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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22D
管理番号 1100832
審判番号 不服2002-20388  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-11 
確定日 2004-07-28 
事件の表示 平成9年特許願第341845号「金属低圧鋳造炉」拒絶査定不服審判事件〔平成11年5月25日出願公開、特開平11-138250〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成9年11月6日の出願であって、平成14年8月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年9月11日(提出日)に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】加圧用気体供給口および溶湯レベル計測器を備えた加圧室を連通可能な状態で溶湯保持室に隣接配置し、前記両室が連通する部分に溶湯遮断弁を設けるとともに、前記加圧室の下流側に先端部が出湯口に連結する連通管を配置したことを特徴とする金属低圧鋳造炉。
【請求項2】前記連通管にチューブヒーターを内蔵させたことを特徴とする請求項1記載の金属低圧鋳造炉。」

III.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-142887号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平3-142055号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平6-254669号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

引用例1;
記載事項1-1;
「【請求項6】鋳造機械(1)における鋳造炉(2)と鋳型下側部分(4)および鋳造炉(6)と融解炉(8)とを備え鋳造設備において、融解炉(8)、鋳造炉(6)および鋳型下側部分(4)が、その入口開口(12)および出口開口(11)が常に融解物の中に漬かり常に液状融解物で充填されているサイフォン状配管(10、5)を介して互いに接続され、融解炉(8)内における入口開口(12)が遮断弁(14)を、鋳造炉(6)が圧力配管(16)をそれぞれ有しており、この遮断弁(14)および圧力配管(16)が、圧力配管(16)で圧力を供給する際に遮断弁(14)が閉鎖位置に置かれるように作動接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法を実施するための鋳造設備。」(第1欄33〜46行)
記載事項1-2;
「【請求項8】サイフォン配管(10)および鋳込み管(5)が加熱されていることを特徴とする請求項6記載の鋳造設備。」(第1欄50行〜第2欄1行)
記載事項1-3;
「【0017】図1から分かるように、鋳造設備はまず鋳造機械1を有している。・・中略・・鋳込み管5の立上り管4として形成された端部は金型2の中に下から開口している。鋳込み管5の他端は、鋳造機械1から分離され別個に配置された本来の鋳造炉6の中に蓋7を貫通して開口している。
【0018】鋳造炉6および場合によっては別個に配置された融解炉8は互いにサイフォン状配管10を介して接続されている。このサイフォン状配管10の一端11は鋳造炉6の中に上から蓋7を貫通して突出し、他端12は融解炉8の中に同様に融解炉の蓋9を貫通して上から突出している。更に融解炉8は融解すべき金属を補給するための蓋9を貫通している補給開口13も有している。
【0019】更に図1から分かるように、サイフォン状配管10の融解炉8の中に突出する端部12は、制御装置15によって制御される弁14によって遮断できる。更に鋳造炉6の中には蓋7を貫通して圧力配管16が開口している。鋳造炉6の中にはガス状媒体がこの圧力配管16によって約1バールの圧力まで吹き込まれる。その場合圧力配管16は後述するように、圧力表示器を備えた圧力・電流変換器17と圧力・温度記録器18によって制御される。
【0020】図1から分かるように、融解炉8、鋳造炉6および立上り管4の下側部分は融解物20、21、22で充填されている。その場合、サイフォン状接続配管5、10によって3つの設備部分は全部同じ融解物レベル23にされている。これは、補助的に加熱されている配管5、10がそれぞれ完全に液状融解物で充填され、これに伴うサイフォン作用によって3つの容器が全部それぞれ同じ高さの融解物レベルにされることにより行われている。」(第4欄15〜50行)
記載事項1-4;
「【0022】初めて運転を開始する場合、・・中略・・金属を融解し、この融解物で両方の炉6、8を配管5、10の端部の上まで充填した後、圧力配管6に圧力が供給される。その際同時に、サイフォン状配管10の融解炉8の中に突出する端部12は制御装置15および弁14によって閉じられる。その場合、圧力配管16に対しては約1バールの圧力で十分である。この過圧によって融解物の一部は鋳込み管5および立上り管4を介して金型2に、この金型2が充填され塞がれるまで搬送される。続いて過圧を維持した状態で一時的に弁14が開かれ、従って鋳造炉6から融解物が配管10を介して融解炉8まで流れるので、これによってサイフォン状配管10も充填される。圧力配管16への圧力の供給を停止した後、配管5、10を介して融解物が平衡されることによって3つの容器4、6、8は全部同じ高さの液体レベル23にされる。
【0023】その場合、鋳造炉6および融解炉8における充填率が、立上り管4における融解物レベル23が金型2の入口開口より僅かしか低くないような大きさであることが重要である。これによって金型2に新たに充填する際、立上り管4内の融解物22を僅かに持ち上げればよく、従って全般的に鋳造設備内において融解物を僅かに移動するだけで済み、これによって特に、製造すべき鋳物の良好で密な品質が得られる。立上り管4におけるこの比較的高い融解物レベル23は、例えば鋳造炉6および又は融解炉8における充填率が十分でないとき、鋳造炉6並びに融解炉8が矢印26、27に応じて垂直方向に移動され、所望の高さに調整されることによって追従調整することが可能である。
【0024】通常運転の場合、即ち立上り管4、鋳造炉6、融解炉8および配管5、10が融解物で充填されているとき、金型2の成形中空室3の新たな充填は、圧力配管16を通して圧力を供給した後で弁14を閉じた後、対応した量の融解物が鋳造炉6から配管5および立上り管4を通って金型2に搬送されることによって達成される。圧力を停止し弁14を開いた後、鋳造炉6において消費された融解物はサイフォン状配管10を介して融解炉8から補充され、従って再び同じ融解物レベル23にされる。」(第5欄2行〜第6欄3行)

