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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1100447
審判番号 不服2002-2466  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-14 
確定日 2004-07-15 
事件の表示 平成 7年特許願第295570号「反射型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月27日出願公開、特開平 9-138396〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年11月14日に出願された特許出願であって、原審において、平成12年12月14日付で拒絶理由が通知され、これに対し、平成13年2月16日に手続補正がなされたところ、平成14年1月8日付で拒絶査定がなされた。これに対し、同年2月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項に係る発明は、上記手続補正がなされた明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のものである。
「【請求項1】 印加電圧に応じて入射光を変調する液晶パネルと、その背面に配置され変調された入射光を反射して前記液晶パネル側に出射する反射板とを備えた反射型液晶表示装置であって、
前記反射板は、体積位相反射型ホログラムからなる回折反射層を含んでおり、前記回折反射層は、照明光源の反射像と表示画像とが視角的に分離するように、正反射方向からずれた方向に入射光を回折反射することを特徴とする反射型液晶表示装置。」
2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平7-24401号(特開平8-220534号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明電極付きの基板間に挟持された液晶層と、それらの透明電極間に電圧を印加する駆動手段とを有し、液晶層の両外側に一対の偏光板を配置した液晶表示装置において、観察者側と反対側の偏光板の外側にホログラムを配置したことを特徴とする液晶表示装置。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示装置に関するものであり、特に、反射型として用いられる液晶表示装置に関するものである。
【0003】
一方、反射型表示装置の場合には、これら光源等を用いず外光を利用して表示を認識するものであり、周囲が暗い環境での使用は困難であるが携帯型機器等の小型、軽量、低消費電力等が求められる表示装置としては最適である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
反射型液晶表示装置では、その表示品質を向上させる要因の一つとして、その反射板の特性が重要であるが、従来高反射率材料を用いているだけで、その波長特性、反射角度特性を充分に考慮していなかったため、必ずしも見やすい液晶表示装置が得られていなかった。
【0012】
図2は携帯型機器に搭載された液晶表示装置を使用する場合の状態を示す模式図である。
図2において、23は液晶表示装置を搭載した携帯型機器、24は携帯型機器の使用者つまり表示を視認する観視者、25はその観視者の視線、26は照明の方向、27は蛍光灯等の照明、28は正反射光を示している。
【0013】
通常、観視者24は携帯型機器23を照明27の下で手で保持し、下向きに視線25を落として表示を視認することが多い。また、視線25は携帯型機器23の表示装置面に対して垂直になるように携帯型機器23を保持することが多い。そのため、液晶表示装置に配置された反射板による情報を含む正反射光28は観視者26には視認されにくい傾向がある。このため、見やすい位置を求めて、携帯型機器の表示面を動かして見ることが多い。
【0014】
このため、照明光を有効に利用しているとは言えず、表示品質を落とす要因となっている。また、正反射光28と視線25を一致するような状態では表示装置表面での照明27の所謂「写り込み」があり、視認性に影響があった。
【0022】
この液晶表示装置は、液晶セル10の両基板11、12の電極15、16間に電圧を印加して表示駆動する。外部からの光は、表面側(図1では上側)の偏光板13により直線偏光されて液晶セル10に入射する。そしてこの液晶セル10の両基板11、12の電極15、16間に電圧を印加した部分では、この直線偏光された光は、理想的には液晶分子が基板に垂直な方向に立っているので、そのまま偏光方向が回転せずに通過し、裏側の偏光板14の透過軸が90°ずれているので、光が吸収される。
【0027】
ホログラム22は、図2に示すような照明27の位置による視認性の変化を緩和するために用いる。このホログラムは通常反射型のホログラムが用いられる。このホログラムは、液晶表示装置に斜め方向から入射した光26が、正反射光28に強く出射しないで、視線25の方向に出射する光を多くする役目を果たす。
【0028】
