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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A63F
管理番号 1100283
審判番号 無効2001-35180  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-24 
確定日 2002-08-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3084560号発明「遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3084560号の請求項1ないし3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人らの負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3084560号「遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法」は、平成4年9月18日に特許出願(特願平4ー273408号)したものの一部を平成11年6月23日に新たな特許出願(特願平11ー176383号)としたものであって、平成12年7月7日にその発明について特許(請求項の数5)の設定登録がなされたものである。
これに対して、平成13年4月24日に株式会社ミツトヨより、本件特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に係る発明についての特許を無効とする、との審決を求める本件審判の請求がなされ、平成13年8月8日付で被請求人(特許権者)株式会社ジャパン・システム・アドバイス及び今田哲夫より、本件審判の請求は成り立たない、との審決を求める答弁書とともに訂正請求書が提出され、また本件審判請求人より平成13年12月3日付で弁駁書及び平成13年12月10日付で上申書が提出され、さらに被請求人(特許権者)らより平成14年4月18日付で答弁書(第2回)が提出されたものである。

【2】訂正の適否について
(2-1)訂正の要旨
特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的として、次のように訂正するものである。
(1) 訂正事項a
特許請求の範囲に係る記載、
「【請求項1】1対の障害釘の内法間隔を測定する障害釘測定手段と、前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定してデータとし、当該データを演算して出力し、コンピュータ等にデータ転送するデータ演算出力手段と、を有することを特徴とする遊技機用釘間隔の測定装置。
【請求項2】障害釘の内法間隔を測定する障害釘測定手段、前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定してデータとし、当該データを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等にデータ転送するようにしたことを特徴とする遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項3】データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等にデータ転送される請求項2に記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項4】1台の遊技機毎のデータを出力してコンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項5】遊技機の島毎の全データを記憶し、全データ収集後にまとめて出力し、コンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【請求項1】1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、を有することを特徴とする遊技機用釘間隔の測定装置。
【請求項2】1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンビュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたことを特徴とする遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項3】データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータが転送される請求項2に記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項4】1台の遊技機毎のデータを出力してコンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項5】遊技機の島毎の全データを記憶し、全データ収集後にまとめて出力し、コンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。」と訂正する。
(2) 訂正事項b
明細書の【0004】の項、
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る遊技機用釘間隔の測定装置は、1対の障害釘の内法間隔を測定する障害釘測定手段と、前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定してデータとし、当該データを演算して出力し、コンピュータ等にデータ転送するデータ演算出力手段とを有する。」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る遊技機用釘間隔の測定装置は、1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、を有する。」
と訂正する。
(3) 訂正事項c
明細書の【0005】の項、
「また本発明の測定方法によれば、障害釘の内法間隔を測定する障害釘測定手段、前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定してデータとし、当該データを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等にデータ転送するようにしたこと、データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等にデータ転送されること、1台の遊技機毎のデータを出力してコンピュータ等にデータ転送するようにしたこと、遊技機の島毎の全データを記憶し、全データ収集後にまとめて出力してコンピュータ等にデータ転送するようにしたこと、等も含むものである。」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「また本発明の測定方法によれば、1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたこと、等も含むものである。」
と訂正する。
明細書の【0040】の項、
「【発明の効果】
以上説明したように、上記構成を有する本発明に係る遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法によれば、1対の障害釘の内法間隔を測定する障害釘測定手段と前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段とにより、必要なときに必要なデータを、確実に、高精度に測定することができる。そして、データ演算出力手段により、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して.ディジタルデータとし、当該データを演算して出力し、コンピュータ等にデータ転送するので、従来のアナログ式の釘間隔測定装置と比べ、指針等が落ち着くまでの時間等も含め、測定データをディジタル値で自動的に表示可能であり、読取誤差も生じない、という効果を有している。さらに、読み取ったデータを直接コンピュータ等にデータ転送するので、テンキーなどでコンピュータ等に手動で再度入力する必要がなく、手動入力によるエラーが発生しないし、即座に正確なパチンコ遊技店において著しく実用的価値の高いものとなる。」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【発明の効果】
以上説明したように、上記構成を有する本発明に係る遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法によれば、1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段とにより、必要なときに必要なデータを、確実に、高精度に測定することができる。そして、データ演算出力手段により、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するするので、従来のアナログ式の釘間隔測定装置と比べ、指針等が落ち着くまでの時間等も含め、測定データをディジタル値で自動的に表示可能であり、読取誤差も生じない、という効果を有している。さらに、読み取ったデータを直接コンピュータ等にデータ転送するので、テンキーなどでコンピュータ等に手動で再度入力する必要がなく、手動入力によるエラーが発生しないし、即座に正確なパチンコ遊技店において著しく実用的価値の高いものとなる。」
と訂正する。
(2-2)当審の判断
訂正の適否について、以下に検討する。
・訂正事項aについて
当該訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許請求の範囲の請求項1乃至3についての構成をさらに限定したものと認められる。(請求項4、5については訂正がなされていない。)
そして、この訂正内容は、本件特許公報の第2頁右欄14行〜15行「この接触ゲージ部2R,2Lに接続する杆体4R,4Lと、」の記載、同公報の第2頁右欄15行〜17行「この杆体4R,4Lの動きにより遊技機障害釘の釘間隔を計測しデータ表示・データ出力等を行う計測制御部5と、」記載、及び同公報の第3頁左欄47行〜第3頁右欄3行「前記した構成において、接触ゲージ部2R,2Lは釘接触ゲージ手段、バネ8はゲージ間隙調整手段、スイッチ6は動作制御手段にそれぞれ相当し、ディスク16とロータリーエンコーダ17とはゲージ間隔読取手段を構成している。そして、釘接触ゲージ手段、ゲージ間隙調整手段及びゲージ間隔読取手段は障害釘測定手段を構成している。」の記載、さらに同公報の第4頁左欄21行〜23行「釘間隔をディジタル値で計測し、計測したディジタルデータを出力し、この出力をホストコンピュータ50にデータ転送するように接続される。」の記載に基づくものであって、新規事項を含むものではない。