引用例2;
記載事項2-1;
「以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。第1図本発明のフュージブル・コアー成形装置の概略構成を示す図である。・・中略・・主ポット2にパイプ9及びバルブ10で連通され且つ加熱ヒータ(図示せず)によって温度コントロールされた調整ポット11と、低融点合金を溶かす溶解炉12と、該溶解炉12の底部から溶融低融点合金を供給するためバルブ13及びパイプ14と、該パイプ14の下端に設けられた溶融低融点合金のレベルを調整するレベル調節器15とを具備する構成である。
上記構成のフュージブル・コアー成形装置において、圧縮空気送入パイプ3から主ポット2内に圧縮空気を送り込み、溶融低融点合金がパイプ4内を上昇し、型枠ゲート5から上型枠6と下型枠7の間の間隙8に注入されてフュージブル・コアーを成形する点は上記従来例と同様である。溶融低融点合金を間隙8に注入後、主ポット2内の空気を排気し、主ポット2内の空気圧が大気圧に戻ったら、バルブ10を開くことにより、調整ポット11内の溶融低融点合金がバルブ10及びパイプ9を通って主ポット2内に供給される。従って、調整ポット11の溶融低融点合金のレベルを常に一定に調節すると、主ポット2の溶融低融点合金のレベルも前記バルブ10を開放することにより一定レベルになる。調整ポット11内の溶融低融点合金のレベルと主ポット2内の溶融低融点合金のレベルが同一レベルになった時点でバルブ10を電気的に閉じ、上記と同様の操作により、フュージブル・コアー成形する。」(第3頁右上欄18行〜右下欄13行、第1図)
記載事項2-2;
「以上説明したように本発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
(1)主ポットとパイプ及びバルブで連通し、該主ポットの溶融低融点合金レベルを一定に維持する調整ポットを設けたので、主ポット内の溶融低融点合金量と圧縮空気のバランスが崩れることがなく、品質の良いフュージブル・コアーを安定して製造できる。
(2)また、調整ポット内への溶融低融点合金の補給は溶解炉底部からの加熱ヒータ付きパイプを通して自然流出されるので、人手により溶融低融点合金の補給や保守等の必要なポンプが必要でなくなる。
(3)また、パイプ下端に備えた溶融低融点合金のレベルを調節するレベル調節器を設けたことにより、調整ポット内の溶融低融点合金レベルを一定に維持することができる。」(第4頁右下欄10行〜第5頁左上欄6行)

引用例3;
記載事項3-1;
「1.金属溶湯用に使用する搬送用樋通路で酸化物の発生を防止する為に蓋煉瓦を下方に押下げ樋本体との嵌合によって、樋内の溶湯上表層面と蓋煉瓦下層面との空間を消失させた樋搬送路。
2.消失熱量を補給する為、及び溶湯温度調整の為にヒーター、チューブを溶湯内に挿入させた構造となっているもの。」(第1欄2〜8行)
記載事項3-2;
「【産業上の利用分野】本発明は金属溶湯を溶炉より一貫して鋳型迄へ給湯する自動定量給湯配管システム・・中略・・の一部である軽合金密閉式自動搬送用樋の発明である。」(第1欄13〜16行)
記載事項3-3;
「【0004】【課題を解決する手段】・・中略・・図面の簡単な説明にある図2のように改良した為、溶湯上面が空気に触れない位置迄蓋煉瓦を押下げている。この水位面は、溶湯金属を供給する保持炉の下部水位面と同じ位置迄押下げている。更に、放熱損失を補給調節する為のチューブ、ヒーターも同時に挿入している。図3にあるように」(第1欄37〜45行)
記載事項3-4;
【図面の簡単な説明】の【符号の説明】として、「3’改良チューブヒーター、・・中略・・12.溶湯金属の鋳型への挿入口 13.各々の鋳型で注型」と記載されている。

