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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1100347
審判番号 不服2002-3653  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-01 
確定日 2004-07-14 
事件の表示 平成 8年特許願第200036号「商品の販売計画数量または生産計画数量の算出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月20日出願公開、特開平10- 49597〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願は、平成8年7月30日の出願であって、平成13年8月31日付で拒絶の理由が通知され、これに対して、平成13年12月3日付で意見書とともに手続補正書が提出されて手続補正がなされたものの、平成13年12月28日付で拒絶の査定がなされ、この査定を不服として、平成14年3月1日付けで審判の請求がなされるとともに、特許法第17条の2第1項第3号に規定する期間内である、平成14年3月26日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年3月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年3月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
平成14年3月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成13年12月3日付手続補正により補正された特許請求の範囲についてさらに補正するものであって、その補正前後の特許請求の範囲を対比すると、補正前の請求項1及び2をそれぞれ補正後の請求項1及び2とするものであり、請求項1についての補正は、次のとおりである。
(本件補正前)
【請求項1】特定の商品について所定期間毎に、生産実績数量、注文を受けた受注実績数量、販売実績数量、在庫実績数量、注文を受け生産中または生産したが販売されずに残っている注残実績数量の各実績データをサーバコンピュータからネットワーク通信によりクライアントコンピュータに伝達して記憶させて、該各実績データを用いて将来の所定期間における商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて、クライアントコンピュータを用いて立案するシステムで実行される商品の販売計画数量の算出方法において、
現時点から将来のある時点における受注数量を予測した受注予測数量を入力する受注予測数量入力ステップと、
前記受注予測数量入力ステップから入力された前記将来の所定期間における受注予測数量と、サーバコンピュータからネットワーク通信を介して入手しクライアントコンピュータの記憶手段が記憶している前記将来の所定期間に対応する過去のある期間における注残実績数量と受注実績数量とを用いて、注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求め、その注残率と前記受注予測数量とを乗算することにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出する前記注残計画数量算出ステップと、
前記将来の所定期間の商品の販売計画数量Hを、
(商品の販売計画数量H)=(所定期間の直前期間における注残実績数量若しくは注残計画数量)+(所定期間の受注予測数量)-(所定期間の注残計画数量CK)
に基づいて算出する販売・生産計画立案ステップとを有することを特徴とする商品の販売計画数量の算出方法。

(本件補正後)
【請求項1】特定の商品について所定期間毎に、生産実績数量、注文を受けた受注実績数量、販売実績数量、在庫実績数量、注文を受け生産中または生産したが販売されずに残っている注残実績数量の各実績データをサーバコンピュータの記憶手段に記憶させ、該サーバコンピュータの記憶手段が記憶した前記各実績データをネットワーク通信によりクライアントコンピュータの演算手段に伝達して、該各実績データを用いて将来の所定期間における商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて、クライアントコンピュータを用いて立案するシステムで実行される商品の販売計画数量の算出方法において、
現時点から将来のある時点における受注数量を予測した受注予測数量を入力する受注予測数量入力ステップと、
前記受注予測数量入力ステップから入力された前記将来の所定期間における受注予測数量と、前記サーバコンピュータの記憶手段が記憶している前記各実績データの中から読み出し、ネットワーク通信により前記クライアントコンピュータの演算手段に伝達した前記将来の所定期間に対応する過去のある期間における注残実績数量と受注実績数量とを用いて、前記クライアントコンピュータの演算手段に、注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求めさせ、その注残率と前記受注予測数量とを乗算処理させることにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出する前記注残計画数量算出ステップと、
前記サーバコンピュータの記憶手段が記憶している前記各実績データの中から読み出し、ネットワーク通信により前記クライアントコンピュータの演算手段に伝達した所定期間の直前期間における注残実績数量若しくは注残計画数量と、前記受注予測数量入力ステップから入力された前記将来の所定期間における受注予測数量と、前記注残計画数量算出ステップで算出した前記将来の所定期間の注残計画数量CKとを用いて、前記クライアントコンピュータの演算手段に、前記将来の所定期間の商品の販売計画数量Hを、
(商品の販売計画数量H)=(所定期間の直前期間における注残実績数量若しくは注残計画数量)+(所定期間の受注予測数量)-(所定期間の注残計画数量CK)に基づいて算出させる販売・生産計画立案ステップとを有することを特徴とする商品の販売計画数量の算出方法。

