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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
管理番号 1101155
異議申立番号 異議2000-72879  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-02-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-24 
確定日 2004-06-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3002779号「硫酸化物の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3002779号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3002779号は、平成11年3月10日(国内優先権主張:平成10年5月21日)に出願され、平成11年11月19日にその特許権の設定登録がなされ、その後、ライオン株式会社より特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月16日付けで訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年3月24日付けで手続補正書(訂正請求書)が提出されたものである。

II.訂正の適否
1.訂正請求書の補正の適否
訂正請求書の補正は、訂正請求書の「(3)訂正の要旨」中、丸数字2項の「訂正事項b」(訂正請求書第2頁15行〜18行)が、願書に最初に添付された明細書の記載事項の範囲外であるとする当審の訂正拒絶理由に対してなされたものであり、上記丸数字2項の「訂正事項b」を削除するとともに、同じく丸数字3項の「訂正事項c」を新たに「訂正事項b」として訂正内容及び符号の整合を図り、かつ、これに関連する「(4)請求の原因」中、丸数字2項の「訂正事項b」(訂正請求書第3頁14行〜22行)を削除するとともに、同じく丸数字3項の「訂正事項c」を新たに「訂正事項b」として引用する符号の整合を図るものである。
当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第131条第2項の規定に適合する。

2.訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次のとおりである。

〔訂正事項a〕
特許請求の範囲の請求項1の、
「SO3ガスに対して「0.01〜1.8の流量比」との記載を、
「SO3ガスに対して「0.01以上0.5以下の流量比」と訂正する。

〔訂正事項b〕
明細書段落【0005】の、
「本発明は、SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.01〜1.8の流量比、かつ0.1〜1.2の流速比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法、に関する。」との記載を、
「本発明は、SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.01以上0.5以下の流量比、かつ0.1〜1.2の流速比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法、に関する。」と訂正する。

3.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否

訂正事項aは、特許請求の範囲の記載において、不活性ガスのSO3ガスに対する流量比の範囲を「0.01〜1.8」から「0.01以上0.5以下」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこの訂正は、明細書段落【0022】の記載により支持されており、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正によって生じた明細書の記載中の不整合部分を、訂正後の特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そしてこの訂正は、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

4.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて
1.本件発明
本件請求項1に係る発明は、訂正後の明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された以下のとおりである(以下、「本件発明」という)。

「【請求項1】SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.01以上0.5以下の流量比、かつ0.1〜1.2の流速比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法。」

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人は、本件出願はその明細書に記載不備があり、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないものであるから特許を受けることができず、したがって訂正前の本件発明の特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものであると主張している。
また特許異議申立人は、証拠として本願優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である下記の甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、訂正前の本件発明は、上記甲第1号証あるいは甲第2号証に記載された発明であるか、上記甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明あるいは技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項あるいは同条第2項の規定により特許を受けることができず、したがって訂正前の本件発明の特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものであると主張している。
なお、当審において通知した取消しの理由の趣旨は、異議申立人の上記申立理由と概略同じである。


甲第1号証 米国特許第2923728号明細書
甲第2号証 米国特許第3931273号明細書
甲第3号証 「化学工学」第46巻第6号(1992)第298〜306 頁
甲第4号証 特開昭54-59204号公報
甲第5号証 カナダ特許公開第2001276号明細書
甲第6号証 「Sulphonation Technology in the Detergent Industry」
(W.Herman de Groot著、Kluwer Academic Publishers 、
1991)第145、146頁

3.甲第1号証ないし甲第6号証の記載
甲第1号証には、SO3ガスと有機化合物とを反応させて、有機化合物を硫酸化する方法が記載されており(第5欄第28行〜第6欄第15行参照)、Fig.1には、反応管Aの内壁に沿って液状有機化合物を供給し、中心部にはSO3ガスと不活性ガスの混合物である気化ガスを供給し、駆動ガス(driving gas)を液状化合物と気化ガスの間に流れるように供給する反応装置が記載されている(第1欄55行〜67行、及びFig.1参照)。また、通常駆動ガスの表面ガス速度は毎秒30〜50feetであり、SO3ガスと不活性ガスの混合物である気化ガスの表面ガス速度は毎秒150〜400feetであること(第2欄64行〜68行参照)、気化ガスと駆動ガスの体積比は1:1〜1:2であること(第1欄70行〜第3欄1行参照)が記載されている。

