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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1100921
審判番号 不服2002-15049  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-08 
確定日 2004-08-04 
事件の表示 特願2000-189084「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月23日出願公開、特開2001- 17685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、出願日が平成4年4月28日である実願平4-35250号を、平成12年5月25日に特許出願(特願2000-154268号)に変更し、更にその特許出願の一部を平成12年6月23日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成14年9月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のとおりのものである。

【請求項1】 遊技者が弾発した打球が流下する遊技部に、風車と、複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を備える特別図柄表示装置と、この特別図柄表示装置の可変表示を開始させる始動手段と、特別図柄表示装置が停止表示する図柄の表示態様により作動して、遊技者に不利な第1状態と遊技者に有利な第2状態とに変換可能な変動入賞装置とを備えるパチンコ機において、
前記特別図柄表示装置の下縁の両側には、遊技者が弾発した球を誘導可能な球誘導片を設けるとともに前記球誘導片の間には球落下部を形成し、
前記特別図柄表示装置の左右の斜上方に配設した風車の各々の下方から第1の連釘及び前記球誘導片に連なる第2の連釘を配置して前記球誘導片と共に誘導手段を形成し、
前記球落下部の下方に始動手段を配設するとともに、当該始動手段は特別図柄表示装置と変動入賞装置との間に配設され、
前記誘導手段は、遊技者が遊技盤のほぼ中央へ向けて弾発した球のほとんどを誘導して前記球落下部から下方に配設された始動手段の上方へ流下させるようにした、
ことを特徴とするパチンコ機。(以下「本願発明」という。)

2.引用例
これに対し、原査定では拒絶の理由で、以下の引用例1,2、及び、周知例として引用例3,4を引用している。

引用例1:実願昭60-55897号(実開昭61-171982号)のマイクロフィルム(原査定で引用文献1として提示した刊行物)
引用例2:特開平2-209180号公報(原査定で引用文献2として提示した刊行物)
引用例3:実願平2-68065号(実開平4-27979号)のマイクロフィルム(原査定で周知例として提示した刊行物)
引用例4:実願平2-550号(実開平3-94287号)のマイクロフィルム(原査定で周知例として提示した刊行物)

