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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1101049
審判番号 不服2002-1889  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-07 
確定日 2004-08-05 
事件の表示 平成 5年特許願第229928号「液晶表示装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月31日出願公開、特開平 7- 84248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成5年9月16日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成12年9月13日付け、平成13年11月14日付け、平成14年3月7日付け及び平成16年5月20日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に各々記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。
「液晶表示素子と、該液晶表示素子の基板に形成された第1のカラーフィルタと、該第1のカラーフィルタが形成された基板に、上記第1のカラーフィルタを覆うように塗布された基材層をパターニングし上記第1のカラーフィルタに隣接して形成された第2のカラーフィルタと、上記第1及び第2のカラーフィルタが形成された基板に、上記第1及び第2のカラーフィルタを覆うように塗布された基材層をパターニングし上記第1及び第2のカラーフィルタに隣接して形成された第3のカラーフィルタとを有し、
上記第2のカラーフィルタは、上記第1のカラーフィルタ側の周辺部に上記第2のカラーフィルタの中央部よりも膜厚が厚い膜厚部を有し、該膜厚部から第1のカラーフィルタに向かって膜厚が薄くなる形状に形成され、
上記第3のカラーフィルタは、上記第1のカラーフィルタ側と第2のカラーフィルタ側との周辺部に上記第3のカラーフィルタの中央部よりも膜厚が厚い膜厚部を有し、該膜厚部から上記第1のカラーフィルタと第2のカラーフィルタとに向かって膜厚が薄くなる形状に形成され、
上記第2のカラーフィルタは隣接する上記第1のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が厚い第1の周辺部と、隣接する上記第3のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が薄い第2の周辺部を有し、
上記第3のカラーフィルタは隣接する上記第1のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が厚い第3の周辺部と、隣接する上記第2のカラーフィルタの上記第2の周辺部よりも膜厚が厚い第4の周辺部とを有することを特徴とする液晶表示装置。」

2.引用例の記載事項
当審において、平成16年3月29日付けで通知した拒絶理由に引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-44314号公報(以下、「引用例1」という)には、次のように記載されている。
「カラー液晶パネルは、一般に、液晶を光シャッターとし、また、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の色画素を有するカラーフィルタによって、カラー表示を可能とした表示装置である。」(第1頁右下欄第13〜16行)
「(発明の概要)
この発明では、カラーフィルタの各色画素の隣り合うもの同志を互いに所定距離だけ離し、各色画素間に平らな境界領域を設け、しかも、各透明電極ラインの幅を各色画素の寸法よりも大きく設定することによって、各透明電極ラインが各列の各画素の上を完全に覆い、その両側のエッジ部が前記平らな境界領域上に位置するようにしている。・・・・
(実施例)
透明なガラス板である透明基板10は、上下2面が互いに平行で、各面10a,10bが平らである。上面10aが液晶に臨む側であり、その面10aに、まず、透過光を遮断可能な遮光層20が設けられている。・・・・遮光層20は、各色画素を形成するためにエッチングされるが、・・・・
エッチングによる抜き部分22の大きさは、・・・・各色画素の大きさ、・・・・よりも一回り小さくする。・・・・
