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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1100643
審判番号 不服2002-9637  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-30 
確定日 2004-07-22 
事件の表示 平成 7年特許願第 22719号「携帯用端末装置のホルダー」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月30日出願公開、特開平 8-223262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年2月10日の出願であって、平成14年5月30日付けで審判請求がなされ、特許法第17条の2第1項第5号の規定により、平成14年6月17日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成14年6月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成14年6月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正は、補正前特許請求の範囲の請求項1の記載を、
【請求項1】
「携帯用端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持することを特徴とする携帯用端末装置のホルダー。」、
と補正することを含むものである、
該補正は、補正前特許請求の範囲の請求項1の「前記取付手段」の、「前記保持手段」の支持の仕方について、「前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する」と、下線部分の構成を付加し、限定するものであり、本件補正が、特許法第17条の2第3項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が独立して特許を受けることができるのか否かについて以下、検討する。

2.特許法第29条第2項についての検討
(1)本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)は、次のとおりのものである。
【請求項1】
「携帯用端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持することを特徴とする携帯用端末装置のホルダー。」

(2)引用例
ア.原審拒絶理由において引用された特開平5-122128号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記(ア)、(イ)の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来技術】
選択呼出受信機(ページャ)等の携帯用小型電子機器は、携帯者の腰ベルトや、バッグ等に取付けられて使用されることが多く、そのためにベルト等に装着するためのクリップを備えたホルダーが使用されている。このホルダーは携帯用小型電子機器を保持した状態で該クリップでベルト等に掛止することによって機器前面に位置するディスプレイの目視や、操作スイッチ等の操作を容易化することを可能としている。
【0003】
図7は従来のホルダーの一例を示し、このホルダーはページャ等の携帯用小型電子機器1を着脱自在に支持する収納ケース2と、収納ケース2の一端縁に設けたヒンジ部3を介して矢印A方向へ回動自在に枢支されたクリップ4とから成る。このクリップ4は、一端をヒンジ部3によって回動自在に支持されたプレート5と、プレート5の上部に設けたヒンジ部6(軸6aを含む)によって回動自在に枢支されると共に図示しないバネによって先端部7aを矢印B方向へ回動自在に弾性付勢されたクリップ片7とから成る。このホルダーをズボン等のベルト10に取り付ける場合にはヒンジ部6を中心としてクリップ片7を矢印C方向へ開放してクリップ片先端7aをベルトの裏面に差し込めばよく、差込み後は前記バネの力によってクリップ片7は矢印B方向へ付勢されてベルト10を挟圧し、その結果ホルダーが固定される。機器1を保持した収納ケース2はヒンジ部3を中心として矢印A方向へ往復回動可能であるため、機器操作時には図示のように開放してディスプレイ1aや操作スイッチ等を操作し易い姿勢に保持し、非操作時にはプレート5の側面に密着させて収納しておくことができる。尚、非操作時には収納ケース2に設けた係止片2aにプレート5の先端部が嵌着することにより収納姿勢を維持することができる。」(2頁、段落【0002】、【0003】)、
(イ)「【0004】
しかしながら上記従来のホルダーはクリップ4を構成する部品点数(ヒンジ部3、軸3a、プレート5、ヒンジ部6,クリップ片7)」(2頁、段落【0004】)。

前記記載事項の「選択呼出受信機(ページャ)等の携帯用小型機器」の記載からみて「選択呼出受信機(ページャー)である携帯用小型機器」は自明である。

前記記載事項、図7並びに技術常識からみて、
引用例1には、
「選択呼出受信機(ページャ)である携帯用小型機器を支持する収納ケースと、
前記収納ケースが支持した前記携帯用小型機器をユーザに取り付けるためのクリップと、を具備し、
前記クリップは、前記携帯用小型機器がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用小型機器を操作が容易な位置に動かせるようにした収納ケースを支持する携帯用小型機器のホルダー。」、
を構成とする発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