2-1.引用例に記載された発明
(1) 引用例1
引用例1[実願昭60-55897号(実開昭61-171982号)のマイクロフィルム]には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「三連表示装置の両側外方下部には中央側に下がるパチンコ玉の誘導部材を設け、しかも開閉型入賞球装置と分離独立させたことを特徴とするパチンコ機の役物。」(第1頁第5-8行)
「本考案は上記構成により、三連表示装置をパチンコ機盤面の中央に配置しても、広幅入賞口を有する開閉型入賞球装置を三連表示装置と離れた下方、特にパチンコ機盤面の最下位まで下げて配置することができるようになり、パチンコ玉が盤面の最下位に落ち込むまでゲームの興味を継続させることができるようになる。」(第3頁第1-7行)
「入賞回数表示装置9の両側外方(三連表示装置1の両側外方下部)には入賞回数表示装置9の中央部側に向けて下がる2つの傾斜面10を形成するパチンコ玉の誘導部材11を前方に突出させ、その誘導部材11の前面にはポリカーボネート等の光透過性材料の板材12を取り付けて正面を華やかにする。」(第4頁第2-8行)
「本体2と開閉型入賞球装置25との間の盤面22には、単発入賞口または三連表示装置始動用の入賞口となるセンター下部チャッカー26および釘(図示せず)を配設し、本体2の両側外方にはチャッカー27,28、風車29,30、および釘(図示せず)を配設し、さらに開閉型入賞球装置25の両側外方にチューリップ31,32を配設する。この他、盤面22の全体に釘(図示せず)を配設してパチンコ玉の反発箇所を適宜設ける。」(第6頁第7-16行)
「このように構成し、配置した本実施例は、はじき出されたパチンコ玉が最上部から落下するとき、運良く表示装置側の本体2に設けられた誘導部材11の傾斜面上に乗ると、中央部よりにパチンコ玉が誘導されて広幅入賞口24の真上に位置する玉の範囲を広くし、しかもその下方に配置する釘の調整を容易にさせ、さらに本体2と開閉型入賞球装置25との間にセンター下部チャッカー26あるいは釘が配設されているため下方に位置している広幅入賞口24に入るか入らないか確定できず、……」(第6頁第17行-第7頁第7行)
また、図面の第3図の記載からみて、誘導部材11,11の間には、パチンコ玉を誘導して下方に配設されたセンター下部チャッカー26の上方へ流下させる間隙が存在し、役物本体2の左右の斜上方には風車30,30が配設されているものと認められる。
以上の記載によれば、引用例1には、
「打ち出されたパチンコ玉が流下する盤面に、風車30,30と、複数の図柄を可変表示可能な三連表示装置1を備える役物本体2と、三連表示装置始動用の入賞口となるセンター下部チャッカー26と、開閉型入賞球装置25とを備えるパチンコ機において、前記役物本体2の下縁の両側には、打ち出されたパチンコ玉を誘導可能な誘導部材11,11を設けるとともに前記誘導部材11,11の間には間隙を有し、前記役物本体2の左右の斜上方に風車30,30を配設し、前記間隙の下方にセンター下部チャッカー26を配設するとともに、当該センター下部チャッカー26は役物本体2と開閉型入賞球装置25との間に配設され、前記誘導部材11,11は、パチンコ玉を誘導して前記間隙から下方に配設されたセンター下部チャッカー26の上方へ流下させるようにしたパチンコ機」(以下、「引用発明」という。)
との発明が開示されていると認めることができる。
(2) 引用例2
引用例2[特開平2-209180号公報]には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「この発明は、特別入賞口に遊技球が入賞したときに行われる第1のゲームの結果により第1の権利が発生して変動入賞装置が入賞し易い第1の特別遊技状態に変換し、特定入賞口に遊技球が入賞したときに行われる第2のゲームの結果により第2の権利が発生して変動入賞装置が入賞し易い第2の特別遊技状態に変換するように構成したパチンコ遊技機に関する。」(第1頁右欄第13-20行)
「この遊技領域2の中央上部には変動入賞装置20が設置されている。この変動入賞装置20の上部中央には可動部材23,23によって開閉される大入賞口21が設けられ、その上側の鎧部22の前面側には常時は第1の特別遊技の権利(第1の権利)を発生させる第1のゲームを行う第1のゲーム手段としての可変表示器24が設置され、……」(第2頁右下欄第18行-第3頁左上欄第4行)
「変動入賞装置20の周りには風車と呼ばれる打球方向変換部材6が設置され、遊技領域2の下方側左右位置にはチューリップ式の一般入賞装置8が設置されている。また、遊技領域2の適宜位置にはそれぞれ障害釘9が植設されている。」(第3頁左下欄第4-8行)
「このように、変動特別入賞口519,519中に入賞するごとに行われる可変表示器24によるゲームの結果、ぞろ目の数字表示(例えば、「1,1,1」、「2,2,2」など)で停止したときには第1の権利(第1の特別遊技の権利)が発生され、それ以外の数字表示(例えば、「2,6,5」、「1,4,3」など)となったときには“ハズレ”となる。ここに、第1の権利(第1の特別遊技の権利)に基づいて行われる第1の特別遊技とは変動入賞装置20によって遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える遊技内容で、例えば、可動部材23,23が第2図に示すように一定時間………開放されるのを1サイクルとし、そのサイクルが所定サイクル…まで繰り返されることを内容とする。」(第4頁左下欄第7行-右下欄第5行)
また、図面第2図の記載からみて、左右上方の風車6,6の下方から可変表示器24を備えた変動入賞装置20の方向へと遊技球を導く連釘を設けているものと認められる。
(3) 引用例3
引用例3[実願平2-68065号(実開平4-27979号)のマイクロフィルム]には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「第6図は、入賞口である誘導釘10A,10Bに電流が流れた状態を示す。弾発された球が遊技盤3の遊技面を転動して落下する際、電流が流れ磁力作用が発生した誘導釘10A,10Bの釘間に球を誘導作用するため入賞を容易とする。つぎに、第7図は誘導釘10C,10D,10E,10Fに電流が流れ、この4本の釘に磁力が生じる為、球は外側に誘導され易く、この場合アウトになり易い。」(第3頁第14行-第4頁第3行)
「図面第4図5図は、上記のように構成されたパチンコ機1の遊技盤3に配設する、可変表示役物7の役物取付基台11に、誘導釘10A〜Fを一体形成した図を示す。ここで可変表示役物7を説明する。該可変表示役物7は、複数の開口部に複数の表示部13を形成し、弾発された遊技球が特定入賞口12に入賞すると、前述した可変表示役物7の表示部13の表示態様を変換させる権利が発生する。変換停止時の識別情報14の組合せが、予め定められた特定表示態様になると、遊技盤3に設けられた可変入賞装置15の開閉蓋16を一定時間、または所定個数の入賞球が入賞するまで開閉動作するよう構成されている。上述する可変表示役物7の役物取付基台11に複数の誘導釘10A〜Fを一体的に嵌挿形成するものである。」(第5頁第19行-第6頁第15行)
また、図面第6,7図の記載からみて、可変表示役物7の両側に、連釘が設けられ、該連釘は、パチンコ球を可変表示役物7の方向へと導くものと認められる。
(4) 引用例4
引用例4[実願平2-550号(実開平3-94287号)のマイクロフィルム]には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「本考案は、入賞口から受け入れた球は入賞球として取り込む一方、該入賞口の横に開口するワープ入口から受け入れた球は入賞口の下方のワープ出口から遊技部内に流下させるようにしたパチンコ機の入賞具に関するものである。」(第1頁第16-20行)
また、第4,5図の記載からみて、左右上方の風車の下方から可変表示器29を備えた変動入賞装置26の方向へと遊技球を導く連釘を設けているものと認められる。

