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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1100638 |
審判番号 | 不服2002-3548 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-02-28 |
確定日 | 2004-07-22 |
事件の表示 | 平成11年特許願第251217号「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月28日出願公開、特開2000-208767〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年9月6日(優先権主張平成10年11月13日)の出願であって、平成14年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月29日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成14年3月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成14年3月29日付けの手続補正を却下する。 [理由] (2-1)本件補正についての検討 本件補正は、特許請求の範囲を補正するとともに、発明の詳細な説明の段落【0009】を補正するものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし3(以下「補正後の請求項1」ないし「補正後の請求項3」という。)は、 (補正後の請求項1) 「半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜の上に導電層を形成する工程と、 前記導電層の上にストッパ層を形成する工程と、 前記ストッパ層の上に有機反射防止膜を形成する工程と、 前記有機反射防止膜の上に所定のパターンのレジスト層を形成する工程と、 前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、 少なくとも前記有機反射防止膜をマスクとして、前記ストッパ層をエッチングする工程と、 少なくとも前記ストッパ層をマスクとして、前記導電層をエッチングする工程と、を含み、 前記ストッパ層は、前記有機反射防止膜をエッチングする工程において、前記有機反射防止膜のエッチング速度に比べて遅いエッチング速度を有する材質からなり、前記ストッパ層のエッチング速度に対する前記有機反射防止膜のエッチング速度の比は5以上であり、 前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチング圧力が1〜10mTorrであって、さらにイオン密度が1×1011cm-3以上である高密度プラズマエッチングである、半導体装置の製造方法。」、 (補正後の請求項2) 「半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜の上に導電層を形成する工程と、 前記導電層の上にストッパ層を形成する工程と、 前記ストッパ層の上に有機反射防止膜を形成する工程と、 前記有機反射防止膜の上に所定のパターンのレジスト層を形成する工程と、 前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、 少なくとも前記有機反射防止膜をマスクとして、前記ストッパ層をエッチングする工程と、 少なくとも前記ストッパ層をマスクとして、前記導電層をエッチングする工程と、を含み、 前記ストッパ層は、前記有機反射防止膜をエッチングする工程において、前記有機反射防止膜のエッチング速度に比べて遅いエッチング速度を有する材質からなり、前記ストッパ層のエッチング速度に対する前記有機反射防止膜のエッチング速度の比は5以上であり、 前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチングガスとして少なくとも酸素系ガスおよび塩素系ガスを含み、エッチング圧力が1〜10mTorrであって、さらにイオン密度が1×1011cm-3以上である高密度プラズマエッチングである、半導体装置の製造方法。」及び、 (補正後の請求項3) 「請求項1または2記載の半導体装置の製造方法において、 前記有機反射防止膜をエッチングする工程におけるエッチングガスの酸素原子の数に対する塩素原子の数の比(塩素原子の数/酸素原子の数)は、0.5〜5である半導体装置の製造方法。」 と補正された。 上記補正は、平成13年6月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項18(以下「補正前の請求項1」ないし「補正前の請求項18」という。)