・訂正事項b、cについて
当該訂正事項b、cは、明りょうでない記載の釈明を目的とし、その訂正内容は、詳細な説明の欄の記載を前記特許請求の範囲の減縮に対応して整合性があるものとするためのものであって、明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、これらの訂正内容は、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
・まとめ
したがって、前記訂正は、特許法第134条第2項ただし書き及び同条第5項で準用する第126条第2項乃至第3項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

【3】本件訂正発明
前記訂正請求により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1乃至5に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、を有することを特徴とする遊技機用釘間隔の測定装置。
【請求項2】 1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンビュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたことを特徴とする遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項3】 データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータが転送される請求項2に記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項4】1台の遊技機毎のデータを出力してコンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項5】遊技機の島毎の全データを記憶し、全データ収集後にまとめて出力し、コンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。」

【4】審判請求人の主張
(4-1)無効とすべき理由の概要
本件審判請求人は、以下の証拠方法を提出するとともに、本件請求項1乃至3に係る発明についての特許を無効とすべき理由について、要点、以下のとおり主張している。
「本件特許の請求項1乃至請求項3に係る発明は、甲第1号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」
[証拠方法]
(1)甲第1号証 特開平4-95704号公報
(2)甲第2号証 「みつとよ技報」No.25(株)三豊製作所(昭和59年6月6日発行)
(3)甲第3号証 パンフレット「LOOK AT FUTURE」(株)ジャパン・システム・アドバイス発行
(4-2)具体的理由の要点
本件審判請求人は、審判請求書等において、具体的理由を、概要、以下のとおり主張している。
(4-2-1)審判請求書において
(A)証拠の説明(審判請求書第3頁第25行〜第5頁第6行)
「(3-2-1)甲第1号証(特開平4-95704)
甲第1号証は釘間隔測定装置に係り、以下の事項が記載されている。
(a)複数本の釘の間隔を測定する障害釘測定手段(特許請求の範囲)
(b)イメージセンサ4からの出力が有るか否かを判定する(公報3頁左上欄11〜12行)
(c1)出力が有ると判断されるとイメージセンサ4の出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してRAM7cに明度信号1igとしてセイブする(公報3頁左上欄12〜16行)
(c2)明度信号1igを2値化信号とし(公報3頁右上欄16行)、この2値化信号から2本の釘の釘間隔を演算する(公報3頁左上欄20行〜左下欄1行)
(d')釘間隔1は外部入出力回路7eを介してデジタル表示装置8に出力され表示される(公報3頁左下欄10〜11行)
(e)弾発遊技機、詳しくは遊技盤上の釘の間隔を測定する装置(公報1頁左下欄17〜18行)
(f)本発明の釘間隔測定装置によると、遊技盤上の釘の間隔を一律に、正確に、しかも客観的に測定することができる(公報3頁右下欄14〜16行)
(3-2-2)甲第2号証(みつとよ技報NO.25)
甲第2号証は昭和59年6月6日に発行された技術解説誌のデジマチック製品に関する特集号であり、以下の事項が記載されている。
(d1)データの収集と結果の集計,報告などを人手を掛けず,人為ミスの生じない形で行うために測定器をデジタル化し,データの出力が行えるようにする要求である。現在ではパソコンの普及でこの要求は広く一般的なものとなっており,測定器はデータ処理システムの入力デバイスの1つに過ぎないとする見方さえ生まれている(13頁左欄32〜38行)
(d2)出力付は全て共通にデータ処理装置に接続できる(13頁右欄41〜42行)
(e')デジマチック製品;ノギス,ダイヤルゲージ,マイクロメータ,ハイトゲージなど,いわゆるスモールツール(測定工具)と呼ばれている測定器を電子デジタル化したものの中で,測定値の表示装置が測定器自身の中に組み込まれているタイプの製品(13頁左欄2〜6行)
(g1)データロガ(14頁「図1」)
(g2)オーバフロー警報:入力データの数や桁がオーバフローしたとき(23頁左欄9〜10行)
(3-2-3)甲第3号証(LOOK AT FUTURE)
甲第3号証は被請求人株式会社ジャパン・システム・アドバイスが平成9年頃に発行したパンフレットであり、その4頁目の「沿革」の欄に、「平成3年/釘幅測定機ネイルゲージおよび管理コンピュータシステム販売開始」と記載されている。」
(B)請求項1乃至3の発明と甲第1号証との対比・判断(審判請求書第5頁第7行〜第8頁第12行)
「(3-3)請求項1の発明と甲第1号証との一致点
請求項1の構成要件(A)(B)(C)(D)(E)のうち、構成要件(A)(B)(C)(E)については、以下述べるように甲第1号証(特開平4-95704)に開示されている。
(3-3-1)構成要件(A)
構成要件(A)は「1対の障害釘の内法間隔を測定する障害釘測定手段」である。これに対し甲第1号証の開示事項(a)は「複数本の釘の間隔を測定する障害釘測定手段」であり、構成要件(A)に相当する。
(3-3-2)構成要件(B)
構成要件(B)は「前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段」である。これに対して甲第1号証の開示事項(b)は、イメージセンサ4からの出力が有るか否かを判定するものであり、出力が有ると判断されると測定動作が実行される。すなわちイメージセンサ4からの出力が有るか否かの判定結果により測定動作の実行を制御しているということができる。従って開示事項(b)により構成要件(B)が開示されているというべきである。
(3-3-3)構成要件(C)
構成要件(C)は「前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定してデータとし、当該データを演算して出力」するものである。これに対し甲第1号証の開示事項(c1)及び(c2)は、イメージセンサ4からの出力が有ると判断されるとイメージセンサ4の出力するアナログ信号をデジタル信号に変換して明度信号とし、これに基づいて2本の釘の釘間隔を演算するものである。出力が有るとの判断は上記の通り動作制御信号として発せられ、その場合に明度信号を生成してデータとし、当該データから釘間隔を演算するのであるから、開示事項(c1)及び(c2)により構成要件(C)が開示されているといえる。
(3-3-4)構成要件(E)
構成要件(E)は「遊技機用釘間隔の測定装置」である。これに対し甲第1号証の開示事項(e)は「弾発遊技機、詳しくは遊技盤上の釘の間隔を測定する装置」であり、構成要件(E)に相当する。
以上より、請求項1の構成要件のうち甲第1号証に記載されていない事項は、構成要件(D)のみである。
(3-4)請求項1の発明と甲第1号証との相違点に対する検討
構成要件(D)は「コンピュータ等にデータ転送するデータ演算出力手段」である。
これに対し甲第2号証(みつとよ技報No.25)には、開示事項(d2)「出力付は全て共通にデータ処理装置に接続できる」など、測定データをコンピュータ等のデータ処理装置に外部出力できるデジマチック製品が開示されている。甲第2号証にいう「デジマチック製品」とは、「ノギス,ダイヤルゲージ,マイクロメータ,ハイトゲージなど,いわゆるスモールツール(測定工具)と呼ばれている測定器を電子デジタル化したものの中で,測定値の表示装置が測定器自身の中に組み込まれているタイプの製品」(開示事項(e'))をいい、遊技機用釘間隔の測定装置と極めて近接した技術分野に属するものである。かかるデジマチック製品においては、「データの収集と結果の集計,報告などを人手を掛けず,人為ミスの生じない形で行うために測定器をデジタル化し,データの出力が行えるようにする要求」がある。そして「現在ではパソコンの普及でこの要求は広く一般的なものとなっており,測定器はデータ処理システムの入力デバイスの1つに過ぎないとする見方さえ生まれている」(開示事項(d1))。従って、測定データをコンピュータに出力することば、遊技機用釘間隔の測定装置に限らず、測定装置全般において広く一般的に行なわれている常套手段に過ぎず、ことさら遊技機用釘間隔の測定装置のデータをコンピュータに出力したからといって何ら格別のことはない。
また、甲第1号証の開示事項(d')にも「釘間隔1は外部入出力回路7eを介してデジタル表示装置8に出力され表示される」ことが記載されている。デジタル表示装置は、釘間隔データを表示のための電気信号に変換するマイクロコンピュータを必須とする装置である。従って、甲第1号証におけるデジタル表示装置への出力は、コンピュータへの出力に対する動機付けを既に提供しているものというべきである。
また、甲第3号証(LOOK AT FUTURE)には、被請求人が、平成3年に釘幅測定機ネイルゲージおよび管理コンピュータシステムを販売開始した旨が述べられている。すなわち、釘幅測定機で測定したデータをコンピュータ管理する思想が本件特許の出願前に公知であったことが明らかにされている。このことは、釘幅測定機に関する甲第1号証に、甲第2号証に示されたデジマチック製品からコンピュータ出力する常套手段を組合せることの強力な動機づけを与えるものと思料する。
従って、本件特許の請求項1は、甲第1号証に甲第2号証を組合せることにより当業者が容易に想到し得たものである。
(3-5)請求項2の発明
請求項2は請求項1と同様の構成要件を有する遊技用釘間隔測定装置により釘の内法間隔を測定してコンピュータ等にデータ転送する、遊技用釘間隔の測定方法であるから、実質的に請求項1に構成要件(F)「遊技用釘間隔の測定方法」が加わったに過ぎない。
これに対し甲第1号証の開示事項(f)には「本発明の釘間隔測定装置によると、遊技盤上の釘の間隔を一律に、正確に、しかも客観的に測定することができる」との記載があるから、甲第1号証の釘間隔測定装置を用いて釘の間隔を測定する方法が開示されているということができる。
