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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1101849
審判番号 不服2001-23145  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-26 
確定日 2004-08-12 
事件の表示 平成10年特許願第164774号「広域個人情報更新システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月 7日出願公開、特開2000- 3390〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成10年6月12日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年8月2日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項に特定される。
「個人情報を扱う業務ごとに管理元自治体のコードと個人識別子の組を記録するカードと、
該カードを読み書きする手段と、
個人情報についての異動情報を入力する手段と、
該異動情報に関連する業務について入力された管理元自治体のコードと該異動情報に基づく異動先の自治体のコードとを比較する手段と、
該管理元自治体のコードと該異動先の自治体のコードが異なるとき、該カード上の関連する業務の該管理元自治体のコードと対応する該個人識別子とを更新する手段と
を有することを特徴とする広域個人情報更新システム。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された、砂田智 他3名:「マルチメディアサービスシステムにおける光・ICハイブリッドカードの利用に関する考察」、情報処理学会研究報告、社団法人情報処理学会発行、1998年2月26日、第98巻第15号(以下、「 引用例」という。)には、光・ICカードを利用した、オンラインで行政サービスを提供するシステムの実験について、次の事項が記載されている。

(a)「実験を行なった行政サービスは以下の4つとした。
●住所移転手続き(ワンストップ移転サービス)
●住民票発行サービス
●印鑑登録証明書サービス
●電子回数券発行サービス
また、サービスを取得する方法は、コンビニエンスストア・郵便局などの公的な場所にインターネットに接続された情報端末を設置し、住民が最寄りの端末設置場所まで出向くものとした。」(116頁左欄下3行-右欄6行)

(b)「3.1 ワンストップ移転サービス
引越しをして住所が変わる時のことを考えると、我々は実に様々な場所へ出向いて住所変更の手続きを行わなくてはならない。まず現在いる市町村の役所へ行き、転出手続きを行う。その他郵便局、ガス・水道・電気会社、電話局にも通知を行わなくてはならない。
ワンストップ移転サービスとは、このような引越しに伴う面倒な手続きを、市役所への一回限りの届出で全て自動的に済ませるサービスである。
今回のプロジェクトでは2自治体間でのサービスに固定し、転入する市役所へ住所変更を届け出れば、自動的に転出側の自治体で転出処理を行う。処理には
●転入手続き
●転出手続き
●印鑑登録手続き
が含まれる。」(117頁左欄1行-17行)

(c)「6.1 全てのサービスに共通な処理
1.ユーザichiroが自分のカードcard1を端末に挿入する(同時にカードのIC部に電源が入る)。
2.ユーザが端末の指紋読み取り機に指紋を入力する。
3.カード内の指紋データと読み取られたデータが比較され、ユーザ認証が行なわれる。
この時点で、ユーザichroが確かにカードcard1の所有者であることが確認される。生体情報を認証に用いるので、他のユーザがカードを盗んでichiroになりすますことはできない。
1.ユーザは受けたいサービスを情報端末の画面で選択する。
サービス選択後、それぞれのサービス固有の処理に移る。」(119頁左欄3行-16行)

(d)「6.2 2自治体間ワンストップ移転サービス
府中市から横浜市へ引っ越す場合を考える。
1.ユーザは転入先の県名(神奈川県)と市町村名(横浜市)を選択する(市町村データはクライアント端末にある)。
2.さらに住所名を選択する(住所データを横浜市のサーバから自動的にダウンロードし、番地は手で入力する)。
3.クライアント端末は入力されたデータを元に住所移転申請書を作成し、カードに記録された居住証明書とともに転入先(横浜市)の役所のサービスマネージャに送信する。転出元(府中市)の住所はユーザの入力を必要とせず、カード内に記録されている居住証明書を用いる。
(・・・)
これ以降は住所移転手続きとなり、仮手続き・本手続きの2段階で処理することでデータベースの整合性を保つ。
1.横浜市のサービスマネージャは横浜・府中各市のonestopサーバに以下の要求を出す。ただし、府中市については府中市のサービスマネージャが要求をリダイレクトする。
(上記「以下の要求」について、「表4:onestop仮処理要求」には、横浜市に対して、新住所に対する居住証明書の発行と住民台帳への転入仮処理を、府中市に対して、印鑑登録データの横浜市への転送と住民台帳への転出仮処理を要求することが記載されている。)
2.次に横浜市のサービスマネージャは横浜市のonestopサーバへ印鑑登録データの仮登録要求を出し、同時にクライアント端末へ新しい居住証明書を送信する。
3.サービスマネージャは処理完了を確認する。
4.サービスマネージャは本処理を行なうため、以下の処理要求を出す。
(上記「以下の要求」について、「表5:onestop本書理要求」には、横浜市に対して、印鑑登録データの本登録と住民台帳への転入本処理を、府中市に対して、印鑑登録データの無効化と住民台帳への転出本処理を、クライアントに対して、新しい居住証明書のカードへの書き込みを要求することが記載されている。)
5.クライアント端末の画面にサービスが完了した旨を表示し、カードを排出して全て終了となる。」(119頁左欄19行-右欄下6行)