甲第2号証には、液状有機化合物を反応管内壁に沿って流下させるよう供給するとともに反応管中心部にはSO3ガスと不活性ガスの混合物を供給し、さらに別の不活性ガスを液状有機化合物と接触するように供給することからなる液状有機化合物の硫酸化方法が記載されており(第12欄1行〜37行参照)、希釈されたSO3ガス、及び別の不活性ガス(equalizing gas)からなる不活性ガス全体の流速に由来する反応管中のガス表面速度は通常20〜80m/secであること(第7欄32行〜35行参照)、各反応管における別の不活性ガス(equalizing gas)量は、全不活性ガス流総量のおおよそ8〜19%の範囲で変動すること(第4欄15〜18行参照)が記載され、また、不活性ガスで希釈されるSO3の濃度が2〜12vol%であること(第7欄49行〜53行参照)が記載されている。

甲第3号証には、「新規スルホン化リアクターの開発と工業化」に係る記述があり、界面活性剤のスルホン化反応に際しては着色等の問題が生じることが記載され(第299頁右欄17行〜21行参照)、薄膜式の反応においてSO3ガスと界面活性剤であるアルファオレフィンとの間に不活性ガスを挿入するエアーカーテン方策が有効であることが示唆されている(第302頁右欄4行〜11行参照)。

甲第4号証には、「有機化合物を液体薄膜状にして流下させながら不活性ガスで希釈したSO3ガスと反応させてスルホン化物または硫酸化物を製造する方法において、該SO3ガスを分割して反応面上の流下方向に対して異なる位置に供給し、かつ各供給位置間の反応面およびそれに続く反応面をそれぞれ独立に温度調節することを特徴とするスルホン化方法または硫酸化方法」が記載されており(特許請求の範囲第1項)、図1には、供給口13から供給された液状有機化合物が、導入口8から導入された駆動用の不活性ガスに送られて反応面4を薄膜状で流下し供給口10、11、12からそれぞれ供給されるSO3ガスと順次反応しスルホン化されるよう構成した装置が記載されている(公報第2頁右下欄4行〜第3頁左上欄8行、及び図1参照)。

甲第5号証には、内部オレフィンに対してSO3ガスを高いモル比で供給し、かつ低い温度で反応を行わせる内部オレフィンのスルホン化方法に係る発明が記載されており(第2頁18行〜22行参照)、Example 1には、原料化合物を反応管内壁に沿って薄膜状で流下させ、窒素ガスを薄膜状の原料化合物に重ねるよう供給するとともに反応管の中心部にはSO3ガスと窒素ガスの混合ガスを供給して反応管を冷却しながら反応を行わせることが記載されている(第12頁2行〜第13頁15行、及び図参照)。またその際に、原料化合物、窒素ガス、及びSO3ガス流量はそれぞれコントロールされており、N2 27 litres min-1、SO3 2.9g min-1=3.6×10-2 mole min-1としたこと、内部オレフィンに対するSO3のモル比を4つの異なる値(1.2:1、1.4:1、1.6:1、1.8:1)としたことが記載されている(第13頁15行〜第14頁8行参照)。そしてTABLE 1によれば、SO3/オレフィンのモル比が高くなると転化率は増大するが不純物も増加し、着色の問題が生じる傾向のあることが示されている(第14頁9行〜第15頁20行参照)。

甲第6号証には、甲第2号証に記載された装置と同じ装置が記載されており(第146頁figure 25参照)、“equalizing air”の機能として、(i)有機薄膜を管壁に押しつけること、(ii)SO3ガス/空気と有機薄膜との間のクッションを形成し、反応装置上部の温度上昇を抑制し、反応装置全長にわたって反応速度を均等化すること、の2つが挙げられている(第145頁15行〜20行参照)。

4.対比・判断
(a)特許法第36条第4項及び第6項について
特許異議申立人は、本件出願の明細書の記載不備について、不活性ガスの流速を求めるための計算方法には技術的に重大な誤りがあるため特許を受けようとする発明が明確ではない旨、また、計算式におけるパラメータの値が全て示されていないため当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載があるとはいえない旨、主張している。
しかし、特許権者が意見書に添付した参考資料1ないし3をみれば本件明細書に記載された不活性ガスの計算方法は妥当なものと認められ、また、本件明細書の表1の記載によれば不活性ガスの流速が実施例ごとに実際に求められていることは明らかであるから、パラメーターの値が一部記載されていないことのみをもって、明細書の記載が不備であるとすることはできず、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

