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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1101101
異議申立番号 異議2003-70610  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-06 
確定日 2004-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3321853号「非水電解液二次電池」の請求項1、4、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3321853号の請求項1〜6に係る発明についての出願は、平成4年10月30日に特許出願され、平成14年6月28日にその特許の設定登録がなされ、その後、三洋電機株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成16年5月日付で再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年月日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,4,及び5を削除し、これに伴い請求項2,3,及び6を繰り上げ、それぞれ請求項1,2,及び3とし、訂正後の請求項3において引用する請求項の項番号を「2」から「1」へ繰り上げる。
訂正事項b
特許明細書の段落【0011】〜【0012】の「本発明の非水電解液二次電池は、・・・k≧0.6であるものである。また」を削除する。
訂正事項c
特許明細書の段落【0012】の「ここで、」以下の「上述の粘着テープの幅は、・・・円筒型電極体である場合がある。また、」を削除する。
訂正事項d
特許明細書の段落【0013】〜【0014】の「本発明の非水電解液二次電池によれば、・・・円筒型非水電解液二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。また、」を削除する。
訂正事項e
特許明細書の段落【0015】の「ここで、」以下の「上述の粘着テープの幅は、・・・円筒型電極体である場合がある。また、」を削除する。
訂正事項f
特許明細書の段落【0016】の「以下、本発明非水電解液二次電池の一実施例について・・・」を「以下、非水電解液二次電池の例について・・・」と訂正する。
訂正事項g
特許明細書の段落【0021】の「・・・〜第4の本例電池」を「・・・〜第3の本例電池」と訂正する。
訂正事項h
特許明細書の段落【0034】の「上述実施例による方法」を、「上述の方法」と訂正する。
訂正事項i
特許明細書の段落【0044】の「上述実施例」を「上述の例」と訂正する。
訂正事項j
特許明細書の段落【0048】の「実施例」、及び「本発明」、【0051】、【0052】の「実施例」を、「本例1〜3」と訂正する。
訂正事項k
特許明細書の段落【0053】、【0054】の「他の実施例」を「実施例」と訂正する。
訂正事項l
特許明細書の段落【0054】の「上述の実施例」を「上述の本例1〜3」と、「本例」を「本実施例」と、それぞれ訂正する。
訂正事項m
特許明細書の段落【0055】の「本例で用いた」、「本例においては」を、
それぞれ、「本実施例で用いた」、「本実施例においては」と訂正する。
訂正事項n
特許明細書の段落【0056】の「上述した実施例」を「上述した本例1〜3」と訂正する。
訂正事項o
特許明細書の段落【0078】の「・・・もちろんである。」の後に、「ここで、上述の第1〜3の本例電池は、単に実験例を示したものであり、本発明の範囲に属するものではない。」と付け加える。
訂正事項p
特許明細書の図面の簡単な説明の「【図1】本発明非水電解液二次電池」を「【図1】第1の本例電池」と、「【図2】本発明非水電解液二次電池」を「【図2】第1〜3の本例電池」と、「【図3】本発明非水電解液二次電池の一実施例」を「【図3】第2の本例電池」と、「【図4】本発明非水電解液二次電池の一実施例」を「【図4】第3の本例電池」と、「【図5】非水電解液二次電池の比較例」を「【図5】第1の比較例電池」と、「【図6】本発明非水電解液二次電池の他の実施例」を「【図6】第4〜第6の本例電池」と、「【図7】・・・他の実施例」を「「【図7】・・・実施例(第4〜6の本例電池)」と、【図8】非水電解液二次電池の比較例」を「【図8】第2の比較例電池」と、「【図9】本例の渦巻式電極」を「【図9】第4の本例電池」と、「【図10】比較例の渦巻式電極」を「【図10】第2の比較例電池」と、それぞれ訂正する。
訂正事項q
