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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C09D |
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管理番号 | 1101236 |
異議申立番号 | 異議2001-70412 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2004-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-06 |
確定日 | 2004-07-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3073775号「水性塗料用低汚染化剤、低汚染型水性塗料組成物及びその使用方法」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3073775号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
(I)手続きの経緯 特許第3073775号の請求項1ないし10に係る発明の出願は、1998年7月21日(優先権主張1997年7月24日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成12年6月2日に特許権の設定登録がなされ、関西ペイント株式会社より特許異議の申立てがなされ、訂正請求がなされ、平成14年1月29日に「訂正を認める。特許第3073775号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。」との特許異議の決定がなされた。 この決定に対して、その取消しを求める訴えが平成14年3月7日に東京高等裁判所に提起され[平成14(行ケ)111号]、その裁判の過程である平成15年2月19日に訂正審判[訂正2003-39034号]が請求され、平成16年3月19日に「特許第3073775号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決がなされ、その審決が確定した後の平成16年5月24日に、前記特許異議の決定を取り消す旨の判決がなされた。 (II)特許異議申立てについて (II-1)本件発明 本件の請求項1〜10に係る発明(以下、本件発明1〜10という。)は、前記訂正審判の請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された次の事項により特定されるものである。 【請求項1】少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であり、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4であることを特徴とする使用時に混合する水分散性の水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)。 【請求項2】前記アルコキシル基は、炭素数が2のエトキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤。 【請求項3】合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)がSi02換算にて1.0〜40.0重量部からなり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とが使用時に添加されたものであることを特徴とする低汚染型水性塗料組成物。 【請求項4】前記水性塗料用低汚染化剤(B)は、前記アルコキシル基が炭素数2のエトキシ基であることを特徴とする請求項3に記載の低汚染型水性塗料組成物。 【請求項5】合成樹脂エマルション(A)が、アクリル樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。 【請求項6】合成樹脂エマルション(A)が、アクリルシリコン樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。 【請求項7】合成樹脂エマルション(A)が、フッ素樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。 【請求項8】合成樹脂エマルション(A)が、ウレタン樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。 【請求項9】合成樹脂エマルション(A)が、架橋反応型エマルションであることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の汚染型水性塗料組成物。 【請求項10】合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)をSi02換算にて1.0〜40.0重量部混合、塗装するものであり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とを使用時に添加して混合し、塗装することを特徴とする低汚染型水性塗料組成物の使用方法。 (II-2)特許異議申立ての理由 異議申立人は、甲第1号証(特開平10-36759号公報)及び甲第2号証(特開平9-221611号公報)を提出して、本件の請求項1〜10に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証で特定される、本件出願前の他の特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であるから、前記請求項1〜10に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである旨を主張している。 (II-3)甲各号証の記載 甲第1号証(特開平10-36759号公報): (ア)「【請求項1】 一般式(I): (式中、R1は同一または異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、X1は同一または異なり、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基またはアミノ基、aは0、1または2を示す)で表わされるシリル基を含有するビニル系単量体(a-1)および該ビニル系単量体(a-1)と共重合可能なビニル系単量体(a-2)からなる重合成分を乳化重合させてなる乳化共重合体(A)100重量部に対して、 一般式(II): (式中、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R6は直接結合、炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数1〜20のアルキレンオキシ基、X2はアルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、アルキレンオキシド基、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基、ポリエーテル基、ポリエステル基またはポリカーボネート基、l、mおよびnはそれぞれモル比が式:l/m/n=1〜50/1〜50/0〜50を満足する整数を示す)で表わされるシリコン含有化合物(B)1〜50重量部、 および硬化触媒(C)0〜20重量部 を配合してなる水性塗料用樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1参照) (イ)「本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐候性および耐水性にすぐれるとともに、耐汚染性にもすぐれた塗膜を形成することができる水性塗料用樹脂組成物を提供することを目的とする。」