イ.例えば、周知例1として示す、実願平4-4304号(実開平5-65132号)のCD-ROM、には、下記(ウ)〜(ク)の事項が記載されている。
(ウ)「【0007】
本考案は上記従来の課題に鑑みたものであり、その目的は、携帯用受信機本体を容易に腰ベルトなどに取り付け、更に取り付け状態において本体正面に設けられた大きい表示部を容易に視認できる操作性に優れ、かつ小型軽量の表示器付き携帯用受信機を提供することにある。」(6頁段落【0007】)、
(エ)「【0012】
図1には本考案に係る表示器付き携帯用受信機を背面から見た状態が示され、図2にはその側面図、図3には図1の3-3に沿って各部を分解した要部断面図が示されている。
【0013】
図示した実施例において、この携帯用受信機は後に説明する図5から明らかなように、その正面に例えば3行の文字表示が可能な大きな面積を有する液晶表示部を有する。」(7頁段落【0012】、【0013】 なお、前記段落【0012】の記載中の3-3の3の数字は、実際には○印を付した数字として記載されている。)、

(オ)「【0016】
図1、2に示されるように、受信機本体10にはさらに電源及び切替スイッチ15、電池蓋ロック16が設けられており、さらに図6に示されるように、各種の操作モードを切り替えるためのスイッチ群17、18、19、20が設けられている」(8頁段落【0016】)、
(カ)「【0018】
このために、本考案において、クリップホルダー11は前記本体10の背面に着脱可能に固定されるホルダー基板21とこのホルダー基板21に一端が枢支され、被用者のベルト100に装着されるベルト保持板22からなる。
【0019】
実施例において、ホルダー基板21及びベルト保持板22も前記本体10のケースと同様にプラスチックのモールド成形から構成されており、両者は、枢軸23によって回転自在に係合している。この枢軸23は前記ホルダー基板21と一体に構成することが好適である。」(8頁段落【0018】、【0019】)、
(キ)「【0022】
一方、前述した本体10の背面には前記ホルダー基板21の第1の係合突部21aと対面する位置に第1の係合溝部10bが設けられ、また本体10の上面には前記ホルダー基板21の短辺側に設けられている第2の係合突部21bと対応する第2の係合溝部10cが一体に形成されている。
【0023】
従って、両係合突部21a、21bを係合溝部10b、10cに係合することによって、ホルダー基板21はその長辺及び短辺の両者のおいて本体10にしっかりと食い付き固定することができる。また、このホルダー基板21はそれ自体プラスチックからなるので、適度な弾性を有しており、図2の係合状態において、その端部を適当なドライバなどでこじ開けることによって容易にクリップホルダー11を本体10から取り外すことができる。図には詳細に示していないが、このようなドライバなどの治具挿入用の薄溝21dをホルダー基板21の適当な箇所に設けることが好適である。」(9頁段落【0022】、【0023】)、
(ク)「【0034】
従って、図2に示されるように、受信機を腰ベルト等に装着した状態では、舌状ばね板21cと第一カム面24aの係合または摩擦カムとの摩擦保持することによって、装着位置では被用者は携帯用受信機をベルト100に安定して固定することができる。
【0035】
一方、図6に示されるように、被用者が電話呼び出しあるいはメッセージの受信を表示部12で確認するときには、図示の如く、クリップホルダー11から本体10を起こし、舌状ばね板21cと第2のカム面24bの係合または摩擦カムとの摩擦保持により起立位置にて受信機本体10を固定する。これによって、受信機本体10はその下方側が身体から離れ、表示部12のメッセージを被用者が上方より容易に読み取れることができる。特に、本考案によれば、クリップホルダー11はそれ自体腰ベルト等に装着したままで、被用者はその都度ベルトから受信機を取り外すことなく、大面積の表示部12の視認が容易に行える。」(12頁段落【0034】、【0035】)。

前記記載事項、図面の記載並びに技術常識からみて、
周知例1には、
「携帯用受信機を保持するホルダー基板と、
前記ホルダー基板が保持した前記携帯用受信機をユーザに釣り下げた状態に取り付けるためのベルト保持板と、を具備し、
前記ベルト保持板は、前記携帯用受信機がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用受信機を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記ホルダー基板を支持する携帯用受信機のクリップホルダー。」
が記載されており、
周知例1の「携帯用受信機」、「ホルダー基板」、「ベルト保持板」、「クリップホルダー」は補正後の発明の「携帯用端末装置」、「保持手段」、「取付手段」、「ホルダー」であるから、
前記周知例1の記載は、「端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する携帯用端末装置のホルダー。」(以下、周知例1の記載事項」という。)というものである。

