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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1099288
審判番号 不服2002-22925  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-28 
確定日 2004-06-18 
事件の表示 平成11年特許願第220117号「管継手」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月23日出願公開、特開2001- 50457〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年8月3日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年4月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「継手本体に内部を貫通する流体流路を設け、該継手本体における流体流路の一端側に、内奥側をシール部材の収容部とし、口部側をチューブ保持機構の係止溝がある該チューブ保持機構の収容部とする拡径凹部を設けると共に、継手本体の他端外周に流体圧機器への取付部を設け、この構成を有する継手本体を金属材の冷間鍛造部品として構成し、
上記シール部材の収容部に、該収容部内面とチューブ保持機構を通して挿入したチューブの外面との間をシールする弾性シール部材を収容し、
上記チューブ保持機構の収容部の係止溝に、チューブ保持機構の外周側に設けたバネ性金属材からなるガイド部材の一部を抜止め状態で弾性的に係止させた、ことを特徴とする管継手。」

2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平1-255791号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。

「この発明は、パイプの連結装置に関する。」(第2頁左上欄第5行)

「連結部品群103はパッキン用リング107、ストッパリング109、保持用リング114、支持リング117及びリリース用リング122からなり、………支持リング117はケース部品101の開口部周縁へ曲げて取り付けるために金属材料で形成されている。」(第2頁左上欄第13行〜右上欄第10行)

「図に示された連結装置40はその中を流れる液体のための通路孔2と、ガソリン用導管の様な合成樹脂製の半硬質のパイプを収容するための多数の階段状に拡大された中空室とを有する一つのケース部品1と、そして次により詳細に述べる連結用部品群50とから成る。
ケース部品1において第1(通路孔2側から数える;以下同じ)の拡大された中空室4は、その内径がパイプ3の外径に等しい。この場合に肩部5はパイプ3のストッパとして使用され、パイプ3の差込み量を規制している。第2の拡大された中空室6はパッキン用リング7を収容する。そしてそのパッキン用リング7の内径はパイプ3の外径よりも少し小さく設計されている。パッキン用リング7は中空室6の肩部8によって、パイプ3の差し込み方向への移動が制限されている。一方、パイプ3の引抜き方向への移動はストッパリング9の図示右端面によって制限されている。」(第3頁左上欄第14行〜右上欄第11行)

「ストッパリング9は小径部分24と大径部分11から構成される。」(第3頁右上欄第12行〜第13行)

「大径部分11の内側に保持リング14が挿着されている。この保持リング14の外径部分はストッパリング9の内側肩部15へ接しており、この外径部分から内側に向けて多数のばね状舌片16が延設されている。このばね状舌片16は、第2図のようにパイプ3をケース部品1へ挿入した状態で、パイプ3の差込み方向を向いた(ストッパリング9側で縮径する)截頭円錐を形成している。保持リング14の外径部分は支持リング17と内側肩部15とによって保持されている。」(第3頁右上欄第20行〜左下欄第9行)

「この支持リング17は更に拡大された中空室18の内側へ嵌込まれ、大径部分11の図示左端面(開口側端面)19と、ケース部品1の入口に形成されかつその周方向へ均等に分配された4つの鈎状突起部21の内面(肩部20)との間に嵌め込まれる。」(第3頁左下欄第13行〜第18行)

「この支持リング17の内側へ更にリリース用リング22が挿着される。このリリース用リング22はケース部品1の軸方向へ移動可能である。リリース用リング22のヘッド23(図示右端の部分である。)は若干拡大されて、かつ円錐状に尖らされており、保持用リング14のすぐ近くまで達している。このようなリリース用リング22を第2図の状態から更にパイプ差込み方向へ押し込むと、ヘッド23によりばね状舌片16が拡開される。これにより、ばね状舌片16がパイプ3から離れるので、連結装置からパイプ3を引抜き可能となる。」(第3頁右下欄第2行〜第13行)

「特に支持リング17はばね弾性を有する合成樹脂で形成されている。」(第3頁右下欄第19行〜第20行)

