• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04C
管理番号 1099305
審判番号 不服2002-6996  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-22 
確定日 2004-06-30 
事件の表示 平成 9年特許願第510793号「時計作動機構」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 3月13日国際公開、WO97/09657、平成11年 2月16日国内公表、特表平11-502024]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成8年6月26日(パリ条約による優先権主張1995年9月7日、スイス)を国際出願日とする出願であって、平成14年1月9日付で拒絶査定(同月22日発送)がされ、これに対して平成14年4月22日に審判が請求されたものである。

第2.本願請求項に係る発明
本願請求項1、36に係る発明は、平成11年5月19日付、平成13年10月3日付、及び、平成14年4月22日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、下記のとおりのものである(以下「本願発明1」、「本願発明2」という。)。



【請求項1】ぜんまいが時刻表示器と交流電圧供給発電機(1)とを作動させる時計作動機構において、
該発電機(1)が変圧器回路(2)に電流を供給し、該変圧器回路(2)が第1容量性素子(10)に電流を供給するとともに、
該第1容量性素子(10)が、安定発振器(3,4)を有する電子レファレンス回路(3,4,5)と、電子制御回路(6,7,9)とに電圧を供給し、
該電子制御回路(6,7,9)が、
該電子レファレンス回路(3,4,5)を接続される1の入力と、コンパレータステップ(7)を介して該発電機(1)を接続される他の入力とを有するコンパレータ論理回路(6)と、
該コンパレータ論理回路(6)の出力に接続され、該コンパレータ論理回路(6)によってその電力消費を制御しうるエネルギ散逸回路(9)とを備え、
該コンパレータ論理回路(6)は、
該電子レファレンス回路(3,4,5)からのクロック信号と、該発電機(1)からのクロック信号とを比較し、この比較結果に基づいて該エネルギ散逸回路(9)の電力消費量を使って該電子制御回路(6,7,9)の電力消費を制御するとともに、
該制御回路の電力消費の制御によって該発電機(1)の動きを制御し、さらに時刻表示器の作動も制御するように構成され、
該第1容量性素子(10)が、少なくとも該時計作動機構の最初の作動開始直後に単一の又は複数の受動素子を介してチャージされ、
該第1容量性素子(10)の電圧が、単一の又は複数の能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、上記の単一の又は複数の受動素子が上記の単一の又は複数の能動ユニットに置き換えられ、又は、並列回路の枝路にある上記の単一の又は複数の能動ユニットによって補われ、上記の単一の又は複数の能動ユニットが、伝導方向における電気抵抗を上記の単一の又は複数の受動素子よりも小さく構成されることを特徴とする、時計作動機構。

【請求項36】ぜんまいが時刻表示器と交流電圧供給発電機(1)とを作動させる時計作動機構において、
該発電機(1)によって電流を供給される変圧器回路(2)と、
該変圧器回路(2)から電流を供給される第1容量性素子(10)と、
該第1容量性素子(10)から電流を供給され、該発電機(1)の回転速度を制御する電子回路(3,4,5,6,7,9)とを備え、
該第1容量性素子(10)が、該時計作動機構の最初の作動直後に少なくとも単一の受動素子を介してチャージされるように構成され、
少なくとも単一の能動素子を作動させるのに十分にチャージされたら、上記の少なくとも単一の受動素子が、伝導方向に上記の少なくとも単一の受動素子よりも小さい電気抵抗となる上記の少なくとも単一の能動素子に置き換えられることを特徴とする、時計作動機構。

なお、本願発明1については、その特許請求の範囲の請求項1に記載された通り認定した。また、本願発明2については、「時計差動機構」を「時計作動機構」の誤記として、上記の通り認定した。

第3.原査定の拒絶の理由の要点
本願発明1、2は、本願の優先権主張の日前に頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1 特公平5-8397号公報
刊行物2 特開平4-76489号公報

