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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1101114
異議申立番号 異議2001-71539  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-22 
確定日 2004-05-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3113414号「染毛剤組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3113414号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.訂正請求について
1-1 訂正の内容
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「下記(a)群から選択される単数または複数の成分と、(b)群から選択される単数または複数の成分とを含有することを特徴とする染毛剤組成物。
(a)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b)トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。」を
「下記(a)群から選択される単数または複数の成分と、(b)群から選択される単数または複数の成分と、(c)群から選択される単数または複数の成分と、(d)群から選択される成分とを含有し、(a)群成分と(b)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1、(c)群成分と(d)群成分との重量比がc:d=1:0.1 〜10、(c)群成分の配合量が3〜30重量%、(d)群成分の配合量が3〜40重量%であることを特徴とする、褐色〜黒色に染毛するための染毛剤組成物。
(a) N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b) トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。
(c)直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素
(d)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤」
と訂正し、請求項2を削除する。
・訂正事項b
明細書の【0005】の
「本発明の要旨は、……(b)群から選択される単数または複数の成分とを含有することを特徴とする染毛剤組成物にある。」を
「本発明の要旨は、……(b)群から選択される単数または複数の成分と、(c)群から選択される単数または複数の成分と、(d)群から選択される成分とを含有し、(a)群成分と(b)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1、(c)群成分と(d)群成分との重量比が c:d=1:0.1 〜 10、(c)群成分の配合量が3〜30重量%、(d)群成分の配合量が3〜40重量%であることを特徴とする、褐色〜黒色に染毛するための染毛剤組成物にある。」と訂正する。
・訂正事項c
明細書の【0006】の
「(a) N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b) トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。
以下、本発明について詳細に説明する。」を、
「(a) N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b) トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。
(c) 直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素
(d) アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤
以下、本発明について詳細に説明する。」と訂正する。
・訂正事項d
明細書【0011】の
「……すなわち、(c)高級アルコールまたは炭化水素を3〜30重量%,好ましくは5〜20重量%添加する。」を、
「……すなわち、(c)直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素を3〜30重量%,好ましくは5〜20重量%添加する。」と訂正する。
・訂正事項e
明細書【0012】の
「本発明に使用する高級アルコールは、特に安定性の点から直鎖高級飽和アルコールが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、……、ベヘニルアルコール等である。また、炭化水素は、特に安定性の点から高級飽和炭化水素が好ましく、……」を、
「本発明においては、特に安定性の点から直鎖高級飽和アルコールが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、……、ベヘニルアルコール等である。また、特に安定性の点から高級飽和炭化水素が好ましく……。」と訂正する。
・訂正事項f
明細書【0013】の
「(d)界面活性剤を3〜40重量%,好ましくは5〜30重量%添加する。なお、(c)群成分と(d)群成分との重量比はc:d=1:0.1 〜10の範囲が好ましい。(d)群成分としてアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤あるいはこれら両者を用いると染色性、堅牢性の点で優れた効果が得られる。……」を
「(d)アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を合計で3〜40重量%,好ましくは5〜30重量%添加する。なお、(c)群成分と(d)群成分との重量比はc:d=1:0.1 〜10の範囲が好ましい。
(d)群成分としてアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の両者を用いると染色性、堅牢性の点で優れた効果が得られる。……」と訂正する。
・訂正事項g
明細書【0024】の
「……同様に表1に示す配合の比較例1〜4を調製した。」を
「……同様に表1に示す配合の比較例を調製した。」と訂正する。
・訂正事項h
明細書【0025】の表1の比較例1を削除する。
・訂正事項i.
明細書【0026】の
「上記にて得られた実施例1並びに比較例1〜4の染毛剤組成物を下記に示す酸化剤と1:1で混合して染毛剤を得た。……」を
「上記にて得られた実施例1並びに比較例の染毛剤組成物を下記に示す酸化剤と1:1で混合して染毛剤を得た。……」に訂正する。
・訂正事項j.
明細書【0027】の表2の比較例1を削除する。
・訂正事項k.
明細書【0028】の
「……実施例1の染毛剤組成物およびこれと酸化剤とを混合した染毛剤は、染色性および堅牢性において比較例1〜4の染毛剤組成物およびこれらから得られた染毛剤よりも優れている。……p-フェニレンジアミンに対して過敏な10名のパネラーの上腕部に実施例1と比較例4の染毛剤を用いてパッチテストを行い、……」を
「……実施例1の染毛剤組成物およびこれと酸化剤とを混合した染毛剤は、染色性および堅牢性において比較例の染毛剤組成物およびこれらから得られた染毛剤よりも優れている。……p-フェニレンジアミンに対して過敏な10名のパネラーの上腕部に実施例1と比較例の染毛剤を用いてパッチテストを行い、……」と訂正する。
・訂正事項l.
明細書【0029】の表3の比較例1を削除する。
・訂正事項m.
明細書【0030】の
「表3から明らかなように、実施例1の染毛剤組成物およびこれと酸化剤とを混合した染毛剤は、安全性に優れている。比較例1の染毛剤組成物は安全性においては優れているが、表2からも明らかなように染色性および堅牢性におい問題がある。表2および表3から明らかなように、……」を
「表3から明らかなように、実施例1の染毛剤組成物およびこれと酸化剤とを混合した染毛剤は、安全性に優れている。表2および表3から明らかなように、……」と訂正する。
・訂正事項n.
明細書【0031】及び【0033】の記載を削除する。
・訂正事項o.
明細書【0032】の記載の中の
「(実施例3)下記配合にて染毛剤組成物を調製した。」を削除する。
訂正事項p.
明細書【0034】の
「上記実施例2〜4の染毛剤組成物は、実施例1の染毛剤組成物と同様に染色性、堅牢性および安全性に優れていた。」を
「上記実施例2の染毛剤組成物は、実施例1の染毛剤組成物と同様に染色性、堅牢性および安全性に優れていた。」と訂正する。