に係る発明を補正するものであるところ、 (a)補正後の請求項1は、補正前の請求項1の、 「半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜の上に導電層を形成する工程と、 前記導電層の上にストッパ層を形成する工程と、 前記ストッパ層の上に有機反射防止膜を形成する工程と、 前記有機反射防止膜の上に所定のパターンのレジスト層を形成する工程と、 前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、 少なくとも前記有機反射防止膜をマスクとして、前記ストッパ層をエッチングする工程と、 少なくとも前記ストッパ層をマスクとして、前記導電層をエッチングする工程と、を含み、 前記ストッパ層は、前記有機反射防止膜をエッチングする工程において、前記有機反射防止膜のエッチング速度に比べて遅いエッチング速度を有する材質からなり、前記ストッパ層のエッチング速度に対する前記有機反射防止膜のエッチング速度の比は5以上である半導体装置の製造方法。」において、 「る半導体装置の製造方法。」を 「り、前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチング圧力が1〜10mTorrであって、さらにイオン密度が1×1011cm-3以上である高密度プラズマエッチングである、半導体装置の製造方法。」と補正し、 (b)補正後の請求項2は、補正前の請求項1において、 「る半導体装置の製造方法。」を 「り、前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチングガスとして少なくとも酸素系ガスおよび塩素系ガスを含み、エッチング圧力が1〜10mTorrであって、さらにイオン密度が1×1011cm-3以上である高密度プラズマエッチングである、半導体装置の製造方法。」と補正し、 (c)補正後の請求項3は、補正後の請求項1または補正後の請求項2を引用して、 「請求項1または2記載の半導体装置の製造方法において、 前記有機反射防止膜をエッチングする工程におけるエッチングガスの酸素原子の数に対する塩素原子の数の比(塩素原子の数/酸素原子の数)は、0.5〜5である半導体装置の製造方法。」とするものである。 (2-2)補正の適否についての検討 (2-2-1)補正の目的についての検討 (a)及び(b)について検討する。 (a)は、補正前の請求項1を引用する、補正前の請求項13(「前記有機反射防止膜をエッチングする工程におけるエッチングの圧力は1〜10mTorrである」)及び、補正前の請求項1及び請求項13を引用する、補正前の請求項15(「前記高密度プラズマは、イオン密度が1×1011cm-3 以上である」)に記載される限定構成により、補正前の請求項1に記載される「有機反射防止膜のエッチング工程」を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、 (b)は、補正前の請求項1を引用する、補正前の請求項7(「前記有機反射防止膜をエッチングする工程におけるエッチングガスは、少なくとも酸素系ガスおよび塩素系ガスを含む」)、補正前の請求項1及び請求項7を引用する、補正前の請求項13(「前記有機反射防止膜をエッチングする工程におけるエッチングの圧力は1〜10mTorrである」)及び、補正前の請求項1,請求項7及び請求項13を引用する、補正前の請求項15(「前記高密度プラズマは、イオン密度が1×1011cm-3 以上である」)に記載された限定構成により、補正前の請求項1に記載される「有機反射防止膜のエッチング工程」を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 次に、(c)について検討する。 補正後の請求項3は、補正後の請求項1または補正後の請求項2を引用しているところ、補正後の請求項1については、その「前記有機反射防止膜をエッチングする工程」において、「エッチングする工程」におけるエッチングガスについての条件を「エッチングガスの酸素原子の数に対する塩素原子の数の比(塩素原子の数/酸素原子の数)は、0.5〜5である 」と技術的に限定しているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、補正後の請求項2については、そのエッチングガスとしての「酸素系ガス」と「塩素系ガス」の原子数の比を、「前記有機反射防止膜をエッチングする工程におけるエッチングガスの酸素原子の数に対する塩素原子の数の比(塩素原子の数/酸素原子の数)は、0.5〜5である」と技術的に限定しているから、限定的減縮を目的とするものに該当する。 また、発明の詳細な説明の段落【0009】の補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から自明の事項の範囲内におけるものであるから、特許法第17条の2第3項の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内におけるものである。 (2-2-2)独立特許要件についての検討 次に、補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明1」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2-3)引用文献 (2-3-1)引用例1 拒絶の理由に引用された、本願の優先日前の平成8年6月11日付けで頒布された特開平8-153704号公報には、図1ないし図9、図11ないし図15とともに、以下のとおり記載されている。 「【0018】この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、反射防止膜として有機ARC膜を用いた場合に、フォトレジストおよび有機ARC膜に横方向のエッチングが発生しない新規なエッチング方法を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0018】) 「【0021】 【実施例】 実施例1.以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。図1ないし図8は、本発明の一実施例に従ったDRAM等の半導体装置の製造プロセスを説明するための断面図である。図1ないし図8を参照して本実施例の半導体装置の配線部分のみをとりあげた製造プロセスを説明する。 【0022】まず図1に示すように、シリコン基板1上にLOCOS酸化膜2および絶縁膜2aを形成したのち、導電膜であるポリシリコン膜3をCVD法で形成する。・・・ここでポリシリコン膜3の膜厚は300〜4000Åである。 【0023】次に図2に示すように、導電膜のポリシリコン膜3上に有機反射防止膜(有機ARC膜)4を回転塗布により形成する。・・・なお、ARC膜4の膜厚は、500Å以上であるが必要膜厚は反射率および屈折率で変わる。 【0024】次に第3図に示すようにホトレジスト5を塗布したのち、第4図に示すようにフォトマスク6、露光光(i線やkrF線)7のフォトリソグラフィー工程を経て、図5のようにレジスト5aをパターニングする。・・・ 【0025】次に図6に示すようにレジスト5aをマスクとして有機膜ARC4をN2 プラズマでエッチングする。以下に実施の詳細を図7を含み説明する。使用するエッチング装置およびその条件は以下のとおりである。 エッチング装置;RFプラズマカソードカップリングタイプ N2 流量 ;10〜500SCCM 圧力 ;0.01〜0.6Torr 電力 ;0.5〜2W/cm2 基板ステージ温度;-100〜+100℃ 上記範囲のうち最適な条件は、 N2 流量;100SCCM 圧力 ;0.02Torr 電力 ;1W/cm2 基板ステージ温度;0℃ である。なお説明に用いる断面図はエッチング装置およびその付帯設備の図示を省略している。図5の工程にひきつづきまず、装置内にN2 ガスを導入し、N2 プラズマにより有機ARC膜4をエッチングする。・・・図7には有機ARC膜4のエッチング過程が示されている。・・・したがって有機ARC膜4およびマスク5aは横方向にはエッチングは進行せず、その結果有機ARC膜4、マスク5aのパターンの細りは発生しない。 【0026】有機ARC膜4のエッチング完了後、マスク5a,有機ARC4をマスクとして通常用いられている例えばCl2 ガスプラズマにより導電膜のポリシリコン膜3にRIEエッチングを行い次に従来から一般にアッシング工程として使用されているO2 /N2 =950/50SCCMのO2 プラズマでフォトレジストのマスク5aと有機ARC膜4を灰化除去し、図8に示される下地段差を有するがエッチングによるパターン細りのない配線層3aを形成することができる。 【0027】実施例2.本願発明の第2の実施例を説明する。第1実施例で示した工程において、図6、図7のN2 ガスプラズマでのエッチングをN2 /O2 ガスプラズマとする以外は同一工程である。・・・ 【0028】実施例3.本願発明の第3の実施例を説明する。第1実施例で示した工程のうち、図6、図7のN2 ガスをCO2 ガスとする以外は同一工程である。本実施例のCO2 ガスによるプラズマを生成して、エッチングする状態を図9で説明する。 エッチング装置;RFプラズマアノードカップリングタイプ CO2 ガス流量;10〜500SCCM 圧力 ;0.01〜0.6Torr 電力 ;0.5〜2W/cm2 基板ステージ温度;-100〜50℃ 上記範囲のうち、最適条件は、 CO2 ガス流量 ;100SCCM 圧力 ;0.02Torr 電力 ;1W/cm2 基板ステージ温度;20℃ である。上記条件において、CO2 ガスでプラズマを生成するとO,COが分解され、これらのうちOは有機ARC膜4に対して反応が進行するがその反応生成物は、COと再結合し有機ARC膜4やレジストマスク5の側壁表面に再付着し、側壁保護膜7となる。その結果シース中で加速されるイオンは、有機ARC膜4の垂直方向表面には入射されてエッチングが進行するが、有機ARC膜4の側壁面は保護膜7によってイオンの当る量が少なくエッチングは進行しない。従って有機ARC膜4を所望のレジストパターン通り細りなくエッチング加工が可能となる。」(段落【0021】〜【0028】) 「【0030】本願発明の第5〜第8の実施例について説明する。第1〜第4の実施例では、導電膜上に有機ARC膜を形成する例を示した。