第4.本願発明1について
1.引用刊行物に記載された発明
刊行物1には、以下の記載がある。
(1)「少なくとも計時するための電子回路を備えた時計において、
機械エネルギーを蓄積する蓄積装置と、前記蓄積装置からのエネルギーを計時装置に伝達する輪列と、磁石とその磁石の近傍に配置されたコイルからなり前記輪列の駆動により発電を行う発電装置と、水晶発信回路を含み前記発電装置からの電気エネルギーにより作動する電気回路と、発電により前記コイルに発生する信号と前記水晶発信回路の信号を前記電気回路で照合した信号に基づいて前記発電機の電流を制御し前記輪列を調速する制御回路とからなることを特徴とする時計。」(特許請求の範囲)
(2)「第2図は、本発明の時計の構成ブロツク図である。第2図において、6は機械エネルギーを蓄積する香箱であり、手動もしくは自動巻機構によりエネルギーを蓄積する。
7は輪列であり、時・分・秒・カレンダー等の表示を行う。8は発電機による、調速機構である、電磁発電機等を応用する。9は8の発電機の整流回路である。10は9の電力により駆動する電子回路で、水晶発振器、論理回路を有する回路である。11は10の出力により、8の電流を制御する回路である。
第3図に本発明の一応用例の制御回路ブロツク図を示す。第3図において、23は電磁発電機のコイルである。コイルの出力を12,13のダイオードで整流する。14は平滑用のコンデンサである。15はこの電源により駆動する水晶発振器であり、時間標準信号となる。16は分周器であり発電機の所定の回転に対応した周期まで分周を行う。17はアツプダウンカウンターであり、18,19により得られる発電機の微分信号をアツプ、16の分周器の信号をダウンとしてカウントする。20は符号識別回路であり、17の信号が正であれば、21のトランスミツシヨンゲートをONし、22の抵抗を電源間に並列接続する。23のコイルを貫通し、香箱より伝達されたトルクで磁極付ローターが回転する機構であるが、作動について説明する。・・・コイルを貫通する磁束変化はローターの速度に比例し、起電力も比例する。閉回路抵抗を小さくすると電流は反比例して増える。消費電力は、電流の二乗の抵抗の積となり、これを速度で除した力学抵抗が働き、即ち閉回路抵抗で速度が制御できる。
本発明によれば、コイルからの信号と水晶発信回路の信号を電気回路で照合した信号に基づいて発電機の電流を制御するものであり、調速系と発電装置が一体の構成をとつている。
したがつて、部品点数が少なく構成が簡略できるため、小スペース化が可能である。
更に、コイルからの信号を水晶信号の信号に照合させて、発電機の調速を制御するため時間精度を著しく高めることができる。」(第2欄第20行乃至第4欄17行)
(3)「第4図に、発電機の応用例斜視図を示す。24はローターの柄である。25より伝達するトルクで前記、柄のカナを回転する。27は上下に磁極を持つ永久磁石である。26,28は中心部を前記磁石に密着する高透磁率材ローターである。それぞれ多極分割し対向したパターンを作る。これにより、26の先端の磁化をN極とすると、28の先端S極となり磁束が生ずる。29は第3図23に相当するコイルであるが、前記ローターの回転により貫通磁束が時間的に変化し発電を行う。コイルを同一平面上に複数個配列し、起電力を向上することも考えられる。」(第4欄第21乃至第32行)

ここで、第3図を参照すれば、以下(ア)乃至(ウ)の点が見て取れる。
(ア)アップダウンカウンター17が、コンデンサ18を介してコイル23に接続され、かつ、分周器16にも接続されている点。
(イ)コンデンサ14の両端電圧が、水晶発振器15、分周器16、アップダウンカウンター17、符号識別回路20、及び、トランスミッションゲート21と抵抗22の直列回路に与えられている点。
(ウ)水晶発振器15が水晶発振子を有している点。

したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。

「香箱6が輪列7と発電機8とを作動させる時計作動機構において、
発電機8がコンデンサ14に電流を供給すると共に、
コンデンサ14が、水晶発振子を有する水晶発振器15、分周器16、アップダウンカウンター17、符号識別回路20、及び、トランスミッションゲート21と抵抗22の直列回路に電圧を供給し、
分周器16を接続される1の入力と、コンデンサ18を介して発電機8を接続される他の入力とを有するアップダウンカウンター17と、
アップダウンカウンター17の出力に符号識別回路20を介して接続され、符号識別回路20によってその消費電力を制御しうる、トランスミッションゲート21と抵抗22の直列回路とを備え、
分周器16からの信号をダウン、コンデンサ18からの微分信号をアップとしてカウントし、このカウント結果に基づいてトランスミッションゲート21と抵抗22の直列回路の消費電力を制御するとともに、
この消費電力の制御によって発電機8の調速を制御し、さらに輪列7を調速する、時計作動機構。」

2.本願発明1と刊行物1に記載された発明の対比
本願発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、以下(1)乃至(3)のとおりである。
(1)時計分野において、香箱がぜんまいを収納する容器であることは技術常識であるから、実質的に、刊行物1に記載された発明の「香箱6」は、本願発明1の「ぜんまい」に相当する。同様に、刊行物1に記載された発明の「輪列7」、「発電機8」、「コンデンサ14」、「水晶発振器15」、「コンデンサ18」、及び、「トランスミッションゲート21と抵抗22の直列回路」は、それぞれ、本願発明1の「時刻表示器」、「交流電圧供給発電機」、「第1容量性素子」、「安定発振器」、「コンパレータステップ」、及び、「エネルギ散逸回路」に相当する。
(2)刊行物1に記載された発明における「水晶発振子」、「水晶発振器15」、及び、「分周器16」からなる回路は、その作用効果から見て、本願発明1の「電子リファレンス回路」に対応する。同様に、「アップダウンカウンター17」、「コンデンサ18」、「符号識別回路20」、及び、「トランスミッションゲート21と抵抗22の直列回路」からなる回路、並びに、「アップダウンカウンター17」及び「符号識別回路20」からなる回路は、それぞれ、本願発明1の「電子制御回路」、及び、「コンパレータ論理回路」に対応する。
(3)刊行物1に記載された発明における「分周器16からの信号をダウン、コンデンサ18からの微分信号をアップとしてカウント」という動作は、技術的にみて、「分周器16からの信号とコンデンサ18からの信号とを比較」という動作であり、また、分周器16からの信号、及び、発電機からの信号が、ともに周期的なパルス信号である点を考慮すれば、これは、「クロック信号」と称しうるものである。

したがって、本願発明1と刊行物1に記載された発明とは、「ぜんまいが時刻表示器と交流電圧供給発電機とを作動させる時計作動機構において、
該発電機が第1容量性素子に電流を供給するとともに、
該第1容量性素子が、安定発振器を有する電子レファレンス回路と、電子制御回路とに電圧を供給し、
該電子制御回路が、
該電子レファレンス回路を接続される1の入力と、コンパレータステップを介して該発電機を接続される他の入力とを有するコンパレータ論理回路と、
該コンパレータ論理回路の出力に接続され、該コンパレータ論理回路によってその電力消費を制御しうるエネルギ散逸回路とを備え、
該コンパレータ論理回路は、該電子レファレンス回路からのクロック信号と、該発電機からのクロック信号とを比較し、この比較結果に基づいて該エネルギ散逸回路の電力消費量を使って該電子制御回路の電力消費を制御するとともに、
該制御回路の電力消費の制御によって該発電機の動きを制御し、さらに時刻表示器の作動も制御するように構成された時計作動機構。」の点で一致し、他方、両者は、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1は「発電機が変圧器回路に電流を供給し、該変圧器回路が第1容量性素子に電流を供給する」ものであるのに対して、刊行物1に記載された発明は変圧器回路を有さず「発電機が第1容量性素子に電流を供給する」ものである点。

(相違点2)
本願発明1は「第1容量性素子が、少なくとも時計作動機構の最初の作動開始直後に単一の又は複数の受動素子を介してチャージされ、該第1容量性素子の電圧が、単一の又は複数の能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、上記の単一の又は複数の受動素子が上記の単一の又は複数の能動ユニットに置き換えられ、又は、並列回路の枝路にある上記の単一の又は複数の能動ユニットによって補われ、上記の単一の又は複数の能動ユニットが、伝導方向における電気抵抗を上記の単一の又は複数の受動素子よりも小さく構成される」という構成を有するのに対して、刊行物1にはこのような記載がない点。

