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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1100449
審判番号 不服2002-13129  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-12 
確定日 2004-07-15 
事件の表示 平成11年特許願第125361号「塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 6月20日出願公開、特開2000-170361]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年4月30日(パリ条約による優先権主張1998年12月8日、大韓民国、1999年4月12日、大韓民国)の出願であって、平成14年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年7月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年8月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年8月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の、
「【請求項1】 塩化ビニル樹脂の基材層(substrate layer)100の上にメラミン樹脂含浸紙層150が重ねられた集積束(bundle)を加圧して接着された塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材であり、ワッディング(wadding)シート、織布又は不織布からなる群から選択される材質のバランス層140が基材層100とメラミン樹脂含浸紙層150との間、又は基材層100の下に重ねられた集積束を加圧して接着されてなる、バランス層140を含む塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材。」を、
「【請求項1】 上から
a)透明保護層153と、
b)模様層152と、
c)コア層151と、
d)天然繊維をワツデイング(wadding)で製造したシート、織布(woven fabric)、及び不織布(non-woven fabric)からなる群から選択される材質のバランス層140と、
e)塩化ビニル樹脂の基材層100と
を含み、バランス層内の繊維がバランス層の上、下層であるa)〜c)からなる樹脂含浸紙層と塩化ビニル樹脂層とに入り込んでいることを特徴とする塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材。」と補正することを含むものである。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「メラミン樹脂含浸紙層150」を、『a)〜c)からなる樹脂含浸紙層』と補正するものであって、「メラミン樹脂」との限定が削除されたことにより、特許法第17条の2第4項に掲げる、特許請求の範囲の限定を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明を目的とするものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年8月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜39に係る発明のうち、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年10月9日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「塩化ビニル樹脂の基材層(substrate layer)100の上にメラミン樹脂含浸紙層150が重ねられた集積束(bundle)を加圧して接着された塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材であり、ワッディング(wadding)シート、織布又は不織布からなる群から選択される材質のバランス層140が基材層100とメラミン樹脂含浸紙層150との間、又は基材層100の下に重ねられた集積束を加圧して接着されてなる、バランス層140を含む塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材。」

(1)刊行物
原査定に引用され本願出願前に頒布された実願平1-135638号(実開平3-73347号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
「(産業上の利用分野) 本願考案は・・・床タイルに関する。」(明細書1頁下1行〜2頁1行)、
「第1図は本考案床タイル断面図であり1は、・・・熱可塑性樹脂基材であり、ポリ塩化ビニル(PVC)・・・等の樹脂が好適」(同3頁1〜4行)、「基材層の上には模様層2を形成する。」(同3頁11行)、「この模様層2は・・・熱硬化性樹脂表面層3で被覆されている。この表面層3は・・・メラミン・・・等の熱硬化性樹脂で、・・・印刷された紙に含浸されてオーバーレイヤー層として形成され硬化されてもよい。」(同4頁1〜8行)、「模様層2と表面層3が積層されて表面化粧層6が得られる。」(同4頁13〜14行)、「本考案床タイルには合成樹脂基材中には・・・織布または不織布からなる・・・繊維補強材5が介在している。床タイル中に繊維補強材を介在させることにより、起り(むくり)や反りを防止し、寸法安定性を向上させ、タイル施工後も常に良好な状態で使用でき、優れた形状安定性が得られる。このようにして本考案床タイル7が得られる。」(同4頁18行〜5頁7行)、
