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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1100801
審判番号 不服2003-816  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-14 
確定日 2004-07-29 
事件の表示 平成 7年特許願第321204号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月27日出願公開、特開平 9-138051〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年11月16日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年11月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】 断熱箱体内を区画壁により区画することにより、第1の貯蔵室と第2の貯蔵室を構成すると共に、冷却器により冷却された冷気を送風機によって両貯蔵室内に分配供給して成る冷蔵庫において、
前記区画壁内に構成され、前記冷却器からの冷気を前記第2の貯蔵室内に案内するダクトと、このダクト内に設けられ、前記第2の貯蔵室内の温度を検出するセンサを備えた制御装置によって制御されるステッピングモータ或いはDCモータの回転軸で回動されて前記ダクト内を流通する冷気量を調節するダンパーとを備え、前記区画壁内に成形断熱材を配設すると共に、該成形断熱材内に前記ダクトとダンパーを設け、前記ダクト外の前記成形断熱材内に前記ステッピングモータ或いはDCモータを設けたことを特徴とする冷蔵庫。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献は、次のものである。
引用例1:特開昭61-168769号公報
引用例2:実願昭62-142450号(実開昭64-48571号)のマイクロフィルム

3.引用例に記載されている事項
引用例1には、冷蔵庫に関して、図面とともに、
「全体を符号1で示す冷蔵庫は、上。下三段の貯蔵室から形成されており、その最上段が冷凍室2、中断が低温室(チルド室)3、下段が一般的な冷蔵室4とされている。そして、上述した各貯蔵室2、3、4は、その外側が断熱箱体5によって包囲されるとともに、各貯蔵室間が断熱仕切壁6,7を介して画成され、それぞれ熱的に独立した構成とされている。」(2頁左上欄6行〜同13行)こと、
「8は前記冷凍室2および低温室3の背面側に配設された冷却器、9は圧縮機、10は前記冷却器8で冷却された冷気を前記各貯蔵室2、3、4のそれぞれに送り込む冷却ファンで、このファン10により冷気は前記断熱は個体5を構成する壁部や前記仕切壁6、7等に形成された冷気供給側風路11、12および冷気還流側風路13、14を介して前記低温室3、冷蔵室4にそれぞれ循環供給されるとともに、前記冷凍室2の背面側の冷却器カバー15の上、下に形成された吹出口16および吸込口(図示せず)で冷凍室2内でも冷気が循環供給され、各室2、3、4が適宜適切な温度状態となるように冷却されるものである。」(2頁左上欄17行〜同右上欄9行)こと、
「冷凍室2とその下方に配置された冷凍室よりも温度の高い貯蔵室としての低温室3とを画成する断熱仕切壁6内に、一端が前記低温室3内に吹出口19aとして開口する冷気通路19を略水平方向に沿って設け、この冷気通路19の途中に配設された冷気の流れを開閉制御するダンパサーモ17を備えてなり、」(3頁右上欄11行〜同17行)ということ、
「ここで、本実施例では、上述した冷気供給側風路11からの冷気を、第2図に示されるように、冷蔵庫1の幅方向略中央に配設されたダンパサーモ17の本体部17aを避けた両側を迂回して前記断熱材24の上部凹陥部27内の両側部27a、27bから流れ込み、さらにこの凹陥部27の前部中央に穿設された前記開口部26を介して下部凹陥部25によって形成されている冷気通路19側に導かれるような構成とされている。」(3頁左下欄15行〜同右下欄4行)こと、
「なお、図中28は前記ダンパサーモ17を配設した下部凹陥部25を吹出口19aを除いて閉塞する仕切板、15aは前記冷凍室2を仕切る冷却器カバー15の下方に膨出して形成された膨出部で、この膨出部15aにより供給側風路11からの冷気を円滑な流れにて下方に流すような構成とされている。さらに、本実施例では、上述した第1および第2のゲート壁20、21は、前記断熱材24の下部凹陥部25の底部でダンパサーモ17部分を取囲むように付設された底板29と一体的に形成した場合を示している。」(3頁右下欄5行〜同15行)こと、
が記載されている。

