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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M |
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管理番号 | 1099330 |
審判番号 | 不服2001-3065 |
総通号数 | 56 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-06-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-03-01 |
確定日 | 2004-07-02 |
事件の表示 | 平成8年特許願第320000号「自動2輪車等のブレーキ性能テスト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年6月19日出願公開、特開平10-160641〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成8年11月29日の出願であって、平成12年12月27日付けで拒絶査定がなされた。この査定を不服として、審判請求がなされ、その請求の日から30日以内である13年3月30日に明細書について手続補正がなされた。 [2]13年3月30日の手続補正(以下、「本件補正」という。)の補正却下について [補正却下の決定の結論] 13年3月30日の手続補正を却下する。 [理 由] 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「テスト車両の前輪を乗せる前輪支持部と後輪を乗せる後輪支持部を設け、これら各支持部をそれぞれ前後一対のローラーで構成し、かつこれら各ローラーの表面を低摩擦材料で構成し、前記各一対のローラーのうち、一方をアイドルローラー、他方を連動ローラーとし、 これらの各連動ローラーを機械的な回転同期手段で同期回転可能に連結し、かつ各連動ローラーのうちのいずれか一方を主クラッチを介して駆動手段へ接続し、前輪支持部と後輪支持部の双方に構成ローラーの回転速度を検出するための回転速度検出手段を設け、 さらに、ブレーキタイミングとテスト結果を表示する表示手段を設けるとともに、 前記表示手段は、前記回転速度検出手段の検出した構成ローラーの回転速度変化に応じて表示色を変化させるバーグラフでブレーキタイミングを表示する、ことを特徴とする自動2輪車等のブレーキ性能テスト装置。」と補正された。(以下、この発明を「本願補正発明」という。) (1)新規事項の有無、補正の目的の適否 上記の補正された事項は、願書に最初に添付した明細書の【0053】乃至【0055】、【0066】乃至【0070】に記載されており、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でなされたものである。 そして、上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ブレーキタイミングとテスト結果を表示する表示手段」について「構成ローラーの回転速度変化に応じて表示色を変化させるバーグラフでブレーキタイミングを表示する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同改正前の第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)独立特許要件 2-1 引用刊行物の記載内容 ア)原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-214731号公報(以下、刊行物1という。)には、 テスト車両の前輪を乗せる前輪支持部と後輪を乗せる後輪支持部を設け、これら各支持部をそれぞれ前後一対のローラー(1a)と(1c)、(2a)と(2c)で構成し、各一対のローラーのうち、ローラ(1c)、(2c)をアイドルローラーとし、ローラ(1a)、(2a)を連動ローラーとし、これらの各連動ローラーをプーリ(5)及びベルト(6)で同期回転可能に連結し、前輪支持部と後輪支持部の双方に構成ローラーの回転速度を検出するための速度検出センサー(7a)(7c)を設けるとともに、ブレーキタイミングと検査結果を表示する表示器(15)を備えた自動車等の車両のブレーキ性能テスト装置が記載されている。 (2頁左上欄18行-右下欄1行、5頁左上欄5行-右下欄10行、1図、2図、8図、9図)。 また、ブレーキタイミングの表示については、「そして速度センサー(7a)〜(7d)からの速度信号を入力したCPU(12)は・・・、そしてCPU(12)が表示器(15)に「制動開始」の表示をし、・・・ブレーキをかけて前車輪を制動する。」(5頁左下欄7-16行)と記載され、テストの結果については、「許容範囲内にあれば表示器(15)に「合格」の表示を、又許容範囲外にあれば表示器(15)に「不合格」の表示をする。」(5頁右下欄7-10行)と記載されている。 イ)同じく引用された実公平2-17321号公報(以下、刊行物2という。)には、 テスト車両の前輪を乗せる前輪支持部と後輪を乗せる後輪支持部を設け、これら各支持部をそれぞれ前後一対の駆動ローラー1と従動ローラ2とで構成し、前後の駆動ローラ1,1間は、側部のスプラインシャフト4でベベルギヤ等を介して連結し、電動機9をVベルト10を介して駆動ローラ1に連結して駆動ローラを駆動可能とし、 自走テストする場合は、電動機9を停止させておくが、外部駆動による場合は、電動機9によりVベルトを介して駆動ローラ1を駆動し、車両のテストをするテスターが記載されている。(2頁左欄4行-右欄31行、1図参照) ウ)原査定の備考で引用された特開平4-215031号公報には、 「従来、前述のようなABSブレーキ装備車、又はトラクッションコントロール装備車の性能試験等を行うため、模擬低摩擦路試験装置が用いられている。・・・タイヤの転接するローラの表面を低摩擦係数の状態とするため、ローラの周表面にテフロンフィルム、ナイロンフィルム、又は超高分子ポリエチレンフィルム等の樹脂材を貼り付けて試験を行っていた。」(【0004】-【0005】)が記載されている。 同じく引用された実公平4-54436号公報には、 「車両のアンチロック・ブレーキシステムの機能判定時には、車輪をローラの低摩擦周面に載置し、かつ該ローラの周速度を比較的高速度で駆動させるようにしたブレーキテスター」(実用新案登録請求の範囲参照)が記載されている。 2-2 対比・判断 刊行物1に記載された発明と本願補正発明とを対比すると、刊行物1に記載されたテスト装置の前後一対のローラ(1a)、(2a)はプーリ(5)及びベルト(6)という機械的な回転同期手段で同期回転可能に連結されているから本願補正発明の連動ローラーに相当し、ローラ(1c)、(2c)はアイドルローラーに相当し、表示器(15)はブレーキタイミングとテスト結果を表示する表示手段に相当する。