1-2 訂正の適否
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に係る発明を、請求項2記載の(a)群成分と(b)群成分との重量比で限定し、更に、願書に添付した明細書(以下、特許明細書という。)【0011】及び【0012】に記載の(c)群成分、(d)群成分、及びそれらの配合割合で限定し、【0004】、【0023】及び【表2】に記載の「褐色〜黒色に染毛」することで限定し、更に請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、特許明細書に記載された範囲内のものである。
訂正事項b〜f及びn〜pは、訂正事項aの特許請求の範囲の訂正に伴って、特許明細書の記載を整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正事項g〜mは、不適切な比較例1を削除し、それに伴って特許明細書の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、これらの訂正事項a〜pは実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

2.特許異議申立について
2-1 本件特許発明
本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、訂正された特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認められる。

【請求項1】 下記(a)群から選択される単数または複数の成分と、(b)群から選択される単数または複数の成分と、(c)群から選択される単数または複数の成分と、(d)群から選択される成分とを含有し、(a)群成分と(b)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1、(c)群成分と(d)群成分との重量比がc:d=1:0.1 〜10、(c)群成分の配合量が3〜30重量%、(d)群成分の配合量が3〜40重量%であることを特徴とする、褐色〜黒色に染毛するための染毛剤組成物。
(a) N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b) トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。
(c)直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素
(d)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤

2-2 取消理由通知に引用された刊行物の記載
当審による平成15年8月11日付けの取消理由通知に引用された刊行物1〜4には、それぞれ以下の事項が記載されていいる。
仏国特許公開2421870号明細書(以下、刊行物1という。)には、染色組成物に関する発明が記載され、パラトルイレンジアミン二塩酸塩 1.5g、N-(ジ-β-ヒドロキシエチル)アミノ-4-アニリンスルフェート3g、酸化エチレン4モルを有するノニルフェノール13g、酸化エチレン9モルを有するノニルフェノール13gを含有する染毛剤の処方例が記載され、この組成物を自然の白髪に塗布すると、灰白色がかったくすんだ栗色に染毛されること(実施例8)が記載されている。
特開昭62-72608号公報(以下、刊行物2という。)には、酸化染髪料製剤に関する発明が記載され、酸化染髪料前駆物質を0.1〜5.0重量%含有する水中油型乳濁液の形(2頁右下欄)であり、好ましい脂肪成分として炭素原子12〜22個を有する飽和脂肪アルコール又は脂肪アルコールが挙げられること(3頁左下欄)、乳化剤としてアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられること、脂肪成分と乳化剤の量比は1:0.5 〜1:5の間で変化させることができること(3頁右上欄)、酸化染髪料クリームは、C12-C18脂肪アルコール5〜15重量%および脂肪アルコールスルフェート又は脂肪アルコール(ポリグリコールエーテル)スルフェート5〜10重量%含有すること(3頁左下欄)が記載されている。
特表昭61-502531号公報(以下、刊行物3という。)には、ラウリルアルコールジグリコールエーテル硫酸エステルナトリウム塩(28%水溶液)10〜11重量%、ココヤシ脂肪酸ジエタノールアミド2〜3.5 重量%、セチルステアリルアルコール70重量部、グリセリンモノ-ジステアレート22重量部及び羊毛ろうアルコール8重量部の混合物10〜14重量%、及び染料混合物を含有する酸化染毛剤(実施例1〜4)が記載されている。
特開平1-165514号公報(以下、刊行物4という。)には、酸化染料中間体、油性成分、界面活性剤をを含有するクリーム状染毛剤組成物に関する発明(特許請求の範囲第1項)が記載され、油性成分としてパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、高級アルコールなどが挙げられ、0.01 〜50重量%程度の配合量であること(2頁右下欄〜3頁右上欄)、界面活性剤の配合量は 0.1〜40重量%が好ましいこと(3頁右下欄)及び高級アルコール及び/又は炭化水素と界面活性剤を配合したクリーム状の染毛剤の処方例(第1、3〜5表)が記載されている。