(b)特許法第29条第1項について
本件発明と、上記甲第1号証に記載された発明とを比較すると、甲第1号証記載の発明は上記摘記事項からも明らかなように、SO3ガスと有機化合物とを反応させて有機化合物を硫酸化する方法に係るものであって、反応管Aの内壁に沿って液状有機化合物を供給し、中心部にはSO3ガスと不活性ガスの混合物である気化ガスを供給し、駆動ガス(driving gas)を液状化合物と気化ガスの間に流れるように供給することからなるものであり、かつ、駆動ガスの表面ガス速度が毎秒30〜50feet、SO3ガスと不活性ガスの混合物である気化ガスの表面ガス速度が毎秒150〜400feetであるという記載より、駆動ガスの気化ガスに対する流速比が0.08〜0.33であることが導かれるから、両者は、「SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.1〜0.33の流速比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法」である点で一致するものである。
しかしながら、本件発明においてはさらに、SO3ガスに対して「0.01以上0.5以下の流量比」となるように不活性ガスを供給するのに対して、甲第1号証に記載された発明においては、気化ガスと駆動ガスの体積比1:1〜1:2から導かれる流量比は1〜2となり、本件発明におけるSO3ガスと不活性ガスの上記流量比の範囲とは一致しない。
したがって、本件発明と上記甲第1号証に記載された発明とは、SO3ガスと不活性ガスの流量比において異なるものであるから、本件発明は上記甲第1号証に記載された発明ではない。

次に、本件発明と、上記甲第2号証に記載された発明とを比較すると、甲第2号証記載の発明は上記摘記事項からも明らかなように、液状有機化合物を反応管内壁に沿って流下させるよう供給するとともに反応管中心部にはSO3ガスと不活性ガスの混合物を供給し、さらに別の不活性ガスを液状有機化合物と接触するように供給することからなる液状有機化合物の硫酸化方法に係るものであり、かつ、各反応管における別の不活性ガス(equalizing gas)量は、全不活性ガス流総量のおおよそ8〜19%の範囲で変動することが記載され、SO3ガス濃度が2〜12vol%であることを考慮すれば、別の不活性ガス(equalizing gas)はSO3ガスと不活性ガスの混合物に対して0.08〜0.23の流量比で供給されていることになり、両者は、「SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.08〜0.23の流量比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法」である点で一致するものである。
しかしながら、本件発明においてはさらに、SO3ガスに対して「0.1〜1.2の流速比」となるように不活性ガスを供給するのに対して、甲第2号証に記載された発明においては、不活性ガス全体の流速に由来する反応管中のガス表面速度は通常20〜80m/secであることが記載されているだけで、反応管中心部に供給されるSO3ガスと不活性ガスの混合物と、液状有機化合物と接触するように供給される別の不活性ガスのそれぞれについての流速は記載されていないため、これらのガスの流速比は不明である。そして、これらのガスの流速比が必ず0.1〜1.2の範囲内にあるという根拠も見出せないことから、これらのガスの流速比が本件発明におけるSO3ガスと不活性ガスの上記流速比の範囲と一致しているということはできない。
したがって、本件発明と上記甲第2号証に記載された発明とは、SO3ガスと不活性ガスの流速比において異なるものであるから、本件発明は上記甲第2号証に記載された発明ではない。