したがって、両者は、 「テスト車両の前輪を乗せる前輪支持部と後輪を乗せる後輪支持部を設け、これら各支持部をそれぞれ前後一対のローラーで構成し、前記各一対のローラーのうち、一方をアイドルローラー、他方を連動ローラーとし、これらの各連動ローラーを機械的な回転同期手段で同期回転可能に連結し、前輪支持部と後輪支持部の双方に構成ローラーの回転速度を検出するための回転速度検出手段を設け、 さらに、ブレーキタイミングとテスト結果を表示する表示手段を設けるとともに、 前記表示手段は、前記回転速度検出手段の検出した構成ローラーの回転速度変化に応じてブレーキタイミングを表示する、ことを特徴とする自動2輪車等のブレーキ性能テスト装置。」として一致し、次の点で相違する。 相違点1;本願補正発明では、一対のローラーの表面を低摩擦材料で構成しているのに対し、刊行物1では、そのようなことについて記載されていない点。 相違点2;本願補正発明では、各連動ローラーのうちのいずれか一方を主クラッチを介して駆動手段へ接続しているが、刊行物1のテスト装置は自走式であるため、そのような駆動系を備えていない点。 相違点3;本願補正発明では、回転速度検出手段の検出した構成ローラーの回転速度変化に応じて表示色を変化させるバーグラフでブレーキタイミングを表示するのに対し、刊行物1のテスト装置では「制動開始」の表示でブレーキタイミングを表示する点。 相違点1について、 原査定の備考で指摘されたように、車両のアンチロック・ブレーキシステムのテスト装置において、車輪を載置するローラーの表面を低摩擦周面とすることは本件の出願前に周知慣用技術(上記特開平4-215031号公報、実公平4-54436号公報の記載参照)であって、このような技術を同様のテスト装置である刊行物1に記載されたローラーに利用することは当業者が容易に成しうることである。 相違点2について、 刊行物2に記載されているように、テスト車両の前輪を乗せる前輪支持部と後輪を乗せる後輪支持部を設け、これら各支持部をそれぞれ前後一対の駆動ローラー1と従動ローラ2とで構成し、前後の駆動ローラ間を側部のスプラインシャフト4でベベルギヤ等を介して連結した、すなわち、ローラーを機械的な回転同期手段で同期回転可能に連結した、車両のテスターにおいては、自走テストすることも、電動機で前後の駆動ローラを回転させることも当業者に知られているのであって、刊行物1に記載された連動ローラを刊行物2に記載されたような電動機で駆動させる(この場合にはクラッチを介することは当然である。)ように変更することは当業者にとって容易なことである。 相違点3について、 刊行物1のテスト装置における「制動開始」の表示は、測定したローラーの速度が設定速度に達したかを判定することによって行われているところ、速度検出手段の検出した速度変化に応じて表示色を変化させるバーグラフで設定速度に達したことを表示することはこの出願前周知慣用技術であって(例えば、特開昭61-288159号公報参照)、このような周知慣用技術を刊行物1に記載されたローラーの速度が設定速度に達したかを判定する構成として採用することは当業者が適宜実現できることである。 そして、本願補正発明の作用効果は刊行物1と刊行物2の記載、及び、周知慣用技術から当業者であれば容易に予測することができるものであって格別のものとは言えない。 (3)小 結 以上のとおりであるから、本願補正発明は、本願出願前に国内で頒布された刊行物1、2に記載された発明及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同改正前の第126条第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [3]本願発明について 13年3月30日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成12年12月11日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「テスト車両の前輪を乗せる前輪支持部と後輪を乗せる後輪支持部を設け、これら各支持部をそれぞれ前後一対のローラーで構成し、かつこれら各ローラーの表面を低摩擦材料で構成し、前記各一対のローラーのうち、一方をアイドルローラー、他方を連動ローラーとし、 これらの各連動ローラーを機械的な回転同期手段で同期回転可能に連結し、かつ各連動ローラーのうちのいずれか一方を主クラッチを介して駆動手段へ接続し、前輪支持部と後輪支持部の双方に構成ローラーの回転速度を検出するための回転速度検出手段を設けるとともに、 ブレーキタイミングと検査結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする自動2輪車等のブレーキ性能テスト装置。」(以下、この発明を「本願発明」という。) (1)引用刊行物及びその記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「[2]、(2)、2-1」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記[2]、(2)で検討した本願補正発明から「ブレーキタイミングとテスト結果を表示する表示手段」についての限定事項である「構成ローラーの回転速度変化に応じて表示色を変化させるバーグラフでブレーキタイミングを表示する」を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成を限縮した本願補正発明が、前記[2]、(2)に記載した理由により、刊行物1、刊行物2に記載された発明、及び、周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、刊行物2に記載された発明、及び、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 [4]結論 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に国内で頒布された刊行物1、刊行物2に記載された発明、及び、周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-04-15 |
結審通知日 | 2004-04-15 |
審決日 | 2004-04-28 |
出願番号 | 特願平8-320000 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01M)
P 1 8・ 121- Z (G01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順、深草 誠 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
菊井 広行 福島 浩司 |
発明の名称 | 自動2輪車等のブレーキ性能テスト装置 |
代理人 | 小松 清光 |