3.当審の判断
3-1.相違点1について
電圧供給源としての容量性素子に電流を供給するに際し、変圧器回路に電流を供給し、該変圧器回路が容量性素子に電流を供給するように構成することは、例えば、刊行物2にも記載され、以下の刊行物にも記載されており、周知といえる。
刊行物3 特開平6-327236号公報

刊行物2及び3に記載された技術は、電圧供給源としての容量性素子に電流を供給する回路に関するものである。また、刊行物1に記載された発明の第1容量性素子も電圧供給源として機能するものである。
このような産業上の利用分野の共通性を考慮すれば、刊行物2及び3に記載されているような周知の技術を刊行物1に記載された発明に採用することは、当業者が容易にできることである。

3-2.相違点2について
電圧供給源としての第1容量性素子をチャージするに際し、「第1容量性素子が、少なくとも最初の作動開始直後に受動素子を介してチャージされ、該第1容量性素子の電圧が、能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、上記受動素子が上記能動ユニットに置き換えられ、又は、並列回路の枝路にある上記能動ユニットによって補われ、上記複数の能動ユニットが、伝導方向における電気抵抗を上記受動素子よりも小さく構成される」ように構成することは、例えば、上記刊行物2及び3に記載されており、周知といえる。

(刊行物2について)
刊行物2には、図1とともに、第2頁左下欄第16行乃至に「即スタート用抵抗12は時計の起動時に発電電流より得られる電圧降下を利用して発振に起動をかけるためにある。また、トランジスタ13は起動時以外はオン状態になり即スタート用抵抗12の抵抗分が充電経路の中に付加されないようにするためにある。」と記載されている。

(刊行物3について)
刊行物3には、各図とともに、段落番号【0024】に「図5に、本発明によるMOSトランジスタを使った倍電圧昇圧回路を、図6にそのタイミング・・・を示す。電源電池1、コンデンサー7、8は図3と同じであり、P-MOS20、C-MOS23、P-MOS22の各MOSトランジスタは図3のS1、S2、S3の働きをする。34は低電圧系-高電圧系C-MOSインターフェイス回路であり、P-MOS22のスイッチング信号を低電圧から高電圧に変換される。又、MOSトランジスタ20、22のサブストレート電極は必ず図5にある方向、即ち、各々のドレイン電極に接続して、MOSトランジスタの寄生ダイオードがコンデンサーの充電電流に対して順方向となるようにしなければならない。でないとせっかくの昇圧電圧が寄生ダイオードによって電源側へ逆流してしまう。こうように接続することにより昇圧回路の自起動が確実になる利点も有する。すなわち自起動の初期においてP-MOSトランジスタ22のゲート電圧に十分な昇圧電圧がかからず、従ってスイッチング素子として働かない場合でも、寄生ダイオードの効果によってP-MOSトランジスタ20、22はダイオードと做せる。この時、回路は図2(a)のシェンケル形昇圧回路を形成しており、損失は大きいが昇圧を開始する。ある程度まで出力電圧が高くなるとP-MOSトランジスタ22はスイッチング素子として働き始め、本発明による昇圧回路となる。」と記載されている。

刊行物2及び3に記載された技術は、電圧供給源としての容量性素子に電流を供給する回路に関するものである。また、刊行物1に記載された発明の第1容量性素子も電圧供給源として機能するものである。
このような産業上の利用分野の共通性を考慮すれば、刊行物2及び3に記載されているような周知の技術を刊行物1に記載された発明に採用して「第1容量性素子が、少なくとも時計作動機構の最初の作動開始直後に単一の又は複数の受動素子を介してチャージされ、該第1容量性素子の電圧が、単一の又は複数の能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、上記の単一の又は複数の受動素子が上記の単一の又は複数の能動ユニットに置き換えられ、又は、並列回路の枝路にある上記の単一の又は複数の能動ユニットによって補われ、上記の単一の又は複数の能動ユニットが、伝導方向における電気抵抗を上記の単一の又は複数の受動素子よりも小さく構成される」よう構成することは、当業者が容易にできることである。