特許図面の図2下端に記載の「本発明非水電解液二次電池」を、「第1〜3の本例電池」と訂正する。
訂正事項r
特許図面の図7下端の「本発明非水電解液二次電池の他の実施例」を、「本発明非水電解液二次電池の実施例」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、訂正前の請求項1,4,5を削除し、削除されなかった請求項の項番号を繰り上げ、引用する請求項の項番号を整合させたものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項b〜rは、訂正事項aに整合させるために発明の詳細な説明の対応する記載を訂正して明細書全体の記載の統一を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、いずれの訂正事項も新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
異議申立がなされた訂正前の請求項1,4,5に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。
したがって、本件特許異議の申立ては、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第9項の規定により、なお従前の例によるとされる、改正前の許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水電解液二次電池
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 帯状負極及び帯状正極をセパレータを介して積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に巻回し、その巻き終わり部を粘着テープを用いて固定される渦巻式電極を非水電解液とともに電池缶内に収容してなる非水電解液二次電池において、
上記粘着テープは張力が生じるように貼り付けられ、
かつ、上記粘着テープは支持体上に粘着層を有してなり、該支持体は上記電解液との接触により膨潤し、体積膨張する材料よりなることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】 帯状負極及び帯状正極をセパレータを介して積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に巻回し、その巻き終わり部を粘着テープを用いて固定される渦巻式電極を非水電解液とともに電池缶内に収容してなる非水電解液二次電池において、
上記粘着テープは張力が生じるように貼り付けられ、
かつ、上記渦巻式電極の外径をLとし、巻き終わり部を固定する粘着テープの該外径に沿う長さをkπLとするとき、k≧0.6であり、
かつ、上記粘着テープは支持体上に粘着層を有してなり、該支持体は上記電解液との接触により膨潤し、体積膨張する材料よりなることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項3】 支持体を電解液に浸漬したときの体積膨張率が5%以上であることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電極と帯状セパレータとを積層後、渦巻状に巻回した渦巻式電極を電池缶内に挿入する非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子技術のめざましい進歩は、電子機器の小型・軽量化を次々と実現させている。それに伴い、移動用電源としての電池に対しても益々小型・軽量且つ高エネルギ密度のものが求められている。
【0003】
従来、一般用途の二次電池としては鉛電池、ニッケル・カドミウム電池等の水溶液系電池が主流であった。これらの電池はサイクル特性には優れるが、電池重量やルネルギ密度の点では十分満足できる特性とは言えない。
【0004】
最近、リチウム或はリチウム合金を負極に用いた非水電解液二次電池の研究・開発が盛んに行われている。この電池は高エネルギ密度を有し、自己放電も少なく、軽量という優れた特性を有するが、充放電サイクルの進行に伴い、充電時にリチウムがデンドライト状に結晶成長し、正極に到達して内部ショートに至る可能性が高くなる欠点があり、実用化への大きな障害となっている。
【0005】
これに対し、負極に炭素材料を使用した非水電解液二次電池は、化学的、物理的方法により、予め炭素材料に担持させたリチウム、正極活物質の結晶構造中のリチウム、電解液中に溶解しているリチウム等の、炭素層間へのドープ/脱ドープを利用するもので、充放電サイクルが進行しても充電時のデンドライト状の析出が見られず、1000回を超える優れた充放電サイクル特性を示す。
