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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60B
管理番号 1099538
審判番号 不服2001-22032  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-02 
確定日 2004-07-08 
事件の表示 平成7年特許願第198928号「ダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造」〔平成9年1月14日出願公開、特開平9-11702〕拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年6月30日の出願であって、原審において、拒絶査定を受けたので、これを不服として、平成13年11月2日付で本件審判請求がなされ、更に、当該請求の日から30日以内の平成13年11月16日付で明細書についての手続補正がなされたものである。

【2】平成13年11月16日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年11月16日付の手続補正を却下する。
[補正却下の決定の理由]
1.上記の手続補正は、特許請求の範囲における請求項1の「アウタナットの内ねじ部が、同ナットの当接面のアウタホイールディスク側の端部付近まで延在して形成された」という記載中、“端部付近まで”を“端部まで”と補正しようとするもので、特許法(平成6年改正前のもの、本決定に関しては以下も同様)第17条の2第3項第2号で規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当するが、同条第4項の規定により、当該補正に係る請求項の発明は、特許法第126条第3項の規定に適合するもの、即ち、特許出願の際、独立して特許を受けることができるという要件を満たすものでなければならないとされている。
そこで、本件手続補正に係る請求項1に記載された発明が、当該要件を満たすものであるか否かについて以下に検討する。

2.上記手続補正に係る請求項1の発明は、同日付手続補正書に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】「ホイールハブの外側に突設されたハブフランジに一端を固定されて車幅方向外方に延在したハブボルトと、上記ハブボルトが挿通されるボルト孔を具え、同ボルト孔の開口端に球面又は円錐面からなる座ぐり部を形成したインナホイールディスク及びアウタホイールディスクと、上記ハブボルトの外方ねじ部に螺合され、その先端部に上記インナホイールディスクの座ぐり部と整合する形状の当接面を具えたインナナットと、同インナナット外周のねじ部に螺合される内ねじ部を有すると共に、上記アウタホイールディスクの座ぐり部と整合する形状の当接面を具えたアウタナットとを具備し、同アウタナットの内ねじ部が、同ナットの当接面のアウタホイールディスク側の端部まで延在して形成されたことを特徴とするダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造。」(以下、「本願補正発明」という。)

3.引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶理由において引用された、本件特許出願前に頒布された刊行物である、実公昭62-11683号公報(以下、「引用例」という)には、次の技術事項が記載されている。
「一般に径の大きいダブルタイヤにおけるブレーキドラム及びホイールデイスクの取付装置は、第1図に示すように車軸ハブ1に設けられたピン穴1a及びブレーキドラム7に設けられたピン穴7aにホイールピン2を挿通し、その先端部に形成された雄ネジ2aに締付ナツト8をネジ結合してブレーキドラム7を車軸ハブ1に固定し、前記ホイールピン2の後端部に形成された雄ネジ2bにインナーナツト3をネジ結合してその先端に設けられた係止部3aを内側タイヤのホイールデイスク4に形成されたピン穴の内周縁に当接して内側ホイールデイスク4を固定し、該インナーナツト3の外周に形成された雄ネジ3aにホイールナツト5をネジ結合して外側タイヤのホイールデイスク6を固定するようにしたものである。」(第1頁第1欄第13行〜同欄第27行)

4.発明の対比
(1)本願補正発明の構成事項と引用例の上記記載事項とを対比する。
引用例記載の「ダブルタイヤにおけるブレーキドラム及びホイールデイスクの取付装置」は本願補正発明でいう「ダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造」に相当し、以下同様に、「車軸ハブ1」はハブフランジを包含する「ホイールハブ」に、「ホイールピン2」は「ハブボルト」に、「ピン穴1a」は「ボルト孔」に、「内側タイヤのホイールデイスク4」は「インナホイールディスク」に、「外側タイヤのホイールデイスク6」は「アウタホイールディスク」に、「インナーナツト3」は「インナナット」に、「ホイールナツト5」は「アウタナット」に、それぞれ相当する。
また、この種のタイヤ用ホイールディスク締結構造として、ディスク側に球面や円錐面からなる座ぐり部を形成して、この座ぐり部と整合する形状の当接面をインナナットあるいはアウタナット側に備えるようにすることは通常の技術事項であって、このような技術事項は、引用例における図面(第1図)からも窺われるように、引用例記載のものにおいても採用されているとみるべきである。
(2)したがって、本願補正発明と引用例記載の発明との一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点> 「ホイールハブの外側に突設されたハブフランジに一端を固定されて車幅方向外方に延在したハブボルトと、上記ハブボルトが挿通されるボルト孔を具え、同ボルト孔の開口端に球面又は円錐面からなる座ぐり部を形成したインナホイールディスク及びアウタホイールディスクと、上記ハブボルトの外方ねじ部に螺合され、その先端部に上記インナホイールディスクの座ぐり部と整合する形状の当接面を具えたインナナットと、同インナナット外周のねじ部に螺合される内ねじ部を有すると共に、上記アウタホイールディスクの座ぐり部と整合する形状の当接面を具えたアウタナットとを具備したダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造」に係る発明である点。
<相違点> 本願補正発明では、アウタナットの内ねじ部が、同ナットの当接面のアウタホイールディスク側の端部まで延在して形成されているのに対し、引用例記載の発明では、この事項について明確な言及はないが、図示されたところでは、アウタナットの内ねじ部は、同ナットの当接面のアウタホイールディスク側の端部まで延在しているとは認められない点。