こうした遮光層20の上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素30が形成されている。各色画素30は、着色材を含有したポリイミド樹脂材料などを用い、遮光層20と同様にフォトリソグラフィ技術によって形成する。各色画素30は、各抜き部分22を完全に被うように形成するが、遮光層20との重なりはなるべく小さくする方が良い。というのは、隣り合う色画素30間に、平らな遮光層20のスペースを充分に取りたいからである。・・・・
遮光層20および各色画素30を形成した透明基板10の上に、さらに、透明保護膜40が全体を被うように形成される。」(第2頁右上欄第15行〜第3頁左上欄第2行)
「こうした透明保護膜40の上に、透明電極ライン50が載る。・・・・この発明では、こうした透明電極ライン50のエッジ部50a,50bを平らな境界領域の上に位置させる。」(第3頁左上欄第12〜18行)
「(発明の効果)
この発明では、透明電極ライン50のエッジ部50a,50bを平らな面上に位置させるようにしているので、エッジ部50a,50bは下地との密着性が良くなり、・・・・透明電極ライン50の断線防止を図ることができる。・・・・」(第3頁左下欄第10〜16行)
また、第1図において、透明基板10上に赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素が隣接して形成されいること、第2図において、透明基板10上の各色画素30は、その中央部より周辺部で膜厚が厚くなり、隣接する色画素に向かって膜厚が薄くなる形状であることが見てとれる。
以上の記載によれば、引用例1には、「着色材を含有したポリイミド樹脂材料などを用いてフォトリソグラフィ技術により透明基板上に相互に隣接して形成された赤(R)、緑(G)及び青(B)の色画素を有し、各色画素は、その中央部より周辺部で膜厚が厚くなり、隣接する色画素に向かって膜厚が薄くなる形状に形成されている透明基板を有するカラー液晶パネル」が記載されているものと認める。
同じく引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-60426号公報(以下、「引用例2」という)には、次のように記載されている。
「第1図(a)は本発明に係わる強誘電性液晶素子の基本構成を示す断面図である。・・・・各基板2と3にはマトリクス電極構造を形成するストライプ状のパターン形状の透明電極5と6が配設され、この透明電極の上には配向制御膜7及び8が形成されている。R(赤),G(緑),B(青)の各カラーフィルター画素は台形状に形成され、等しい膜厚にて所望の分光特性となるよう、あらかじめ着色材料濃度を設定し、露光量のコントロールから、テーパー角度をつけ、隣接画素とその斜辺の一部に重なり部分を有して形成されている。」(第3頁右下欄第16行〜第4頁左上欄第11行)
「実施例1
第6図(a)〜(f)は、R,G,B3色の色画素の形成工程を示す工程図である。
・・・・ガラス基板61上に、所望の分光特性を得ることのできる青色着色樹脂材・・・・をスピンナー塗布法により、1.5μmの膜厚塗布して着色樹脂層62を形成した。・・・・
次に該着色樹脂層62に・・・・プリベークを行なった後、形成しようとするパターン形状に対応したフォトマスク63を介して高圧水銀灯にて必要露光量以上の光量にて露光した。・・・・
露光終了後、・・・・光硬化部分62aを有する着色樹脂層62の未露光部分のみを溶解する専用現像液・・・・にて超音波を使用して現像し、専用リンス液・・・・で処理した後、・・・・ポストベークを行ない、台形状の端部にテーパー形状・・・・を有する青色のパターン状着色樹脂層64を形成した。(第6図(d)参照)
続いて、青色着色パターンの形成されたガラス基板上に、第2色目として緑色着色樹脂材・・・・を用いる以外は、上記と同様にして、緑色のパターン状着色樹脂層65を青色のパターン状着色樹脂層と1部重ね合せて・・・・基板上の所定の位置に形成した。
さらに、この様にして青色及び緑色パターンの形成されている基板上に、第3色目として、赤色着色樹脂材・・・・を用いる以外は、上記と同様にして、赤色のパターン状の着色樹脂層66を青色のパターン状着色樹脂層および緑色のパターン状着色樹脂層と一部重ね合せて・・・・基板上の所定の位置に形成し、R(赤),G(緑),B(青)の3色ストライプの着色パターンを得た。(第6図(e)参照)」(第7頁右上欄第16行〜第8頁左上欄第8行)
「・・・・本発明によれば基板上のカラーフィルター画素に0〜90°の範囲でテーパー角をつけ、・・・・の範囲で重なり部を設けたことから、通常の画素パターンに比べ、画素間隙から生じる段差が最大で1/2まで軽減することができると共に、画素形成時のアライメント段差より生じる画素ズレがあった場合でも、それから生じる段差を通常の場合より1/2以下に減らすことが可能となり、・・・・」(第8頁右上欄第20行〜同頁左下欄第9行)

3.対比、判断