【0006】
これらの材料を用いた非水電解液二次電池の用途としては、ビデオ・カメラやラップ・トップ・パソコン等が挙げられるが、このような機器は比較的消費電流が大きいものが多く、電池構造としては渦巻式電極構造が有効である。これは、帯状正極と帯状負極とをセパレータを介して渦巻状に巻いたもので、電極面積が大きくとれることから重負荷に耐えられる。
【0007】
一方、電池特性は電極間に圧力が加わっている方が良い傾向がある。しかしながら、電池の組立工程に於いてこのような電極を電池缶に挿入する際、生産性の点から電極外径と電池缶内径との間にはある程度のクリアランスを設ける必要がある。巻回した電極は最外周巻き終わり部を粘着テープにより固定し、緩まないようにする方法が一般的に採られる。本発明者は、特願平2-317428に示すように、電極の幅方向に対する、粘着テープの幅方向占有率を規定することにより、非水電解液二次電池の充放電サイクル特性が向上することを見だした。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法を採用しても種々の変動要因によって、サイクル劣化の不十分なロットが生じるという問題があった。そこで、より信頼性の高い非水電解液二次電池を生産するために、さらにサイクル劣化を向上させる手法の開発が望まれている。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、充放電サイクル特性の優れた非水電解液二次電池を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の非水電解液二次電池は、例えば、図6に示すように、帯状負極及び帯状正極をセパレータを介して積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に巻回し、その巻き終わり部を粘着テープ20を用いて固定される渦巻式電極15を非水電解液とともに電池缶内に収容してなる非水電解液二次電池において、粘着テープは張力が生じるように貼り付けられ、かつ、この粘着テープ20は支持体上に粘着層を有してなり、この支持体はこの電解液との接触により膨潤し、体積膨張する材料よりなるものである。
【0012】
また、本発明の非水電解液二次電池は、帯状負極及び帯状正極をセパレータを介して積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に巻回し、その巻き終わり部を粘着テープ20を用いて固定される渦巻式電極15を非水電解液とともに電池缶内に収容してなる非水電解液二次電池において、粘着テープは張力が生じるように貼り付けられ、かつ、この渦巻式電極15の外径をLとし、巻き終わり部を固定する粘着テープ20のこの外径に沿う長さをkπLとするとき、k≧0.6であり、かつ、この粘着テープ20は支持体上に粘着層を有してなり、この支持体はこの電解液との接触により膨潤し、体積膨張する材料よりなるものである。
ここで、上述の支持体を電解液に浸漬したときの体積膨張率は5%以上である場合がある。
【0013】
【作用】
【0014】
本発明の非水電解液二次電池によれば、帯状負極及び帯状正極をセパレータを介して積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に巻回し、その巻き終わり部を粘着テープ20を用いて固定される渦巻式電極15を非水電解液とともに電池缶内に収容してなる非水電解液二次電池において、粘着テープは張力が生じるように貼り付けられ、かつ、この粘着テープ20は支持体上に粘着層を有してなり、この支持体はこの電解液との接触により膨潤し、体積膨張する材料よりなるものとすることにより、粘着テープの支持体が電解液との接触により膨潤するので、非水電解液二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の非水電解液二次電池によれば、帯状負極及び帯状正極をセパレータを介して積層し、最外周がセパレータとなるように渦巻状に巻回し、その巻き終わり部を粘着テープ20を用いて固定される渦巻式電極15を非水電解液とともに電池缶内に収容してなる非水電解液二次電池において、粘着テープは張力が生じるように貼り付けられ、かつ、この渦巻式電極15の外径をLとし、巻き終わり部を固定する粘着テープ20のこの外径に沿う長さをkπLとするとき、k≧0.6であり、かつ、この粘着テープ20は支持体上に粘着層を有してなり、この支持体はこの電解液との接触により膨潤し、体積膨張する材料よりなるものとすることにより、渦巻式電極の巻き緩みを防止するために最外周に貼り付ける粘着テープの長さを規定し、さらに、粘着テープの支持体が電解液との接触により膨潤するので、非水電解液二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
