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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1100605
審判番号 不服2003-7917  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-07 
確定日 2004-07-22 
事件の表示 特願2000-76128「海岸の養浜方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月3日出願公開、特開2000-273838〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成8年8月9日に出願した特願平8-242461号の一部を平成12年3月17日に分割して出願したものであって、平成15年3月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年5月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年5月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月7日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「鋼材または鉄筋コンクリート等の耐せん断力および引張抵抗力を有する材料によって所要の大きさの格子状目を形成した格子状枠消波敷設材をシケの際波浪により砂が運ばれるような養浜すべき海岸の汀線付近に沿って連続して敷設した後、前記消波敷設材の上に石またはブロック等の消波材を載せて、波浪により前記石またはブロック等の下部と、前記消波敷設材の格子状目とを緊密に係合させると共に、前記消波敷設材と、これに係合させた石またはブロック等よりなる消波構造物を波浪による洗掘作用で自動的に沈下させて堅固な消波構造物とし、砂を運ぶ波浪を前記消波構造物で消波し、波浪のエネルギーを減殺させることにより、前記消波構造物の背面陸側に入った波浪はエネルギーが小さくなり、前記波浪によって運ばれた砂が堆積して砂浜となることを特徴とした海岸の養浜方法。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、特開平7-3739号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】複数の内方区画鋼材とそれより強度の大になる外方囲繞鋼材とにより、消波材が係合し抜脱しない所要の大きさの格子状目を形成してなることを特徴とする格子状消波敷設材。
【請求項2】内方区画鋼材が小型溝形鋼または小型H形鋼であり、外方囲繞鋼材が、大型溝形鋼,小型溝形鋼を背合わせにしたもの,または大型H形鋼であることを特徴とする請求項1または2記載の格子状消波敷設材。
【請求項3】複数の内方区画鋼材とそれより強度の大になる外方囲繞鋼材とにより、消波材が係合し抜脱しない所要の大きさの格子状目を形成してなる格子状消波敷設材を水底地盤上に敷設し、その上に消波材を積層してなることを特徴とする格子状消波敷設材を使用した消波構造物。」
「【0010】【実施例】図1〜4に示した第1実施例の格子状消波敷設材dは、内方区画鋼材Aとそれより強度の大きい外方囲繞鋼材Bとからなる。内方区画鋼材Aとして小型溝形鋼3を採用し、外方囲繞鋼材Bとしては大型溝形鋼4を採用している。これらは次のように配置されている。下側に、中央2本の小型溝形鋼3とその両外側の各1本の大型溝形鋼4とを所要の間隔で横置き配置し、上側に、中央4本の小型溝形鋼3とその両外側の各1本の大型溝形鋼4を同じく所要の間隔で縦置き配置し、互いに交わった接合部分を溶接等により連結固定し、これによって後記消波材6が係合し抜脱しない所要の大きさの方形の格子状目5を形成している。上記において、上下の小型溝形鋼3および大型溝形鋼4は背合わせに重合し、それぞれの溝を上下外方に開口させている。
【0011】この格子状消波敷設材dによる消波構造物eは、図4に示すように、その格子状消波敷設材dの複数個を海底地盤G上に水平に揃列敷設し、その上に、下段の消波材(異形コンクリートブロック)6を格子状目5に係合するようにして載置するとともに、さらにその上に、同じ消波材6を所定の高さまで堆積することにより構築するものである。
【0012】この消波構造物eの底部の洗掘が傾斜状であるとき、格子状消波敷設材dは自重と堆積している消波材6の荷重により、その全体が傾斜しながらあるいは水平のまま降下し常に水底地盤Gに順応接地し安定状態を維持する。」
そして、溝形鋼,H形鋼は、耐せん断力および引張抵抗力を有する材料であること、消波構造物はその目的からみて海岸近傍に設置されるものであること、波浪が消波構造物に当たればそのエネルギーは減殺され消波構造物の背面に入った波浪のエネルギーは小さくなることが、それぞれ当業者に自明な事項である。
したがって、上記の摘記した記載を含めた明細書全体の記載、図1〜図11の記載、及び上記自明の事項からみて、刊行物には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「溝形鋼3、4またはH形鋼の耐せん断力および引張抵抗力を有する材料をもって内方区画し、異形コンクリートブロックの消波材6が係合できて、抜脱しない所要の大きさの格子状目5を形成した格子状枠消波敷設材dを海岸近傍の水底に設置し、前記格子状枠消波敷設材dの上に、異形コンクリートブロックの消波材6を載置し、前記格子状枠消波敷設材dと、前記異形コンクリートブロックの消波材6とを係合させ、積層して消波構造物を築造し、該消波構造物を波浪により自動的に沈下設定させる、消波構造物の築造方法であって、
該消波構造物は、それに当たる波浪のエネルギーを減殺させ、その背面に入った波浪のエネルギーを小さくさせることができるものである、消波構造物の築造方法。」

