正発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「人参種子をコーティングすることにより造粒して得られる造粒人参種子」は本願補正発明2の「種子を被覆造粒して得られる被覆造粒人参種子」に対応するから、両者は、
種子を被覆造粒して得られる被覆造粒人参種子で一致し、
本願補正発明2では、「人参種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式物理的手法によって除去し」ているのに対し、引用発明1では、人参種子の種子皮上にある刺状構造物を除去していない点で構成が相違する。
上記相違点について検討する。
引用例1には、棘状構造物やひげを有する種子は、種子にコーティング材を被覆すると、棘状構造物等によって過剰量のコーティング材が保持され、種子の粒径が大きくなり過ぎると共に均一なものとならず、播種機に悪影響を与え、効率的な播種ができない(上記(a-2)参照。)から、棘状構造物等を有する種子から棘状構造物等を除去することが示唆されている。しかも、引用例3には、人参種子の表面にある刺状構造物(微細針状突起6)を物理的な方法により除去することが記載されている。
そうすると、人参種子を被覆造粒する、引用発明2において、被覆造粒する人参種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式の物理的手法によって除去するように構成することは当業者が容易に想到できることであり、その際、物理的手法を乾式のものにすることは当業者が適宜できることである。
そして、本願補正発明2が奏する効果は、引用例1ないし3に記載された発明から予測できる程度であって格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明2は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年9月17日に提出された手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「種子皮上に刺状構造物を有する種子の被覆造粒方法において、前記種子を被覆造粒する前工程として、該種子の種子皮上にある刺状構造物を乾式物理的手法又は湿式化学的手法によって除去する工程を含むことを特徴とする種子の被覆造粒方法。」

3-1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「(2)引用発明」に記載したとおりである。

3-2.対比・判断
前記「2.平成15年9月17日に提出された手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明1は、種子が「人参種子」に限定され、また、種子の種子皮上にある刺状構造物を除去する手法を「乾式物理的手法」に限定されていたが、本願発明は、人参以外の種子も含み、また、種子の種子皮上にある刺状構造物を除去する手法が、「乾式物理的手法」に加え、「湿式化学的手法」も含むものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「(3)対比・判断」に記載したとおり、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3-3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-08 
結審通知日 2004-04-13 
審決日 2004-05-10 
出願番号 特願平6-315196
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
P 1 8・ 575- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡戸 正義
鉄 豊郎
発明の名称 人参種子の被覆造粒方法および被覆造粒人参種子  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  

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