従って、本件特許の請求項2は、甲第1号証に甲第2号証を組合せることにより容易に想到し得たものと認められる。
(3-6)請求項3の発明
請求項3は請求項2に加え、構成要件(G)「データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等にデータ転送される」を備えている。
これに対し甲第2号証には、開示事項(g1)「データロガ」を接続可能な測定装置が記載されている。また、測定装置単体としても、開示事項(g2)「オーバフロー警報:入力データの数や桁がオーバフローしたとき」との記載から、複数の入力データを一時的に記憶できることが明らかである。
従って、本件特許の請求項3は、甲第1号証に甲第2号証を組合せることにより容易に想到し得たものと認められる。」
(C)むすび(審判請求書第8頁第14〜18行)
「以上述べたところにより、本件特許の請求項1乃至請求項3に記載の発明は何れも、甲第1号証に示された公知技術に、甲第2号証に示された常套手段を適用することによって容易にすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。」
(4-2-2)答弁書に対する弁駁書において
本件審判請求人は、新たに以下の証拠方法を提出するとともに、本件請求項1乃至3に係る発明についての特許を無効とすべき理由について、以下の新たな理由を主張している。
[証拠方法]
(4)甲第4号証 実願平1-94280号(実開平3-33302号)のマイクロフィルム
(5)甲第5号証 特開昭58-55709号公報
(A)弁駁の趣旨(弁駁書第2頁第7〜15行)
「(2)理由の要点
被請求人がなした平成13年8月8日付け訂正後の請求項1乃至請求項3に係る発明は、下記○1○2の通りであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
○1 甲第1号証に示された公知技術、甲第4号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(下記(5)参照)。
○2 甲第1号証に示された公知技術及び甲第5号証に示された公知技術に基づいて、又はこれらと甲第2号証に示された常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(下記(6)参照)。」
(4-2-3)上申書(平成13年12月10日付)において
「平成13年12月3日付け弁駁書に引き続き、以下の通り上申致します。
訂正後の請求項1の発明は、甲第1号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に、甲第4号証、甲第5号証、甲第2号証などに示された周知技術を組み合わせることによっても、容易に為し得たものであります。その理由は以下の通りです。
被請求人は、訂正により構成要件(A)に「2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより」測定する旨を加えました。しかしながら、「2個の接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより」測定することは、以下述べるように測定機械の分野における周知技術であります。
「2個の接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより」測定するという上記周知技術は、甲第4号証の開示事項(a)や甲第5号証の開示事項(a)に記載されています。
また、上記周知技術は甲第2号証の34頁にも記載されております。これはノギスの測定子の動きをディジタルデータ信号とするものであります。ノギスの測定子は、2個の接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体を備えています。
更に、上記周知技術が記載されている文献は、別添の特開昭62-214312号公報、特開昭62-215813号公報、特開昭63-30709号公報など、枚挙にいとまがありません。
従いまして、「2個の接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより」測定することは、測定機械の分野における周知技術であります。
一方、「釘」接触ゲージ手段は既に甲第1号証に記載されております。従って、訂正後の構成要件(A)は、甲第1号証に示された公知技術に甲第4号証、甲第5号証、甲第2号証などに示された周知技術を組み合わせることによって容易に為し得たものであります。
更に、構成要件(B)乃至(D)に加えられた事項や、請求項2及び請求項3が、甲第4号証や甲第5号証を引用するまでもなく容易に為し得たものであることは弁駁書で主張した通りであります。」(上申書第1頁末5行〜第2頁末3行)

【5】被請求人(特許権者)らの主張
(5-1)答弁の概要
被請求人(特許権者)らは、訂正請求書により特許請求の範囲を減縮等するとともに、答弁書において「本件特許発明が、甲第1号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと認められるものではない」とし、「本件の審判請求は成り立たない。」旨、答弁している。
(5-2)具体的理由の要点
被請求人(特許権者)らは、答弁書等において、具体的理由を、概要、以下のとおり主張している。
(5-2-1)答弁書において
(A)理由(答弁書第2頁第17行〜第7頁第10行)
「(2).被請求人としては、具体的に答弁をする前に、本件特許発明を以下に解説する。
1).本件特許発明は、パチンコ機等の遊技機に植設される障害釘の間隔を測定する遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法に係り、特に、釘間隔のデータを有効に出力可能な遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法に関するものである。
即ち、従来の釘間隔測定装置においては、釘に接触させるゲージ部が最適な位置に到達したか否かは測定者の熟練に任されていること、表示されるデータ値は円周目盛板上を回転する指針を測定者が目視により読み取らねばならず、指針の振れが落ち着くまで暫時時間がかかること、読取誤差の発生は避け難いこと、読み取ったデータ値をコンピュータ等により整理あるいは処理しようとした場合には改めて手動でデータ入力しなければならないものである。
釘間隔の測定に光学センサを使用しても、釘の胴体が鏡面であることによる乱反射や、パチンコ機に植設される複数の障害釘が込み入った配置であることから、特定の障害釘の釘間隔の測定に読取誤差が生じることは避け難いものである。
2).しかし、本件特許発明は、従来の釘接触ゲージ手段を使用しているにもかかわらず、2個の釘接触ゲージ手段の機械的な動作による読取値を「円周目盛板上を回転する指針」で表示するのではなく、2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータ信号として出力し、当該読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等にデータ転送できるようにしたものである。そのため、釘接触ゲージ手段を備えることにより、1対の障害釘の内法間隔の測定に必要な「正確な位置出しができる」という従来の利点を損なうことがなく、また、従来の釘接触ゲージ手段を備えた機器では「円周目盛板上を回転する指針」で表示されるため、釘接触ゲージ手段を備えた機器に生じていた従来の欠点である「読取誤差の発生」を防止できる画期的な発明である。
3).上記した点が本件特許発明の技術思想であり、これらの技術思想を踏まえた上で、無効審判に対して以下に答弁する。
(3).請求項1乃至請求項3に係る本件特許発明を、訂正された構成要件に基いて分節すると以下の通りである。
請求項1:
a.1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、
b.前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、
c.前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体によるディスクの回転変位の読取ディジタルデータを出力し、
d.当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、
e.を有することを特徴とする遊技機用釘間隔の測定装置。
請求項2:
a.1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、
b.前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、
c.前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、
d.当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段と
e.を少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、
f.1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたこと
g.を特徴とする遊技機用釘間隔の測定方法。
請求項3:
h.データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータが転送される請求項2に記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
(4).上記したように請求項1乃至請求項3に係る本件特許発明では、請求項1に係る本件特許発明と請求項2に係る本件特許発明は同様の構成要件を有する。
即ち、請求項2に係る本件特許発明は請求項1に係る本件特許発明と同様の構成要件を有する遊技用釘間隔測定装置により釘の内法間隔を測定してコンピュータ等にデータ転送する遊技用釘間隔の測定方法であり、請求項1に構成要件f「遊技用釘間隔の測定方法」が加わったものである。
また、請求項3に係る本件特許発明は、請求項2に係る本件特許発明に従属するものであり、請求項3に係る本件特許発明は、請求項2に係る本件特許発明の特定事項を全て含むものであり、請求項2に係る本件特許発明と同様の新規性進歩性を有するものである。
そこで、引用文献(甲第1号証、甲第2号証)との比較においては、請求項1に係る本件特許発明と請求項2に係る本件特許発明を同時に説明し、この説明をもって、請求項3に係る本件特許発明と引用文献(甲第1号証、甲第2号証)との比較の説明とする。