ここで、上述の支持体を電解液に浸漬したときの体積膨張率は5%以上である場合がある。
【0016】
【実施例】
以下、非水電解液二次電池の例について図1〜図5を参照しながら説明しよう。
【0017】
図1は、本例非水電解液二次電池の渦巻式電極15の例を示し、この渦巻式電極15は、それぞれ帯状である正極と負極を同じく帯状のセパレータの間に挟んで渦巻状に巻き込んだものである。
【0018】
11は、負極リードを示し、この負極リード11は上述の負極と電池の負極となるべき電池缶との電気的接続をなすものである。
【0019】
12は、正極リードを示し、この正極リード12は上述の正極と電池の正極となるべき電池蓋との電気的接続をなすものである。
【0020】
20は、粘着テープを示し、この粘着テープ20は渦巻電極15の巻き終わり部が外れないように固定するとともに、この粘着テープ20を張力が生じるように貼ることにより、渦巻電極に対して圧縮力を発生させる機能をも持つものである。
【0021】
次に、本例で用いた渦巻式電極の具体的な製造方法について説明する。本例においては、第1の本例電池〜第3の本例電池、及び第1の比較例電池を作製した。
【0022】
第1の本例電池
負極1は次のようにして作製した。
出発原料として石油ピッチを用い、これに酸素を含む官能基を10〜20重量%導入(いわゆる酸素架橋)した後、不活性ガス気流中1000℃で焼成して、ガラス状炭素に近い性質を持った炭素質材料を得た。この材料について、X線解析測定を行った結果、(002)面の面間隔は3.8Aであった。またピクノメータ法により真比重を測定したところ、1.54g/cm3であった。この炭素材料を粉砕し、平均粒径20μmの炭素材料粉末とした。
【0023】
このようにして得た炭素材料粉末を負極活物質担持体とし、これを90重量部、結着材としてフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)10重量部を混合し、負極合剤を調整した。この負極合剤を、溶剤であるN-メチルピロリドンに分散させてスラリー(ペースト)にした。
【0024】
負極集電体として厚さ10μmの帯状の銅箔を用い、この集電体の両面に負極合剤スラリーを塗布し、乾燥させた後圧縮成型して帯状負極1を作製した。成型後の合剤厚さは両面共に80μmで同一とし、電極の幅は41.5mm、長さは720mmとした。
【0025】
正極2は次のようにして作製した。
炭素リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルを混合し、900℃の空気中で5時間焼成してLiCoO2を得た。得られた材料についてX線回折測定を行った結果、JCPDSフィルムに登録されたLiCoO2のピークと良く一致した。この材料を粉砕し、50%累積粒径が15μmのLiCoO2粉末を得た。LiCoO2粉末95重量部と炭酸リチウム粉末5重量部からなる混合物を91重量部、導電剤としてグラファイト6重量部、結着剤としてフッ化ビニリデン樹脂3重量部を混合して正極合剤を調整し、N-メチルピロリドンに分散させてスラリー(ペースト状)にした。
【0026】
正極集電体として厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔を用い、この集電体の両面に均一に正極合剤スラリーを塗布し、乾燥させた後、圧縮成型して帯状正極2を作製した。成型後の合剤厚さは両面共に70μmで同一とし、電極の幅は40.5mm、長さは660mmとした。
【0027】
帯状負極1、帯状正極2及び厚さ25μm、幅44mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムより成るセパレータ3を負極、セパレータ、正極、セパレータの順に積層してから、この積層体を渦巻型に多数回巻回した。最外周の巻き終わり部を、厚さ25μmのポリエステルフィルムを支持体とし、シリコン系の粘着剤を塗布した、幅40mm、長さ41mmの粘着テープ20で固定して外径19.6mmの電極を作製した。また、テープは幅方向両端部を2mmずつ残して貼付け、図1に示したような渦巻式電極を作製した。
【0028】
このようにして作製した渦巻式電極を、図2に示すように、ニッケルめっきを施した鉄製電池缶5に収納した。渦巻式電極上下両面には絶縁板4を配設し、アルミニウム製正極リード12を正極集電体から導出して電池蓋7に、ニッケル製負極リード11を負極集電体から導出して電池缶5に溶接した。この電池缶5の中に、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等容量混合溶媒中に、LiPF6を1モル/1の割合で溶解した電解液を注入した。