上記各摘記事項によると、引用例には、自治体間ワンストップ移転サービスを実現するための、カードと、転入する側の自治体の情報端末あるいはクライアント端末と、onestopサーバ及びサービスマネージャ等からなる、いわば、自治体間ワンストップ移転サービスシステムが記載されている。そして、カードには居住証明書等が記録されている。また、そのカードを端末に挿入し読み書きする手段が記載されている。また、ユーザは転入先を選択して入力していることから、転入先を選択入力する手段の存在することは明らかである。また、府中市から横浜市へ引っ越す場合が記載されており、その際居住証明書を更新する手段(表5)が記載されている。よって、引用例には、
「居住証明書を記録するカードと、
該カードを端末で読み書きする手段と、
転入先を選択入力する手段と、
該カード上の居住証明書を更新する手段と
を有することを特徴とする自治体間ワンストップ移転サービスシステム。」
の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用例記載の発明を対比すると、引用例記載の発明の「居住証明書」は本願発明の「個人情報」に相当し、以下同様に、「転入先を選択入力する手段」は「個人情報についても異動情報を入力する手段」に相当する。また、「居住証明書を更新する手段」はカードの所有者の身元を保証する業務の情報を更新することであるから、「関連する業務の情報を更新する手段」に相当する。さらに、「自治体間ワンストップ移転サービスシステム」は「広域個人情報更新システム」に相当する。
したがって、両者は
「個人情報を記録するカードと、
該カードを読み書きする手段と、
個人情報についての異動情報を入力する手段と、
該カード上の関連する業務の情報を更新する手段と
を有することを特徴とする広域個人情報更新システム。」
で一致し、
(相違点1)
本願発明が「個人情報を扱う業務ごとに管理元自治体のコードと個人識別子の組」をカードに記録しているのに対し、引用例記載の発明は「居住証明書」をカードに記録している点。
(相違点2)
本願発明が「該異動情報に関連する業務について入力された管理元自治体のコードと該異動情報に基づく異動先の自治体のコードとを比較する手段」を有し「該管理元自治体のコードと該異動先の自治体のコードが異なるとき、該カード上の関連する業務の該管理元自治体のコードと対応する該個人識別子とを更新する」のに対し、引用例記載の発明には「該異動情報に関連する業務について入力された管理元自治体のコードと該異動情報に基づく異動先の自治体のコードとを比較する手段」が明記されていない点。
で相違する。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例1にも摘記事項(a)のとおり、1つのカードを複数のサービスに用いることが記載されており、個人情報を扱う業務ごとに個人情報をカードに記録することも、例えば、特開平7-36992号公報3頁左欄40行-右欄2行及び特開平1-93877号公報3頁右下欄4-17行に記載されているように、当業者に周知である。よって「個人情報を扱う業務ごと」にカードに記録することは当業者にとって容易に想到しうる事項である。その際、管理元自治体のコードと個人識別子の組を記録することは、個人情報の中に自治体コードと個人識別子を含ませることが、例えば、特開平7-271783号公報3頁右欄21-25行及び特開平7-271782号公報4頁左欄13-17行に記載されているように、当業者に周知であるから、前記「管理元自治体のコードと個人識別子の組をカードに記録すること」は当業者にとって容易に想到しうる事項である。

(相違点2について)
通常の自治体の窓口業務において、個人情報の変更が自治体内での変更であるのか、自治体間の変更であるのかを比較判断すること及びその比較判断結果に応じた処理を行うことは窓口業務を行う人間によって、普通に行われている。そして、上記(相違点1について)において例示したとおり、自治体業務をシステム化した場合、自治体を識別するコードを用いることは周知であり、個人識別子は各自治体毎に異なるのが通常であることから、「異動情報に関連する業務について入力された管理元自治体のコードと異動情報に基づく異動先の自治体のコードとを比較する手段」を設け、「該管理元自治体のコードと該異動先の自治体のコードが異なるとき、該カード上の関連する業務の該管理元自治体のコードと対応する該個人識別子とを更新する」ことは前記窓口業務を行う人間の処理をシステム化したに過ぎない。よって、相違点2についても当業者にとって容易に想到しうる事項である。
また、本願発明の効果も当業者が予測しうる程度の効果に過ぎない。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-09 
結審通知日 2004-06-15 
審決日 2004-06-28 
出願番号 特願平10-164774
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 山本 穂積
竹中 辰利
発明の名称 広域個人情報更新システム  
代理人 小川 勝男  

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