上記の記載及び図面の記載からみて、引用文献1には次の発明が記載されている。

「ケース部品1に内部を貫通する通路孔2を設け、該ケース部品1における通路孔2の一端側に、内奥側をパッキン用リング7の収容部とし、口部側を「ストッパリング9、外径部分から内側に向けて多数のばね状舌片16が延設された保持リング14、支持リング17及びリリース用リング22からなりパイプ端を保持する連結用部品群」の係止機構がある該パイプ端を保持する連結用部品群の収容部とする拡径凹部を設けると共に、ケース部品1の他端外周に取付部を設け、この構成を有するケース部品1を合成樹脂製部品として構成し、
上記パッキン用リング7の収容部に、該収容部内面とパイプ端を保持する連結用部品群を通して挿入したパイプ3の外面との間をシールするパッキン用リング7を収容し、
上記パイプ端を保持する連結用部品群の収容部の口部に設けた突起部21に、パイプ端を保持する連結用部品群を構成しその外周側に設けたばね弾性を有する支持リング17の一部を抜止め状態で弾性的に係止させた、ことを特徴とするパイプの連結装置、
及び上記パイプの連結装置において、パイプ端を保持する連結用部品群を構成する支持リング17を金属材料で形成すること。」

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された実願昭60-84882号(実開昭61-200986号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「本実施例に用いる管体接続機構は特に限定する必要はないが、好適には図示するような管体接続機構24a を用いる。すなわち、管体接続機構24a はガイド26とこれに一部を挿入したコレット28とコレット28内に嵌合されたチャック30と前記チャック30をその刺入状態から開放するリリースブッシュ32と孔部18に挿入する管体の外周をシールするためのシール部材34とから構成される。この場合、管体接続部14に接続する管体は前記管体接続機構24a により簡便に着脱が行われる。」(明細書第4頁第6行〜第16行)

上記の記載を参酌すると、引用文献2の図面第1図(Fig.1)には、「管体接続部14の内奥側をシール部材34の収容部とし、口部側を管体接続機構24a の収容部とする拡径凹部を設けた管継手において、管体接続機構24a の収容部に管体接続機構24a の係止凹部を設け、該係止凹部に、管体接続機構24a の外周側に設けたガイド26の一部を抜止め状態で係止させた管継手」が記載されている。

3.対比
本願発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、引用文献1に記載の発明における「ケース部品1」、「通路孔2」、「ストッパリング9、外径部分から内側に向けて多数のばね状舌片16が延設された保持リング14、支持リング17及びリリース用リング22からなりパイプ端を保持する連結用部品群」、「拡径凹部」、「取付部」、「パイプ3」は、その機能に照らし、本願発明における「継手本体」、「流体流路」、「チューブ保持機構」、「拡径凹部」、「取付部」、「チューブ」にそれぞれ相当する。

また、引用文献1に記載の発明における「パッキン用リング7」は、その機能に照らし、本願発明における「シール部材」に相当すると認められる。そして、引用文献1には、「パッキン用リング7」を弾性材で形成したとの記載はないが、「パッキン用リング7」は、パッキン用リング7の収容部との間及びパイプ端を保持する連結用部品群を通して挿入したパイプとの間を気密にシールするものであって、弾性変形をするもの、すなわち、「弾性シール部材」と認められる。

また、引用文献1に記載の発明における「支持リング17」は、ストッパリング9と共働して保持リング14を保持するものではあるが、第1図の記載からみて、リリース用リング22をガイドする機能を有するものと認められる。すなわち、引用文献1に記載の発明における「支持リング17」は、リリース用リング22のガイド部材とも言える。

さらに、引用文献1に記載の発明における「パイプの連結装置」は、ガソリン用導管の様な合成樹脂製の半硬質のパイプを差込み固定するとともに解除可能とした連結装置であるから、管継手そのものである。

したがって、上記両者は、
「継手本体に内部を貫通する流体流路を設け、該継手本体における流体流路の一端側に、内奥側をシール部材の収容部とし、口部側をチューブ保持機構の収容部とする拡径凹部を設けると共に、継手本体の他端外周に取付部を設け、
上記シール部材の収容部に、該収容部内面とチューブ保持機構を通して挿入したチューブの外面との間をシールする弾性シール部材を収容し、
上記チューブ保持機構の収容部に、チューブ保持機構の外周側に設けたバネ性材からなるガイド部材の一部を抜止め状態で弾性的に係止させた、ことを特徴とする管継手」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、口部側をチューブ保持機構の係止溝があるチューブ保持機構の収容部とするのに対し、引用文献1に記載の発明では、口部側をチューブ保持機構の収容部とするものではあるが、チューブ保持機構の係止溝を備えていない点。