(c)特許法第29条第2項について
本件発明と上記甲第1号証あるいは甲第2号証にそれぞれ記載された発明とを比較すると、上述したとおり「SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法」である点でこれらは共通しているものの、不活性ガスを供給するに際して、不活性ガスのSO3ガスに対する流量比及び流速比の双方をともに一定範囲内となるよう特定することは、上記甲第1号証あるいは甲第2号証のいずれにも記載がなく示唆もなされていない。また、甲第3号証ないし甲第6号証には、甲第1号証あるいは甲第2号証に記載された方法と同様の方法が記載されているが、不活性ガス及びSO3ガスの流量と流速を制御することについては何も記載がなく、これらを組合せて参照しても、本件発明の「SO3ガスに対して0.01以上0.5以下の流量比、かつ0.1〜1.2の流速比となるように不活性ガスを供給する」という構成を導くことはできない。
そして、本件発明は上記の構成を備えることにより、色相が大幅に改善された硫酸化物を低コストで得ることができるという明細書記載の効果(本件公報段落【0056】参照)を奏するものであると認められる。
したがって、本件発明は上記甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明あるいは技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV.むすび
以上のとおりであるから特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
硫酸化物の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.01以上0.5以下の流量比、かつ0.1〜1.2の流速比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色相が大幅に改善された界面活性剤として有用な硫酸化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SO3ガスによる硫酸化は高度な発熱をともなう反応であり、その反応生成物は粘稠性であって、流動性に欠けるため、SO3と過度に反応し易く、しばしば反応物の着色、炭化物の混入等を与えるという欠点がある。種々の商業的目的に対し、色相の悪い製品は、商品価値が低下する場合があるため、従来、これらの色相悪化に対して、多くの方法が提案されている。
【0003】
特公昭49-48409号公報においては、薄膜スルホン化装置において反応液薄膜流とSO3ガスとの中間に空気又は不活性ガスを冷却ガスとして、SO3ガスの約2〜5倍量、かつ実質的にSO3ガス流と同速度で導入してスルホン化反応を行うことにより、反応温度を一定にし、着色及び副生成物の少ない硫酸化物を製造する方法が開示されている。しかしながら、該製造方法では、冷却を目的として不活性ガスを流すため、多量の不活性ガスが必要であり、上記公報の出願人が後に出願している特公昭53-41130号公報に見られるような排ガスの循環利用等の措置をとる必要があり、設備上の負荷が大きいという欠点がある。また、かかる硫酸化反応方法を用いて得られる硫酸化物の色相は、ある程度改善されるものの、より一層の改善が必要であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、色相が大幅に改善された硫酸化物を低コストで得ることができる硫酸化物の製造方法を提供することを目的とする。尚、本発明でいう「硫酸化」とは、いわゆるスルホン化又は硫酸エステル化を意味する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、SO3ガスと反応して硫酸化物を与える化合物(以下、原料化合物という)を反応管内壁を流下させながら供給して、該反応管内壁上に原料化合物の薄膜を形成させるとともに、該反応管内にSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給する硫酸化物の製造方法であって、SO3ガスに対して0.01以上0.5以下の流量比、かつ0.1〜1.2の流速比となるように不活性ガスを供給する硫酸化物の製造方法、に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる原料化合物としては、アルキルアリール炭化水素、オレフィン炭化水素、脂肪族アルコール、アルキルフェノール及びそれらのエトキシレート、その他の硫酸化し得る有機化合物を使用することができる。本発明の製造方法は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸化物の製造に特に有用であり、該化合物はアルカリ金属水酸化物、アミンまたはアルカノールアミン等の一般的な塩基性試薬で中和することにより、高度に効果的な活性剤化合物を調製することができる。
【0007】
原料化合物の流量としては、原料化合物の分子量によっても異なるが、均一な液膜形成の観点から、浸辺長流量50kg/mHr以上、好ましくは100kg/mHr以上であることが望ましく、液膜内の混合不良による過剰反応を防ぐ観点から、浸辺長流量800kg/mHr以下、好ましくは600kg/mHr以下であること(例えば、50〜800kg/mHr、好ましくは100〜600kg/mHrであること)が望ましい。中でも例えば、14mmのように20mm以下の内径を有する反応管を用いた場合、原料化合物の流量としては、2.2kg/Hr以上、好ましくは4.4kg/Hr以上であることが望ましく、35kg/Hr以下、好ましくは26kg/Hr以下であること(例えば、2.2〜35kg/Hr、好ましくは4.4〜26kg/Hrであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを越える内径を有する反応管を用いた場合、4.4kg/Hr以上、好ましくは8.8kg/Hr以上であることが望ましく、70kg/Hr以下、好ましくは53kg/Hr以下であること(例えば、4.4〜70kg/Hr、好ましくは8.8〜53kg/Hrであること)が望ましい。なお、浸辺長流量は以下の式によって求めることができる。
【0008】
【数1】