ウ.例えば、周知例2として示す、実願平2-92651号(実開平4-50942号)の明細書及び図面を撮影したマイクロフィルムには、下記(ケ)、(コ)の事項が記載されている。
(ケ)「[従来の技術]
一般に、個別呼出用受信機(以下、「受信機」という)は携帯して使用するものであり、例えば第2図に示すようなものがある。---また、メッセージを表示する表示部4を前面に備えている。---
従来、この収容ケースとしては、例えば、第3図(a)(b)に示すようなものがある。この収容ケース7は、皮製または合成皮製の箱形形状に形成されたケース本体10を備えており、このケース本体10には受信機1の表示部4が見えるように透明なビニール等の材質で形成した窓部8が設けられている。また、ケース本体10の後面には、腰ベルト9に挿通される挿通帯11が取り付けられている。そして、腰ベルト9に装着した状態で、表示部4を見るときは、ケース本体10を軽く持ち上げて見るようにしている。」(2頁3行〜3頁4行)、

(コ)「[実施例]
「以下、本考案の実施例について図面を参照して説明する。
第1図(a),(b)は、本考案の一実施例に係る個別呼出用受信機の収容ケースを示す斜視図である。個別呼出用受信機は、受信時に音や光の点滅で受信を感知させるために、内蔵したスピーカーからの音を出す開口2と発光素子の光で照明するレンズ3とを備えているとともに、前面にメッセージ等を表示する表示部4を有している。
実施例に係る収容ケースSは、上記個別呼出用受信機を収容するケース本体5を備えており、このケース本体5は透明なプラスチックで形成されている。また、前記透明なプラスチック製ケース本体5の背面には、バタフライ式に開閉可能なクリップ6を取り付けるとともに、該クリップ6は腰ベルト9装着時に個別呼出用受信機1の表示部4が逆さになる向きに設定されている。
したがって、この実施例に係る収容ケースSによれば、受信機1をケース本体5に収納してクリップ6により腰ベルト9に装着する。この場合、ケース本体5がプラスチックで形成されているので、該ケース本体5は硬質になることから、受信機1を携帯する際に受信機1への汚れの付着が防止されるとともに、ケース本体5がぶつかっても受信機1への影響を遮断できるので、傷付防止さらには破壊防止が図られる。そのため、確実に受信機1を保護できる。また、ケース本体5が透明なので、受信機1の表示部4をはじめ外観デザイン全体がよく見える。
さらに,このケース本体5には携帯する際にポケット,腰ベルト等に挟持できるクリップ6がその背面に取り付けられ、クリップ6はバタフライ式に開閉してスプリング等で付勢された状態になっているので、ベルト9への取付けが容易になるとともに、表示部4を見る際、受信機1を軽く持ち上げるだけで表示部4を正常にみることができる。」(5頁11行〜7頁7行)。

前記記載事項、図面の記載並びに技術常識からみて、
周知例2には、
「携帯して使用する個別呼出用受信機を保持するケース本体と、
前記ケース本体が保持した前記携帯用受信機をユーザに釣り下げた状態に取り付けるためのクリップと、を具備し、
前記クリップは、前記個別呼出用受信機がユーザに取り付けられたとき、前記個別呼出用受信機を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記クリップを支持する個別呼出用受信機の収容ケース。」
が記載されており、
周知例2の「携帯して使用する個別呼出用受信機」、「ケース本体」、「クリップ」、「収容ケース」は補正後の発明の「携帯用端末装置」、「保持手段」、「取付手段」、「ホルダー」であるから、
前記周知例2の記載は「端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する携帯用端末装置のホルダー。」(以下、周知例2の記載事項」という。)というものである。