【0029】
アスファルトで表面を塗布した絶縁封口ガスケット6を介して電池缶5をかしめることにより、電流遮断機構を有する安全弁装置8並びに電池蓋7を固定し、電池内の気密性を保持させた。
【0030】
以上のような構成で、直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。
【0031】
第2の本例電池
渦巻式電極最外周の巻き終わり部を、幅40mm、長さ56mmのポリエステル系テープ20を用い、幅方向両端部を2mmずつ残して貼付けた(図3参照)こと以外は第1の本例電池と同様の方法で、図2に示したような直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。
【0032】
第3の本例電池
渦巻式電極最外周の巻き終わり部を、幅40mm、長さ66mmのポリエステル系テープ20を用い、幅方向両端部を2mmずつ残して、また一部が重なるように貼付けた(図4参照)こと以外は第1の本例電池と同様の方法で、図2に示したような直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。
【0033】
第1の比較例電池
渦巻式電極最外周の巻き終わり部を、幅40mm、長さ20mmのポリエステル系テープ20を用い、幅方向両端部を2mmずつ残して貼付けた(図5参照)こと以外は第1の本例電池と同様の方法で、図2に示したような直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。
【0034】
本例の渦巻式電極は、上述の方法ばかりでなく、他の方法によっても作製することができる。
【0035】
すなわち、負極としては、充放電反応に伴いリチウム等のアルカリ金属をドープ/脱ドープ可能な炭素材料を用いることができる。例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類(石油コークス、ピッチコークス、石炭コークス等)、カーボンブラック(アセチレンブラック等)、ガラス状炭素、有機高分子材料焼成体(有機高分子材料を、不活性ガス気流中、あるいは真空中で500℃以上の適当な温度で焼成したもの)、炭素繊維等が用いられる。また、これらの材料は単独で用いる他、複合体や混合物として用いられる。
【0036】
好ましいものとしては、(002)面の面間隔が3.70Å以上、真密度1.70g/cm3未満であり、且つ空気気流中に於ける示差熱分析で700℃以上に発熱ピークを有しない炭素質材料が用いられる。
【0037】
このような性質を有する材料としては、有機材料を焼成等の手法により炭素化して得られる炭素質材料が挙げられ、炭素化の出発原料としてはフルフリルアルコールあるいはフルフラールのホモポリマー、コポリマーよりなるフラン樹脂が好適である。具体的には、フラフラール+フェノール、フルフリルアルコール+ジメチロール尿素、フルフリルアルコール、フルフリルアルコール+ホルムアルデヒド、フルフリルアルコール+フラフラール、フルフラール+ケトン類等よりなる重合体が、非水電解液二次電池用負極剤として非常に良好な特性を示す。
【0038】
あるいは、原料として水素/炭素原子比0.6〜0.8の石油ピッチを用い、これに酸素を含む官能基を導入し、いわゆる酸素架橋を施して酸素含有量10〜20重量%の前駆体とした後、焼成して得られる炭素質材料も好適である。
【0039】
さらには、前記フラン樹脂や石油ピッチ等を炭素化する際にリン化合物、あるいはホウ素化合物を添加することにより、リチウムに対するドープ量を大きなものとした炭素材料も使用可能である。
【0040】
一方、正極にはLiXMO2(ただし、Mは1種以上の遷移金属、好ましくは、CoまたはNiの少なくとも1種をあらわし、0.05≦X≦1.10である。)を含んだ活物質が使用される。かかる活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNiyCo(1-y)O2(但し、0.05≦X≦1.10、0<y<1)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0041】
上記複合酸化物は、たとえばリチウム、コバルト、ニッケル等の炭酸塩を組成に応じて混合し、酸素存在雰囲気下600℃〜1000℃の温度範囲で焼成することにより得られる。なお、出発原料は炭酸塩に限定されず、水酸化物、酸化物からも同様に合成可能である。
【0042】