【0009】
原料化合物の温度は、融点あるいは濁り点以上の温度であればよく、安定的に運転する観点から、反応管へ供給する前に、一般的な手段により一定温度に調整して供給することが望ましい。
【0010】
本発明に用いられる反応管としては、その内壁上に原料化合物を流下させ、原料化合物の薄膜を形成させることができ、またSO3ガス及び不活性ガスを、不活性ガスが原料化合物の薄膜とSO3ガス流との間に流れるように供給することができる構造であればよく、例えば、製作上及び器材の入手のしやすさからパイプ形状が好ましい。
【0011】
反応管の寸法は、具体的には、反応管がパイプ形状である場合、パイプの内径は圧力損失を防ぎ、エネルギーロスを抑える観点から、8mm以上、好ましくは12mm以上であることが望ましく、反応を終了するのに必要な管長を短くし、装置コストを抑える観点から、80mm以下、好ましくは40mm以下が望ましい。また、その場合のパイプの長さは、反応を完結させ、未反応原料を低減させたり、反応熱の除熱を効率的に行う観点から、1m以上、好ましくは2m以上であることが望ましく、圧力損失の軽減により、装置コストを抑える観点から、15m以下、好ましくは10m以下であることが望ましい。
【0012】
反応管の材質としては、特に限定はないが、例えばステンレス鋼、ガラス、フッ素樹脂、チタン、その他の合金材等が挙げられる。
【0013】
また、反応管は、該反応管内壁に原料化合物を流下できるように設置されていればよく、配置に制限はないが、例えば、水平面に対して垂直に立てられていることが好ましい。
【0014】
本発明におけるSO3ガスは、一般的には、空気、窒素又はその他の不活性ガスで希釈されて好適な濃度で使用される。この場合、SO3濃度は、一般的には、1.0体積%以上、10体積%以下の濃度を使用することが好ましい。
【0015】
また、その際のSO3ガスのみの流量としては、反応管の内径によっても異なるが、例えば、14mmのように20mm以下の内径を有する反応管を用いた場合には、良好な反応を行う観点から、例えば、1.8×10-3Nm3/s以上、好ましくは2.7×10-3Nm3/s以上であることが望ましく、圧力損失の軽減により、装置コストを抑える観点から、9.5×10-3Nm3/s以下、好ましくは8.0×10-3Nm3/s以下であること(例えば、1.8×1.0-3〜9.5×10-3Nm3/s、好ましくは2.7×10-3〜8.0×10-3Nm3/sであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを越える内径を有する反応管を用いた場合には、11×10-3Nm3/s以上、好ましくは15×10-3Nm3/s以上であることが望ましく、57×10-3Nm3/s以下、好ましくは48×10-3Nm3/s以下であること(例えば、11×10-3〜57×10-3Nm3/s、好ましくは15×10-3〜48×10-3Nm3/sであること)が望ましい。
【0016】
SO3ガスの流速としては、反応において環状流を形成し、均一な液膜を得る観点から、例えば30Nm/s以上、好ましくは40Nm/s以上であることが望ましく、反応において液膜の乱れ防止及びミストの発生防止の観点から、150Nm/s以下、好ましくは125Nm/s以下であることが望ましい。
【0017】
なお、SO3ガスの流速は後記実施例に記載の計算方法に従って算出することができる。
【0018】
本発明において原料化合物とSO3ガスとの間に供給される不活性ガスとしては、特に制限はなく、例えば空気、除湿を行った乾燥空気、窒素等のSO3ガスと原料化合物の両方に化学反応しないガスを用いることができ、コストの面から空気が好ましく、芒硝等の副反応物低減の目的から、除湿した乾燥空気がさらに好ましい。また、SO3ガスの希釈に用いる不活性ガスの一部を用いてもなんら差し支えない。
【0019】
また、その際の流量としては、反応管の内径によっても異なるが、例えば、14mmのように20mm以下の内径を有する1本の反応管を用いた場合には、色相改善効果を十分に得るという観点から、例えば、9.0×10-5Nm3/s以上、好ましくは1.4×10-4Nm3/s以上であることが望ましく、反応を促進させ、未反応原料を十分に低減させる観点から、6.3×10-3Nm3/s以下、好ましくは5.4×10-3Nm3/s以下であること(例えば、9.0×10-5〜6.3×10-3Nm3/s、好ましくは1.4×10-4〜5.4×10-3Nm3/sであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを越える内径を有する1本の反応管を用いた場合には、1.1×10-3Nm3/s以上、好ましくは1.5×10-3Nm3/s以上であることが望ましく、5.7×10-2Nm3/s以下、好ましくは4.8×10-2Nm3/s以下であること(例えば、1.1×10-3〜5.7×10-2Nm3/s、好ましくは1.5×10-3〜4.8×10-2Nm3/sであること)が望ましい。
【0020】
反応管内壁を流下する原料化合物上を流れる不活性ガスの流速としては、管中心を流れるSO3ガスの流速にもよるが、環状流を形成し、均一な液膜を得る観点から、例えば14mmのように20mm以下の内径を有する1本の反応管を用いた場合には、9Nm/s以上、好ましくは12Nm/s以上であることが望ましく、液膜の乱れ防止及びミストの発生防止の観点から、180Nm/s以下、好ましくは150Nm/s以下であること(例えば、9〜180Nm/s、好ましくは12〜150Nm/sであること)が望ましい。また、28mmのように20mmを越える内径を有する1本の反応管を用いた場合には、3Nm/s以上、好ましくは4Nm/s以上であることが望ましく、120Nm/s以下、好ましくは100Nm/s以下であること(例えば、3〜120Nm/s、好ましくは4〜100Nm/sであること)が望ましい。
【0021】
なお、不活性ガスの流速は、後記実施例に記載の計算式に従って算出することができる。
【0022】
