• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1100586
審判番号 不服2003-21635  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-06 
確定日 2004-07-22 
事件の表示 平成 6年特許願第101085号「携帯型情報端末器」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月21日出願公開、特開平 7-306833〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年5月16日の出願であって、平成15年7月1日付の拒絶の理由の通知に対して、その指定した期間内である、平成15年8月18日付で意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成15年9月30日付で拒絶の査定を受けたものであり、この査定を不服として、平成15年11月6日付で審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年11月6日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年11月6日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成15年11月6日付の手続補正(以下、本件手続補正という。)は、平成15年8月18日付で補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を次のとおり補正するものである。(以下、本件手続補正後の特許請求の範囲を「補正後の特許請求の範囲」という。)

(補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】ペン入力及び指入力により操作可能な携帯型情報端末器であって、前記両入力により入力される入力手段を有する本体と、当該本体に収納される入力のためのペンと、当該ペンが前記本体に収納されているかを感知する内蔵感知手段と、当該感知手段が前記ペンの収納状態を検知した場合に上記ペン入力のモードから指入力のモードに切り替える入力モード選択手段とを備えることを特徴とする携帯型情報端末器。
【請求項2】請求項2記載の携帯型情報端末器において、更に、ブザー音を出力するブザー音出力手段を備え、前記ペン内蔵感知手段が前記ペンが前記本体に収納されていないことを検知した状態にて、前記本体の電源スイッチをオフにした場合、前記ブザー音出力手段がブザー音を出力し、その後、前記本体の電源がオフされることを特徴とする携帯型情報端末器。

(補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】ペン入力のみの入力が可能なペン入力モードと指入力のみが可能な指入力モードの両モードを有する携帯型情報端末器であって、前記両入力により入力される入力手段を有する本体と、当該本体に収納される入力のためのペンと、当該ペンが前記本体に収納されているかを感知する内蔵感知手段と、当該感知手段が前記ペンの収納状態を検知した場合に上記ペン入力のモードから指入力のモードに切り替える入力モード選択手段とを備えることを特徴とする携帯型情報端末器。

上記補正前後の特許請求の範囲の記載を対比すると、本件手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項2を削除し、かつ、請求項1について、「ペン入力及び指入力により操作可能な携帯型情報端末器であって、」を「ペン入力のみの入力が可能なペン入力モードと指入力のみが可能な指入力モードの両モードを有する携帯型情報端末器であって、」とする補正(以下、「本件補正」という。)を含むものである。

(2)本件補正の目的の適否
本件補正は、補正前の請求項1の「ペン入力及び指入力により操作可能な携帯型情報端末器であって、」を「ペン入力のみの入力が可能なペン入力モードと指入力のみが可能な指入力モードの両モードを有する携帯型情報端末器であって、」とするものであるから、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲のものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものと認められる。

(3)独立特許要件
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正後の発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(3)-1.補正後の発明
補正後の発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項である、
「ペン入力のみの入力が可能なペン入力モードと指入力のみが可能な指入力モードの両モードを有する携帯型情報端末器であって、前記両入力により入力される入力手段を有する本体と、当該本体に収納される入力のためのペンと、当該ペンが前記本体に収納されているかを感知する内蔵感知手段と、当該感知手段が前記ペンの収納状態を検知した場合に上記ペン入力のモードから指入力のモードに切り替える入力モード選択手段とを備えることを特徴とする携帯型情報端末器。」により特定されるものである。