また、電解液としては、例えばリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。ここで有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、,,-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオリトリル等の単独もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。電解質も従来より公知のものがいずれも使用でき、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li等がある。
【0043】
渦巻式電極の最外周に貼付けるテープは種々のものが使用可能であるが、テープ及び粘着剤の材質が電解液の有機溶媒に対して安定であること、テープの粘着剤の最外周に巻回されるセパレータへの粘着強度等を考慮して選択することができる。特に、この種の電池に一般的に用いられている電解液に対しては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミド、フッ素樹脂系のテープの使用が望ましい。
【0044】
次に、上述の例において作製した電池を各々20本用意し、上限電圧を4.2Vに設定し、1Aの定電流で2.5時間充電後、400mAの定電流で2.75Vまで放電する充放電サイクルを繰り返した。
【0045】
これらの電池の10サイクル目の容量(以下、初期容量と記す)、並びに100サイクル目の容量の平均値(各n=20)を、各電極の巻き終わり部の固定に用いた粘着テープ長さと共に、表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、第1〜第3の本例電池は従来の方法による第1の比較例電池に比べ、サイクル経過後の容量が大きく、充放電サイクル進行に伴う劣化率が小さい。
【0048】
以上示したように、本例電池は高容量が得られ、サイクル寿命に優れる。なお、本例1〜3の説明には一枚の粘着テープで固定した場合を示したが、合計の長さが本例1〜3の範囲にはいるように、複数枚に分割して断続的に貼ることも可能である。この場合、複数枚のうちの一枚が巻き終わり部の固定に使われる。
【0049】
また、説明には粘着テープの幅は、電極(セパレータ)のほぼ全域を覆うものを用いたが、必ずしもこの幅が確保できなくともよい。但し、電極幅に対して40%以上の部分を覆うことが望ましい。この場合、テープの貼付け方法としては、1枚のテープでも複数のテープを使用しても良く、複数のテープにより固定する場合には、各テープの幅の合計が電極幅に対して40%以上であれば良い。
【0050】
以上のことから、本例によれば、渦巻式電極の巻き緩みを防止するために最外周に貼り付ける粘着テープの長さを規定することにより、円筒型非水電解液二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
【0051】
なお、上述本例1〜3においては、渦巻式電極の外径をLとし、巻き終わり部を固定する粘着テープの外径に沿う長さをkπLとするとき、k≧0.6のものについて検討を行った。
【0052】
本例1〜3の厚さ25μmの支持体を用いた場合、k≧2にしても効果は変わらず、また、kを余り大きくするとその体積分だけ電極の体積を減らすことになる。しかし、粘着テープをさらに薄いものを用いれば、kを2以上にすることも可能である。
【0053】
次に、本例非水電解液二次電池の実施例について図6〜図10を参照しながら説明しよう。
【0054】
図6は、本例非水電解液二次電池の実施例に用いた渦巻式電極を示すものである。この渦巻式電極の構成は上述の本例1〜3とほぼ同じものであるが、上述の本例1〜3においては、粘着テープとして電解液により膨潤しないものを用いていたが、本実施例では膨潤性を有する粘着テープを用いたものである。
【0055】
次に、本実施例で用いた渦巻式電極の具体的な製造方法について説明する。本実施例においては、第4の本例電池〜第6の本例電池、及び第2の比較例電池を作製した。
【0056】
ここで、負極1、負極集電体9、正極2、及び正極集電体10は、上述した本例1〜3での方法と同じ方法により作製した。
【0057】
第4の本例電池
帯状負極1、帯状正極2及び厚さ25μm、幅44mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムより成るセパレータ3を負極、セパレータ、正極、セパレータの順に積層してから、この積層体を渦巻型に多数回巻回した。最外周の巻き終わり部を、厚さ30μmのフッ化ビニリデン樹脂フィルムを支持体とし、アクリル樹脂系の粘着剤を塗布した、幅40mm、長さ56mmの粘着テープ20で固定して外径19.6mmの電極を作製した。また、テープは幅方向両端部を2mmずつ残して貼付け、図6に示したような渦巻式電極を作製した。