2-3 対比・判断
本件発明と刊行物1の実施例8に記載の染毛剤組成物と対比すると、刊行物1の染毛剤の処方例におけるN-( ジ-β-ヒドロキシエチル)アミノ-4-アニリンスルフェートはN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル )-p-フェニレンジアミンの硫酸塩ともいい、パラトルイレンジアミンの二塩酸塩はトルエン-2,5-ジアミン の二塩酸塩ともいうこと、及び、これらの染料前駆体の重量比が3g:1.5g=2:1であることから、両者は
(a)N,N-ビス( 2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン及びその塩、
(b)トルエン-2,5-ジアミン及びその塩を
(a)群成分と(b)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1の範囲内で配合している染毛剤組成物である点で一致し、前者は、(c)群成分として直鎖高級飽和アルコール又は高級飽和炭化水素を3〜30重量%配合し、(d)群成分としてアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を3〜40重量%配合し、(c)群成分と(d)群成分との重量比がc:d=1:0.1 〜10の配合比であり、かつ、褐色〜黒色に染毛するための染毛剤組成物であると限定しているのに対して、後者は(c)群成分を配合することについて記載されていないこと、(d)群成分として非イオン性界面活性剤であることが明らかな酸化エチレン4モルを有するノニルフェノールと酸化エチレン9モルを有するノニルフェノール配合していること、及び灰白色がかったくすんだ栗色に染毛するための染毛組成物である点で相違する。

そこで、この相違点について検討する。
刊行物2〜4には(a)及び(b)群成分と同種の酸化染料前駆体を含有する染毛剤組成物について記載されているが、(a)及び(b)群成分を含有する染毛剤は記載されていない。そして、そのいずれにも高級アルコール又は炭化水素をアニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤と共に配合することが記載されている。しかし、(a)及び(b)群成分を含有する染毛剤組成物において、高級アルコール又は炭化水素として直鎖高級飽和アルコール又は高級飽和炭化水素を選択し、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の両者を選択すると、染色性及び堅牢性に優れ、かつ自然な褐色〜黒色に染色できることは記載も示唆もない。
ところが、平成15年10月17日付け特許異議意見書における比較実験によれば、特許明細書の実施例1に記載の染毛剤と、実施例1に記載の染毛剤から直鎖高級飽和アルコールであるステアリルアルコールを除いた染毛剤(比較例5)及び同じくラウリル硫酸ナトリウムを除いた染毛剤(すなわち、非イオン性界面活性剤のみ)(比較例6)とをパネラー10人で比較した結果、実施例1に記載の染毛剤は、自然な黒褐色に染まり、「染め上がり」及び「退色性」についても両比較例より優れていることが認められる。
したがって、本件発明は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められず、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