SO3ガスに対する不活性ガスの流量比は、SO3ガスと不活性ガスの流路面積によって一概に規定することができないが、不活性ガスの流路面積の増大は、不活性ガス流量の増加を引き起こすため、反応熱の発生が過度に抑制されて反応が進みにくくなり、反応管内で反応が完結しにくくなるので、極端に流路面積を増大することは好ましくない。逆に、著しい流路面積の減少は、流路内での圧力損失を増大し、不活性ガス流路内での液膜厚と反応開始後の液膜厚に大きな差が生じることから液膜の乱れを誘発し、反応物を効率よく得られなくなり、好ましくない。これらの見地から、流量比(不活性ガス/SO3ガス)は、反応管の内径によっても異なるが、0.01以上、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.02以上である。また、1.8以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下である。中でも、0.015〜0.5が好ましく、0.02〜0.4がより好ましい。
【0023】
特に、反応管の内径が20mm以下の場合、さらに好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上である。また、好ましくは1.8以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.4以下である。中でも、0.05〜1.8が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.15〜0.4が特に好ましい。
【0024】
特に、反応管の内径が20mmを越える場合、さらに好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、一特に好ましくは0.02以上である。また、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.1以下である。中でも、0.01〜0.2が好ましく、0.015〜0.15がより好ましく、0.02〜0.1が特に好ましい。
【0025】
また、SO3ガスに対する不活性ガスの流速比は、反応管の内径によっても異なるが、0.1以上、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上である。また、1.2以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下である。中でも、0.15〜1.0が好ましく、0.2〜0.9がより好ましい。
【0026】
特に、反応管の内径が20mm以下の場合、さらに好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。また、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。中でも、0.3〜1.2が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜0.9が特に好ましい。
【0027】
特に、反応管の内径が20mmを越える場合、さらに好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。また、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.48以下である。中でも、0.1〜0.8が好ましく、0.15〜0.6がより好ましく、0.2〜0.48が特に好ましい。
【0028】
これらの流速比以外の範囲では、得られる硫酸化物の色相改善効果が低減する場合がある。これらの流速比の範囲においては、SO3ガスと不活性ガスとの境界におけるSO3ガス分子の不活性ガス中への混合が抑制され、SO3分子の原料化合物の液膜表面への到達速度が低下することにより、反応器上部での急激な反応が緩和され、局所的な発熱及び、反応物温度の急激な上昇が抑制されていると考えられる。しかも、これらの流速比に調整することにより、使用する不活性ガスの量はSO3ガスの量に対して従来技術よりも少量でよく、さらに設備上に負荷を強いることもなく、優れた色相改善効果を得ることができる。
【0029】
本発明に用いられる装置としては、前記したような構成を有する反応管を持つものであれば特に限定はなく、例えば、図1〜2に示されるような硫酸化反応装置が用いられる。
【0030】
図1は、本発明の好適な硫酸化反応装置の一例の概略説明図を示す。
硫酸化反応装置1は、原料化合物供給口2、不活性ガス供給口3及び、SO3ガス供給口4がそれぞれ具備された反応管5が配設されている。
【0031】
原料化合物、不活性ガス及びSO3ガスは、反応管5の上部において、それぞれの供給口から反応管5内に供給される。原料化合物は、反応管5の内壁を流下しながら、SO3ガスと反応する。また、反応管5は冷却装置6により外部から冷却できる構造となっており、冷却装置6には冷却水が供給される。反応管5の末端には気液分離器(サイクロン)7が装備されており、硫酸化物と排ガスを分離する。
【0032】
図2は、図1で示された硫酸化反応装置1における原料化合物、不活性ガス、SO3ガスの各供給口の構造を示す概略説明図である。
【0033】
また、本発明を工業的規模で行うにあたっては、複数本の反応管を組み合わせた多管型反応装置を用いることが好ましい。この場合に用いられる反応管としては、上述した反応管の内径、長さ等を用いることができ、各反応管は、内径、長さ等を揃えることが好ましい。
【0034】
【実施例】
実施例1〜3
原料化合物として、ラウリルアルコールに酸化エチレンを常法で2.5モル付加したアルキルエーテル(分子量295)を用いた。また、反応装置として、図1に示すような1本の反応管(反応管内径(D):14mmφ、反応管の長さ:4m、SO3ガス供給管の内径(d1):9mm、SO3ガス供給管の外径(d2):12mm)を有する硫酸化反応装置を用いた。
【0035】
原料化合物、SO3ガス及び不活性ガスをそれぞれの供給口から反応管内に連続的に供給し、反応管内で硫酸化反応を行った。原料化合物の流量については、浸辺長流量〔=原料流量/(π×反応管内径(D))〕で100kg/m・Hrとなるように、またその他の条件については、表1に示すように調整して硫酸化反応を行った。得られた硫酸化物は、NaOH水溶液によって中和し、色相(Klett No.;活性剤分10%含有品、10mmセル、波長:420nm)を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
〔不活性ガス流速の算出〕
なお、図2に示す如く反応管内に形成されたドーナツ状部(反応管とSO3ガス供給管との隙間)を流れる不活性ガスの流速(uS)は、以下の計算式によって求められる。
【0037】
【数2】