エ.例えば、周知例3として示す、実願平1-43710号(実開平2-137074号)の明細書及び図面を撮影したマイクロフィルムには、下記(サ)の事項が記載されている。
(サ)「〔実施例〕
次に図面を参照して本考案を説明する。
第1図(a)は本考案の携帯用通信機保持具の一実施例を示す側面図、第1図(b)は本考案の携帯用通信機保持具の一実施例を示す平面図である。同図において、ホルダ10に通信機が収納され、内クリップ11,外クリップ12及びすべり止め金具22とによってベルト等に挟んで装着できるようになっている。回転プレート13はホルダ10に固定されており、更に回転プレート13は軸14に結合されて回転できるようになっている。又、回転プレート13の軸14を中心とした円周上には、半球状の凹部15が複数設けられている。外クリップ12も軸14によって回転プレート13と結合されており、回転プレート13の凹部15に対応する所定の位置に伸縮可能な凸部16が設けられ、複数の凹部15の内の一つに嵌り込むことによって、回転プレート13と外クリップ12とが所定の角度をなして保持される。 内クリップ11と外クリップ12とは軸14で結合され、軸の部分に取付けられたばねによって互いに密着しているので、外クリップ12に付着したすべり止め金具22と内クリップ11との間でベルト等を挟んで装着できる。なお、内クリップ11,外クリップ12,すべり止め金具22を弾性のあるプラスチック等で作製し、弾性を利用して挟むようにしてもよい。
第2図は凸部16の一実施例を示す断面図である。同図において、外クリップ12が回転プレート13の凹部15に対応する円周上の位置に穴19が両側面に一つ開けられ、その中にスプリング17及び球18が収容されて、回転プレート13の凹部15に球18がスプリング17によって押されて殴り込むようになっている。なお、凹部15をクリップ側に設け凸部16をホルダ側に設けても同様に動作することは明らかである。
〔考案の効果〕
以上説明したように本考案の携帯用通信機保持具によれば、ホルダに収納した通信機を所定の角度にして保持できるので、通信機の表示画面を見る際は、通信機をその都度ホルダから外さなくてすみ、従って、電話をかけながらメモをとる場合等、両手を使うときは非常に便利であるばかりでなく、通信機を頻繁に着脱しないので、ホルダも破損することはないという効果がある。」(4頁3行〜6頁7行)。

前記記載事項の内クリップ11、外クリップ12、すべり止め金具22、軸、回転プレート及び軸は、前記ホルダが保持した前記携帯用通信機をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段であることは自明のことである。

前記記載事項、図面の記載並びに技術常識からみて、
周知例3には、
「携帯用通信機を保持するホルダと、
前記ホルダが保持した前記携帯用通信機をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用通信機がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用通信機を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記ホルダを支持する携帯用通信機の携帯用通信機保持具。」
が記載されており、
周知例3の「携帯用通信機」、「ケース本体」、「ホルダ」、「携帯用通信機保持具」は補正後の発明の「携帯用端末装置」、「保持手段」、「取付手段」、「ホルダー」であるから、
周知例3の記載は「端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する携帯用端末装置のホルダー。」(以下、周知例3の記載事項」という。)というものである。

オ.これら、周知例1〜3の記載事項からみて、
「端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する携帯用端末装置のホルダー。」は本願出願前より周知の事項(以下、「周知事項」という。)である。

(3)対比・判断
補正後の発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、

(a)引用例1に記載された発明の「選択呼出受信機(ページャ)である携帯用小型機器」は、携帯用の端末装置であり、補正後の発明の「携帯用端末装置」である。
(b)引用例1に記載された発明の「収納ケース」は、前記(a)を考慮して、携帯用端末装置を保持する点において、補正後の発明の「保持手段」である。
(c)引用例1に記載された発明の「クリップ」は、前記(a)、(b)を考慮して前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに取り付けるための手段の点において、補正後の発明の「取付手段」である。
(d)補正後の発明の「前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する」は、「前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する」である。

そうしてみると、補正後の発明と引用例1に記載された発明とは、
「携帯用端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する携帯用端末装置のホルダー。」
である点において一致し、