また、異議申立人ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー、異議申立人ウェラ アクチェンゲゼルシャフト及び異議申立人林純が主張するその他の理由及び提出した証拠を検討しても、本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由は見出せない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことができない。
また、本件特許について、他に取り消すべき理由を見出せない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
染毛剤組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(a)群から選択される単数または複数の成分と、(b)群から選択される単数または複数の成分と、(c)群から選択される単数または複数の成分と、(d)群から選択される成分とを含有し、(a)群成分と(b)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1、(c)群成分と(d)群成分との重量比がc:d=1:0.1〜10、(c)群成分の配合量が3〜30重量%、(d)群成分の配合量が3〜40重量%であることを特徴とする、褐色〜黒色に染毛するための染毛剤組成物。
(a)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b)トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。
(c)直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素
(d)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば酸化剤と混合して染毛剤を調製し、これを毛髪に塗布して染毛する染毛剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、染毛剤としては酸化染料中間体を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型の酸化染毛剤が広く利用されている。この染毛剤は無色の低分子の酸化染料中間体を毛髪中に浸透させ、髪の中で酸化重合を行なわせることにより色素を生成させ毛髪を染着するものである。これらの染毛剤は要望に応じた種々の色調に毛髪を染毛することができ、しかも、その染毛力も優れているので非常に便利なものであり、広く利用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記酸化染毛剤を用いた場合、まれにアレルギー症状を呈する場合があった。また、赤味を帯びた色に染まったり、更にシャンプーの繰り返しなどにより赤味を帯びた不自然な色に退色することがあった。このため、アレルギーを招かず、自然な色に染毛可能で不自然な色に退色しない染毛剤の開発が望まれていた。これらの問題点は、酸化染毛剤において酸化染料中間体として用いられるパラフェニレンジアミン類の性質によるものと考えられている。一方、パラフェニレンジアミン類を用いない場合は、染色性が劣るという問題点があった。
【0004】
発明者は、特定の酸化染料中間体に他の染料及び配合成分を配合した染毛剤組成物を用いると、安全性が高く、染色性及び堅牢性にも優れ、かつ自然な褐色〜黒色に染毛できることを見出だし、本発明を完成するに到ったものである。すなわち、本発明の目的とするところは、安全性に優れ、かつ染色性及び堅牢性に優れた染毛剤組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明の要旨は、下記(a)群から選択される単数または複数の成分と、(b)群から選択される単数または複数の成分と、(c)群から選択される単数または複数の成分と、(d)群から選択される成分とを含有し、(a)群成分と(b)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1、(c)群成分と(d)群成分との重量比がc:d=1:0.1〜10、(c)群成分の配合量が3〜30重量%、(d)群成分の配合量が3〜40重量%であることを特徴とする、褐色〜黒色に染毛するための染毛剤組成物にある。
【0006】
(a)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩。
(b)トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩。
(c)直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素
(d)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
本発明において(a)群成分として使用されるのは、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンおよびその塩である。塩とは、例えば、有機酸の塩あるいは無機酸の塩、すなわち、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩等で、特に限定はない。
【0008】
(a)群成分の配合量が0.1重量%よりも少ないと染毛効果が低下し始め、10重量%以上配合してもその効果は変わらない。したがって、好ましい(a)群成分の配合量は0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。だだし、(a)群成分の配合量が0.1重量%よりもわずかに少ないからといって、いきなり染毛不良となるわけではない。
【0009】
(a)群成分のみでは染色性及び堅牢性に若干問題があるが、(b)群成分を配合することによって、染色性及び堅牢性を向上させることができる。
すなわち、(b)トルエン-2,5-ジアミンおよびその塩から選択される配合成分である。
【0010】
(b)群成分の配合量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましく,特に好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。また、(a)群成分との重量比がa:b=1:10〜10:1であると効果的である。
(a)群成分および(b)群成分とも安全性は高いので、両者の配合によって、安全性が高く、染色性及び堅牢性にも優れた染毛剤組成物を得ることができる。
【0011】
上記(a)群から選択される成分および(b)群から選択される成分を配合したのみでも充分な効果を得られるが、さらに(c)群成分および(d)群成分を加えると染色性及び堅牢性がなお向上する。
すなわち、(c)直鎖高級飽和アルコールまたは高級飽和炭化水素を3〜30重量%,好ましくは5〜20重量%添加する。
【0012】
本発明においては、特に安定性の点から直鎖高級飽和アルコールが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等である。また、特に安定性の点から高級飽和炭化水素が好ましく、例えば、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、プリスタン等である。
【0013】
(d)アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を合計で3〜40重量%,好ましくは5〜30重量%添加する。なお、(c)群成分と(d)群成分との重量比はc:d=1:0.1〜10の範囲が好ましい。
(d)群成分としてアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の両者を用いると染色性、堅牢性の点で優れた効果が得られる。以下に使用可能な界面活性剤を例示する。
<アニオン性界面活性剤>
1.硫酸エステル塩
1-1)アルキル硫酸エステル塩
ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウムなど
1-2)アルキル及びアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩
ポリオキシエチレン(以下、POEと略す。)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEアルキルエーテル硫酸ジエタノールアミン、POEアルキルエーテル硫酸アンモニウムなど
1-3)高級脂肪酸エステル塩の硫酸エステル塩
硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム
1-4)高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩
1-5)硫酸化油
硫酸化ヒマシ油など
2.リン酸エステルおよびその塩
POEラウリルエーテルリン酸、POEオレイルエーテルリン酸、POEセチルエーテルリン酸、POEステアリルエーテルリン酸、POEアルキルエーテルリン酸、POEアルキルフェニルエーテルリン酸など、およびこれらの塩(ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩など)
3.スルホン酸塩
3-1)α-オレフィンスルホン酸塩
3-2)高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩
3-3)高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなど
3-4)アルキルベンゼンスルホン酸塩
ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンなど
3-5)スルホコハク酸塩
スルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、POEスルホコハク酸二ナトリウム、POEスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸POEラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウムなど
4.カルボン酸塩
4-1)高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物
ラウロイルサルコシンナトリウムなどのN-アシルサルコシン塩、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸二ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどN-アシルグルタミン酸塩
4-2)脂肪酸石鹸
石鹸用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなど
<非イオン性界面活性剤>
1.POEアルキルエーテル
POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテルなど
2.POEアルキルアリルエーテル
POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテルなど
3.POEソルビタン脂肪酸エステル
モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタンなど
4.POEグリセリルモノ脂肪酸エステル
モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリンなど
5.POEソルビトール脂肪酸エステル
テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウなど
6.ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体
POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油など
7.POE脂肪酸エステル
モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなど
8.高級脂肪酸グリセリンエステル
親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリンなど
9.ソルビタン脂肪酸エステル
モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなど
10.ラノリン誘導体
POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEソルビトールラノリンなど
11.アルキロールアミド
ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなど
12.POE脂肪酸アミド
POEステアリン酸アミド
13.ショ糖脂肪酸エステル
14.アルキルアミンオキシド
ジメチルラウリルアミンオキシドなど
<両性界面活性剤>
カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型など。
【0014】
例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ウンデシノイル-カルボキシメトキシエチルカルボキシメチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル-N-ヒドロキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム液、ビス(ステアリル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリン)クロル酢酸錯体、ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油アルキル-N-カルボキシエトキシエチル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムジナトリウムヒドロキシド、ヤシ油アルキル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムジナトリウムヒドロキシド、ヤシ油アルキル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、ヤシ油アルキルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン、β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルN-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムドデカノイルサルコシン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液等が挙げられる。
<カチオン性界面活性剤>
カチオン性界面活性剤としては、下記(1)式に示す一般式で表されるものがある。
【0015】
【化1】