(3)-2.引用文献の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-88815号公報(以下、「引用文献1」という。)、及び、特開平3-123928号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(イ)本発明は、情報処理装置に関し、特にキーボード及び入力ペンの両方で操作できる型のパソコン、ワードプロセッサ、電子手帳などに関するものである。(【0001】)
(ロ)従来のキーボード及び入力ペンの両方で操作できる型のパソコンやワープロ、電子手帳においては、操作者が入力ペンによる操作を行っているときに、誤ってキーボードに触れると、データの誤入力や装置の誤動作が行われてしまうことがある。
そこで、これを防ぐために、ペン入力モードとキーボード入力モードとをスイッチにより切り換えるようにして、ペン入力モードではキーボードによる入力を禁止する方法が知られている。(【0002】【0003】)
しかしながら、上述した従来の方法では、操作者がいちいちスイッチを切り換える必要があり、入力ペンによる入力のメリットである手軽さが失われることになる。またスイッチをいちいち切り換えるのが面倒なことから、結局このスイッチは利用されないケースも多く、従って入力ペンによる入力操作中にキーボードに誤って触れてしまい、データの誤入力や装置の誤動作を引き起こしてしまう。(【0005】)
(ハ)本発明は上述した従来の問題点に鑑み成されたものであり、キーボード及び入力ペンの両方での操作を簡単に且つ信頼性高く行える情報処理装置を提供することを課題とする。(【0006】)
(ニ)本発明の情報処理装置は上述の課題を達成すべく、タブレットと、タブレット上で情報を入力するための入力ペンと、キー操作により情報を入力するためのキーボードと、タブレット及びキーボードから入力された情報を処理すると共に入力ペンを用いての入力操作中にはキーボードから入力された情報を無効とする制御手段とを備えたことを特徴とする。(【0007】)
(ホ)そこで図3に拡大して示すように本第1実施例は、ペン収納部15にセンサスイッチ21を設けることにより、入力ペン14がペン収納部15から取り出されたか否かを検知するように構成されている。制御部11は、センサスイッチ21の出力信号により、入力ペン14がペン収容部15に収容されているか否かを判断する。入力ペン14がペン収容部15に収容されていないと判断した場合には、操作者が入力ペン14による入力操作を行っているものとして、キーボード16からの信号を無視する。
このように第1実施例では制御部11及びセンサスイッチ21から制御手段の一例が構成されている。以上の結果、第1実施例によれば、入力ペン14による入力操作中に操作者が誤って、キーボード16のキーに触れても、データの誤入力や装置の誤動作を未然に防ぐことができる。(【0015】)
(ヘ)以上のように第1〜第4実施例によれば、制御手段により操作者が入力ペン14による操作を行っていることを自動的に判断し、操作中はキーボード16からの入力を禁止することにより、操作者に入力ペン入力モードとキー入力モードとを切り換えるなどの面倒な操作をさせること無く、キーボードによる余分な入力や余分な動作を防ぐことができ、操作者の負担を軽減することができる。(【0022】)
(ト)また一方、従来例の如くモードを切り換えるためのスイッチ等を操作する必要もなく、操作者の負担を軽減することができる。(【0024】)

なお、上記(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の記載によると、入力ペンがペン収納部に収納されている時、制御部がペン入力モードからキーボード入力モードに切り替えていることは明らかである。

したがって、引用文献1には、
「入力手段として入力ペンとキーボードとを有する情報処理装置であって、ペン収納部に収納される入力ペンと、当該入力ペンがペン収納部から取り出されたか否かを検知するセンサスイッチと、当該センサスイッチの出力信号により入力ペンがペン収納部に収容されていると判断した場合には、ペン入力モードからキーボード入力モードに切り替える制御部とを備える情報処理装置。」(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(チ)従って本発明の目的は、指または類似の物でタッチスクリーンにタッチしてシステムにデータを入力することを可能とし、同時に書くとか描くとか或いは所望ならば適当なスタイラスでスクリーン上を正確に指し示すとかいう手段によってシステムにデータを入力することを可能とするようなコンパクトなデータ入力デバイスを具えたデータ処理システムを提供することである。(第5頁左上欄第16行〜同右上欄第3行)
(リ)入力デバイスのいずれかの部分を交互にターン・オン又はターン・オフさせ、故意でないデータ入力が、例えばスタイラスの操作中に手が入力面上に載ることにより生じるのを防止するようにするために、トグルスイッチのような選択手段を設けるのが好ましい。或いは又、スタイラスの存在の検出に応答してタッチ位置感知を無効にするタッチ無効手段を有するデータ処理システムを用いることにより上述した不所望なタッチ信号を回避することができる。(第6頁右上欄第19行〜同左下欄第8行)
(ヌ)第1図には本発明によるデータ処理システム内に使用するための入力デバイスの最初の図式的例を示してある。この入力デバイスは上部にタッチスクリーン10、真ん中にディジタル化タブレット12、及び低部に液晶ディスプレイ(LCD)14による積層構造を具えている。(第7頁左下欄第6行〜第11行)