(5).甲第1号証はイメージセンサを使用し光学的に遊技盤上の釘の間隔を測定する釘間隔測定装置であり、イメージセンサからの出力が有るか否かを判定し、出力が有ると判断されるとイメージセンサの出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してRAMに明度信号1igとしてセイブし、明度信号1igを2値化信号とし、この2値化信号から2本の釘の釘間隔を演算するもので、釘間隔1は外部入出力回路を介してデジタル表示装置に出力され表示されることなどが記載されている。
(6).請求項1及び請求項2に係る本件特許発明と甲第1号証とを比較すると、以下の通りである。
1).構成要件aは、「1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、」であるが、甲第1号証には、構成要件aに関しては全く記載されていない。
2).構成要件bは、「前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、」であるが、甲第1号証には、構成要件bに関しては全く記載されていない。
3).構成要件cは、「前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体によるディスクの回転変位の読取ディジタルデータを出力し、」であるが、甲第1号証には、構成要件cに関しては全く記載されていない。
4).構成要件dは、「当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、」であるが、甲第1号証には、構成要件dに関しては全く記載されていない。
このように、甲第1号証には、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明の構成要件a乃至構成要件dに関しては全く記載されていない。
即ち、請求項1係る本件特許発明の遊技機用釘間隔の測定装置及び請求項2に係る本件特許発明の遊技用釘間隔の測定方法は、共に、釘接触ゲージ手段を備えていることが発明の前提条件であり、釘接触ゲージ手段が1対の障害釘の内法間隔の測定位置を示す読取ディジタルデータを出力し、この読取ディジタルデータに基いて、電気的な演算処理が行われ、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送できるものである。
(7).一方、甲第1号証に記載されている発明は、釘接触ゲージ手段を備えておらず、釘間隔の測定に光学センサを使用しているので、釘の胴体が鏡面であることによる乱反射や、パチンコ機に植設される複数の障害釘が込み入った配置であることから、特定の障害釘の釘間隔の測定に読取誤差が生じることは避け難いものであり、イメージセンサの出力するアナログ信号をデジタル信号に変換しても、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明のように、釘接触ゲージ手段からの障害釘の内法間隔の測定位置を示す読取ディジタルデータのような精度は期待できないものである。また、甲第1号証に記載されている発明は、釘間隔の測定に光学センサを使用することが発明の前提条件であり、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明の釘接触ゲージ手段からの障害釘の内法間隔の測定位置を示すデータを電気的な読取ディジタルデータとして測定機器に利用する技術思想は、甲第1号証には存在しておらず、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明が、甲第1号証から示唆を受けたものでないことは明らかである。
(8).また、甲第2号証は昭和59年6月6日に発行された技術解説誌のデジマチック製品に関する特集号であり、デジマチック製品としてノギス,ダイヤルゲージ,マイクロメータ,ハイトゲージなどが記載されたもので、パチンコ機等の遊技機に関するものの記載はなく、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明の構成要件a乃至構成要件eに関しては全く記載されていない。
当然に、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明の釘接触ゲージ手段からの障害釘の内法間隔の測定位置を示すデータを電気的な読取ディジタルデータとして測定機器に利用する技術思想は、甲第2号証には存在しておらず、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明が、甲第2号証から示唆を受けたものでないことは明らかである。
(9).なお、請求人は、甲第3号証について、本件特許発明の引用文献と主張していないので、具体的な答弁を省略する。しかし、敢えて簡単に答弁すると甲第4号証(LOOXATFUTURE)に、被請求人が平成3年に釘幅測定機ネイルゲージおよび管理コンピュータシステムを販売開始した旨、記載されているが、これは印刷ミスによる誤記であり、このような事実はない。必要であれば被請求人は、本件製品の販売を開始した当時の資料を提出することができる。
(10).以上要するに、本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証には記載されていない四つの構成要件(構成要件a乃至構成要件d)を特徴とするものであり、本件特許発明が、甲第1号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと認められるものではない」
(5-2-2)答弁書(第2回)(平成14年4月18日付)において
(A)理由(答弁書(第2回)第2頁第8行〜第3頁第22行)
「(1)請求人は、平成13年12月3日付け提出の弁駁書において、平成13年8月8日付け訂正後の本件請求項1乃至請求項3に係る特許発明は、下記○1○2の通りであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と主張している。
○1 甲第1号証に示された公知技術、甲第4号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
○2 甲第1号証に示された公知技術及び甲第5号証に示された公知技術に基いて、又はこれらと甲2号証に示された常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)上記請求人による○1の理由は、平成13年4月24日付けの無効審判請求書における特許無効の理由に挙げた甲第1号証に、弁駁書に添付した甲第4号証という新たな証拠を加えてなされたものであるから、特許法第131条第2項に規定する要旨を変更する可能性があるので、本来認められないものである。
しかし、仮に証拠として認められた場合でも、この○1に対して、被請求人の答弁は平成13年8月8日付けの答弁書において具体的に示した通りであり、本件特許発明は、甲第1号証に示された公知技術、甲第4号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと認められるものではなく、本件審判に対し、答弁の趣旨の通りの審決を賜るよう希求する次第である。
(3)上記請求人による○2の理由に対しては、この○2で挙げられた甲第5号証にしても弁駁書に添付された新たな証拠であるため、本来証拠として認められない。仮に証拠として認められたとしても、甲第5号証は、パス腕形測定機器に関し、2本のパス腕と、パス腕により駆動される測定機構軸を備えた測定機構とを有するものであるから、本発明の遊技機用釘間隔の測定装置若しくは測定方法に関する技術が開示されていない。したがって、本発明の請求項1の構成要件の一部である
「動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段」
及び請求項2の構成要件の一部である
「動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段」及び「1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送する」
の構成が記載されていない。
したがって、障害釘の内法間隔に基づく読取ディジタルデータを処理する本発明の上記データ演算出力手段は甲各号証に一言一句も記載されていないし、このような構成を示唆する記載すらないので、特許法第29条第2項に違反すると認定される筋合いがない。」

【6】当審の判断
(6-1)本件審判請求の理由及び弁駁書(請求理由の追加)について
本件審判請求人は、前記答弁書に対する弁駁書(平成13年12月3日付)において、新たな証拠方法を提出するとともに無効とすべき新たな理由を主張している。
しかしながら、この弁駁書による主張は、その証拠方法及び理由を追加するものであって請求書の要旨を変更するものと認められるから、不適法なものとして採用しない。
したがって、本件無効審判の請求の理由等は、前記【4】(4-1)のとおりであり、本件無効審判における審理、判断もこの理由等に係るものである。
(6-2)本件訂正発明
本件無効審判が請求された請求項1乃至3に係る発明は、当審における訂正請求により前記【2】のとおり訂正が認められ、その訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る発明(以下、請求項1に係る発明について「本件訂正発明1」、同じく請求項2に係る発明について「本件訂正発明2」、同じく請求項3に係る発明について「本件訂正発明3」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、を有することを特徴とする遊技機用釘間隔の測定装置。
【請求項2】 1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンビュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたことを特徴とする遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項3】 データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータが転送される請求項2に記載の遊技機用釘間隔の測定方法。」
(6-3)各甲号証記載の事項
請求人が提出した各甲号証に記載された技術的事項は、以下のとおりである。
(6-3-1)甲第1号証;特開平4-95704号公報(以下「引用刊行物1」という。)
引用刊行物1には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「遊技盤上の複数本の釘に対して所定光量のの光を投光する投光手段と、該投光された光を受光する受光手段と、該受光された光の明度を所定値と比較することにより上記複数本の釘の間隔を測定する釘間隔測定手段と、を備えて構成されたことを特徴とする釘間隔測定装置。」(第1頁左下欄、特許請求の範囲)
(ii)「本発明は、パチンコ機やアレパチ機等の弾発遊技機に関し、詳しくは遊技盤上の釘の間隔を測定する装置に関する。」(第1頁左下欄16〜18行)