【0058】
なお、このベース・フィルムの膨潤性をみるために、50mm×60mmの試験片とし、これを使用電解液に6時間浸せきしこのベース・フィルムの体積膨張率を測定した結果、これは約40%であった。
【0059】
このようにして作製した渦巻式電極を、図7に示すように、ニッケルめっきを施した鉄製電池缶5に収納した。渦巻式電極上下両面には絶縁板4を配設し、アルミニウム製正極リード12を正極集電体から導出して電池蓋7に、ニッケル製負極リード11を負極集電体から導出して電池缶5に溶接した。この電池缶5の中に、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等容量混合溶媒中に、LiPF6を1モル/1の割合で溶解した電解液を注入した。
【0060】
アスファルトで表面を塗布した絶縁封口ガスケット6を介して電池缶5をかしめることにより、電流遮断機構を有する安全弁装置8並びに電池蓋7を固定し、電池内の気密性を保持させた。
【0061】
以上のような構成で、直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。
【0062】
第5の本例電池
電極最外周の巻き終わり部を固定する粘着テープにおけるベース・フィルムの材質を、架橋ポリエチレン・オキサイド樹脂としたこと以外は第4の本例電池と同じ方法で、図6に示したような渦巻式電極を作製し、図7に示したような直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。なお、ベース・フィルムの膨潤による体積膨張率は約820%であった。
【0063】
第6の本例電池
電極最外周の巻き終わり部を固定する粘着テープにおけるベース・フィルムの材質を、一軸延伸した塩化ビニル樹脂としたこと以外は第4の本例電池と同じ方法で、図6に示したような渦巻式電極を作製し、図7に示したような直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。なお、ベース・フィルムの膨潤による体積膨張率は約20%であった。
【0064】
第2の比較例電池
電極最外周の巻き終わり部を固定する粘着テープにおけるベース・フィルムの材質を、ポリエステル樹脂としたこと以外は第4の本例電池と同じ方法で、図8に示したような渦巻式電極を作製し、図7に示したような直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液電池を試作した。
【0065】
本例の渦巻式電極に用いた粘着テープは、上述実施例による方法ばかりでなく、他の方法によっても作製することができる。
【0066】
すなわち、渦巻式電極の最外周の巻き終わり部を固定するための粘着テープとしては、電解液との接触により、ベース・フィルムが膨潤し体積膨張する材料を種々使用することができる。
【0067】
ベース・フィルムの膨潤は、材料の溶解等によって起きる変化、材質の化学的な反応によって起きる変化、延伸等の機械的前処理を行った材料の復元力によって起きる変化等による結果として現れる現象である。
【0068】
ベース・フィルムとなる高分子化合物の、溶解による膨潤し易さを支配する因子としては、電解液の有機溶媒に対する誘電率や極性等が挙げられる。また、化学的変化による膨潤とは、電解液中の溶媒、溶質がベース・フィルムとなる高分子化合物と化学反応し、新らたな物質が生成することにより、体積が膨張するもの等をいう。さらに、機械的な性質による膨潤とは、延伸等の機械的前処理を行ったベース・フィルムが、長さ方向に収縮することにより、処理前の厚さに復元する結果生じるもの等をいう。いずれの場合も最適なベース・フィルムの材質は、使用する電解液の種類によって決定される。
【0069】
ここで、膨潤というのは、直接フィルムの厚さが増加するものだけでなく、フィルム本来の厚さにはほとんど変化は見られないが、長さ方向への増加がシワとなって現れ、実質的に厚さが増加した場合と同様の効果が得られるものも含まれる。
【0070】
また、テープに塗布される粘着剤は最外周に巻回されるセパレータへの粘着強度等を考慮して種々選択することができるが、用いる電解液の有機溶媒に対して安定であることが望ましい。
【0071】
次に、上述実施例において作製した電池を各々20本用意し、上限電圧を4.2Vに設定し、1Aの定電流で2.5時間充電後、400mAの定電流で2.75Vまで放電する充放電サイクルを繰り返した。なお、電極を缶に挿入する時点においては、電極外径〜缶内径間に生産上十分なクリアランスが確保されているため、第4〜第6の本例電池、第2の比較例電池共に挿入不良は発生しなかった。