この第5〜第8の実施例では、第1の絶縁膜上に設けた導電膜上に第2の絶縁膜および有機ARC膜を形成し、フォトレジストのパターニング後エッチング加工により導電膜を所望のパターンに形成する工程を提供する。 図11〜15および図16により第5の実施例を示す。 【0031】まず図11に示すように、シリコン基板1上にLOCOS酸化膜2および酸化膜2aを形成後、ポリシリコン等の導電膜3を形成する。この工程は図1に示したものと同じである。次に図12に示すように導電膜上にTEOS等の絶縁膜8を形成する。次に図13に示すように有機ARC膜4を形成後図14のフォトレジストパターン5aを設ける。 【0032】その後第1〜第4の実施例で説明したと同じエッチング方法と工程をとる。すなわち (1)第5の実施例ではN2 ガスプラズマ (2)第6の実施例ではN2 +O2 ガスプラズマ (3)第7の実施例ではCO2 ガスプラズマ・・・ を採用し第5〜第7の実施例では、フォトレジスト5aをマスクとして、有機ARC膜4をエッチング後、通常のRIEエッチングにより絶縁膜8および導電膜3にエッチングを行う。・・・」(段落【0030】〜【0032】) 「【0039】 【発明の効果】 ・・・ (3)第3、第7の発明では、側壁表面に付着した反応生成物が有機ARCの保護膜となり、横方向のエッチングを極めて少なく、有機ARC膜のパターニングの細りは少ない。・・・」(段落【0039】) これらの記載より、引用例1には、 「シリコン基板1上に絶縁膜2aを形成する工程と、 前記絶縁膜2a上に導電膜であるポリシリコン膜3を形成する工程と、 前記ポリシリコン膜3の上にTEOS等の絶縁膜8を形成する工程と、 前記絶縁膜8上に有機反射防止膜(有機ARC膜)4を形成する工程と、 前記有機反射防止膜4の上にフォトレジストパターン5aを形成する工程と、 前記フォトレジストパターン5aをマスクにして前記有機反射防止膜4をエッチングする工程と、 前記絶縁膜8と前記ポリシリコン膜3をエッチングする工程とを備え、 前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチング圧力を0.01〜0.6Torrで行う 半導体装置の製造方法」 が記載されている。 (2-3-2)引用例2 新たに引用する、本願の優先日前の平成9年5月27日付けで頒布された特開平9-139358号公報には以下のとおり記載されている。 「【0022】・・・これに対し、誘導結合プラズマエッチング装置、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチング装置あるいはヘリコン波プラズマエッチング装置等、高密度プラズマ発生源を有するエッチング装置は、プラズマ生成のための電力と、基板バイアス電力の値は独立に選択することができる。このため、弱い入射イオンエネルギではあるが、1011〜1012/cm3 オーダの高密度プラズマによりスループットの高い低ダメージエッチングが可能である。・・・」(段落【0022】) (2-4)対比・判断 補正後発明1と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを比較すると、 引用発明の、「シリコン基板1」、「絶縁膜2a」、「ポリシリコン膜3」、「有機反射防止膜4」及び、「フォトレジストパターン5a」は、 補正後発明1の、「半導体基板」、「絶縁膜」、「導電層」、「有機反射防止膜」及び、「所定パターンのレジスト層」にそれぞれ相当する。 また、引用発明に関し、フォトレジストパターン5aをマスクとして有機反射防止膜をエッチングする時に、N2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマを用いることが記載されるとともに、前記絶縁膜8はTEOS絶縁膜であって、上記のN2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマによっては、TEOS絶縁膜がエッチングされないことは、当業者に明らかであり、引用発明においては、TEOS絶縁膜8は有機反射防止膜をエッチングする際のエッチング防止層であることは、当業者に明らかであるから、引用発明の「TEOS等の絶縁膜8」は、補正後発明1の「ストッパ層」に相当する。 よって、両者は、 「半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜の上に導電層を形成する工程と、 前記導電層の上にストッパ層を形成する工程と、 前記ストッパ層の上に有機反射防止膜を形成する工程と、 前記有機反射防止膜の上に所定のパターンのレジスト層を形成する工程と、 前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、 を含む 半導体装置の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 補正後発明1では、「前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、少なくとも前記有機反射防止膜をマスクとして、前記ストッパ層をエッチングする工程と、少なくとも前記ストッパ層をマスクとして、前記導電層をエッチングする工程」を備えているのに対して、 引用発明では、「前記フォトレジストパターン5aをマスクにして前記有機反射防止膜4をエッチングする工程と、前記絶縁膜8と前記ポリシリコン膜3をエッチングする工程」を備えている点。 