(2)本件補正の目的
本件補正の請求項1についてする補正が、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるかを検討すると、原審における審査経過からみて、請求項1についてする補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項について明りょうでない記載の釈明をするものではないから、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる事項を目的とするものではない。
また、上記請求項1についてする補正は、同法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、あるいは同第3号の誤記の訂正、の何れをも目的とするものではないことは明らかである。
そこでさらに、上記請求項1についてする補正が、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものであるか検討する。
上記補正前後の請求項1の記載を対比すると、上記請求項1についてする補正は、例えば、商品の販売計画数量の算出方法を実行するシステムについて、補正前の「各実績データをサーバコンピュータからネットワーク通信によりクライアントコンピュータに伝達して記憶させて」を、「各実績データをサーバコンピュータの記憶手段に記憶させ、該サーバコンピュータの記憶手段が記憶した前記各実績データをネットワーク通信によりクライアントコンピュータの演算手段に伝達して」と補正し、また、注残計画数量算出ステップについて、補正前の
「前記受注予測数量入力ステップから入力された前記将来の所定期間における受注予測数量と、サーバコンピュータからネットワーク通信を介して入手しクライアントコンピュータの記憶手段が記憶している前記将来の所定期間に対応する過去のある期間における注残実績数量と受注実績数量とを用いて、注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求め、その注残率と前記受注予測数量とを乗算することにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出する」を、
「前記受注予測数量入力ステップから入力された前記将来の所定期間における受注予測数量と、前記サーバコンピュータの記憶手段が記憶している前記各実績データの中から読み出し、ネットワーク通信により前記クライアントコンピュータの演算手段に伝達した前記将来の所定期間に対応する過去のある期間における注残実績数量と受注実績数量とを用いて、前記クライアントコンピュータの演算手段に、注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求めさせ、その注残率と前記受注予測数量とを乗算処理させることにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出する」と補正するものを含んでいる。
そして、請求項1についてするこれらの補正は、請求項1に係る発明を、各実績データを、サーバコンピュータからネットワーク通信を介して入手しクライアントコンピュータの記憶手段に記憶させ、そして、その記憶されている注残実績数量と受注実績数量とを用いて演算処理するものから、各実績データを、サーバコンピュータの記憶手段に記憶させ、そして、その記憶されている各実績データの中から注残実績数量と受注実績数量とを読み出し、ネットワーク通信によりクライアントコンピュータの演算手段に伝達して演算処理するものに変更するのであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「商品の販売計画数量の算出方法を実行するシステム」や「注残計画数量算出ステップ」を限定的に減縮するもではないことは明らかである。

(3)むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年3月26日付け手続補正は、上記のとおり決定をもって却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、 上記本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)原査定の理由
原査定の理由の概要は、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない、というものであって、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない理由として、概ね次の点を挙げている。

本願発明の、「各実績データをサーバコンピュータからネットワーク通信によりクライアントコンピュータに伝達して記憶させて、該各実績データを用いて将来の所定期間における商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて、クライアントコンピュータを用いて立案するシステム」において、計算の際に入力される情報が、「サーバコンピュータからネットワーク通信を介して入手され」、また、「クライアントコンピュータの記憶手段が記憶している」ことは、商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて算出するために、コンピュータが単に使用されていることを示すにすぎない。
また、具体的な計算の処理として、「注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求め、その注残率と前記受注予測数量とを乗算することにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出」し、「将来の所定期間の商品の販売計画数量Hを、(商品の販売計画数量H)=(所定期間の直前期間における注残実績数量若しくは注残計画数量)+(所定期間の受注予測数量)-(所定期間の注残計画数量CK)に基づいて算出する」ということだけでは、販売計画数量の算出のための処理とコンピュータとが協働しているとはいえないから、上記計算手順を実行するソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているものが記載されているとは認められない(コンピュータのハードウェア資源がどのように用いられて処理されるかを示す具体的な事項が記載されていない。)。
してみれば、請求項1の記載は、全体として、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているものが記載されていないことから、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められない。

(3)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、概略、「本願の請求項1には、商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて算出するために、コンピュータが単に使用されていることを示したにすぎないのではなく、商品の販売計画数量の計算手順を実行するソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているものが記載されており、本願請求項1に係る発明は、自然法則を利用した技術的創作である。」と主張している。