代表的な実施例としては、ホログラムの特性を考慮して、3枚のホログラムを積層したものである。夫々のホログラムは図2に示すような携帯機器の使用状態を鑑み、実験的に入射角60°、回折角 0°の反射型ホログラムとした。その半値幅は50nmとした。この時、入射方向を液晶表示装置面内に投影した方向は携帯型機器の使用状態で上部方向になるようにし、3枚のホログラムのうち1枚は表示装置面内の縦方向中心線と一致させ、他の2枚は縦方向中心線から左60°、右60°回転させて積層した。
【0030】
この実施例では、ホログラム22の入射角は60°、回折角は 0°としたが、この角度に限定されるものではない。また、この実施例では、ホログラム22は3枚のホログラムを積層したが、1枚のホログラムで多重露光により形成してもよいし、積層する枚数にとらわれるものではない。
【0031】
本発明の実施例に用いたホログラムの夫々1枚は、厚さ20μmのアクリル系のフォトポリマーから形成したホログラムであり、リップマンタイプの体積・位相型のホログラムとした。」(特許請求の範囲、各段落番号を参照)が記載されている。
これら記載及び図1,図2によれば、先願明細書には、
「液晶セル10の両基板11、12の電極15、16間に電圧を印加して表示駆動され、外部からの光は、表面の観察者側(図1では上側)から液晶セル10に入射し、観察者側と反対側の偏光板の外側にホログラムを配置した反射型液晶表示装置において、前記ホログラムは、リップマンタイプの体積・位相型の反射型ホログラムであって、液晶表示装置に斜め方向から入射した光26が、正反射光28に強く出射しないで、視線25の方向に出射する光を多くする役目を果たす」ことが記載されている。
3.対比・判断
そこで、本願発明と先願明細書に記載された発明とを比較すると、
【1】先願明細書に記載された発明の「液晶セル」は、本願発明の「液晶パネル」に相当し、同様に「体積・位相型の反射型ホログラム」は、「体積位相反射型ホログラムからなる回折反射層を含んだ反射板」に、「液晶表示装置に斜め方向から入射した光26」は、「入射光」に、「入射した光26は視線25の方向に出射」は、「正反射方向からずれた方向に入射光を回折反射」にそれぞれ相当し、
【2】先願明細書に記載の液晶セルが、「印加電圧に応じて入射光を変調」することは自明のことであるとともに、観察者側と反対側に配置された反射型ホログラムは、「該変調された入射光を反射して該液晶セル側に出射する」ことは図1から見て明らかであり、
【3】先願明細書に記載のホログラムは、図1から明らかなように、表示画像である視線25の方向に出射する光と、照明27の反射像である正反射光28とが視覚的に分離しているので、
両者は、「印加電圧に応じて入射光を変調する液晶パネルと、その背面に配置され変調された入射光を反射して前記液晶パネル側に出射する反射板とを備えた反射型液晶表示装置であって、
前記反射板は、体積位相反射型ホログラムからなる回折反射層を含んでおり、前記回折反射層は、照明光源の反射像と表示画像とが視角的に分離するように、正反射方向からずれた方向に入射光を回折反射することを特徴とする反射型液晶表示装置。」である点で一致する。つまり両者には、相違点は存在せず、構成上の差異は見いだせない。
なお、請求人は、平成14年5月23日付審判請求理由補充書3頁下から5行〜4頁5行において、
「しかし、反射型液晶表示装置では、周辺光を照明光として用いるため、1枚の偏光板のみを用いても、偏光板側から光を入射させると反射層によって光が反射した後、表示光として出射することになり、偏光板を2回(入射時および出射時)透過するため、偏光板2枚分と等価にできることもあり、1枚の偏光板のみを用いた形態も公知である。引用文献2では全般に渡って、「一対の偏光板」を必須要件としており、偏光板が1枚だけの形態の液晶表示装置については、引用文献2からは何らの教示を受けるものではない。
従って、本願請求項1については、偏光板が1枚だけの構成の液晶パネルについては、特許法29条の2の規定は該当しないと考えられる。」と主張している。(注:引用文献2とは、上記先願明細書のことであり、下線部は当審にて追加。)
ところで、本願の特許請求の範囲のみならず、明細書においても、液晶の表示方式、液晶の種類についてだけでなく、偏光板の要・不要、必要な場合には1枚であること、さらには1対では本願発明の実施の上で特段不都合があることなどについて何ら記載されていないところ、反射型液晶表示装置において、液晶の表示方式、液晶の種類などに応じて偏光板が不要、あるいは1枚または1対を必要とすることは当業者に自明なことであるから、これを勘案すると、本願発明においても偏光板が1対のものも当然含まれるので、上記偏光板が1枚だけの構成の液晶パネルについては、特許法29条の2の規定は該当しないとする上記主張は採用できない。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-18 
結審通知日 2004-05-18 
審決日 2004-05-31 
出願番号 特願平7-295570
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橿本 英吾  
特許庁審判長 瀧本 十良三
特許庁審判官 吉田 英一
町田 光信
発明の名称 反射型液晶表示装置  

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