(iii)「本発明ー実施例の釘間隔測定装置は、第2図に示すように、指向性の強い光を発するレーザー発振器1と、レーザー発振器1による光を遊技盤上の2本の釘kg1及びKg2に投光するための後に詳述する光学素子系2と、該光学素子系2により投光された光を釘kg1及びkg2の反対側で受光する光学素子系3と、該受光された光を電気信号に変換するためのイメージセンサ4と、該イメージセンサ4より出力されるアナログ信号としての電気信号をデジタル信号に変換するデジタル変換回路5と、該デジタル化された信号から上記釘kg1と釘kg2との離間距離を演算する釘間隔演算回路6と、から構成されている。
本実施例では、デジタル変換回路5と釘間隔演算回路6とは、第3図に示すように、電子制御装置7として一体に構成されている。電子制御装置7は、CPU7aを中心として、これとROM7b,RAM7c,A/Dコンバーター7d及び外部入出力回路7eをパス7fにより相互に接続した論理演算回路として構成されている。電子制御装置7の外部入出力回路7eにはデジタル表示装置8が接続されている。」(第2頁左下欄6行〜同頁右下欄8行)
(iv)「尚、本実施例では、レーザー発振器1及び光学素子系2が投光手段(M1)に、光学素子3及びイメージセンサ4が受光手段(M2)に、デジタル変換回路5及び釘間隔演算回路6としての電子制御装置7が釘間隔測定手段(M3)に、各々対応する。」(第3頁左上欄1〜6行)
(v)「この「釘間隔測定ルーチン」は、電子制御装置7のCPU7aにより実行される処理である。
まず、イメージセンサ4からの出力があるか否かが判定され(ステップS100)、出力が有ると判断されるとA/Dコンバーター7dを介してイメージセンサ4の出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してRAM7cに明度信号1igとしてセイブする(ステップS110)。……明度信号1igを2値化信号とする処理を行う(ステップS130)。……。
次にこの2値化信号Sgから2本の釘Kg1とKg2との釘間隔lを演算する処理が行われる(ステップS140)。……2本の釘Kg1とKg2との釘間隔lが演算されると、この釘間隔lは外部入出力回路7eを介してデジタル表示装置8に出力され表示される(ステップS150)。」(第3頁左上欄9行〜同頁左下欄12行)
(vi)「遊技盤上の2本の釘Kg1とKg2との釘間隔lは、一律に、しかも正確に1/100[mm]の単位以上に細かく容易に客観的に求めることができるという効果を有する。」(第3頁左下欄15〜末行)
(6-3-2)甲第2号証;「みつとよ技報」No.25(株)三豊製作所発行(以下「引用刊行物2」という。)
引用刊行物2には、14頁図1、34頁写真及び35頁図1(デジマチックキャリパ)とこれらに係わる記載を参酌すると、以下のような技術的事項の記載が認められる。
(i)「当社の”デジマチック”とはノギス,ダイヤルゲージ,マイクロメータ,ハイトゲージなど,いわゆるスモールツール(測定工具)と呼ばれている測定器を電子デジタル化したものの中で,測定値の表示装置が測定器自身の中に組み込まれているタイプの製品の称である。」(第13左欄2〜6行)、
(ii)「工程管理の普及向上により,データの収集と結果の集計,報告などを人手を掛けず,人為ミスの生じない形で行うために測定器をデジタル化し,データの出力が行えるようにする要求である。現在ではパソコンの普及でこの要求は広く一般的なものとなっており,測定器はデータ処理システムの入力デバイスの1つに過ぎないとする見方さえ生まれている。」(第13左欄32〜38行)、
(iii)「5.出力
デジマチック製品の出力の基本的なフォーマットは統一されており,測定器とデータ処理装置とはいずれの組合せでも接続可能である(図1)。またデータ処理装置からRS-232Cによって出力しているのでほとんどのパソコンに接続が可能である。」(第17頁右欄17〜22行)、
(iv)「2-3.集中統計演算,管理図作成
測長器で測定したデータをバッチ方式,あるいはダイレクトイン方式でメインとなるコンピュータに接続し,そのコンピュータに備わっているソフトウエアによって集中的に処理し,管理に必要な作表やチェックを行なうに当って,必要な予測データなどを作成する部分になっている。この場合コンピュータは得られた測長データをどのように利用するかによって,その要求されるサイズは異なるが,通常の利用においてはパーソナルコンピュータを対象として設計されている。
このコンピュータデータを伝送する方式として,パッチ方式としてはデータロガーが準備されており,データを収集する現場においては測長器とデータロガーを組み合わせて使用する。いったん収録されたデータは,データロガーをコンピュータへ接続することにより,コンピュータの記憶装置へと転送される。一方ダイレクトイン方式は測長器出力をインタ一フェースを介してマルチプレクサ,あるいはコントロールユニットに導き入れ,メインのコンピュータへと接続する。」(第25頁左欄14〜32行)、
(v)「ノギスは多くの測定機能を兼ね備えていることに加えて、コンパクト、軽量、片手で操作できて持ち運びに便利なこともあり、汎用性の高い広範囲に使われている最もポピュラーな測定器である。……。また、最近においては電子化されたデジタル式のノギスが登場し、急速に普及しはじめている。」(第34頁左欄2〜14行)、
(vi)「(5)出力付である。(Mタイプ)
別売りのデジマチックミニプロセッサDP-1,DP-2に接続すると測定データの記録や統計演算処理が行える。パーソナルコンピュータと接続することもでき、より高度な処理を行う測定にも使用できる。従来のノギスの観念を一変させるものである。」(第35頁左欄6〜11行)、
(6-3-3)甲第3号証;パンフレット「LOOK AT FUTURE」(株)ジャパン・システム・アドバイス発行
甲第3号証は、被請求人株式会社ジャパン・システム・アドバイスが本件特許の出願の日の後である平成9年頃に発行したパンフレットであるが、その第4頁目の「沿革」の欄には「平成3年/釘幅測定機ネイルゲージおよび管理コンピュータシステム販売開始」との記載が認められる。
(6-4)対比・判断
(A)本件訂正発明1について
(対比)
本件訂正発明1と引用刊行物1(特開平4-95704号公報)に記載された発明とを対比する。
引用刊行物1における「投光手段(M1)と受光手段(M2)」は、2本の釘(Kg1,Kg2)の内法間隔である釘間隔(l)等を明度信号(lig)の読取データとして得るものであるから、本件訂正発明1における「障害釘測定手段」に相当し、また引用刊行物1における「デジタル変換回路(5)と釘間隔演算回路(6)、及び電子制御装置(7)」は、釘間隔測定ルーチンに従って明度信号(lig)から釘間隔(l)のデジタルデータをCPU(7a)等で演算し、外部入出力回路(7e)を介してデジタル表示装置(8)へ出力しているものであるから、本件訂正発明1における「データ演算出力手段」に対応させることができる。なお、引用刊行物1においては、釘間隔の測定が釘間隔測定ルーチンに従って動作するものの、その測定動作の実行及び停止に係わるスイッチ等の記載は認められないが、通常、測定動作においては、その実行及び停止のための制御手段、例えば測定開始スイッチ等を具備することは当業者に自明の技術的事項であり、また、本件訂正発明1における「動作制御手段」の具体的構成(本件訂正明細書の段落【0014】)を参酌しても、スイッチ(6)で構成されているのであるから、引用刊行物1においても実質的にスイッチ等の動作制御手段を具備するものと認められる。
したがって、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「1対の障害釘の内法間隔を読取データにより測定する障害釘測定手段と、
前記読取データにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、
前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記読取データを演算して出力し、転送するデータ演算出力手段と、を有する遊技機用釘間隔の測定装置。」
(相違点)
(i)障害釘測定手段とその読取データが、本件訂正発明1にあっては、2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定するものであるのに対して、引用刊行物1にあっては、投光手段(M1)と受光手段(M2)とによる障害釘測定手段で明度信号(lig)の光学的読取データにより測定するものである点、
(ii)データ演算出力手段が、本件訂正発明1にあっては、2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するものであるのに対して、引用刊行物1にあっては、このような構成を具備するものではない点、
(検討)
相違点(i)について検討すると、間隔等の寸法(距離)を測定する測定器において、寸法(距離)の読取・測定手段として2個の接触ゲージ手段を用い、これにそれぞれ接続する2個の杆体の動きによって読取データを得ることは本件出願当時の周知技術である。すなわち、前記引用刊行物2(「みつとよ技報」No.25)における34頁写真及び35頁図1「デジマチックキャリパ」のノギスにみられる他、例えば実願平1-94280号(実開平3-33302号)のマイクロフィルム、特開昭58-55709号公報から明らかである。殊に、実願平1-94280号(実開平3-33302号)のマイクロフィルムにあっては、パチンコ機専用のもので、2個の釘接触ゲージ手段であるパチンコボール型分割球部(1)(2)と、これにそれぞれ接続する2個の測定杆(3)(4)の動きによる読取データにより、釘間隔を測定するものが開示されている。そして、この読取・測定手段による読取データを、読取デジタルデータとして測定することも、前記引用刊行物2におけるノギス「デジマチックキャリパ」として開示されており、また2個の接触ゲージ手段を「2個の釘接触ゲージ手段」とすることも測定の対象が遊技機の釘間隔であることを勘案すると、当業者が適宜になし得るものと認められる。
したがって、本件訂正発明1のように、障害釘測定手段を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによるものとし、また読取ディジタルデータにより測定する構成となすことは、引用刊行物2及び周知の技術的事項を参酌することにより当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(ii)について検討すると、測定したデータをコンピュータ等に転送することは前記引用刊行物2に開示されており、また引用刊行物1においても電子制御装置(7)には外部入出力回路(7e)を具備するものであって、この電子制御装置(7)はCPU構成であるから、前記外部入出力回路(7e)を介して「コンピュータ等に計測したデジタルデータを転送する」ことができるように構成することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