(3)対比・判断
補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「溝形鋼3、4またはH形鋼の耐せん断力および引張抵抗力を有する材料」、及び「異形コンクリートブロックの消波材6」は、それぞれ、補正発明の「鋼材または鉄筋コンクリート等の耐せん断力および引張抵抗力を有する材料」、及び「石またはブロック等の消波材」に相当する。そして、補正発明の「養浜方法」は、消波構造物の築造を前提とするものであるから、両者は、
「鋼材または鉄筋コンクリート等の耐せん断力および引張抵抗力を有する材料によって所要の大きさの格子状目を形成した格子状枠消波敷設材を海岸近傍に敷設した後、前記消波敷設材の上に石またはブロック等の消波材を載せて、波浪により前記石またはブロック等の下部と、前記消波敷設材の格子状目とを緊密に係合させると共に、前記消波敷設材と、これに係合させた石またはブロック等よりなる消波構造物を波浪による洗掘作用で自動的に沈下させて堅固な消波構造物を築造し、波浪を前記消波構造物で消波し、波浪のエネルギーを減殺させることにより、前記消波構造物の背面側に入った波浪はエネルギーが小さくなるようにした、消波構造物の築造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:補正発明は、消波構造物を構成する格子状枠消波敷設材をシケの際波浪により砂が運ばれるような養浜すべき海岸の汀線付近に沿って連続して敷設し、砂を運ぶ波浪を前記消波構造物で消波し、前記消波構造物の背面陸側に波浪によって運ばれた砂が堆積して砂浜となるようにした養浜方法であるのに対し、刊行物には、消波構造物を養浜方法に用いることが明記されておらず、したがって、消波構造物を構成する格子状枠消波敷設材を連続して海岸の汀線付近に沿って連続して設置すること、及び、消波構造物の背面陸側に砂を堆積させることについても明記されていない点

上記相違点について検討する。
消波構造物が養浜に用いられること、養浜に用いた場合、消波構造物の背面陸側に砂が堆積することは、周知技術(実公昭56-55297号公報、特開昭62-115224号公報、特公平7-30534号公報等参照)であり、消波構造物を養浜に用いた場合、海岸の汀線に沿って連続して設置することは当然の事項であるから、該周知技術を刊行物記載の発明に適用し、補正発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。(なお、上記周知技術についての判断は、東京高等裁判所平成14年(行ケ)第376号審決取消請求事件の判決にも判示されている事項である。)

そして、補正発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年5月7日付手続補正が、上記のとおり却下されたので、平成14年7月29日付手続補正書により補正された、請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】鋼材または鉄筋コンクリート等の耐せん断力および引張抵抗力を有する材料によって所要の大きさの格子状目を形成した格子状枠消波敷設材を養浜すべき海岸の汀線付近に沿って連続して敷設した後、前記消波敷設材の上に石またはブロック等の消波材を載せて、波浪により前記石またはブロック等の下部と、前記消波敷設材の格子状目とを緊密に係合させると共に、前記消波敷設材と、これに係合させた石またはブロック等よりなる消波構造物を波浪による洗掘作用で自動的に沈下させて堅固な消波構造物とし、砂を運ぶ波浪を前記消波構造物で消波することにより、前記消波構造物の背面陸側に、前記波浪によって運ばれた砂を堆積させて砂浜とすることを特徴とした海岸の養浜方法。
【請求項2】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明から「養浜すべき海岸」の限定事項である「シケの際波浪により砂が運ばれるような(養浜すべき海岸)」との事項を省き、「消波構造物」に関する事項である「波浪のエネルギーを減殺させ」、及び「入った波浪はエネルギーが小さくなり」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-18 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-07 
出願番号 特願2000-76128(P2000-76128)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02B)
P 1 8・ 121- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊岡 智代志摩 美裕貴河本 明彦  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 南 澤 弘 明
木 原 裕
発明の名称 海岸の養浜方法  
代理人 鈴木 正次  
代理人 涌井 謙一  

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