• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1101892
審判番号 不服2003-3875  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-10 
確定日 2004-08-12 
事件の表示 平成10年特許願第286216号「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年4月21日出願公開、特開2000-114302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年10月8日の出願であって、平成15年2月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月9日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年4月9日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月9日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「半導体基板上に、少なくとも一部にアルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層とが相接して積層された金属層を有する半導体装置において、300℃から500℃の熱処理により、アルミニウムを主
成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層との境界面に形成されるAl-Ni金属間化合物がNiAl3を含み、相接して積層された部分のアルミニウムを主成分とする金属層の膜厚(tAl)とニッケルを主成分とする金属層の膜厚(tNi )との比(tAl/tNi)が、5以上であることを特徴とする半導体装置。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「熱処理」について「300℃から500℃の」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、つまり特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第98/9332号パンフレット(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
(2a)「1.A semiconductor device comprising electrodes formed on a semiconductor chip, and bumps each consisting of a spherically formed low melting point metal ball having a given size, and adhesive bonded to the elctrodes.」(請求項1)
(2b)「4.The semiconductor device according to claim 3, wherein the electrodes each comprise a layer of an electrode material composed of Al or Al alloy, and at least one metal layer or metal alloy layer laminated to the electrode material layer and having a melting point higher than the electrode material.
5.The semiconductor device according to claim 4, wherein the at least one layer laminated to the electrode material layer is formed from a metal selected from Ti, W, Ni, Cr, Au, Pd, Cu, Pt, Ag, Sn, Pb, or an alloy of these metals.」(請求項4,5)
(2c)「10.A process for producing a semiconductor device provided with low melting point metal bumps on a semiconductor chip, the process comprising the steps of :
adhesive bonding low melting point metal balls each being spherically formed and having a given size to the electrodes, andreflowing the low melting point metal balls.」(請求項10)
(2d)「Fig.1 shows a semicondutor device 1 of the present invention. The semiconductor device 1 is provided with low melting point metal ball bump 3 adhesive bonded onto the electrodes (not shown) formed on a surface of a semiconductor chip2.
The low melting metal balls 3 can be formed from one of the various solders used for mounting a semiconductor device on a substrate. Examples of the solders include solders of Sn alloys such as a Sn-Pb alloy and a Sn-Ag alloy and solders of Pb alloys such as a Pb-In alloy. 」(4頁28〜37行)
(2e)「examples of the laminated structure of the electrode in which Al or its alloy is used as an electrode material may include Al/Ni, Al/Ni/Au,」(6頁7〜9行)
(2f)「An example of the production of a semiconductor device in the present invention will be explained by making reference to Fig. 4.
As shown in Fig. 4A, a 100 x 100 μm electrode 42 1.0μm thick of an Al alloy (Al-Si-Cu alloy) is formed on a semiconductor chip 41 by sputtering. The reference numeral 43 in the figure designates a passivation film which compartments the electrode thus formed. Next, a metal layer 44 of Ni and a metal layer 45 of Cu each having a thickness of 80 nm are successively laminated to the chip electrode 42 by sputtering, as shown in Fig. 4B. 」
(8頁7〜17行)
(2g)「The semiconductor device of the present invention provided with the bumps of solder balls 46 as shown in Fig. 4C may also be flip chip bonded to the substrate after forming semispherical bumps 47 by reflowing the solder balls once as shown in Fig. 4D.」