してみると、本件訂正発明1は、引用刊行物1(甲第1号証;特開平4-95704号公報)乃至引用刊行物2(甲第2号証;「みつとよ技報」No.25)に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものと認められる。
また、本件訂正発明1が奏する作用効果も、当業者が予測できる程度のものであって格別なものとは認められない。
(B)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、前記(6-2)記載のとおりの「遊技機用釘間隔の測定方法」であり、前記訂正発明1の「遊技機用釘間隔の測定装置」を「測定方法」として構成するものであって、これらは実質的に「装置」の発明を「方法」の発明としたカテゴリーの相違に過ぎないものである(特許権者も答弁書第4頁第18〜23行で自認する)から、本件訂正発明2に係わる対比・判断も前記訂正発明1と同旨であり、本件訂正発明2についての対比・判断は前記訂正発明1についての対比・判断を引用する。
なお、本件訂正発明2においては、相違点(ii)に係わるデータの転送について、「(1対の障害釘の内法間隔を)測定したら、測定値をデータとして出力してコンビュータ等に(釘間隔を)ディジタル値で計測したディジタルデータを転送する」と規定するものであるが、この点に係る構成も前記引用刊行物2に開示されている(前掲(iv))ところである。
したがって、本件訂正発明2は、引用刊行物1(甲第1号証;特開平4-95704号公報)乃至引用刊行物2(甲第2号証;「みつとよ技報」No.25)に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものと認められる。
(C)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、前記(6-2)記載のとおり訂正発明2を引用する「遊技機用釘間隔の測定方法」であって、そのデータの転送について、「データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータが転送される」との構成を付加し、この構成においてさらに相違するものと認められる。
しかしながら、この更なる相違点であるデータの転送について、一時的に記憶してその後に(まとめて)転送する、すなわちバッチ方式で転送すること、或いは記憶することなく直ちに転送する、すなわちダイレクトイン方式で転送することは、何れもデータの転送において周知の技術的事項であり、例えば前記引用刊行物2にも開示されている(前掲(iv))ところである。
したがって、本件訂正発明3のように構成することは、引用刊行物1(甲第1号証;特開平4-95704号公報)乃至引用刊行物2(甲第2号証;「みつとよ技報」No.25)に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものと認められる。
(6-5)被請求人(特許権者)らの主張について
被請求人(特許権者)らは、本件特許発明が、甲第1号証に示された公知技術及び甲第2号証に示された常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと認められるものではない旨、概要、以下のとおり主張している。
(a)「甲第1号証に記載されている発明は、釘接触ゲージ手段を備えておらず、釘間隔の測定に光学センサを使用しているので、釘の胴体が鏡面であることによる乱反射や、パチンコ機に植設される複数の障害釘が込み入った配置であることから、特定の障害釘の釘間隔の測定に読取誤差が生じることは避け難いものであり、イメージセンサの出力するアナログ信号をデジタル信号に変換しても、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明のように、釘接触ゲージ手段からの障害釘の内法間隔の測定位置を示す読取ディジタルデータのような精度は期待できないものである。」(答弁書第6頁第6〜13行)
(b)「甲第2号証は……、パチンコ機等の遊技機に関するものの記載はなく、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明の構成要件a乃至構成要件eに関しては全く記載されていない。
当然に、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明の釘接触ゲージ手段からの障害釘の内法間隔の測定位置を示すデータを電気的な読取ディジタルデータとして測定機器に利用する技術思想は、甲第2号証には存在しておらず、請求項1及び請求項2に係る本件特許発明が、甲第2号証から示唆を受けたものでないことは明らかである。」(答弁書第6頁第19〜28行)
(検討)
上記主張(a)について、甲第1号証(引用刊行物1;特開平4-95704号公報)の測定手段は、その測定精度について「釘間隔lは、一律に、しかも正確に1/100[mm]の単位以上に細かく容易に客観的に求めることができる」(前掲(vi)、参照)旨記載されており、また、これは釘間隔の測定に光学センサと電気的手段とを使用するものであって「可動部」を有しないことから、機械的な「可動部」を有するような測定手段と比較して、通常、読取誤差は少なく測定精度が高くなるものと認められるが、本件訂正発明1乃至3の測定精度に係わる具体的記載も「12.00mmを基準とした場合の値を1/100mm単位で表示する」(段落番号【0025】)というものであり、両者間に格別の差異があるものとは認められない。なお、仮にこの測定精度に差異があったとしても、本件出願当時の周知技術である「2個の接触ゲージ手段を用い、これにそれぞれ接続する2個の杆体の動きによって読取データを得る」構成を採用することができないとする特段の理由は見当たらない。
上記主張(b)について、パチンコ機等の遊技機に関する釘間隔の測定に係わる技術的事項は甲第1号証に開示されているのであるから、前記したように相違点とはならないものであり、また、甲第2号証(引用刊行物2;「みつとよ技報」No.25)を引用する趣旨は、2個の接触ゲージ手段、及びコンピュータ等へのデータの転送に係わる技術的事項についてのものであって、パチンコ機等の遊技機に関することまでも引用するものではない。また、パチンコ機等の遊技機に係わるコンピュータの利用は当業者の技術常識であり、データの転送においては共通する技術的事項であるから、甲第2号証(引用刊行物2;「みつとよ技報」No.25)に開示された技術的事項を引用し、乃至は周知の技術的事項を参酌することができない理由は見当たらない。
したがって、被請求人(特許権者)らの当該主張はいずれも採用することができない。
(6-6)まとめ
以上のとおりであり、訂正された本件特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、訂正された本件特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

【7】むすび
以上のとおりであって、本件審判における訂正の請求を認めることとし、本件特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項によって準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人らが負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、を有することを特徴とする遊技機用釘間隔の測定装置。
【請求項2】 1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたことを特徴とする遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項3】 データは一時的に記憶され、その後に出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータが転送される請求項2に記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項4】 1台の遊技機毎のデータを出力してコンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【請求項5】 遊技機の島毎の全データを記憶し、全データ収集後にまとめて出力し、コンピュータ等にデータ転送するようにした請求項2または3のいずれかに記載の遊技機用釘間隔の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ機等の遊技機に植設される障害釘の間隔を測定する遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法に係り、特に、釘間隔のデータを有効に出力可能な遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、パチンコ機等の遊技機の遊技盤上に植設される障害釘の間隔を測定しうる釘間隔測定装置としては、実開平3-33302号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の釘間隔測定装置においては、釘に接触させるゲージ部が最適な位置に到達したか否かは測定者の熟練に任されていること、表示されるデータ値は円周目盛板上を回転する指針を測定者が目視により読み取らねばならず、指針の振れが落ち着くまで暫時時間がかかること、読取誤差の発生は避け難いこと、読み取ったデータ値をコンピュータ等により整理あるいは処理しようとした場合には改めて手動でデータ入力しなければならないこと等、解決すべき課題が残されていた。本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、計測が確実で、計測データが出力され、かつ、データの事後処理も容易な遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る遊技機用釘間隔の測定装置は、1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段と、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するデータ演算出力手段と、を有する。
【0005】
また本発明の測定方法によれば、1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段、前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力するデータ演算出力手段とを少なくとも有する遊技機用釘間隔測定装置により、1対の障害釘の内法間隔を測定したら、測定値をデータとして出力してコンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するようにしたこと、等も含むものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。本発明の一実施例であるネイルゲージ機1の構成を図1ないし図6に示す。ネイルゲージ機1は、図に示すように、釘係止突起3R,3Lを設けた接触ゲージ部2R,2Lと、この接触ゲージ部2R,2Lに接続する杆体4R,4Lと、この杆体4R,4Lの動きにより障害釘の釘間隔を計測しデータ表示・データ出力等を行う計測制御部5と、を備えて構成される。計測制御部5には、測定動作のON(動作実行)、OFF(動作停止)を行うスイッチ6、測定した釘間隔データをディジタル値で数値表示するデータ表示窓9、操作キー28、電源スイッチ23、全データ消去キー30が設けられている(図1、2)。