(1)「前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに取り付けるための取付手段」における、前記携帯用端末装置のユーザへの取り付け状態が、補正後の発明では、「ユーザに釣り下げた状態に取り付ける」のに対し、引用例1に記載された発明では、このような記載がない点、
(2)さらに、前記取付手段での保持手段の支持の仕方に関連する、前記「前記取付手段」は「前記携帯用端末装置を操作が容易な位置に動かせるように保持手段を支持する」について、補正後の発明では、「前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように保持手段を支持する」ものであるに対し、引用例1に記載された発明においては、このような記載がない点、
で相違する。

そこで、前記相違点(1)、(2)について、以下検討する。

相違点(1)、(2)について、
前記、第2.、2.、(2)、オ.に記載した周知事項は、携帯用端末装置のホルダーにおいて、
A.「記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段」(以下、「周知事項A」という。)を有し、
B.「前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて表示部の視認が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する」(以下、「周知事項B」という。)というものである。
そして、前記「周知事項B」の取付手段の「表示部」は、ユーザと携帯用端末装置との間で情報を授受するための携帯用端末装置の部分であり、係る取付手段の「表示部の視認」は「ユーザと携帯用端末装置との間で情報を授受するための携帯用端末装置の部分の使用」であるから、前記周知事項Bは、「前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて、ユーザと携帯用端末装置との間で情報を授受するための携帯用端末装置の部分の使用が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する」というものである。
そして、引用例1に記載された発明に前記周知事項A、Bを適用することを阻害する要因は何ら見あたらないから、
引用例1に記載された発明の、「前記取付手段」に、前記周知事項Aを適用し、
引用例1に記載された発明において、「前記取付手段」における前記携帯用端末装置のユーザへの取り付け状態を、「ユーザに釣り下げた状態に取り付ける」となるようにすることは当業者が容易に成し得たことである(相違点(1))。
また、引用例1に記載された発明の、前記取付手段での保持手段の支持の仕方に、前記周知事項Bを適用し、その際、引用例1に記載された発明の「操作」が「ユーザと携帯用端末装置との間で情報を授受するための携帯用端末装置の部分の使用」であることを考慮して、引用例1に記載された発明の「前記取付手段」の「前記携帯用端末装置を操作が容易な位置に動かせるように保持手段を支持する」について「前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように保持手段を支持する」ように変更することも当業者が容易に成し得たことである(相違点(2))。

そして、補正後の発明の効果も、前記引用例1に記載された発明、周知事項から当業者が予想できる範囲のものである。

(4) よって、本件補正後の発明は、前記引用例1に記載された発明、周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、同法159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成14年6月17日付けの手続補正は前記第2.記載のとおり却下されたので、
平成13年11月12日付けで補正された明細書および図面の記載からみて、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

【請求項1】
「携帯用端末装置を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記携帯用端末装置をユーザに釣り下げた状態に取り付けるための取付手段と、を具備し、
前記取付手段は、前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持することを特徴とする携帯用端末装置のホルダー。」

2.引用例
(1)原審拒絶理由で引用された引用例1、その記載事項及び「引用例1に記載された発明」は、前記「第2.、2.、(2) 、 ア.」に記載したとおりである。

(2)周知例1、2、3の記載事項は「第2.、2.、(2) 、 イ.」〜「第2.、2.、(2) 、エ.」のとおりであり、周知例1、2、3の記載事項から周知事項とされる事項は前記「第2.、2.、(2) 、 オ.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、
本願発明は、前記第2.で検討した補正後の発明の「前記取付手段」の、「前記保持手段」の支持の仕方について、「前記携帯用端末装置がユーザに取り付けられたとき、前記携帯用端末装置を前記釣り下げた状態から上方に向けて操作が容易な位置に動かせるように前記保持手段を支持する」との構成から、下線付加部分である「前記釣り下げた状態から上方に向けて」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.、2.、(3)」に記載したとおり、前記引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、前記引用例1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、前記引用例1に記載された発明、周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-18 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-07 
出願番号 特願平7-22719
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大日方 和幸宮田 繁仁  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 野元 久道
望月 章俊
発明の名称 携帯用端末装置のホルダー  
代理人 大菅 義之  
代理人 久木元 彰  

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