(3)-3.対比・判断
補正後の発明と、引用文献1に記載された発明を対比すると、引用文献1に記載された発明の「入力ペン」、「センサスイッチ」は、それぞれ補正後の発明の「本体に収納される入力のためのペン」、「当該ペンが前記本体に収納されているかを感知する内蔵感知手段」に相当する。また、補正後の発明の「入力モード選択手段」と引用文献1に記載された発明の「制御部」は、入力ペンがペン収納部に収納されていると判断した場合に、ペン入力モードからその他の入力モードに切り替える「入力モード選択手段」であることで一致する。
また、引用文献1に記載された発明の「情報処理装置」は、その用途として電子手帳などの携帯可能なものをも想定している(上記(イ)参照。)ので、補正後の発明の「携帯型情報端末器」に相当する。

したがって、両者は、
「複数の入力手段を有する携帯型情報端末機本体と、当該本体に収納される入力のためのペンと、当該ペンが前記本体に収納されているかを感知する内蔵感知手段と、当該感知手段が前記ペンの収納状態を検知した場合にペン入力モードからその他の入力モードに切り替える入力モード選択手段とを備えることを特徴とする携帯型情報端末器。」である点で一致し、
補正後の発明に係る携帯型情報端末器は、入力モードとして、「ペン入力のみが可能なペン入力モード」と「指入力のみが可能な指入力モード」を有しており、入力モード選択手段がペン入力モードから切り替えるその他の入力モードが指入力モードであるのに対して、引用文献1に記載された発明に係る情報処理装置は、前記「指入力のみが可能な指入力モード」に相当するものを有しておらず、制御部がペン入力モードから切り替えるその他の入力モードがキーボード入力モードである点で相違している。

上記相違点について検討すると、指による入力とスタイラス(補正後の発明の「入力ペン」に相当。)による入力が可能なデータ入力デバイスは、引用文献2に記載されている如く本願出願前に公知である。(上記(チ)(ヌ)参照。)また、引用文献1及び2には、補正後の発明が有する「入力に際しての誤動作防止のための入力の切り替え」に関する課題についても、それを示唆する記載がそれぞれ認められる(上記(ロ)(ハ)(リ)参照。)ことから、引用文献1及び2に記載されている発明を組み合わせて、補正後の発明とすることは当業者であれば容易になし得るところと認められる。

また、その効果についても引用文献1に記載されたもの(上記(ヘ)(ト)参照。)と比べて格別なものとは認められない。

したがって、補正後の発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年11月6日付の手続補正は上記のとおり決定をもって却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年8月18日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その請求項1に記載された事項により特定されるものと認める。

(2)引用文献
これに対して、引用文献1及び2には、上記2.(3)-2.で認定したとおりの引用文献1及び2に記載された発明が記載されている。

(3)対比判断
本願発明は、補正後の発明の「ペン入力のみの入力が可能なペン入力モードと指入力のみが可能な指入力モードの両モードを有する携帯型情報端末器であって、」なる限定を「ペン入力及び指入力により操作可能な携帯型情報端末器であって、」に拡張したものであるから、上記2.(3)-3.で述べた補正後の発明についてと同様に、引用文献1及び2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(4)むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-20 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-08 
出願番号 特願平6-101085
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 審査長永野 志保田中 純一宮司 卓佳  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 佐藤 智康
須原 宏光
発明の名称 携帯型情報端末器  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