【0007】
ここで、このネイルゲージ機1における接触ゲージ部2R,2Lおよび釘係止突起3R,3Lのさらに詳細な構成と遊技機の障害釘との関係を図3に基づいて説明する。図3は、図1における接触ゲージ部2R,2Lおよび釘係止突起3R,3Lを先端側から見た図である。図に示すように、この接触ゲージ部2R,2Lは、パチンコ機等の遊技機に用いられる遊技球と略同一の形状を持つ鋼球(例えば、直径10.99〜11.04mmの鋼球)を2個の分球部に分割した形状を有しており、その後方から見ると、等しい最大厚みB(例えば、長さ5.495〜5.52mm)を持つ。そして、2個の分球部2R,2Lは、所定の対向間隙Gを配して互いに対向するように配置されている。
【0008】
前記2個の分球部2R,2Lの厚みが最大(すなわち厚みB)となる点である最厚点P1およびP2においてこの2個の分球部2R,2Lが障害釘40,40の内法間隔の点である内法点P3およびP4に各々接触するとき、前記釘係止突起3R,3Lが丁度障害釘40,40の頭部の点P5およびP6に接触するように釘係止突起3R,3Lが設けられている。そして、障害釘40の直径をA(例えば、1.85mm)とすると、障害釘40,40の内法間隔Dおよび釘中心間隔Lは、それぞれ下記の式、
D=2×B+G……………(1)
L=2×B+G+A……………(2)
により求められる。
【0009】
この場合、上記の図3の例では、障害釘40,40の点P3とP5のなす中心角、および点P4とP6のなす中心角は、両者とも90度の例について説明したが、これは、必ずしも90度である必要はなく、例えば、75度、120度等であってもかまわない。要は、このネイルゲージ機1を使用する測定者が、測定すべき1対の障害釘40,40にこの釘係止突起3R,3Lを係止(載置)させたとき、自動的に接触ゲージ部の2個の分球部2R,2Lの2個の最厚点がP1とP2が障害釘40,40の2個の内法点P3とP4に接触するように上記分球部2R,2Lおよび釘係止突起3R,3Lとが形成されていればよいのである。
【0010】
そして、図5に示すように、上記ネイルゲージ機1の機械的部分である計測機構7においては、上記杆体4R,4Lは、各々杆体回動軸12R,12Lにより回動自在に支持され、杆体4R,4Lの間にはバネ8が設けられ、杆体4R,4Lは、その外側へ開く方向に付勢されている。したがって、2個の分球部2R,2Lは、測定すべき1対の障害釘の間隔に応じて自在に追随する。また、杆体4R,4Lの尾部には、歯車の歯列の一部が形成され、それらの歯列は平歯車等の歯車13の歯と噛み合っている。
【0011】
また図4に示すように、この歯車13は、歯車回動軸14に取り付けられており、歯車13は回動自在に設けられている。歯車回動軸14には、ディスク16が設けられており、その表面と裏面を挟み込むようにしてロータリーエンコーダ17が配置されている。ロータリーエンコーダ17は、ディスク16の回転変位を2相のパルス信号(ディジタル信号)として出力する。
【0012】
また、スイッチ6からのONまたはOFFの動作は、レリーズ21を介して計測機構7に伝えられる。そして、ONの場合は、上記のようにして釘間隔を示すディジタル信号がCPU基板24に送られ、CPU基板24から演算出力されたディジタル計測データは、図示しないリード線を介して液晶表示器15に送られ、データ表示窓9を通して測定者に表示される。さらに、CPU基板24から演算出力されたディジタル計測データは、RS232Cドライバ26で処理された後、RS232C形式の通信用コネクタ29により外部に転送出力される(図4)。
【0013】
上記において、スイッチ6からのONまたはOFFの動作を伝達する機構は、レリーズに限定されず、他の機構、例えば機械的伝達機構、電気的スイッチとアクチュエータ等であってもかまわない。また、図1、図4に示すように、レンジ切換機構10を設け、釘間隔が通常の場合(例えば、釘間隔が12mm程度)と、釘間隔が広い場合(例えば、釘間隔が14mm程度)とでバネ8の付勢力や上記の対向間隙Gを変化させてもよい。
【0014】
前記した構成において、接触ゲージ部2R,2Lは釘接触ゲージ手段、バネ8はゲージ間隙調整手段、スイッチ6は動作制御手段にそれぞれ相当し、ディスク16とロータリーエンコーダ17とはゲージ間隔読取手段を構成している。そして、釘接触ゲージ手段、ゲージ間隙調整手段及びゲージ間隔読取手段は障害釘測定手段を構成している。
【0015】
次に、上記の各基板の電気的な構成をブロック図で図6に示す。図6に示すように、このネイルゲージ機1には、データ信号やコントロール信号の授受のためのバスと、このバスに接続され外部の操作キー28等からの指令により、あるいは予め設定された動作プログラムにより情報処理・制御全体を司るCPU31(Central Processing Unit:中央処理装置)と、バスにより接続されCPU31の動作プログラムデータ等を格納するROM(Read Only Memory:読出専用メモリ)34と、バスに接続されCPU31の処理途中のデータ等を一時的に格納するRAM(Random Access Memory:随時読出し書込み可能メモリ)33と、ロータリーエンコーダ17から送出されてくる読取ディジタルデータ信号であるA相、B相の2相パルス信号内のクロックパルス数をカウントするカウンタ35と、を備えている。CPU31はカウンタ35からのカウント信号から測定すべき障害釘の内法間隔Dおよび釘中心間隔Lをディジタル値で算出する。算出された釘間隔データは、8桁2行の液晶表示器15に送られ数値表示される。
【0016】
また、RS232Cドライバ26は、上記の内法間隔Dおよび釘中心間隔Lのディジタル値を表現したディジタルデータ信号をそれぞれ釘内法間隔データ信号および釘中心間隔データ信号としてシリアルデータ化し、このシリアルデータを通信用コネクタ29を介して外部に出力する。
【0017】
また、上記の各基板等には、電源39から電源用コネクタ18(図4)を介して動作電源が供給される。この動作電源は、外部電源だけに限られず、電池、バッテリー等の内蔵電源であってもよい。
【0018】
また、上記においては、上記基板内に遅延回路等を設け、接触ゲージ部2R,2Lが釘の間に挿入された場合に一旦縮み、次いでバネ8の弾性復元力により接触ゲージ部2R,2Lが釘の内面に追随するまでの期間(例えば、ゲージの接触から0.5秒間など)、データの取り込みを一時行わず、接触ゲージ部2R,2Lが釘の内面に十分追随した後にデータを取り込むような構成としてもよい。
【0019】
ここで、上記データ処理基板24における演算処理について説明しておく。障害釘40,40の内法間隔Dおよび釘中心間隔Lは、上記の式(1)および(2)によって与えられる。値A、Bは既知の値であるが、対向間隙Gは釘の間隔によって変化する。したがって、この値Gを検出することにより障害釘40,40の内法間隔Dおよび釘中心間隔Lを算出することが可能である。
【0020】
あるいは、図7に示すように、ある基準の場合の接触ゲージ部2R,2Lの最厚点P1およびP2の間の距離Doを示すカウンタ35からの読取ディジタルデータ信号の値をSoとしたとき、図7(A)のようにカウンタ出力のディジタル読み値Sと距離Dとの間に直線比例関係がある場合には、読取ディジタルデータ信号の値がSの場合の遊技釘の内法間隔Dは、例えば、下式、
D=Do×S/So……………(3)
あるいは、この直線の傾きをθとしたときには、下式、
D=Do+(S-So)×tanθ……………(4)
等により算出できる。上記の式(3)、(4)におけるSoやtanθの値は、予めこのネイルゲージ機1を製造するときに測定しておき、上記ROM34等に書込んでおいてもよいし、実際の計測前に、分球部2R,2Lを密着させたとき(すなわちG=0のとき)のカウンタの読み値を2Bとするなどのキャリブレーションを行い、上記RAM33等に格納することにより記憶させておいて用いてもよい。
【0021】
また、カウンタの出力のディジタル読み値Sと距離Dとの間の関係が図7(B)に示すような、
D=f(S)……………(5)
の場合にも、キャリブレーションによりDの値を算出することができる。上記のようにして障害釘の内法間隔Dが算出されれば、障害釘の釘中心間隔Lは、下式、
L=D+A……………(6)
により求めることができる。
【0022】
図8は、上記のネイルゲージ機1の実際の使用時における接続例を示したものである。図に示すように、このネイルゲージ機1は、バッテリー等の電源39から動作電源を得て、そうだ制御手段による測定動作が実行状態であれば、釘間隔をディジタル値で計測し、計測したディジタルデータを出力し、この出力をホストコンピュータ50にデータ転送するように接続される。
【0023】
上記のネイルゲージ機1には、図2に示すように、上記CPU31に外部から制御指令を与えるための操作キー28が設けられている。操作キー28の操作は、図4に示すキースイッチ基板22によって電気信号に変換されCPU31に送られる。
【0024】
次に、上記の操作キー28の操作および液晶表示器15におけるデータ表示の例について説明する。この液晶表示器15は、図9ないし図11に示すように、8桁2行の表示が可能な液晶表示器である。
【0025】
まず、図2に示す操作キー28の機能を説明する。「次の台」キーを押すと台番号がキー入力毎に1だけ繰り上がる。「測定入力」キーは、釘間隔を入力するキーであるが、このキーは釘が調整されていない場合の釘間隔データ入力に用いる。ある釘のデータ入力後はその次の釘番号が表示される。「↓前」,「↑次」等の矢印キーを用いれば、任意の釘番号の釘間隔データを入力することができる。「調整入力」キーは、釘間隔調整後のデータを入力するキーである。この場合も、ある釘のデータ入力後はその次の釘番号が表示される。また、「↓前」,「↑次」等の矢印キーを用いれば、任意の釘番号の釘間隔データを入力することができる。「実行」キーは、設定の実行キーであり、例えば、基準ゲージ設定、新データ消去設定等の場合に使用する。「←」,「→」,「↓前」,「↑次」の矢印キーは、桁や番号を選択するため等に使用する。
【0026】