【0038】
ここで、uSはドーナツ状部を流れる不活性ガス流速〔m/s〕、VSはドーナツ状部を流れる不活性ガス流量〔m3/s〕、Dは反応管内径〔m〕、d2はSO3ガス供給管外径〔m〕、δはドーナツ状部を流れる原料化合物の液膜厚〔m〕を示す。ここで、液膜厚δは、以下の手順により求める。
【0039】
まず、単純なモデル(以下、円筒モデルという)として、円筒状の反応管内壁を流れる液膜の反応管の軸方向に対して垂直方向(y軸方向)の速度分布u(y)は、Navier-Stokes式から次のように示される。
【0040】
【数3】


【0041】
(なお、Pは圧力〔Pa〕、uLは円筒モデルの液流速〔m/s〕、uGは円筒モデルの不活性ガス流速〔m/S〕、uLiは円筒モデルの気液界面における液流速〔m/s〕、gは重力加速度〔m/s2〕、yは反応管内壁からのy軸方向の距離〔m〕、zは反応管の軸方向距離〔m〕、fは不活性ガスと液との摩擦係数〔-〕(下記の式で算出)、ρLは液密度〔kg/m3〕、ρGは不活性ガス密度〔kg/m3〕、μLは液の粘度〔Pa.s〕、τiは気液界面剪断応力〔Pa〕、δ’は円筒モデルの液膜厚み〔m〕、Γ’はδ’に基づいて計算して得られた浸辺長流量〔kg/mHr〕を示す。ここで、不活性ガスと液との摩擦係数fは、f=0.0791・Re-0.25で求められ、Re=(D・ρG・uG)/μG;D、ρG及びuGは前記と同じ、μGは不活性ガス粘度〔Ps・s〕を示す。)
【0042】
また、実際の浸辺長流量Γ〔kg/mHr〕は、Γ=液流量/(π・D)で求められる。ここで、液膜厚δ’を仮定し、この仮定に基づいて得られた浸辺長流量Γ’を(6)式により求め、浸辺長流量Γ’=実際の浸辺長流量Γ(kg/mHr;少数点2桁まで一致させる)になるδ’を決定する。δ’を決定するにあたり、不活性ガス流速uGを仮定して行う。
【0043】
次に、求めた円筒モデルの液膜厚δ’からドーナツ状部を流れる原料化合物の液膜厚δを以下の手順で求める。uS=uGとなるδ’をδとして求め、同時にuSを得る。即ち、上述より求めたδ’を用いて(1)式のδに代入して求めたuSと、δ’を求める際に仮定したuGが等しければ、δ’はδであり、同時にuSが求まる。uS≠uGであれば、δ’を求める際のuGの仮定値を変更して、再度δ’の算出以降の操作をして再計算することによりδとuSを求める。
【0044】
〔SO3ガス流速の算出〕
SO3ガスの流速は以下の計算式に従って算出した。
【0045】
【数4】