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明と、引用発明とを比較すると、
引用発明の「打ち出されたパチンコ玉」「盤面」「風車30,30」「複数の図柄を可変表示可能な三連表示装置1を備える役物本体2」「三連表示装置始動用の入賞口となるセンター下部チャッカー26」「誘導部材11,11」「間隙」は、それぞれ本願発明の「遊技者が弾発した打球」「遊技部」「風車」「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を備える特別図柄表示装置」「特別図柄表示装置の可変表示を開始させる始動手段」「球誘導片」「球落下部」に相当するものと認められる。
また、引用発明の「開閉型入賞球装置25」と、本願発明の「特別図柄表示装置が停止表示する図柄の表示態様により作動して、遊技者に不利な第1状態と遊技者に有利な第2状態とに変換可能な変動入賞装置」とは、「遊技者に不利な第1状態と遊技者に有利な第2状態とに変換可能な変動入賞装置」であることで共通する。
そうすると、引用発明と本願発明の両者は「遊技者が弾発した打球が流下する遊技部に、風車と、複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部を備える特別図柄表示装置と、この特別図柄表示装置の可変表示を開始させる始動手段と、遊技者に不利な第1状態と遊技者に有利な第2状態とに変換可能な変動入賞装置とを備えるパチンコ機において、前記特別図柄表示装置の下縁の両側には、遊技者が弾発した球を誘導可能な球誘導片を設けるとともに前記球誘導片の間には球落下部を形成し、前記球落下部の下方に始動手段を配設するとともに、当該始動手段は特別図柄表示装置と変動入賞装置との間に配設されているパチンコ機」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

・ 相違点1
変動装置が、本願発明では、特別図柄表示装置が停止表示する図柄の表示態様により作動するのに対し、引用発明では、その構成を備えているか否か不明である点。
・ 相違点2
本願発明は、特別図柄表示装置の左右の斜上方に配設した風車の各々の下方から第1の連釘及び球誘導片に連なる第2の連釘を配置して前記球誘導片と共に誘導手段を形成し、前記誘導手段は、遊技者が遊技盤のほぼ中央へ向けて弾発した球のほとんどを誘導して球落下部から下方に配設された始動手段の上方へ流下させるようにしているのに対し、引用発明は、役物本体2の左右の斜上方に配設された風車30,30の下方から第1の連釘と誘導部材11に連なる第2の連釘とを配置していない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
i. 相違点1について
引用発明を認定した引用例1には、三連表示装置1が予め定められた表示結果(例えばぞろ目)となった場合に何が生ずるか、また、開閉型入賞球装置25が何を契機として遊技者に有利な開状態となって広幅入賞口24に入賞可能となるのか、三連表示装置1の表示結果と開閉型入賞球装置25の作動との関連が明示されていない。
しかしながら、引用発明の三連表示装置1のような可変表示装置がぞろ目などの特定の表示結果となった場合に、開閉型入賞球装置25に設けられた広幅入賞口24のような変動入賞装置が遊技者に有利な開状態となることは、引用例2乃至引用例4等に記載されているように周知技術であり、引用発明において、三連表示装置1の所定の表示結果により、開閉型入賞球装置25が作動することは当業者にとって自明である。
ii. 相違点2について
引用例3には、可変表示役物7の両側に、連釘が設けられていることが記載されており、該連釘は、誘導釘10と直接連なるものでもないが、高い確度でパチンコ球を可変表示役物7に設けられた誘導釘10の方向へと導くことが明らかであるので、連釘が誘導釘10と一連の部材として一体的に作用してパチンコ球の行方を決定しているといえる。
とすると、引用発明において、誘導部材11と連なるように連釘を設けることは、パチンコ球の誘導に関し、連釘と誘導釘とで一連の機能を果たすことが引用例3等に記載されているように周知技術であるので、当業者にとって格別困難なく想起し得る事項である。
また、風車の下方から表示装置を備えた中央役物の方向へと遊技球を導く連釘を設けることが引用例2,4等に記載されているように周知技術である以上、引用発明における風車の下方から中央役物の方向へ連釘を設けることは、当業者にとって格別困難なことではない。
さらに、そのような風車の下方から中央役物の方向へ向けた連釘と、中央役物に設けられた部材と連なる連釘を配置することが、それぞれ当業者が容易になし得たものであり、その異なる2種類の連釘を引用発明において同時に設けることに特段の阻害要因が見出せない以上、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、前述の2種類の連釘を設けた際に、遊技者が遊技盤のほぼ中央へ向けて弾発した球のほとんどを誘導して球落下部から下方に配設された始動手段の上方へ流下させるようにすること、及び、その他の本願発明の奏する作用・効果は、引用発明及び周知技術より当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-25 
結審通知日 2004-06-01 
審決日 2004-06-14 
出願番号 特願2000-189084(P2000-189084)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 白樫 泰子
鉄 豊郎
発明の名称 パチンコ機  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 伸一  

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