【0016】
(1)式中、R1,R2,R3,R4の1〜2個は直鎖または分枝鎖の炭素数8〜20の長鎖アルキル基、または長鎖ヒドロキシアルキル基を示し、残余は炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子または炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。
【0017】
例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどである。
【0018】
さらに、(c)群および(d)群以外の任意成分として配合可能な成分を下記に例示する。
上述した以外の酸化染料中間体としては、パラフェニレンジアミン類を除くアミノフェノール類、アミノニトロフェノール類、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N-フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類等およびそれらの塩類が挙げられる。その配合量は例えば、染毛剤組成物の全重量に対して0.01〜10重量%程度である。また、カップラーとして、ピロガロール、カテコール、メタフェニレンジアミン等を配合することができる。
【0019】
また、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行,薬事日報社)に収載されたものを用いることができる。特に、レゾルシン、m-フェニレンジアミン、p-アミノフェノール、2,6-ジアミノピリジンを用いると美しく自然な染め上がりが得られる。
【0020】
更に、グリセリン、プロピレングリコール等の保湿剤、亜硫酸塩、アスコルビン酸等の安定剤、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤、アンモニア、アルカノールアミン等のアルカリ剤、香料などを必要に応じて適宜、配合することができる。
【0021】
本発明の染毛剤組成物を使用して染毛するにあったては、例えば染毛処理の直前に酸化剤と混合して染毛剤を調製し、これを毛髪に塗布する。
酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素等を含有する周知の配合のものを使用できる。酸化剤には、フェナセチン、EDTA等の安定剤、界面活性剤、油脂類、高級アルコール、酸、pH調整剤、香料などを必要に応じて適宜、配合することができる。
【0022】
この際の剤型をクリーム、ゲル、ペーストなど粘稠な形態とすると、染毛剤の毛髪への付着性がよく、染色性および堅牢性の点で好ましい。また、染毛剤を毛髪に塗布した後の放置時間を5〜10分とし、これを適当な日数の間隔をおいて2〜数回染毛を繰り返せば、例えば白髪を徐々に黒く染毛できるので人に気づかれにくい。
【0023】
本発明により、安全性に優れ、染色性および堅牢性に優れた染毛剤組成物を提供することができるのは、以下の理由によるものであると考えられる。即ち、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンを用いることにより、従来使用されていたパラフェニレンジアミンに比べ、アレルギーを起こしにくく、また退色性に優れた効果を得ることができる。また、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミンとトルエン-2,5-ジアミンまたはその塩を組み合わせることにより、緑色を帯びた自然な褐色〜黒色に染毛することができ、また赤味を帯びた不自然な色に退色しないという優れた効果を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
次表1に示す配合で実施例1の染毛剤組成物を調製した。同様に表1に示す配合の比較例を調製した。
【0025】
【表1】