(段落番号【0009】)。 (ウ) (段落番号【0100】参照) (エ) (段落番号【0101】参照) 甲第2号証(特開平9-221611号公報): (オ)「エマルジョンとして存在する合成樹脂(A)100重量部(固形分)および一般式(1):(R1O)4-a-Si-R2a(1)(式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のハロアルキル基、aは0〜2の整数、複数個含まれるR1、複数個含まれるばあいのR2はそれぞれ異なっていてもよい)で表わされるシリコン化合物および(または)その部分加水分解縮合物を主成分とする水溶化せしめられてなる化合物(B)1〜100重量部からなる水性塗料用樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、 (カ)「(B)成分が、一般式(1)で表わされるシリコン化合物および(または)その加水分解縮合物を、・・・(2)(注:マル2を読み替えたもの。以下同じ。)該シリコン化合物および(または)その加水分解縮合物とポリアルキレンオキシド基を有する化合物とを反応させて水溶化する・・・のいずれかの方法により水溶化せしめられた化合物である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。」(同請求項12参照)、 (キ)「各種水性塗料または水性樹脂組成物にテトラアルコキシシランおよび(または)その部分加水分解縮合物を水溶化してなる化合物を特定の割合で混合し、必要に応じて硬化触媒を特定の割合で混合することにより、従来の水性塗料では達成しえなかった耐汚染性を有し、また耐候性、耐水性にも優れた塗膜を形成することができる水性塗料用樹脂組成物がえられることを見出し」(段落番号0006、公報3頁3欄末行〜4欄7行参照)、 (ク)「(2)のシリコン化合物等(b)とポリアルキレンオキシド基を有する化合物とを反応させて水溶化する方法としては、たとえば該シリコン化合物等(b)とポリアルキレンオキシド基を有し、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基などの基を有する化合物とを反応させて水溶化する方法などがあげられる。前記ポリアルキレンオキシド基を有する化合物としては、ポリアルキレンオキシド基(たとえばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、・・・さらにオキシブチレン基がブロックまたはランダム結合で含まれている基など)を有し、シリコン化合物との反応を活性化するおよび(または)シリコン化合物と反応する基として作用するアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基などの基を有する化合物であるかぎりとくに限定はないが、反応活性、反応物の安定性の点から、ポリアルキレンオキシドアミン化合物が好ましい。」(段落番号0130〜0131、公報19頁36欄末行〜20頁38欄8行参照)、 (ケ)「本発明においては、エマルジョンとして存在する合成樹脂(A)に、一般式(1)で表わされるシリコン化合物および(または)その部分加水分解縮合物を主成分とする水溶化せしめられてなる化合物(B)を配合した水性塗料用樹脂組成物が被処理物に塗布するされるため、(B)成分が架橋反応の際に、塗膜表面に局在し、塗膜の表面硬度が高くなり、傷がつきにくくなり、汚染を防止しうる。また、塗膜が親水性であるため、雨などの洗浄効果が発現して、より一層優れた耐汚染性を有する塗膜が形成される。」(段落番号0157、公報22頁41欄35〜44行)。 (II-4)判断 本件発明1〜10は、いずれも、「ポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)である水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」という特定事項(以下、「特定事項A」という。)を有するものである。 これに対して、甲第1号証には、ポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物について、前記(ア)の一般式(II)で示される化合物、および、その具体例に相当する前記(ウ)および(エ)の化合物が記載されているすぎないところ、それらの化合物はいずれもSi-C結合を有するものであるから、甲第1号証に、本件発明1〜10の前記特定事項Aに係る「Si-C結合を有するものを除く」という条件を満足する化合物が記載または示唆されているとすることはできない。 また、甲第2号証には、前記(オ)〜(ケ)で示されるように、ポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有する水溶化せしめられたアルコキシシランの変性縮合物を水性塗料用低汚染化剤とすることが記載されているものの、水溶化せしめられたアルコキシシランの変性縮合物に該当しない、すなわち、水溶化されたものを除くアルコキシシランの変性縮合物を水性塗料用低汚染化剤とすることが記載されているとすることはできないから、甲第2号証に、本件発明1〜10の前記特定事項Aに係る「ポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物である水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」が記載または示唆されているとすることはできない。 そして、甲第1号証および甲第2号証は、それぞれ、甲第1号証または甲第2号証で特定される特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に対応するものである。 したがって、前記特定事項Aを特定事項として含む訂正発明1〜10が、甲第1号証及び甲第2号証で特定される本件出願前の特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であるとすることはできない。 よって、特許異議申立人の前記主張は、「本件の請求項1〜10に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証で特定される、本件出願前の他の特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一である」との前提において誤りであり、採用することができない。 (II-5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1〜10についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜10についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-01-29 |
出願番号 | 特願平11-509664 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
Y
(C09D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 近藤 政克 |
特許庁審判長 |
雨宮 弘治 |
特許庁審判官 |
西川 和子 佐藤 修 |
登録日 | 2000-06-02 |
登録番号 | 特許第3073775号(P3073775) |
権利者 | エスケー化研株式会社 |
発明の名称 | 水性塗料用低汚染化剤、低汚染型水性塗料組成物及びその使用方法 |
代理人 | 尾崎 雄三 |
代理人 | 谷口 俊彦 |
代理人 | 室之園 和人 |
代理人 | 渡辺 秀夫 |
代理人 | 梶崎 弘一 |
代理人 | 鈴木 崇生 |