【0072】
これらの電池の10サイクル目の容量(初期容量)、並びに100サイクル目の容量の平均値(n=20)を、表2に示した。また、100サイクル経過後の電池を分解し、各電極の巻き終わり部の固定に用いた粘着テープのベース・フィルムの膨潤の有無を調べ、表2に併せて示した。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示すように、本発明電池は従来の方法による比較例電池に比べ、サイクル経過後の容量が大きく、充放電サイクル進行に伴う劣化率が小さい。
これは、100サイクル経過後の第4の本例電池より取り出した粘着テープのベース・フィルムの外観(図9参照)からもわかるように、電解液との接触により膨潤したフィルムが電極外径と電池缶内径とのクリアランスを埋め、さらに電極に対し外周方向から中心に向けて加圧する力が働き、円滑に電極反応が行われたためと考えられる。なお、第2の比較例電池から取り出したベースフィルムの外観を図10に示した。
【0075】
本例によれば高容量で、サイクル特性に優れた電池が生産性よく量産できる。なお、実施例の説明には電解液に対し膨潤する材質のベース・フィルムからなる一枚の粘着テープで固定した場合を示したが、複数の材質からなる粘着テープを併用したり、非膨潤性テープで固定した後、その外周に更に膨潤性テープを貼付けたり、あるいは膨潤性フィルムを電極〜缶間に挿入し同様の効果を期待することもできる。
【0076】
なお、上述の実施例で用いたベース・フィルムの膨潤性については、常温で1昼夜このベース・フィルムを使用電解液に浸せきした結果、体積膨張率が5%以上であることが好ましく、また10%以上であればさらに好ましい効果が得られる。
【0077】
以上のことから、本例によれば、渦巻式電極の巻き緩みを防止するために最外周に貼り付ける粘着テープのベース・フィルムの材質を、電解液との接触により膨潤する材料とすることにより、非水電解液二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
また、粘着テープの長さを種々の長さにして用いることも勿論できる。
【0078】
なお、本発明は上述の実施例に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
ここで、上述の第1〜3の本例電池は、単に実験例を示したものであり、本発明の範囲に属するものではない。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、渦巻式電極の最外周に貼り付ける粘着テープの長さを規定することにより、また、粘着テープのベース・フィルムの材質を電解液との接触により膨潤する材料とすることにより、非水電解液二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
第1の本例電池の渦巻式電極を示す構成図である。
【図2】
第1〜3の本例電池を示す断面図である。
【図3】
第2の本例電池の渦巻式電極を示す斜視図である。
【図4】
第3の本例電池の渦巻式電極を示す構成図である。
【図5】
第1の比較例電池の渦巻式電極を示す斜視図である。
【図6】
第4〜第6の本例電池の渦巻式電極を示す構成図である。
【図7】
本発明非水電解液二次電池の実施例(第4〜6の本例電池)を示す断面図である。
【図8】
第2の比較例電池の渦巻式電極を示す斜視図である。
【図9】
第4の本例電池から取り出した粘着テープのベース・フィルムを示す説明図である。
【図10】
第2の比較例電池から取り出した粘着テープのベース・フィルムを示す説明図である。
【符号の説明】
11 負極リード
12 正極リード
15 渦巻式電極
20 粘着テープ
【図面】










 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-21 
出願番号 特願平4-292880
審決分類 P 1 652・ 121- XA (H01M)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 三宅 正之高木 正博  
特許庁審判長 三浦 悟
特許庁審判官 吉水 純子
原 賢一
登録日 2002-06-28 
登録番号 特許第3321853号(P3321853)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 非水電解液二次電池  
代理人 角田 芳末  
代理人 角田 芳末  
代理人 大前 要  

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