5.上記の相違点について検討する。
上記のとおり、引用例第1図に図示されているものでは、アウタナットの内ねじ部は、アウタホイールディスク側の端部まで延在しているとは認められないが、一方、通常の一般的なナット(雌ねじ)の構造について考えてみると、ナットのねじ山は、ねじ幅(ナットのねじ孔方向の寸法)一杯に形成されており、むしろこのほうが、普通の構造といえる。
そうすると、引用例記載の発明において、このような、普通のナットの構造を採用していないのは、当該普通の構造では、例えば、十分な押圧力を得るのが難しいなどの不都合が予測されるために、当該不都合の回避を図ったものと解される。
しかしながら、このような不都合の回避は、常に絶対に必要とされるというものではなく、設計上の条件等によっては、上記の普通の構造のナットを採用しても差し支えがないという場合も当然想到されるところであって、引用例記載の発明において、上記相違点でいう本願補正発明のように構成することは当業者であれば特段の困難を伴うこととはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項において準用する同第126条第3項の規定に違反することになり、特許法第159条第1項において一部読み替えて準用する同第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。

【3】本願の発明について
1.平成13年11月16日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、当該手続補正前(本願出願当初)の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
【請求項1】ホイールハブの外側に突設されたハブフランジに一端を固定されて車幅方向外方に延在したハブボルトと、上記ハブボルトが挿通されるボルト孔を具え、同ボルト孔の開口端に球面又は円錐面からなる座ぐり部を形成したインナホイールディスク及びアウタホイールディスクと、上記ハブボルトの外方ねじ部に螺合され、その先端部に上記インナホイールディスクの座ぐり部と整合する形状の当接面を具えたインナナットと、同インナナット外周のねじ部に螺合される内ねじ部を有すると共に、上記アウタホイールディスクの座ぐり部と整合する形状の当接面を具えたアウタナットとを具備し、同アウタナットの内ねじ部が、同ナットの当接面のアウタホイールディスク側の端部付近まで延在して形成されたことを特徴とするダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造。
【請求項2】上記アウタナットの内ねじ部が、同ナットの上記当接面のアウタホイールディスク側の端部まで延在して設けられたことを特徴とする請求項1記載のダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造。
【請求項3】上記アウタナットの内ねじ部が、同ナットの上記当接面のアウタホイール側端部内側に同軸的に設けられた軸線方向の寸度が2mm以下の逃げ溝まで延在して形成されたことを特徴とする請求項1記載のダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造。

2.対比・判断
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記の【2】3.に記載したとおりである。
(2)本願の請求項2に係る発明は、前記【2】で検討した本願補正発明と同一発明である。
そして、本願の請求項2に係る発明の構成と同じ構成により特定される本願補正発明が、前記【2】4.以下に記載したとおり、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項2に係る発明も、同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

【4】むすび
以上のとおり、本願請求項2に係る発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願請求項1及び請求項3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-07 
結審通知日 2004-05-11 
審決日 2004-05-24 
出願番号 特願平7-198928
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60B)
P 1 8・ 121- Z (B60B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 田々井 正吾
鈴木 法明
発明の名称 ダブルタイヤ用ホイールディスク締結構造  
代理人 光石 忠敬  
代理人 光石 俊郎  
代理人 田中 康幸  
代理人 松元 洋  

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