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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1100590
審判番号 不服2001-2863  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-27 
確定日 2004-07-23 
事件の表示 平成 4年特許願第503922号「熱間および/または冷間圧延プロセスの調節方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 4年 9月 3日国際公開、WO92/14563、平成 6年 6月 9日国内公表、特表平 6-504953〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、1992年2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1991年2月20日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成12年11月15日付で拒絶査定がなされ、平成13年2月27日付で拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明は、平成13年2月27日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次の方法に関するものである。
「【請求項1】圧延ラインの圧延スタンドの駆動装置に作用する調節器、プロセス量の測定値を捕捉すべく圧延ラインに設けられた測定装置およびモデル式を用いて調節器のための目標値を定める計算ユニットを備え、この場合プロセス量の測定値に基づきモデル式のパラメータを適応させる圧延プロセスのための調節方法において、
計算ユニットが、要求変更時、測定値と、先行の圧延プロセスに由来する値との偏差を導き出し、その値からモデル式を用いて、目標値を補足する設定値を計算することを特徴とする方法。
【請求項2】設定値を目標値に加算することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】設定値による目標値の補足を、手動運転から自動運転への移行時、最終厚み変更および/または温度変動の際に行うことを特徴とする請求項1または2記載の方法。」

III.原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、本願は、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない、というものであり、具体的に指摘された記載不備の要点は、(イ)〜(ハ)のとおりである。 (イ)請求項1の記載では、本願発明がいかなるモデルに対していかなる適応を行うのか不明である。
(ロ)明細書の発明の詳細な説明には、圧延プロセスの調節方法において、いかなるモデルを用い、モデルに対しいかなる適応を行うのかについて、当業者が容易に実施し得る程度に記載されていない。
(ハ)明細書第4頁の数式におけるCi、Kf等については、発明の詳細な説明及び図面に何ら記載がなく、かかる記号が如何なる意味を有するものか不明である。

IV.当審の判断
1.記載不備(イ)〜(ハ)について
(イ)について;
本願請求項1の記載(前記「II.本願発明」参照)によれば、「計算ユニット」は、「要求変更時、測定値と、先行の圧延プロセスに由来する値との偏差を導き出し、その値からモデル式を用いて、目標値を補足する設定値を計算する」とされているところ、「その値からモデル式を用いて、目標値を補足する設定値を計算する」との記載では、その値(導き出された偏差)を具体的にどのようなモデル式に対して適用し、そして、いかなる演算を行うことによって(目標値を補足する)設定値を導出するのかは依然として不明である。
さらに、「先行の圧延プロセス」とは、具体的にどの段階の圧延プロセスを意味するのか明らかでなく、また、「(先行の圧延プロセスに)由来する値」とは、具体的にいかなる値を指しているのかも不明である。
そうすると、本願請求項1に記載された「計算ユニット」で行われる演算処理の内容は依然として明確でないため、本願請求項1には、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されているとは認められない。
(ロ)について;
本願請求項1には、発明の構成がそれ自体明確なものとして記載されているといえないことは前述のとおりであるから、請求項1に係る発明の構成である「要求変更時、測定値と、先行の圧延プロセスに由来する値との偏差を導き出し、その値からモデル式を用いて、目標値を補足する設定値を計算する」については、少なくとも発明の詳細な説明で具体的に説明されない限り、当業者が容易に実施をすることができるとは認められないところ、本願明細書の発明の詳細な説明には、「先行の圧延プロセス」、「(先行の圧延プロセスに)由来する値」についての具体的な説明はなく、「その値からモデル式を用いて、目標値を補足する設定値を計算する」に関しても、いかなるモデル式を用い、どのように目標値を補足する設定値を計算するのか、具体的な説明がないばかりか、具体例が記載されているわけでもない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、請求項1に係る発明の構成が記載されていると認めることはできない。
(ハ)について;
本願明細書の発明の詳細な説明(明細書第4頁)に記載された数式2)〜6)で使用された記号のうち、記号Ci、Kf、rVi、rSi、rfi、rmi、rtiについては、発明の詳細な説明に定義・説明がないばかりか、図面中にも何ら記載はなく、また、記号VWi、Si、Fi、Mi、B、σZi、Tiについても、図2に記載はあるものの、これらの記号が何を意味するのかについての定義・説明がされているわけではない。
そうすると、発明の詳細な説明に記載された数式2)〜6)は、技術的意味が明らかでない記号を用いた数式の単なる羅列にすぎないものと言わざるを得ず、数式2)〜6)によって表現される技術内容を当業者が理解し得るとは到底認められない。
加えて、本願明細書の発明の詳細な説明には、数式2)〜6)が、本願請求項1〜3に係る発明と如何なる技術的関連を有するのか、あるいは、本願請求項1に係る発明における「計算ユニット」で行なわれる計算に、どのように関与するのかが明らかにされているわけでもない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明に数式2)〜6)が記載されていたとしても、このことによって、本願明細書の発明の詳細な説明に当業者が容易にその実施をすることができる程度に、請求項1〜3に係る発明の構成が記載されているとは認められない。

2.請求人の主張について
請求人は、平成13年6月8日付手続補正書(方式)において、明細書の補正案を提示するとともに、「補正案に基づく明細書の補正により、記載不備は解消するので、補正の機会を希望する」(同書【本願発明が特許されるべき理由】の欄第4〜5行、【むすび】の欄第1〜3行参照)旨主張する。
そこで、検討するに、まず、拒絶査定に対する審判を請求する場合の明細書、図面の補正は、特許法第17条の2第4号に規定されるとおり、審判の請求の日から30日以内であるところ、請求人が提示した補正案は、補正ができる期間を経過後に提出されたものであって、しかも、該補正案は、(平成13年6月8日付手続補正書(方式)で補正された)審判請求書の請求の理由の欄で述べられたものにすぎず、適式な手続補正書として提出されたものではない。
したがって、請求人が補正案を提示したとしても、このことによって直ちに、明細書を補正する機会を請求人に与えなければならないとする理由はない。
更に加えるに、請求人は、補正案に基づく補正によって、拒絶査定で指摘された記載不備は解消すると主張するが、少なくとも記載不備(ハ)については、なお依然として解消しない。
即ち、請求人提示の補正案には、いくつかの数式が記載され(例えば、rsi=Si-hi+CRiFi 、 rfi=-aRihi-1+aRihi +Fi 、(rsi)=rsi/(1+sT1)、 (rfi)=rfi/(1+sT2)等)、該数式中には、記号CRi、aRi、sT1、sT2が用いられているが、これらの記号CRi、aRi、sT1、sT2については、本願明細書、図面に説明があるわけではなく、また、補正案の中でその記号についての説明がされているわけでもないから、補正案中に記載された記号及び数式自体が依然として明確ではない。
したがって、仮に、請求人に補正案どおりに明細書を補正する機会を与えたとしても、このことによって、本願明細書の記載不備が解消されるわけではない。

V.むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-19 
結審通知日 2004-02-26 
審決日 2004-03-09 
出願番号 特願平4-503922
審決分類 P 1 8・ 534- Z (B21B)
P 1 8・ 531- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 毅國方 康伸  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 市川 裕司
中西 一友
発明の名称 熱間および/または冷間圧延プロセスの調節方法  
復代理人 山口 巖  

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