[相違点2]
本願発明では、継手本体の他端外周に流体圧機器への取付部を設けるのに対し、引用文献1に記載の発明では、継手本体の他端外周に取付部を設けるものではあるが、流体圧機器への取付部であるのか否か不明である点。

[相違点3]
本願発明では、継手本体を金属材の冷間鍛造部品として構成しているのに対し、引用文献1に記載の発明では、継手本体を合成樹脂製部品として構成している点。

[相違点4]
本願発明では、チューブ保持機構の収容部の係止溝に、チューブ保持機構の外周側に設けたバネ性金属材からなるガイド部材の一部を抜止め状態で弾性的に係止させたのに対し、引用文献1に記載の発明では、チューブ保持機構の収容部の口部に設けた突起部21に、チューブ保持機構の外周側に設けたバネ性材からなるガイド部材の一部を抜止め状態で弾性的に係止させた点。

4.判断
そこで、上記相違点について以下検討する。

[相違点1]について
引用文献2には、「管体接続部14(継手本体に相当)の内奥側をシール部材34(シール部材に相当)の収容部とし、口部側を管体接続機構24a (チューブ保持機構に相当)の収容部とする拡径凹部を設けた管継手において、管体接続機構24a の収容部に管体接続機構24a の係止凹部を設けること」が記載されている。

そして、引用文献2に記載の上記技術を引用文献1に記載の管継手に施すに際し、係止凹部にかえて係止溝として施す程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
管継手を、管と管の接続に用いることも、また管と流体圧機器の接続に用いることも、いずれも良く知られた周知の事項である。

してみると、引用文献1に記載の管継手において、継手本体の他端外周に設けた取付部を、流体圧機器への取付部とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
管継手等各種の製品を金属材の冷間鍛造部品として製造することが、従来周知の事項であるとともに、金属材の冷間鍛造による加工法は、材料歩どまり、製品の機械的性質、表面はだおよび寸法精度などが優れていることも、従来周知の事項である(日本機械学会編「機械工学便覧 基礎編 応用編」(新版8刷),日本機械学会,1998年12月3日,p.B2-103〜B2-105 参照)。

さらに、管継手を形成する材料として合成樹脂も金属も周知の材料であり、しかも管継手を構成する一つ一つの部材を何れの材料にするかは管継手の使用形態、寿命などに応じて当業者が適宜選択する事項にすぎないものである。

してみると、引用文献1に記載の管継手において、継手本体として金属材を採用し、かつ上記周知の事項を適用して、継手本体を金属材の冷間鍛造部品として構成する程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点4]について
引用文献1には、チューブ保持機構を構成するガイド部材に相当する支持リングを、ばね弾性を有する部材で形成することも、また金属材料で形成することも、記載されている。そして、バネ性金属材、及びバネ性金属材をプレス加工等により特定の形状等に加工することは、いずれも良く知られた周知の事項である。

そして、「[相違点1]について」で記載したとおり、チューブ保持機構の収容部に、チューブ保持機構の係止溝を設けることが容易である。

してみると、引用文献1に記載されたガイド部材に相当する支持リングを、ばね弾性を有し、かつ金属材料であるところの、上記周知のバネ性金属材を用い該バネ性金属材のプレス加工等により形成し、チューブ保持機構の係止溝(チューブ保持機構の収容部の係止溝)に、該支持リング(すなわち、ガイド部材)の一部を抜止め状態で弾性的に係止させること、
すなわち、[相違点4]における本願発明の構成とすることは、引用文献1及び引用文献2の記載、並びに上記周知の事項から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明が奏する作用、効果は、引用文献1及び引用文献2に記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて容易に予測することができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1及び引用文献2に記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-06 
結審通知日 2004-04-13 
審決日 2004-04-27 
出願番号 特願平11-220117
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小菅 一弘  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
原 慧
発明の名称 管継手  
代理人 後藤 正彦  
代理人 林 宏  
代理人 林 直生樹  

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