相違点2 補正後発明1では、「前記ストッパ層は、前記有機反射防止膜をエッチングする工程において、前記有機反射防止膜のエッチング速度に比べて遅いエッチング速度を有する材質からなり、前記ストッパ層のエッチング速度に対する前記有機反射防止膜のエッチング速度の比は5以上であ」るのに対して、 引用発明では、上記構成が記載されていない点。 相違点3 補正後発明1では、「前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチング圧力が1〜10mTorrであ」るのに対して、 引用発明では、「前記有機反射防止膜のエッチングは、エッチング圧力を0.01〜0.6Torrで行う」点。 相違点4 補正後発明1では、「前記有機反射防止膜のエッチング」での、「イオン密度が1×1011cm-3以上である高密度プラズマエッチングである」のに対して、 引用発明では、イオン密度が記載されていない点。 上記相違点について以下で検討する。 相違点1について 両者において、「前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程」を備える点については実質的に相違していない。 また、引用例1の、第14図と、第32段落の「第5〜第7の実施例では、フォトレジスト5aをマスクとして、有機ARC膜4をエッチング後、通常のRIEエッチングにより絶縁膜8および導電膜3にエッチングを行う。」と記載されるとともに、絶縁膜8を備えない実施例1においては、第7図、第9図と、第25段落及び第28段落の記載より、フォトレジストパターン5aをマスクとして有機反射防止膜4をエッチングした後、パターニングされた有機反射防止膜4又は、フォトレジストパターン5aとパターニングされた有機反射防止膜4との両者をマスクとして、ポリシリコン膜3をエッチングしているから、絶縁膜8を備えた実施例においては、有機反射防止膜4の下に形成されている絶縁膜8のエッチングにおいては、パターニングされた有機反射防止膜又は、フォトレジストパターン5aとパターニングされた有機反射防止膜4との両者をマスクとしてエッチングしているものと、当業者であれば容易に推測できるとともに、引用発明においては、絶縁膜8のエッチング工程とポリシリコン膜3のエッチング工程が異なるエッチング工程であるか、同一エッチング工程により絶縁膜8とポリシリコン膜3とをエッチングするものであるかは明確には記載されていないが、半導体製造工程としてのエッチング工程においては、通常、相互に直接接触した異なる性質の2層の薄膜に対しそれぞれ異なるエッチング工程によりエッチングすること及び、絶縁膜8とポリシリコン膜3とにおいて薄膜の特性が非常に異なることをも考慮すると、絶縁膜8のエッチング工程とポリシリコン膜のエッチング工程とを異なるエッチング工程とすることは、当業者が必要に応じて適宜設定しえたものであるから、引用発明においても、少なくともパターニングされた有機反射防止膜4をマスクとして、補正後発明1のストッパ層に相当する、絶縁膜8をエッチングする工程を備えることは明らかであるとともに、ポリシリコン膜をエッチングする工程において、少なくとも絶縁膜8がエッチング時のマスクとなることは明らかであるから、引用発明においても、少なくとも絶縁膜8をマスクとしてポリシリコン膜3をエッチングする工程を備えていることは、当業者にとって明らかである。 よって、相違点1については、実質的に相違しない。 相違点2について 引用発明においては、フォトレジストパターン5aをマスクとして有機反射防止膜をエッチングする際の、絶縁膜8と有機反射防止膜とのエッチング選択比について記載されていないところ、引用例1には、有機反射防止膜のエッチング時に、N2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマを用いることが記載されており、前記絶縁膜8はTEOS絶縁膜であって、上記のN2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマにより、TEOS絶縁膜はエッチングされないことは、当業者に明らかであるから、引用発明においては、TEOS絶縁膜8と有機反射防止膜とのエッチング選択比が少なくとも5以上であることは、当業者に明らかである。 よって、この点についても、実質的に相違しない。 相違点3について 有機反射防止膜のエッチングにおけるエッチング圧力は、10mTorr(0.01Torr)の1点において、補正後発明1と引用発明は一致するとともに、エッチング条件としては、エッチング圧力以外にも、エッチング時の基板温度、使用するエッチングガス等があり、エッチング圧力は他のエッチング条件によって、その最適な圧力は変動することは当業者に明らかであり、エッチング圧力以外の条件を変更することにより、最適なエッチング圧力が変動することは当業者が容易に予測できるものであることを考慮すると、少なくとも、エッチング圧力が1点においても、一致している、引用発明と補正後発明1とにおいて、この点については実質的に相違しておらず、仮に、相違点であったとしても、補正後発明1に記載される、エッチング圧力の範囲は、当業者が必要に応じて適宜設定できる程度のものである。 