引用例2には、冷蔵庫の温度制御装置に関して、図面とともに、
「従来の冷蔵庫の温度制御装置は上記のように構成されているので、断熱ケース(15)内の空間(16)は、バッフル(11)が前後方向に移動する距離と冷気の流れる間隙を要し、断熱ケース(15)の全体の前後方向の厚みが厚くなり、背壁から大きく突出して、上段の冷蔵室棚(20)の奥行の寸法を縮め、載置面積を減らしたり、有効内容積を減らすという問題点があった。」(5頁3行〜同10行)こと、
「この実施例の冷蔵庫の温度制御装置は、上記のように構成されており、冷却器(5)で冷却された冷気の一部は、冷気吹出ダクト(9)を通り、吹出冷気制御部(21)のダクト部(21a)の開口部(21b)に導かれる。バッフル(22)は、温度調節装置による設定温度と、温度センサ(24)で感知した庫内温度からマイクロコンピュータ等による比較動作により開閉制御される。例えば、設定温度に対し庫内温度が高い場合は、ソレノイド(23a)がロッド(23b)を吸引するように動作し、アーム(22b)と回動軸(22a)を介してバッフル(22)を約45度回動させて開口部(21b)を開く。」(8頁4行〜同16行)こと、
「上記バッフル(22)が開いているときは、バッフル(22)を通過した冷気は、バッフル(22)によって分流されて一部が前面吹出口(25a)から、残りが下面吹出口(25b)から冷蔵室に吹き出される。」(8頁19行〜9頁4行)こと、
「この実施例の冷蔵庫の温度制御装置は、冷気吹出ダクト(9)を流れる冷気を、下部ダクト(26)を経て、冷蔵室下部または冷蔵室の下にある他の冷蔵室に導くものである。この実施例では、吹出冷気制御部(27)の近傍に冷気吹出口を設ける必要がないため、断熱ケース(25)がより小さくなる。バッフル(28)は回動軸(28a)端の歯車(28b)、モータ(29a)の歯車(29b)により開閉動作をする。この、モータ(29a)と、モータ(29a)の歯車(29b)と、回動軸(28a)端の歯車(28b)の部分からなる駆動装置(29)は、バッフル(28)に対して横方向に配置されているので、上下方向の寸法が小さくまとまり、冷蔵室の無効容積がより小さくなる。」(9頁8行〜10頁2行)こと、
が記載されている。

4.対比・判断
本願発明と引用例1に記載されたものとを対比し、検討する。
上記摘示した事項から、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「断熱箱体5内に断熱仕切壁6により画成することにより、第1の貯蔵室2と第2の貯蔵室3を構成すると共に、冷却器8により冷却された冷気を送風機10によって両貯蔵室内に分配供給して成る冷蔵庫1において、
前記断熱仕切壁6内に構成され、前記冷却器8からの冷気を前記第2の貯蔵室内に案内する上部凹陥部27、開口部26、下部凹陥部25によって形成されている冷気通路19と、この開口部26に設けられ、上部凹陥部27、開口部26及び下部凹陥部25によって形成されている冷気通路19を流通する冷気量を調節するダンパサーモ17とを備え、前記断熱仕切壁6内に断熱材24を配設すると共に、冷気を案内する上部凹陥部27、開口部26及び下部凹陥部25によって形成されている冷気通路19とダンパサーモ17を設け、冷気通路19側と反対側の断熱材24内の凹部にダンパサーモ17の本体部17aを設けた冷蔵庫。」

そして、前記断熱仕切壁6を構成している断熱材24には、上部凹陥部27、開口部26、下部凹陥部25、冷気通路19、ダンパサーモ17の本体部17aを収納する凹部が形成されているものであるから、この断熱材24は、「成形断熱材」ということができるし、また、この上部凹陥部27、開口部26、下部凹陥部25、冷気通路19は、冷気供給側風路11からの冷気を、上部凹陥部27から開口部26、下部凹陥部25によって形成された冷気通路19を通って第2の貯蔵室3へ導く冷気案内通路でもあるから、この冷気案内通路は、冷気の「ダクト」ということできる。さらに、ダンパサーモ17の本体部17aは、冷気通路19側とは反対側の断熱材24内の凹部に設けられているから、ダクト外の成形断熱材内に配設されているものといえる。