【0026】
上記にて得られた実施例1並びに比較例の染毛剤組成物を下記に示す酸化剤と1:1で混合して染毛剤を得た。
(酸化剤)
過酸化水素 15.0重量%
EDTA 0.5
セタノール 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
フェナセチン 0.1
精製水で100%にする。
<評価方法>
10名のパネラーから採取した毛束を上記にて得た染毛剤で染色し、染色性および堅牢性について下記1および2の要領で評価した。その結果を表2に示す。
1.染め上がり
10名のパネラーから採取した毛束を上記の染毛剤で染色し、染め上がりを評価した。
2.退色性
上記にて染色した染色毛について、ラウリル硫酸ナトリウム10%水溶液で2回シャンプーし次に乾燥する操作を30回繰り返して得られたものと、この処理を行なわないものとを比較した。
【0027】
【表2】

【0028】
表2から明らかなように、実施例1の染毛剤組成物およびこれと酸化剤とを混合した染毛剤は、染色性および堅牢性において比較例の染毛剤組成物およびこれらから得られた染毛剤よりも優れている。
3.安全性
p-フェニレンジアミンに対して過敏な10名のパネラーの上腕部に実施例1と比較例の染毛剤を用いてパッチテストを行い、下記の基準で評価した。その結果を表3に示す。
-…異常なし。
±…やや発赤が見られる。
+…発赤が見られる。
【0029】
【表3】

【0030】
表3から明らかなように、実施例1の染毛剤組成物およびこれと酸化剤とを混合した染毛剤は、安全性に優れている。表2および表3から明らかなように、安全性、染毛性および堅牢性の全てを満足するのは実施例1の染毛剤組成物のみである。
(実施例2)
下記配合にて染毛剤組成物を調製した。
【0031】
【0032】
配合比(重量%)
(a)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン二塩酸塩
5.5
(b)トルエン-2,5-ジアミン硫酸塩 1.5
p-アミノフェノール 0.2
レゾルシン 0.5
ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル 10.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 4.0
セチル硫酸ナトリウム 2.0
セチルアルコール 5.0
ワセリン 5.0
ステアリン酸 2.0
プロピレングリコール 3.0
エデト酸二ナトリウム 0.1
28%アンモニア水 pH9.2とする量
精製水で100%にする。
【0033】
【0034】
上記実施例2の染毛剤組成物は、実施例1の染毛剤組成物と同様に染色性、堅牢性および安全性に優れていた。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本発明の染毛剤組成物は、安全性に優れ、かつ染色性及び堅牢性に優れている。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-06 
出願番号 特願平4-270323
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塚中 直子  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 横尾 俊一
深津 弘
登録日 2000-09-22 
登録番号 特許第3113414号(P3113414)
権利者 ホーユー株式会社
発明の名称 染毛剤組成物  
代理人 足立 勉  
代理人 村田 紀子  
代理人 足立 勉  
代理人 吉崎 修司  
代理人 武石 靖彦  
代理人 斉藤 武彦  

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