次に、図9(A)に、液晶表示器15の標準表示内容を示す。図9(A)において、「台番」は、パチンコ台番号を示し、「釘番」は、測定する釘番号を示している。また、調整欄に表示された星型印は、釘調整がされていることを示している。「前データ」とは前回に測定した時のデータであり、この前データは上記の測定入力キーあるいは調整入力キーで入力した場合に今回測定した新たな新データの値に更新される。データの数字は、12.00mmを基準とした場合の値を1/100mm単位で表示するものとし、釘間隔12.00mmの場合に「000」と表示する。データは3桁で表示され、右端から4桁目(図上空欄となっている)には、釘間隔が12.00mmより広い場合は「+」を、狭い場合は「-」を表示する。「新データ」とは、今回測定したデータであり、この新データは、次回の測定データが測定入力キーあるいは調整入力キーで入力された場合、または当該新データが消去されるまで本体内に記憶される。したがって、図9(A)は、パチンコ台番号1番の台の釘番号Aの釘のデータであって、前回の釘間隔データは12.55mmであり、その後釘間隔が調整され、今回の釘間隔データは12.77mmであることを示している。
【0027】
次に、操作の手順を説明する。図9(B)は、電源立上げ時の基準ゲージによる初期設定モード(設定1)を示している。本実施例では、この初期設定を行わないと、次の動作に移行できないようになっている。この場合には、まず基準ゲージ(12.00mmのゲージ等)を上記の接触ゲージ部にセットするなどし、実行キーで初期設定を行う。
【0028】
次に、実行キーを操作すると、設定2に移行する。設定2の表示例を図10(A)に示す。ここで、カーソルを矢印キーで「YES」の星印か「NO」の星印かのいずれかの上に移動させることにより、「YES」か「NO」を選択した後、実行キーを押す。「YES」を押すと、前回の「新データ」の欄は消去され、空欄となる。この「YES」か「NO」の選択が実行されると、上述した標準表示に移行する。
【0029】
新データ消去後にこの標準表示に移行した場合は、カーソルが、図10(B)に示すように、台番号の1桁目の位置に表示される。図に示すように、前データには前回入力されたA釘データ(図9(A)における「077」)が表示され、今回の新データは、現在測定中のデータ「099」が表示される。台番号の変更は、「←」,「→」,「↓前」,「↑次」の矢印キーにより行うことができる。すなわち、「←」,「→」のキーによりカーソルを台番号の各桁の位置まで移動させ、「↓前」,「↑次」のキーにより数字を変更するのである。
【0030】
次に、台番号の設定が終了した後、釘番号を同様に矢印キーにより行う。釘番号が設定されると、前データの欄には、その釘番号の前回入力されたデータ(図10(B)では「077」)が表示される。
【0031】
釘番号設定後、データ入力は、その釘が前回から今回の間に釘間隔調整されたか否かにより、釘調整後であれば調整入力キーを使用し、測定のみであれば測定入力キーを使用してデータ入力を行う。釘番は、データ入力を行う毎に1だけ繰り上がるが、矢印キーにより任意の釘番に変更してデータ入力を行ってもよい。
【0032】
1つの台での測定が終了した場合、「次の台」キーを押すと台番号が1だけ繰り上がる。それ以外の場合で台番号を変更するときは、矢印キーを使用する。台番号変更設定後は、上記と同様にして、釘番号の設定、データ入力の順にデータ測定を繰り返し行う。
【0033】
標準表示中に初期設定が必要な場合は、「実行」キーを押すことにより、表示は「設定1」に変更され初期設定を行うことができる。そして、初期設定後、「設定2」になり、「新データ消去YES?」と表示されるので、矢印キーにより「NO」を選択し「実行」キーを押せば再び標準表示状態となる。
【0034】
遊技店内の管理装置等との通信は、RS232Cケーブルを使用し、管理装置からの通信要求により通信を行う。また、全データ消去は、図2に示す「RST」キー30を押すことにより行うことができる。
【0035】
また、図11(A)の表示がされた場合は、バッテリー電圧が不足していることを表しており、新しいバッテリーとの交換時期を示している。また、図11(B)の表示は、メモリバッテリーの電圧不足を表している。この場合には、前データおよび新データが消去されるおそれがあるので、ただちに管理装置等へデータ転送を行い、一旦使用を中止する必要がある。
【0036】
上記のようにして計測された釘間隔データは、コンピュータ等に逐次データ転送するようにしてもよいし、1台の遊技機のデータ毎に、あるいは遊技店における1つの遊技機の島ごとの全データを一旦上記RAM33等に格納することにより記憶させ、全データ収集後にまとめてコンピュータ等にデータ転送することもできる。
【0037】
次に、図12に、本発明の他の実施例であるネイルゲージ機1Aの構成を示す。このネイルゲージ機1Aは、図に示すように、釘係止突起3Aを設けた接触ゲージ部2Aと、この接触ゲージ部2Aに接続する杆体4Aと、この杆体4Aの動きにより障害釘の釘間隔を計測しデータ表示・データ出力等を行う計測制御部5Aと、を備えて構成される。計測制御部5Aには、測定動作のON(動作実行)、OFF(動作停止)を行うスイッチ6A、測定した釘間隔データをディジタル値で数値表示するデータ表示窓9A、操作キー28A、電源スイッチ23A、全データ消去キー30A、テンキー36が設けられている。上記の釘係止突起3A、接触ゲージ部2A、杆体4Aは、左右2つの部分に分かれていることは、図1のネイルゲージ機1と同様である。また、内部の構成等は、図1に示すネイルゲージ機1と同様である。本発明に係る釘間隔測定装置は、図12に示すように、卓上電子計算機のような形態を有していてもよい。
【0038】
以上本発明を図面に示す実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。上記実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0039】
例えば、上記実施例においては、ゲージ間隔読取手段として、ロータリーエンコーダとパルスカウンタを用いる例について説明したが、これは、距離を検出できる手段であれば、いかなる形式のものであってもよく、電気的、磁気的、光学的、機械的等、種類を問わない。また、データ出力手段についても、シリアルデータ転送方式のみならず、パラレルにデータ転送を行う方式であってもよく、コンピュータ等にデータ転送するのであれば、どのような形態でもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、上記構成を有する本発明に係る遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法によれば、1対の障害釘の内法間隔を2個の釘接触ゲージ手段にそれぞれ接続する2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータにより測定する障害釘測定手段と前記障害釘測定手段の測定動作の実行または停止を制御する動作制御手段とにより、必要なときに必要なデータを、確実に、高精度に測定することができる。そして、データ演算出力手段により、前記動作制御手段から測定を実行すべき動作制御信号が発せられた場合に前記障害釘測定手段が障害釘の内法間隔を測定して前記2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを出力し、当該2個の杆体の動きによる読取ディジタルデータを演算して出力し、コンピュータ等に釘間隔をディジタル値で計測したディジタルデータを転送するするので、従来のアナログ式の釘間隔測定装置と比べ、指針等が落ち着くまでの時間等も含め、測定データをディジタル値で自動的に表示可能であり、読取誤差も生じない、という効果を有している。さらに、読み取ったデータを直接コンピュータ等にデータ転送するので、テンキーなどでコンピュータ等に手動で再度入力する必要がなく、手動入力によるエラーが発生しないし、即座に正確なパチンコ遊技店において著しく実用的価値の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例であるネイルゲージ機の全体構成を示す側面図である。
【図2】
図1に示すネイルゲージ機の背面の構成を示す背面図である。
【図3】
図1に示すネイルゲージ機における接触ゲージ部および釘係止突起の構成と障害釘との関係を示す図である。
【図4】
図1に示すネイルゲージ機における計測制御部の内部構成を示す側面断面図である。
【図5】
図4に示すネイルゲージ機における計測機構の詳細構成を示す平面図である。
【図6】
図5に示すネイルゲージ機における各基板内のさらに詳細な構成を示すブロック図である。
【図7】
図6に示すデータ処理基板における数値演算処理を説明する概念図である。
【図8】
本実施例のネイルゲージ機の使用時における接続構成を示す図である。
【図9】
本実施例のネイルゲージ機の使用時におけるデータ表示の例を示す図(1)である。
【図10】
本実施例のネイルゲージ機の使用時におけるデータ表示の例を示す図(2)である。
【図11】
本実施例のネイルゲージ機の使用時におけるデータ表示の例を示す図(3)である。
【図12】
本発明の他の実施例であるネイルゲージ機の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,1A ネイルゲージ機
2R,2L,2A 接触ゲージ部
3R,3L,3A 釘係止突起
4R,4L,4A 杆体
5,5A 計測制御部
6,6A スイッチ
7 計測機構
8 バネ
9,9A データ表示窓
10 レンジ切換機構
12R,12L 杆体回動軸
13 歯車
14 歯車回動軸
15 液晶表示器
16 ディスク
17 ロータリーエンコーダ
18 電源用コネクタ
20 2次コイル
21 レリーズ
22 キースイッチ基板
23,23A 電源スイッチ
24 CPU基板
25 I/O基板
26 RS232Cドライバ
27 リセットボタン
28,28A 操作キー
29 通信用コネクタ
30,30A 全データ消去キー
31 CPU
33 RAM
34 ROM
35 カウンタ
36 テンキー
39 電源
40 障害釘
50 ホストコンピュータ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2002-06-28 
結審通知日 2002-07-03 
審決日 2002-07-16 
出願番号 特願平11-176383
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 片岡 栄一
千葉 輝久
登録日 2000-07-07 
登録番号 特許第3084560号(P3084560)
発明の名称 遊技機用釘間隔の測定装置及び測定方法  
代理人 福田 賢三  
代理人 保坂 延寿  
代理人 福田 伸一  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 福田 武通  
代理人 田中 克郎  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 伸一  
代理人 大賀 眞司  

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