【0046】
なお、utはSO3ガス流速〔m/s〕、VGはSO3ガス流量〔m3/s〕、d1はSO3ガス供給管の内径〔m〕を示す。
【0047】
以上により求めた不活性ガス流速及びSO3ガス流速〔m/s〕には、温度・圧力の条件が含まれている。その影響をなくすため表1に示した流速〔Nm/s〕は、〔Nm3/s〕に換算した不活性ガス流量及びSO3ガス流量を用いて計算される。
【0048】
比較例1
反応条件を表1に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして硫酸化反応を行い、硫酸化物を得た。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例4〜7
原料化合物として、ラウリルアルコールとミリスチルアルコールを75:25(重量比)に混合したアルコールに酸化エチレンを常法で2モル付加したアルキルエーテル(分子量280)を用いた。また、反応装置として、48本の反応管(反応管内径(D):16mmφ、SO3ガス供給管の内径(d1):11.1mm、SO3ガス供給管の外径(d2):14.1mm、長さ:5m)を有する多管型硫酸化反応装置を用いた。
【0050】
かかる反応装置に原料化合物、SO3ガス及び不活性ガスそれぞれの供給口から反応管内へ連続的に供給し、反応管内で硫酸化反応を行った。原料化合物の流量については、浸辺長流量〔=原料流量/(π×反応管内径(D))〕で100kg/m・Hrとなるように、またその他の条件については、表1に示すように調整して硫酸化反応を行った。得られた硫酸化物は、NaOH水溶液によって中和し、実施例1と同様に色相を測定した。その結果を表1に示す。なお、色相が12以下のものを合格品とする。
【0051】
実施例8〜10
原料化合物として、実施例4〜7と同様のアルキルエーテルを用いた。また、反応装置として、図1に示すような1本の反応管(反応管内径(D):28mmφ、反応管の長さ:7m、SO3ガス供給管の内径(d1):22mm、SO3ガス供給管の外径(d2):25mm)を有する硫酸化反応装置を用いた。
【0052】
かかる反応装置に原料化合物、SO3ガス及び不活性ガスそれぞれの供給口から反応管内へ連続的に供給し、反応管内で硫酸化反応を行った。原料化合物の流量については、浸辺長流量〔=原料流量/(π×反応管内径(D))〕で230kg/m・Hrとなるように、またその他の条件については、表1に示すように調整して硫酸化反応を行った。得られた硫酸化物は、NaOH水溶液によって中和し、実施例1と同様に色相を測定した。その結果を表1に示す。なお、色相が12以下のものを合格品とする。
【0053】
比較例2〜3
反応条件を表1に示すように調整した以外は、実施例4と同様にして硫酸化反応を行い、得られた硫酸化物の中和物の色相を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1より、実施例1〜10で得られた硫酸化物は、不活性ガス/SO3ガス流量比及び流速比をそれぞれ0.01〜1.8の範囲及び0.1〜1.2の範囲に調整することにより、流量比、流速比の一方又は両方が前記の範囲から外れて調整された比較例1〜3で得られた硫酸化物より色相が大幅に改善されていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の製造方法を用いることにより、色相が大幅に改善された硫酸化物を低コストで得ることができるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明に用いられる硫酸化反応装置の一実施態様を示す概略説明図である。
【図2】
図2は、図1に示す硫酸化反応装置における原料化合物、不活性ガス、SO3ガスの各供給口の構造の一実施態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 硫酸化反応装置
2 原料化合物供給口
3 不活性ガス供給口
4 SO3ガス供給口
5 反応管
6 冷却装置
7 気液分離器(サイクロン)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-21 
出願番号 特願平11-63666
審決分類 P 1 651・ 536- YA (C07C)
P 1 651・ 113- YA (C07C)
P 1 651・ 537- YA (C07C)
P 1 651・ 121- YA (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西川 和子  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 佐藤 修
鈴木 紀子
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3002779号(P3002779)
権利者 花王株式会社
発明の名称 硫酸化物の製造方法  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 小川 信夫  
代理人 今城 俊夫  
代理人 細田 芳徳  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 箱田 篤  
代理人 大塚 文昭  
代理人 村社 厚夫  
代理人 細田 芳徳  
代理人 竹内 英人  
代理人 中村 稔  

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