(4)当審の判断
本願発明は、上記本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、概略、各実績データを用いて将来の所定期間における商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて、クライアントコンピュータを用いて立案するシステムで実行される商品の販売計画数量の算出方法であって、受注予測数量入力ステップと、注残計画数量算出ステップと、販売・生産計画立案ステップとを有するものである。
本願発明が自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するか否かを判断するために、まず、本願発明がどのような原理、法則に基づいているかを検討する。
(イ)受注予測数量入力ステップについて
本願の明細書段落番号【0003】及び【0004】の記載によれば、自動車の生産工場等のケースでは、販売の予測が純粋な市場の動向だけでなくメーカー自らの生産の状況等の影響を含んだものとなってしまい、複雑な与件を含んだ予測値となり、販売計画・生産計画等を決める際の不確定要素が大きく増加し、予測値が大きく外れる問題があったことから、この問題を解決するために、商品の受注を受けてから販売までの期間が、商品の売れ行き、生産工場の負荷や制約により大きく変動する種類の商品に適する販売計画数量または生産計画数量の算出方法を提供することに、本願発明の解決しようとする課題があることは明らかである。
そして、本願発明は、そのために、与えられた受注予測数量を用いるのであるから、本願明細書には明記されていないものの、受注の予測は、販売の予測とは異なり、予測が容易であると云うことを、本願発明は前提としていると認められる。
したがって、本願発明において、与えられた受注予測数量に基づいて販売計画数量を算出すること、そのために受注予測数量入力ステップを有することは、「受注の予測は、販売の予測とは異なり、予測が容易である」という原理に基づくものと認められる。
そして、受注の予測が販売の予測より容易だということは、裏を返せば、販売の予測は困難であるということであり、本願明細書の記載によれば、それは、販売の予測が純粋な市場の動向だけでなくメーカー自らの生産の状況等の影響を含んだものであって、商品の売れ行き、生産工場の負荷や制約により大きく変動するものであるからであり、自然法則に基づくものとは認められない。
(ロ)注残計画数量算出ステップについて
注残計画数量算出ステップは、将来の所定期間に対応する過去のある期間における注残実績数量と受注実績数量とを用いて、注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求め、その注残率と前記受注予測数量とを乗算することにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出するものであるが、これは、将来と過去の対応する所定期間においては注残率がほぼ等しい、という本願発明の発明者が発見した経験則に基づいたものであることは、本願明細書及び図面の記載から明らかである。
そして、この経験則の成り立つ理由として、12月及び7月にはボーナスが支給され受注が増加し、4月には就職、進学により受注が増加するためである旨本願明細書に記載されているように、この経験則は、自然法則に基づくものではない。
(ハ)販売・生産計画立案ステップについて
販売・生産計画立案ステップは、将来の所定期間の商品の販売計画数量Hを、
(商品の販売計画数量H)=(所定期間の直前期間における注残実績数量若しくは注残計画数量)+(所定期間の受注予測数量)-(所定期間の注残計画数量CK)に基づいて算出するものであるが、これは、上記式の変数の定義から導かれるものである。
したがって、本願発明における販売計画数量の算出方法の処理自体は、受注予測は容易であること、将来と過去の対応する所定期間においては注残率がほぼ等しいということ、及び、販売計画数量等の定義に基づくものであって、自然法則以外の法則に基づくものである。

次に、本願発明の販売計画数量の算出方法で用いられるハードウェア資源について検討すると、本願の請求項1の記載からみて、それらは、サーバコンピュータ、ネットワーク、クライアントコンピュータと当該クライアントコンピュータの記憶手段であって、その構成は、本願明細書の段落番号【0015】にも記載されているように通常のコンピュータシステムである。
そして、本願発明における販売計画数量の算出方法に用いられるハードウェア資源の利用方法は、請求項1に記載されたとおりであって、「各実績データをサーバコンピュータからネットワーク通信によりクライアントコンピュータに伝達して記憶させ」、「該各実績データを用いて将来の所定期間における商品の販売計画数量を、与えられた受注予測数量に基づいて、クライアントコンピュータを用いて立案する」ものであって、「サーバコンピュータからネットワーク通信を介して入手しクライアントコンピュータの記憶手段が記憶している前記将来の所定期間に対応する過去のある期間における注残実績数量と受注実績数量とを用いて、注残実績数量を分子とし、受注実績数量を分母として、注残率を求め、その注残率と前記受注予測数量とを乗算することにより、前記将来の所定期間における注残計画数量CKを算出する」ことと、将来の所定期間の商品の販売計画数量Hを、(商品の販売計画数量H)=(所定期間の直前期間における注残実績数量若しくは注残計画数量)+(所定期間の受注予測数量)-(所定期間の注残計画数量CK)に基づいて算出することであり、通常のコンピュータシステムを本願発明における販売計画数量の算出方法にただ単に用いたものであり、その利用方法に、自然法則を利用した技術的思想の創作があるとは認めることができない。
また、コンピュータシステムのハードウェア資源を用いたということで自然法則を利用したといえないことはないとしても、ただ単に用いたというだけで本願発明が自然法則を利用した技術的思想の創作であると認めることは、実質的に、「受注予測は容易であること、将来と過去の対応する所定期間においては注残率がほぼ等しいということ、及び、販売計画数量等の定義」という自然法則以外のもののみを利用した発明に特許を与えることになることから、これを認めることはできない。

以上のとおりであるので、本願発明は、自然法則以外の法則に基づいた販売計画数量の算出方法であって、その算出方法をコンピュータシステム上で実行する点にも、自然法則を利用した技術的思想の創作であると認められるものがないから、特許法第2条第1項で定める発明に該当しない。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する発明に該当しないので、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-30 
結審通知日 2004-04-20 
審決日 2004-05-10 
出願番号 特願平8-200036
審決分類 P 1 8・ 14- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小太刀 慶明▲吉▼田 耕一岩間 直純  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 久保田 健
平井 誠
発明の名称 商品の販売計画数量または生産計画数量の算出方法  
代理人 山中 郁生  
代理人 富澤 孝  
代理人 岡戸 昭佳  

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