IV.対比・判断
1.本願発明1について
引用例1の記載事項1-1によれば、引用例1には、「鋳造炉(2)と鋳型下側部分(4)および鋳造炉(6)と融解炉(8)とを備え、融解炉(8)、鋳造炉(6)および鋳型下側部分(4)がサイフォン状配管(10、5)を介して互いに接続され、融解炉(8)内における入口開口(12)が遮断弁(14)を、鋳造炉(6)が圧力配管(16)をそれぞれ有しており、この遮断弁(14)および圧力配管(16)が、圧力配管(16)で圧力を供給する際に遮断弁(14)が閉鎖位置に置かれるように作動接続されている鋳造設備。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていることが認められる。
そして、引用例1中の鋳型下側部分(4)についての「鋳込み管5の立上り管4として形成された端部は金型2の中に下から開口している」(記載事項1-3【0017】)との記載、鋳造炉(6)についての「鋳造炉6の中には蓋7を貫通して圧力配管16が開口している」(記載事項1-3【0019】)との記載、「金属を融解し、この融解物で・・・充填した」(記載事項1-4【0022】)との記載を考慮すれば、引用例1に記載される「圧力配管(16)」、「鋳造炉(6)」、「鋳型下側部分(4)」、「サイフォン状配管(5)、鋳込み管5」及び「融解物」は、それぞれ、本願発明1の「加圧用気体供給口」、「加圧室」、「出湯口」、「連通管」及び「溶湯」に相当するといえる。
そこで、本願発明1と引用発明とを対比すると、両者は、「加圧用気体供給口を備えた加圧室を設けるとともに、前記加圧室の下流側に先端部が出湯口に連結する連通管を配置したことを特徴とする金属低圧鋳造炉。」で一致するが、以下の点で相違する。
相違点1;本願発明1では、加圧室に「溶湯レベル計測器」を設けているのに対して、引用発明では「溶湯レベル計測器」を設けていない点。
相違点2;本願発明1では、「加圧室を連通可能な状態で溶湯保持室に隣接配置し、前記両室が連通する部分に溶湯遮断弁を設け」るのに対して、引用発明では、「鋳造炉(6)(本願発明1の加圧室に相当)を連通可能な状態で融解炉(8)に隣接配置し、前記鋳造炉(6)、融解炉(8)が連通する部分に溶湯遮断弁を設け」ている点。

上記相違点1、2について検討する。
相違点1について;
引用例1には、「鋳造炉6および融解炉8における充填率が、立上り管4における融解物レベル23が金型2の入口開口より僅かしか低くないような大きさであることが重要である。・・中略・・立上り管4におけるこの比較的高い融解物レベル23は、例えば鋳造炉6および又は融解炉8における充填率が十分でないとき、鋳造炉6並びに融解炉8が矢印26、27に応じて垂直方向に移動され、所望の高さに調整されることによって追従調整することが可能である。・・中略・・鋳造炉6において消費された融解物はサイフォン状配管10を介して融解炉8から補充され、従って再び同じ融解物レベル23にされる。」(記載事項1-4【0023】、【0024】)と記載され、そして、これらの記載によれば、引用発明では、溶湯レベルを特定の位置に維持することが必要であるとされており、例えば、鋳造炉6(本願発明1の加圧炉)の充填率が不十分な場合には、溶湯レベルが所望位置となるように調整するとされている。
ところで、溶湯レベルの位置調整を行うにあたっては、通常その前提として、まず溶湯レベルを知る必要があるところ、例えば、本願明細書で引用された先行従来技術(実公平2-35399号公報)でも溶湯レベル計測器を設けているように、溶湯レベルを知るための手段として溶湯レベル計測器を設けることは本願出願前より当業者にとって周知である。
そうであれば、上記相違点1は、引用発明において、加圧室に「溶湯レベル計測器」を設けるという周知技術を単に採用したにすぎないから、当業者が容易になし得ることと認められる。