そして、本願発明1の作用効果は、刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測しうるものであって、刊行物1に記載された発明及び周知技術を組み合わせたことにより予期し得ない格別な効果を奏しているとすることはできない。

なお、請求人は平成14年4月22日付の審判請求書(平成14年5月17日付の手続補正書により補正されたもの)において「FETによりスイッチングを行なって、コンデンサのチャージを行なうようにすることが、当業者にとって容易に想到しうることであるとしても、請求項1にかかる本願発明1のように、第1容量性素子が、少なくとも時計作動機構の最初の作動開始直後に受動素子を介してチャージされ、第1容量性素子の電圧が能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、受動素子が能動ユニットに置き換えられるようにすることは、当業者が容易に想到しうるものであるとは到底考えられない。
また、請求項1にかかる本願発明1は、このように構成されるため、時計作動機構のエネルギ効率を向上させることができるという、引用文献1,2を単に寄せ集めただけでは達成することのできない格別の効果を奏するものである。」旨、主張している。
しかしながら、FETによりスイッチングを行なってコンデンサのチャージを行なうようにし、かつ、コンデンサが、少なくとも最初の作動開始直後に受動素子を介してチャージされ、コンデンサの電圧が能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、受動素子が能動ユニットに置き換えられるようにすることは、上述の通り、周知技術であり、また、当該周知技術は、エネルギ効率を向上させる効果を奏する。
そして、このような周知技術を刊行物1に記載された発明の時計作動機構に採用したものは、当然に予測される如く、第1容量性素子が少なくとも時計作動機構の最初の作動開始直後に受動素子を介してチャージされ、第1容量性素子の電圧が能動ユニットを作動させるのに十分な状態になるとすぐに、受動素子が能動ユニットに置き換えられるようになり、そして、時計作動機構のエネルギ効率を向上させることができるという、効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.本願発明2について
1.本願発明2と刊行物1に記載された発明の対比
本願発明2と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「香箱6」、「輪列7」、「発電機8」、「コンデンサ14」、及び、「電子回路10及び回路11」は、それぞれ、本願発明2の「ぜんまい」、「時計表示器」、「交流電圧供給発電機」、「第1容量性素子」、及び、「電子回路」に相当するから、両者は「ぜんまいが時刻表示器と交流電圧供給発電機とを作動させる時計作動機構において、該発電機によって電流を供給される第1容量性素子と、該第1容量性素子から電流を供給され、該発電機の回転速度を制御する電子回路とを備えた時計作動機構。」の点で一致し、他方、両者は以下の点で相違する。

(相違点3)
本願発明2は「発電機によって電流を供給される変圧器回路」を有し、第1容量性素子は「該変圧器回路から電流を供給される」ものであるのに対して、刊行物1に記載された発明は変圧器回路を有さず、「発電機が第1容量性素子に電流を供給する」ものである点。

(相違点4)
本願発明2は「第1容量性素子が、該時計作動機構の最初の作動直後に少なくとも単一の受動素子を介してチャージされるように構成され、少なくとも単一の能動素子を作動させるのに十分にチャージされたら、上記の少なくとも単一の受動素子が、伝導方向に上記の少なくとも単一の受動素子よりも小さい電気抵抗となる上記の少なくとも単一の能動素子に置き換えられる」という構成を有するのに対して、刊行物1にはこのような記載がない点。

2.当審の判断
相違点3及び4は、本願発明1と刊行物1に記載された発明との相違点1及び2について判断したのと同様の理由により、当業者が容易になしえたものである。
したがって、本願発明2は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上の通りであるから、本願発明1、2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
また、本願の請求項1、36に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2003-12-16 
結審通知日 2003-12-24 
審決日 2004-02-20 
出願番号 特願平9-510793
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五閑 統一郎白石 光男榮永 雅夫太田 恒明  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 山川 雅也
樋口 信宏
発明の名称 時計作動機構  
代理人 真田 有  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