相違点4について 引用例2には、「誘導結合プラズマエッチング装置、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチング装置あるいはヘリコン波プラズマエッチング装置等、高密度プラズマ発生源を有するエッチング装置は、プラズマ生成のための電力と、基板バイアス電力の値は独立に選択することができる。このため、弱い入射イオンエネルギではあるが、1011〜1012/cm3 オーダの高密度プラズマによりスループットの高い低ダメージエッチングが可能である。」と記載されており、引用発明において、エッチング時のプラズマ密度を、補正後発明1の如く、「1×1011cm-3以上」とすることは、当業者が何らの困難性もなくなしえたものである。 したがって、補正後発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 (2-5)むすび 以上のとおり、本件補正は、その請求項2及び請求項3に係る発明については検討するまでもなく、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年3月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項18に係る発明は、平成13年6月18日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面に記載される特許請求の範囲の請求項1ないし請求項18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜の上に導電層を形成する工程と、 前記導電層の上にストッパ層を形成する工程と、 前記ストッパ層の上に有機反射防止膜を形成する工程と、 前記有機反射防止膜の上に所定のパターンのレジスト層を形成する工程と、 前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、 少なくとも前記有機反射防止膜をマスクとして、前記ストッパ層をエッチングする工程と、 少なくとも前記ストッパ層をマスクとして、前記導電層をエッチングする工程と、を含み、 前記ストッパ層は、前記有機反射防止膜をエッチングする工程において、前記有機反射防止膜のエッチング速度に比べて遅いエッチング速度を有する材質からなり、前記ストッパ層のエッチング速度に対する前記有機反射防止膜のエッチング速度の比は5以上である半導体装置の製造方法。」 4.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-153704号公報(以下「引用例1」という。)及び、その記載事項は前記「(2-3-1)」に記載したとおりである。 5.対比・判断 本願発明と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを比較すると、 引用発明の、「シリコン基板1」、「絶縁膜2a」、「ポリシリコン膜3」、「有機反射防止膜4」及び、「フォトレジストパターン5a」は、 本願発明の、「半導体基板」、「絶縁膜」、「導電層」、「有機反射防止膜」及び、「所定パターンのレジスト層」にそれぞれ相当する。 また、引用発明に関し、フォトレジストパターン5aをマスクとして有機反射防止膜をエッチングする時に、N2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマを用いることが記載されるとともに、前記絶縁膜8はTEOS絶縁膜であって、上記のN2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマによっては、TEOS絶縁膜がエッチングされないことは、当業者に明らかであり、引用発明においては、TEOS絶縁膜8は有機反射防止膜をエッチングする際のエッチング防止層であること、当業者に明らかであるから、引用発明の「TEOS等の絶縁膜8」は、本願発明の「ストッパ層」に相当する。 よって、両者は、 「半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜の上に導電層を形成する工程と、 前記導電層の上にストッパ層を形成する工程と、 前記ストッパ層の上に有機反射防止膜を形成する工程と、 前記有機反射防止膜の上に所定のパターンのレジスト層を形成する工程と、 前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、 を含む 半導体装置の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 本願発明では、「前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程と、少なくとも前記有機反射防止膜をマスクとして、前記ストッパ層をエッチングする工程と、少なくとも前記ストッパ層をマスクとして、前記導電層をエッチングする工程」を備えているのに対して、 引用発明では、「前記フォトレジストパターン5aをマスクにして前記有機反射防止膜4をエッチングする工程と、前記絶縁膜8と前記ポリシリコン膜3をエッチングする工程」を備えている点。 