「第2図は本考案床タイルの他の断面図であり、模様層2と表面層3からなる表面化粧層6と基材1の間に前記と同じ繊維補強材8が積層されており、一方基材中にも繊維補強材5が積層されている。このようにして床タイル9が得られる。」(同5頁8〜13行)、
「第1図、第2図の床タイルは合成樹脂基材1、基材中に介在される繊維補強材5、表面化粧層5と基材間の繊維補強材8、表面化粧層が下から順次熱圧成型され、積層されて得られる。この時表面化粧層と基材間は・・・接着剤を塗布し、接着強度をより高めるのが望ましい。」(同5頁下2行〜6頁1行)、
「実施例1 印刷した紙にメラミン樹脂を含浸し、更にメラミン樹脂でオーバーレイヤー層を塗布形成後、模様層および・・・表面層が積層された表面化粧層を形成した。一方従来のPVC床タイル用組成物の・・・下層シートと・・・上層シート間に・・・ガラス繊維不織布を介在させてこれを積層して 基材を得て、その一面を平滑にし、・・・上記PVCシートの平滑面上に・・・接着剤を介して印刷紙のオーバーレイヤ一層側を外側にして表面化粧層を熱圧成型し、積層した。」(7頁7行〜8頁2行)、
「実施例2 実施例1の表面化粧届と基材間にさらに・・・ガラス繊維不織布をホットメルト接着剤を介して積層一体化した。」(8頁9〜12行)。
上記記載及び第2図の記載及び技術常識からみて、刊行物には、実施例2として、「繊維補強層5を介在させたポリ塩化ビニル樹脂の基材1上にメラミン樹脂を含浸させた表面化粧層6が積層された積層体を熱圧成型して接着された床タイル9であり、織布又は不織布からなる繊維補強層8が基材1と表面化粧層6との間に積層された積層体を熱圧成型して接着する、繊維補強層8を含む床タイル9。」の発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
本願発明と上記刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「ポリ塩化ビニル樹脂の基材1」、「メラミン樹脂を含浸させた表面化粧層6」、「積層された」、「積層体」、「床タイル9」、「繊維補強層8」が、本願発明の「塩化ビニル樹脂の基材層(substratelayer)100」、「メラミン樹脂含浸紙層150」、「重ねられた」、「集積束(bundle)」、「塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材」、「バランス層140」に相当し、
両者は、
「塩化ビニル樹脂の基材層(substrate layer)100の上にメラミン樹脂含浸紙層150が重ねられた集積束(bundle)を接着された塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材であり、織布又は不織布からなる群から選択される材質のバランス層140が基材層100とメラミン樹脂含浸紙層150との間に重ねられた集積束を接着されてなる、バランス層140を含む塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材。」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明が塩化ビニル樹脂の基材層からなるのに対し、刊行物記載の発明は塩化ビニル樹脂の基材層中に繊維補強層5を介在させた点。
(相違点2)
本願発明が集積束を加圧して接着するのに対し、刊行物記載の発明は集積束を熱圧成型して接着する点。
上記相違点1を検討すると、刊行物記載の発明において塩化ビニル樹脂の基材層中に繊維補強層5を介在させた作用効果は、「本考案床タイルには合成樹脂基材中に・・・繊維補強材5が介在している。繊維補強材を介在させることにより、起り(むくり)や反りを防止し、寸法定性を向上させ、タイル施工後も常に良好な状態で使用でき、優れた形状安定性が得られる。」(明細書4頁下3行〜5頁6行)からであり、基材と表面化粧層との間に介在させた「繊維補強層8」(本願発明の「バランス層」に相当。)についても同様の作用効果を奏することは明らかである。そして、その補強の程度を考慮して、基材と表面化粧層との間に介在させた「繊維補強層8」のみとし、本願発明のように塩化ビニル樹脂の基材層とすることは、当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。
上記相違点2を検討すると、集積束を接着する際に、加圧、熱圧成形はいずれも常套手段であり、加圧するか、熱圧成型するかは、当業者が適宜選択できる技術事項であるから、本願発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、各相違点の本願発明に係る構成としたことによる格別の作用効果も認められない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-05 
結審通知日 2004-02-10 
審決日 2004-02-24 
出願番号 特願平11-125361
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
P 1 8・ 572- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ吉岡 麻由子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 山田 忠夫
新井 夕起子
発明の名称 塩化ビニル樹脂装飾用床被覆材及びその製造方法  
代理人 三浦 良和  

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