(9頁1〜5行)という記載があり、上記摘記事項(2a)〜(2g)の日本語訳は以下のとおりである。

摘記事項(2a)「1.半導体チップ上に形成された電極と、これらの電極に接着結合された、球状に形成された所定寸法の低融点金属ボールからなるバンプとを含む半導体装置。」、
(2b)「4.前記電極が、Al又はAl合金から構成された電極材料の層と、この電極材料層に積層された、当該電極材料よりも融点が高い金属層又は金属合金層を少なくとも一つ含む、請求項3記載の半導体装置。5.前記電極材料の層に積層された前記少なくとも一つの層が、Ti、W、Ni、Cr、Au、Pd、Cu、Pt、Ag、Sn又はPbから選択された金属又はこれらの金属の合金で形成されている、請求項4記載の半導体装置。」、
(2c)「10.半導体チップ上に低融点金属のバンプを備えた半導体装置を製造する方法であって、球状に形成された所定寸法の低融点金属のボールを電極に接着結合する工程、及びこの低融点金属ボールをリフローさせる工程を含むことを含む半導体装置製造方法」、
(2d)「図1に、本発明の半導体装置1を示す。この半導体装置1は、半導体チップ2の表面に形成した電極(図示せず)上に接着結合された低融点金属ボールのバンプ3を備えている。低融点金属ボール3は、半導体装置を基板へ実装するのに使用される各種の半田類の一つから形成することができる。それらの半田の例には、Sn合金、例えばSn-Pb合金及びSn-Ag合金等の半田や、Pb合金、例えばPb-In合金等の半田が含まれる。」、
(2e)「電極材料としてAl又はその合金を使用する電極の積層構造の例には、・・・Al/Ni、Al/Ni/Au」、
(2f)「次に、図4を参照して、本発明の半導体装置の製造の一例を説明する。図4Aに示すように、半導体チップ41上に、100×100μmのAl合金(Al-Si-Cu合金)の電極42を、スパッタ法により1.0μmの厚さで形成する。この図中の43は、こうして形成した電極を区画しているパッシベーション膜を示している。次に、図4Bに示すように、チップ電極42にNiの金属層44とCuの金属層45とをスパッタ法によりそれぞれ80nmの厚さで順次積層する。」、
(2g)「図4Cに示された半田ボール46のバンプを備えた本発明の半導体装置は、図4Dに示したように半田ボールを一旦リフローさせて半球状のバンプ47を形成してから基板にフリップチップボンディングしてもよい。」
そして摘記事項(2a)〜(2g)を総合すると、引用例1には、
「半導体チップ上に、Al合金の電極を1.0μmの厚さで形成し、次に
Niの金属層を80nmの厚さで積層した半導体装置で、電極上の低融点金属ボールをリフローさせる半導体装置。」との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「半導体チップ」は、本願補正発明の「半導体基板」に相当し、以下同様に、「Al合金の電極」は「アルミニウムを主成分とする金属層」に、「Niの金属層」は「ニッケルを主成分とする金属層」に、それぞれ相当し、引用例1発明の「Al合金の電極を1.0μmの厚さで形成し、次にNiの金属層を80nmの厚さで積層した」ことは、本願補正発明の「アルミニウムを主成分とする金属層の膜厚(tAl)とニッケルを主成分とする金属層の膜
厚(tNi)との比(tAl/tNi)が、5以上であること」に該当するから、両者は、
「半導体基板上に、少なくとも一部にアルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層とが相接して積層された金属層を有する半導体装置において、相接して積層された部分のアルミニウムを主成分とする金属層の膜厚(tAl)とニッケルを主成分とする金属層の膜厚(tNi)との比(tAl/tNi)が、5以上である半導体装置。」
の点で一致する。そして、以下の点で一応相違している。
本願補正発明では、300℃から500℃の熱処理により、アルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層との境界面に形成されるAl-Ni金属間化合物がNiAl3を含む点が特定されているのに対して、引用例1発明においては、この点の記載がなく、電極上の低融点金属ボールをリフローさせることが特定されている点。
上記相違点について検討すると、摘記事項(2d)に「図1に、本発明の半導体装置1を示す。この半導体装置1は、半導体チップ2の表面に形成した電極(図示せず)上に接着結合された低融点金属ボールのバンプ3を備えている。低融点金属ボール3は、半導体装置を基板へ実装するのに使用される各種の半田類の一つから形成することができる。それらの半田の例には、
Sn合金、例えばSn-Pb合金及びSn-Ag合金等の半田や、Pb合金、例えばPb-In合金等の半田が含まれる。」と記載されているから、引用例1発明の低融点金属ボールとは、融点が300℃以上のものも含まれていることになり(Pb-Inの典型的な組成であるPb95%-In5%:314℃)、バンプを形成するボールの材質としては種々の組成の半田ボールや融点が400℃以下の、いわゆる、低融点合金あるいは金属が使用できることが知られているので(特開平8-306695号公報【0011】3〜5行)、引用例1発明において、低融点金属ボールをリフローさせることは、300℃から500℃の熱処理をすることであるといえる。また、さらに、300℃から500℃の熱処理により、アルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層の境界面にNiAl3の金属間化合物が生成することは、アルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層の境界面においては、Al原子とNi原子が混合され、混合状態において、AlとNiの金属間化合物が形成されることが自明であり、そして、NiAl3は、その典型的なAl-Ni金属間化合物であることから、明らかである。
したがって、引用例1発明の低融点金属ボールをリフローさせる処理によっても、当然、アルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層との境界面にNiAl3を含むAl-Ni金属間化合物が形成されるといえる。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年4月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る発明は、平成15年1月9日付手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「半導体基板上に、少なくとも一部にアルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層とが相接して積層された金属層を有する半導体装置において、熱処理により、アルミニウムを主成分とする金属層とニッケルを主成分とする金属層との境界面に形成されるAl-Ni金属間化合物がNiAl3を含み、相接して積層された部分のアルミニウムを主成分とする金属層の膜厚(tAl)とニッケルを主成分とする金属層の膜厚(tNi )との比(tAl/tNi)が、5以上であることを特徴とする半導体装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「熱処理」の限定事項である「300℃から500℃の」との特定するために必要な事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明である。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-09 
結審通知日 2004-06-15 
審決日 2004-06-30 
出願番号 特願平10-286216
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 永一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 瀬良 聡機
市川 裕司
発明の名称 半導体装置  
代理人 篠部 正治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