相違点2 本願発明では、「前記ストッパ層は、前記有機反射防止膜をエッチングする工程において、前記有機反射防止膜のエッチング速度に比べて遅いエッチング速度を有する材質からなり、前記ストッパ層のエッチング速度に対する前記有機反射防止膜のエッチング速度の比は5以上であ」るのに対して、 引用発明では、上記構成が記載されていない点。 上記相違点について以下で検討する。 相違点1について 両者において、「前記レジスト層をマスクとして、前記有機反射防止膜をエッチングする工程」を備える点については実質的に相違していない。 また、引用例1の、第14図と、第32段落の「第5〜第7の実施例では、フォトレジスト5aをマスクとして、有機ARC膜4をエッチング後、通常のRIEエッチングにより絶縁膜8および導電膜3にエッチングを行う。」と記載されるとともに、絶縁膜8を備えない実施例1においては、第7図、第9図と、第25段落及び第28段落の記載より、フォトレジストパターン5aをマスクとして有機反射防止膜4をエッチングした後、パターニングされた有機反射防止膜4又は、フォトレジストパターン5aとパターニングされた有機反射防止膜4との両者をマスクとして、ポリシリコン膜3をエッチングしているから、絶縁膜8を備えた実施例においては、有機反射防止膜4の下に形成されている絶縁膜8のエッチングにおいては、パターニングされた有機反射防止膜又は、フォトレジストパターン5aとパターニングされた有機反射防止膜4との両者をマスクとしてエッチングしているものと、当業者であれば容易に推測できるとともに、引用発明においては、絶縁膜8のエッチング工程とポリシリコン膜3のエッチング工程が異なるエッチング工程であるか、同一エッチング工程により絶縁膜8とポリシリコン膜3とをエッチングするものであるかは明確には記載されていないが、半導体製造工程としてのエッチング工程においては、通常、相互に直接接触した異なる性質の2層の薄膜に対しそれぞれ異なるエッチング工程によりエッチングすること及び、絶縁膜8とポリシリコン膜3とにおいて薄膜の特性が非常に異なることをも考慮すると、絶縁膜8のエッチング工程とポリシリコン膜のエッチング工程とを異なるエッチング工程とすることは、当業者が必要に応じて適宜設定しえたものであるから、引用発明においても、少なくともパターニングされた有機反射防止膜4をマスクとして、本願発明のストッパ層に相当する、絶縁膜8をエッチングする工程を備えることは明らかであるとともに、ポリシリコン膜をエッチングする工程において、少なくとも絶縁膜8がエッチング時のマスクとなることは明らかであるから、引用発明においても、少なくとも絶縁膜8をマスクとしてポリシリコン膜3をエッチングする工程を備えていることは、当業者にとって明らかである。 よって、相違点1については、実質的に相違しない。 相違点2について 引用発明においては、フォトレジストパターン5aをマスクとして有機反射防止膜をエッチングする際の、絶縁膜8と有機反射防止膜とのエッチング選択比について記載されていないところ、引用例1には、有機反射防止膜のエッチング時に、N2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマを用いることが記載されており、前記絶縁膜8はTEOS絶縁膜であって、上記のN2ガスプラズマ、N2+O2ガスプラズマ又は、CO2ガスプラズマにより、TEOS絶縁膜はエッチングされないことは、当業者に明らかであるから、引用発明においては、TEOS絶縁膜8と有機反射防止膜とのエッチング選択比が少なくとも5以上であることは、当業者に明らかである。 よって、この点についても、実質的に相違していない。 したがって、本願発明は、引用発明と実質的に同一であり、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願は、請求項2ないし請求項18に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-05-11 |
結審通知日 | 2004-05-18 |
審決日 | 2004-06-08 |
出願番号 | 特願平11-251217 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今井 拓也 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 橋本 武 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 井上 一 |
代理人 | 大渕 美千栄 |
代理人 | 布施 行夫 |