• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1100637
審判番号 不服2002-6819  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-18 
確定日 2004-07-22 
事件の表示 平成 5年特許願第 74351号「光ファイバ照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年10月18日出願公開、特開平 6-289232〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成5年3月31日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年8月16日付け、平成13年11月12日付け及び平成14年2月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に各々記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。
「プラスチック光ファイバ束の光入射端部が集束したライトガイドと、該入射端部に対向した出力100W以上の光源とからなる光ファイバ照明装置であって、
プラスチック光ファイバの軟化温度以上、溶融温度以下の雰囲気で、集束した入射端部が熱処理され、光ファイバ同士間に接着剤が存在しない状態で該集束端部の光ファイバの鞘同士が間隙無く密着して融着固定されていることを特徴とする光ファイバ照明装置。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭55-120225号(実開昭57-43408号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。なお、原審の拒絶理由及び拒絶査定において「実願昭55-120885号(実開昭57-43408号)のマイクロフィルム」としてあるのは誤記であるが、請求人が「実願昭55-120225号(実開昭57-43408号)のマイクロフィルム」を見た上で請求の理由を述べていることは明らかであるので、「実願昭55-120225号(実開昭57-43408号)のマイクロフィルム」が引用されたものとする。)には、次のように記載されている。
「集束された複数本のプラスチック系光学繊維束の一端もしくは両端に、耐熱性の高い口金が固着されたものであって、その口金内におけるプラスチック系光学繊維相互の表面が熱による膨張と融着とにより密着されてプラスチック系光学繊維束が緊密に充填固着されていることを特徴とするプラスチック系光学繊維束の口金固着構造。」(実用新案登録請求の範囲)
「光学繊維は、各種の機器類における導光体として実用化されているが、多くの場合ライトガイドと称される非コヒーレント配列の束あるいはイメージバンドルと称されるコヒーレント配列の束等、複数本結束された状況で使用されることが多い。そしてこのような光学繊維束の一端あるいは両端には金属製等の口金を固着するのが一般的である。
ところでこのように光学繊維束に対して口金を固着する場合、通常接着剤を使用して行なうことが多い しかしながら接着剤を用いる方法は、接着剤の塗布工程等煩雑な作業を伴なうと共に余分な接着剤の付着による汚れ等が懸念され、しかも第3図(A)、(B)に明らかなように光学繊維(イ)間に接着剤(ハ)が存在するため、口金(ロ)に対する充填密度が概ね70%程度と低くなる憾みがあった。特に、光学繊維としてプラスチック系のものを用いたときには、光学繊維に悪影響を及ぼさないように接着剤を選定する必要があり、これら口金固着構造の改善が望まれていた。」(第1頁第18行〜第2頁17行)
「第1図は本考案によって得られた口金固着構造を示すもので、・・・・図中(1)がプラスチック系光学繊維で、芯がポリメチルメタクリレートを主成分とするポリマーで鞘が弗素含有ポリマーからなる光学繊維、あるいは芯がポリスチレンで鞘がポリメチルメタクリレートを主成分とするポリマーからなる光学繊維等が用いられる。一般にこのようなプラスチック系光学繊維(1)は、光透過性を良好な状態に保持するため無定形すなわち非結晶性のポリマーを芯および鞘成分として使用する一方、耐屈曲性等の物理的性質を確保するため延伸配向させることが行なわれている。したがってその結果得られたプラスチック系光学繊維(1)は、熱変形温度以上に加熱すると、収縮すなわち直径方向の膨張が発生しやすく、本考案はこのような現象および熱融着の現象を巧みに利用して口金を固着しようとするものである。すなわち、上記の如きプラスチック系光学繊維(1)の複数本を集束した状態としてこの一端もしくは両端部分に口金(2)を嵌合し、この口金(2)嵌合部分を加熱すると、プラスチック系光学繊維(1)相互の表面が熱による膨張と融着を起し、口金(2)内で緊密に充填され固着されることとなる。」(第3頁第10行〜第4頁第13行)
「以下具体的な実施例について説明する。