そうすると、引用例1に記載された発明の、「断熱箱体5」、「断熱仕切壁6」、「第1の貯蔵室2」、「第2の貯蔵室3」、「冷却器8」、「送風機10」、「上部凹陥部27、開口部26、下部凹陥部25によって形成された冷気通路19」、「ダンパサーモ17」、「断熱材24」は、それぞれ本願発明の「断熱箱体」、「区画壁」、「第1の貯蔵室」、「第2の貯蔵室」、「冷却器」、「送風機」、「ダクト」、「ダンパー」、「成形断熱材」に相当するものと認められる。また、本願発明におけるステッピングモータ或いはDCモータは、ダンパーを駆動するための駆動装置ということができるとともに、引用例1のダンパサーモ17の本体部17aも、ダンパサーモ17を駆動するための駆動装置といえるから、両者は、次の点で一致しているものと認められる。

「断熱箱体内を区画壁により区画することにより、第1の貯蔵室と第2の貯蔵室を構成すると共に、冷却器により冷却された冷気を送風機によって両貯蔵室内に分配供給して成る冷蔵庫において、
前記区画壁内に構成され、前記冷却器からの冷気を前記第2の貯蔵室内に案内するダクトと、このダクト内に設けられ、前記ダクト内を流通する冷気量を調節するダンパーとを備え、前記区画壁内に成形断熱材を配設すると共に、該成形断熱材内に前記ダクトとダンパーを設け、前記ダクト外の前記成形断熱材内にダンパーを駆動するための駆動装置を設けた冷蔵庫。」

しかし、次の点で相違しているものと認められる。
・相違点1:ダンパーを駆動するための駆動装置が、本願発明は、成形断熱材内に設けた「ステッピングモータ或いはDCモータ」であるのに対し、引用例1に記載された発明は、成形断熱材内に設けたダンパサーモ17の「本体部17a」である点。
・相違点2:ダンパーが、本願発明は、「前記第2の貯蔵室内の温度を検出するセンサを備えた制御装置によって制御されるステッピングモータ或いはDCモータの回転軸で回動され」るものであるのに対し、引用例1に記載された発明は、ダンパサーモ17の本体部17aによって駆動されるものであって、本願発明のような構成を備えていない点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点1について
引用例2には、冷蔵室の有効内容積を大きくするために、冷気吹出ダクト(9)の冷気を下部ダクト(26)に導く冷気量を調節するバッフル(28)(本願発明の「ダンパー」に相当する)をモータ(29a)によって駆動するものが示されている。該モータ(29a)が、どのような種類のモータであるかを特定する記載はないものの、冷蔵庫のダンパー駆動用のモータとして、ステッピングモータを用いることは、例えば、特開昭58-164981号公報、特開昭59-191869号公報に示されるように周知といえるから、相違点1の構成は、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
・相違点2について
冷蔵庫の庫内温度を制御するために、庫内温度を温度センサを検出することは、ダンパサーモを用いたものにおいても、引用例2の第6図、第7図の従来技術に示されるように当然の構成といえるうえに、該引用例2には、冷蔵庫の庫内に設けた温度センサ(24)の感知温度によって、マイクロコンピュータ等でソレノイド(23a)或いはモータ(29a)を制御して、バッフル(22)、(28)(本願発明の「ダンパー」に相当する)の回動軸(22a)、(28a)を回動して、バッフル(22)、(28)の開閉制御するものが示されている。
そうすると、ステッピングモータによって冷蔵庫のダンパーを駆動することが上記したように周知であることを考慮すれば、相違点2の構成は、引用例2及び周知の事項から当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願発明が奏する効果も、上記引用例1、2及び周知の事項から当業者が容易に予測することができたものと認められる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-25 
結審通知日 2004-06-01 
審決日 2004-06-15 
出願番号 特願平7-321204
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 芝野 正雅  

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