本願発明と引用例1に記載のものとを対比すると、引用例1に記載のものにおける「カラー液晶パネル」、「透明基板」、「赤(R)、緑(G)及び青(B)の色画素」は、それぞれ本願発明における「液晶表示素子」、「基板」、「第1、第2及び第3のカラーフィルタ」に相当し、また、引用例1に記載の「ポリイミド樹脂材などを用いてフォトリソグラフィ技術により形成される」は、本願発明の「基材層をパターニングし・・・・形成される」に相当することは明らかであり、さらに、引用例1に記載のものにおいて、「緑(G)の色画素は、赤(G)の色画素の側の周辺部に緑(G)の色画素の中央部よりも膜厚が厚い膜厚部を有し、この膜厚部から赤(R)の色画素に向かって膜厚が薄くなる形状であり、青(B)の色画素は、赤(R)及び緑(G)の側の周辺部に青(B)の色画素の中央部よりも膜厚が厚い膜厚部を有し、この膜厚部から赤(R)及び緑(G)の色画素に向かって膜厚が薄くなる形状である」のは明らかである。
そうすると、本願発明と引用例1に記載のものとは、「基板に形成された第1のカラーフィルタと、該第1のカラーフィルタが形成された基板に塗布された基材層をパターニングし上記第1のカラーフィルタに隣接して形成された第2のカラーフィルタと、上記第1及び第2のカラーフィルタが形成された基板に塗布された基材層をパターニングし上記第1及び第2のカラーフィルタに隣接して形成された第3のカラーフィルタとを有し、
上記第2のカラーフィルタは、上記第1のカラーフィルタ側の周辺部に上記第2のカラーフィルタの中央部よりも膜厚が厚い膜厚部を有し、該膜厚部から第1のカラーフィルタに向かって膜厚が薄くなる形状に形成され、
上記第3のカラーフィルタは、上記第1のカラーフィルタ側と第2のカラーフィルタ側との周辺部に上記第3のカラーフィルタの中央部よりも膜厚が厚い膜厚部を有し、該膜厚部から上記第1のカラーフィルタと第2のカラーフィルタとに向かって膜厚が薄くなる形状に形成されている液晶表示素子」を有するものである点で一致するが、次の点において相違する。
a.本願発明は、液晶表示素子と、該液晶表示素子の基板に形成された第1のカラーフィルタと、第2のカラーフィルタと、第3のカラーフィルタとを有する液晶表示装置であるのに対して、引用例1においては、カラー液晶パネルと、カラー液晶パネルの透明基板上に形成された赤(R)、緑(G)及び青(B)の色画素とを有する液晶表示装置として構成することについて明記していない点。
b.本願発明において、第2のカラーフィルタが第1のカラーフィルタを、覆うように塗布された基材層をパターニングし第1のカラーフィルタに隣接して形成され、第3のカラーフィルタが第1及び第2のカラーフィルタを覆うように塗布された基材層をパターニングし第1及び第2のカラーフィルタに隣接して形成されたものであるのに対して、引用例1において、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素は、フォトリソグラフィ技術により相互に隣接して形成されるものであるが、緑(G)の色画素が赤(R)の色画素を覆うように塗布された基材層を、青(B)の色画素が赤(R)及び緑(G)の色画素を覆うように塗布された基材層を、それぞれパターニングして形成されることについて明記していない点。
c.本願発明において、第2のカラーフィルタが隣接する第1のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が厚い第1の周辺部と、隣接する第3のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が薄い第2の周辺部を有し、第3のカラーフィルタが隣接する第1のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が厚い第3の周辺部と、隣接する第2のカラーフィルタの第2の周辺部よりも膜厚が厚い第4の周辺部とを有するのに対して、引用例1に記載のものにおいては、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素の周辺部の厚さの関係について明記していない点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点aについて:
引用例1に記載されたカラー液晶パネルは、当然液晶表示装置として適用し得るものであり、カラー液晶パネルと、カラー液晶パネルの透明基板上に形成された赤(R)、緑(G)及び青(B)の色画素とを有する液晶表示装置として構成することは、当業者が容易になし得ることである。
相違点bについて:
引用例2において、B,G,R3色の色画素を基板上に順次形成する工程が示されており、これは、最初に基板上に塗布された青色着色樹脂材をフォトマスクを介しての露光、現像処理を行って第1色の青色のパターン状着色樹脂層を形成し、その後に第2色目として緑色着色樹脂材を塗布し、同様の形成手法により、第2色の緑色のパターン状着色樹脂層を形成し、その後にさらに同様の形成手法により第3色の赤色のパターン状着色樹脂層を形成するものである。ここで、第2色の緑色着色樹脂材を塗布する際に、基板上にすでに青色のパターン状着色樹脂層が形成されているのであるから、緑色着色樹脂材を塗布する際には青色のパターン状着色樹脂層を覆うように基板の全面に塗布し、その後のパターニング処理により青色のパターン状着色樹脂層の上側の部分を除去するのが妥当であることは明らかであり、同様に、第3色目の赤色着色樹脂材を塗布する際には、それ以前に形成されている青色及び緑色のパターン状着色樹脂層を覆うように基板の全面に赤色の着色樹脂材を塗布し、その後にパターニング処理により青色及び緑色のパターン状着色樹脂層の上側の部分を除去するのが妥当であることも明らかである。このように、第1色目〜第3色目のパターン状着色樹脂層を順次形成する際に、すでに形成されているパターン状着色樹脂層を覆うように基板の全面に次に形成される色の着色樹脂材を塗付することは、通常用いられるパターン形成の手法であり、引用例1に記載のものにおいて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素をフォトリソグラフィ技術により順次形成する際にも当然考慮されることであって、何ら格別なことではない。
相違点cについて:
本願発明において、第2のカラーフィルタが隣接する第1のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が厚い第1の周辺部と、隣接する第3のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が薄い第2の周辺部を有し、第3のカラーフィルタが隣接する第1のカラーフィルタの周辺部よりも膜厚が厚い第3の周辺部と、隣接する第2のカラーフィルタの第2の周辺部よりも膜厚が厚い第4の周辺部とを有するのは、本願の明細書の段落【0007】及び図10(a)、(b)に、「・・・・基材層4′をパターニングして2層目のカラーフィルタ4を形成すると、図10(a)、(b)に示すように、1層目のカラーフィルタ3に近い2層目のカラーフィルタ4の片側が厚くなる傾向がある。・・・・3層目のカラーフィルタ5を同様に形成すると、・・・・同様の作用により3層目のカラーフィルタ5の両側の端部の膜厚が厚くなる。・・・・」と記載されていることに基づくものである。これは、第1のカラーフィルタをパターンニング形成した後に、第1のカラーフィルタを覆うように基材層を塗布しパターニングして第1のカラーフィルタを形成するというような形成手法の結果として、第1のカラーフィルタに近い第2のカラーフィルタの端部の膜厚が不可避的に厚くなるというようなものである。ところで、引用例2に記載のもののように、基板にパターン状着色樹脂層を順次形成する際に、すでに形成されているパターン状着色樹脂層を覆うように次の着色樹脂材を塗付し、露光、現像してパターン状着色樹脂層を形成する形成手法によれば、同様に、あるパターン状着色樹脂層に近い次のパターン状着色樹脂層の端部の膜厚が不可避的に厚くなることが想定される。
このように、相違点cにおける各カラーフィルタの周辺部の厚さの関係は、各カラーフィルタをそれ以前に形成されているカラーフイルタを覆うように基材層を塗布しパターニングすることにより順次カラーフィルタを形成するという通常用いられる形成手法に付随する結果を示したにすぎないものであり、このようなカラーフイルタの周辺部の厚さの関係によって何ら格別な作用効果が奏されるものでもない。
それゆえ、相違点cは、当業者が当然考慮し得る事項を示したにすぎないものである。
さらに、相違点a〜cを総合しても、何ら格別な技術的特徴は得られない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び2に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-07 
結審通知日 2004-06-08 
審決日 2004-06-22 
出願番号 特願平5-229928
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橿本 英吾  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 町田 光信
稲積 義登
発明の名称 液晶表示装置およびその製造方法  
代理人 和泉 良彦  
代理人 和泉 良彦  

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