芯材としてポリメチルメタクリレート、また鞘材として弗化ビニリデンとテトラフロロエチレンとの共重合体とを使用して得た直径0.5mmの光学繊維を用意し、この光学繊維330本を、内径10mm、外径11mm、長さ12mmの円形断面を有する口金に、一部が反対側から飛出すように嵌挿し、しかるのちこの口金部分を120°Cに保持された加熱炉に約30分間入れた。加熱炉から取り出して冷却したのち、口金の端部から2mm内側の箇所を、回転砥石刃により光学繊維と共に切断した。このようにして得られた光学繊維束は、口金における部分の光学繊維の充填密度が80〜90%にも達する高いものであって、しかも光学繊維相互間および口金と光学繊維間の接着強度が大きい良好なものであった。」(第5頁第2〜17行)
以上の記載からすれば、引用例には、「集束された複数本のプラスチック系光学繊維の束の一端もしくは両端に口金を固着し、口金を固着された端部を加熱処理してプラスチック系光学繊維相互の表面が熱による膨張と融着とにより密着されて、口金における部分の光学繊維の充填密度が80〜90%となる、光学繊維束が緊密に充填固着されたライトガイド」が記載されているものと認める。

3.対比、判断
本願発明と引用例に記載のものとを対比する。
引用例に記載のものにおける「プラスチック系光学繊維」は、本願発明における「プラスチック光ファイバ」に相当するものであり、引用例に記載のものにおいて、ライトガイドの光入射端部は光学繊維が集束されて形成されている。また、引用例に記載のものにおいて、ポリメチルメタクリレートの芯材と、弗化ビニリデンとテトラフロロエチレンとの共重合体の鞘材からなる光学繊維の場合に120°Cで端部が加熱処理されているが、この温度は光学繊維の軟化点以上、溶融点以下であり、この加熱処理により光学繊維相互の表面が熱による膨張と融着とにより密着されるので、光学繊維の鞘同士密着して融着固定されることになる。さらに、引用例に記載のものは、その実施例についての記載からすれば、集束された光学繊維束の端部において特に接着剤を付与せずに加熱処理するものである。
そうすると、本願発明と引用例に記載のものとは、「プラスチック光ファイバの軟化温度以上、溶融温度以下の雰囲気で、集束した入射端部が熱処理され、光ファイバ同士間に接着剤が存在しない状態で該集束端部の光ファイバの鞘同士が密着して融着固定されているプラスチック光ファイバ束の光入射端部が集束したライトガイド」を用いたものである点において一致するが、次の点において相違する。
a.本願発明は、プラスチック光ファイバ束の光入射端部が集束したライトガイドと、該入射端部に対向した出力100W以上の光源とからなる光ファイバ照明装置であるのに対して、引用例に記載のものは、特に入射端部に対向した100W以上の光源を有する照明装置に適用することについて明記していない点。
b.本願発明におけるプラスチック光ファイバ束の集束した端部は、光ファイバの鞘同士が間隙無く密着して融着固定されているのに対して、引用例に記載のものにおける集束されたプラスチック光学繊維の束の端部は光学繊維の充填密度が80〜90%となる程度に光学繊維相互の表面が密着されて充填固着されている点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点aについて:
光源からの光をライトガイドにより導く照明装置は周知のものであり、引用例には特に照明装置に適用することについて具体的に示されていないが、ライトガイドの集束された光学繊維の束の端部に光源を備えた照明装置に適用することは当然考慮されることであり、光源として出力100W以上のものを用いることも適宜考慮し得るところである。
相違点bについて:
引用例には、集束された光学繊維の束の端部を接着剤で固着する場合充填密度が70%程度あるが、接着剤による固着でなく、加熱処理により光学繊維相互の表面が膨張と融着とにより密着されて、光学繊維の充填密度が80〜90%程度に高くなることが記載されている。一般的に、この光学繊維の充填密度が高いほど、すなわち光学繊維間の隙間が少ないほど、光の伝送効率が高く、光伝送の面から望ましいのは明らかであり、また、光学繊維相互の鞘(クラッド)間に間隙がないように集束することは周知の事項であるから(例えば、特開昭61-122609号公報、特開昭63-167305号公報を参照)、引用例に記載のものにおいて、加熱処理での光学繊維の膨張と融着の程度をさらに高めることにより、光学繊維間に隙間がないようにすることは当業者が容易に想到し得るところである。
そして、相違点a及びbを総合しても、何ら格別な技術的特徴が与えられることはない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-18 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-07 
出願番号 特願平5-74351
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 瀧本 十良三
特許庁審判官 町田 光信
稲積 義登
発明の名称 光ファイバ照明装置  
代理人 西 和哉  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 渡邊 隆  
代理人 青山 正和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