相違点2について;
相違点2を言い換えれば、本願発明1と引用発明とは、加圧室を溶湯保持室に隣接配置するか、それとも、融解炉(8)に隣接配置するかで相違するということになるが、引用例1の、「更に融解炉8は融解すべき金属を補給するための蓋9を貫通している補給開口13も有している。」(記載事項1-3【0018】)、「鋳造炉6において消費された融解物はサイフォン状配管10を介して融解炉8から補充され、」(記載事項1-4【0024】)との記載によれば、引用発明の融解炉は、その中で金属を溶解する炉であると同時に、溶解した溶湯を保持し、更に、その溶湯を加圧室へと供給するという機能を備えた室であるといえる。
ところで、本願明細書の段落【0007】には、本願発明1の「溶湯保持室」について、「ここで溶湯保持室2は金属溶解炉(図示せず)と接続しており、溶解炉より送られた溶湯を常時一定水準保持している。」と記載されていることから、本願発明1における「溶湯保持室」は、その一つの態様として、金属の溶解をその中で行なわない場合もあることが認められるが、本願の請求項1には、溶湯保持室で金属の溶解を行わないとの限定がされているわけではないから、溶湯が保持される室であれば、その中で金属の溶解が行われるか否かに拘わらず、それは溶湯保持室であるといわざるを得ない。
してみれば、引用発明の融解炉は、少なくとも溶湯を保持する室としての機能を備えるのであるから、引用発明の融解炉は、その機能からみて当然に本願発明1の溶湯保持室に相当する。
そうすると、引用発明においても、「鋳造炉(6)(本願発明1の加圧室に相当)を連通可能な状態で融解炉(8)(上述のとおり、本願発明1の溶湯保持室に相当)に隣接配置し、前記鋳造炉(6)、融解炉(8)が連通する部分に溶湯遮断弁を設け」られていることになるのであるから、上記相違点2は、単なる表現上の差異に基づく相違であって、実質的な相違にはあたらない。

なお、本願発明1の「溶湯保持室」が、金属の溶解を行なわない室に限定されるべきものでないことは前述のとおりであるが、仮に、金属の溶解を行なわない室を「溶湯保持室」であると限定的に解釈したとしても、上記相違点2は、以下に述べるとおり、当業者が容易に想到し得るものである。
即ち、引用例2には、溶湯を主ポット内で加圧し、フュージブル・コアーを鋳造により成形する装置において、溶解炉12から溶湯を調整ポット11へと供給し、さらに、調整ポット11から主ポットへと溶湯を供給することが記載されている(引用例2の記載事項2-1、2-2)。つまり、引用例2では、主ポットへ溶湯を供給するにあたり、調整ポット内で金属を溶解し、その溶湯を主ポットへ供給するのではなく、調整ポットとは別の溶解炉内で金属を溶解し、溶解した金属(溶湯)を調整ポットで保持した後、その溶湯を主ポットへ供給するとされている。
そして、引用例2に記載される主ポットは、溶湯を加圧する室であって、本願発明1でいう加圧室に相当するものであるから、引用例2には、加圧室に溶湯を供給するに際し、金属の溶解と溶湯の保持とをそれぞれ別の室で行い、金属の溶解を行なわない調整ポットから加圧室に溶湯を供給することが開示されているといえる。
ところで、引用発明の融解炉(8)が、金属を溶解する炉であると同時に溶湯を保持するという機能を備えた室であることは既に述べたとおりであるところ、金属の溶解と溶湯の保持とをそれぞれ別の室で行うことが引用例2に開示されているのであるから、引用発明の融解炉(8)において、金属の溶解と溶湯の保持をそれぞれ別の室で行わせること、即ち、金属溶解炉で金属を溶解し、溶湯保持室で溶湯を保持すること、は当業者にとって格別の困難性を要することとはいえない。
そうすると、本願発明1の「溶湯保持室」が、金属の溶解を行なわない室であると仮に限定的に解釈したとしても、上記相違点2は、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

相違点1、2については上記のとおりであり、そして、相違点1、2を発明特定事項として備えたことにより奏される効果も、格別顕著なものではないから、本願発明1は、引用例1に記載された発明、或いは、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1において、「連通管にチューブヒーターを内蔵させた」との発明特定事項を更に付加し限定したものである。
そして、本願発明2と引用発明とを比較すると、両者は、前記相違点1、2に加え、次の相違点3で相違し、その余で一致する。
相違点3;本願発明2では、「連通管にチューブヒーターを内蔵させた」のに対して、引用発明では、「鋳込み管(5)(本願発明2の連通管に相当)が加熱されている」(引用例1の記載事項1-2参照)とされているのみでその加熱手段が明らかでない点。

相違点1、2については既に検討したとおりであるから、相違点3について検討するに、引用例3の記載事項3-1〜3-4によれば、引用例3には、鋳型への溶湯搬送路にチューブヒーターを設け、溶湯温度調整等を行うことが記載されており、そして、引用発明における鋳込み管(5)は、正に、溶湯搬送路であるから、溶湯搬送路である鋳込み管(5)に、その加熱手段としてチューブヒーターを内蔵させることは、引用例3の記載から当業者が適宜なし得ることと認められ、しかも、これによる効果も当業者が当然予想し得る程度のものにすぎない。
よって、本願発明2は、引用例1、3に記載された発明、或いは、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

V.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1、2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-20 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-08 
出願番号 特願平9-341845
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 則充  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 日比野 隆治
瀬良 聡機
発明の名称 金属低圧鋳造炉  
代理人 三井 孝夫  
代理人 三井 孝夫  

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