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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1102081
審判番号 不服2003-10049  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-04 
確定日 2004-08-19 
事件の表示 平成 6年特許願第 79147号「空気調和システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月26日出願公開、特開平 7-248142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成6年3月10日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年12月2日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「室内温調用の空気調和機(1)の室内機(2)と、この室内機(2)から離れた箇所で室内の上層部に据付けられた室内空気循環用の送風機(8)と、室内の下層部に配置された温度検出装置(10)とにそれぞれ温度検出部(13)(24)(32)を設け、各温度検出部(13)(24)(32)にて検出される3つの検出温度(T1〜T3)に基づいて空気調和機制御部(18)と送風機制御部(22)とによって、検出した室内温度(T1〜T3)の分布をほぼ均一にするように、空気調和機(1)と送風機(8)との運転制御を行うことを特徴とする空気調和システム。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用した特開平2-183755公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「(従来の技術)
上記のような空調調和システムの従来例としては、例えば実開昭58‐196728号公報記載の装置を挙げることができる。暖房機とサーキュレータとを有するその装置においては、暖房機において加熱された暖気は上昇して天井側の上層部に滞留することから、室内の上部と下部との各空気温度を検出する温度センサをそれぞれ設け、各温度センサでの検出温度差が基準温度差を超えた時に上記サーキュレータ内の循環ファンを作動して上部側の暖気を床面側へと循環させるようになされている。」(第1頁右下欄第19行-第2頁左上欄第10行)

(2)「(発明が解決しようとする課題)
ところで上記従来装置においては、暖房機とサーキュレータとの運転操作は個別に行うものであるために、運転開始時及び運転停止時にはそれぞれ運転スイッチの操作を二度ずつ行う必要があり、この結果、充分に満足し得る利用操作性が得られないという問題がある。また上記において温度センサでの検出温度差が基準濃度差を超えていることによって循環ファンの運転を所定の回転速度で一義的に継続するようにした場合、当初は利用者に温暖感を与える運転であっても、室温の上昇と共に暖気の気流感が逆に不快感を誘うという問題もある。さらに上記においては循環ファンの制御のために二個の温度センサを設ける必要があるために、充分なコストダウンが図れないという問題もある。
この発明は上記に鑑みなされたものであって、その目的は、利用操作性及び空調快適性を向上し得ると共に、さらにより安価に構成し得る空気調和システムを提供することにある。」(第2頁左上欄第11行-右上欄第10行)

(3)「(課題を解決するための手段)
そこで第1図に示しているように、この発明の第1請求項記載の空気調和システムは、室内の暖房或いは冷房を行うための熱源3を備えた空気調和機1と、この空気調和機1から離れた箇所に据付けられると共に室内の空気を循環させる循環ファン12を備えたサーキュレータ11と上記空気調和機1の運転を制御する空調運転制御装置21と、上記循環ファン12を作動して行う循環運転を制御する循環運転制御装置31とを設けて成る空気調和システムであって、上記空気調和機1の運転に連動して上記循環運転が行われるべく循環運転制御信号を上記循環運転制御装置31に出力する循環運転制御信号出力部33を上記空調運転制御装置21に設けている。
また第2請求項記載の空気調和システムは、上記第1請求項記載の空気調和システムにおいて、上記サーキュレータ11に室内の空気温度を検出する温度センサ32を設けると共に、上記空気調和機1の運転開始時における上記温度センサ32での初期検出温度を記憶する初期温度記憶手段40を設け、上記空気調和機1の運転に伴って変化していく室内空気に対する上記温度センサ32での検出温度と上記初期検出温度との温度差が第1基準温度差を超えた時に上記循環ファン12の作動を第1回転速度で開始する一方、上記温度差が上記第1基準温度差よりも大きな第2基準温度差を超えた時に上記循環ファン12を上記第1回転速度よりも小さな第2回転速度に変更する制御を上記循環運転制御装置31が行う。」(第2頁右上欄第11行-左下欄第20行)

(4)「まず第2図には空調室の縦断面模式図を示しており、図のように、この調和室の一壁面には、セパレート形空気調和機1の床置き形室内機2が据付けられている。」(第3頁左上欄第17-20行)

(5)「同図において、21は、上記室内機2に内装されている空調運転制御装置であり、この空調運転制御装置21には、(中略)、また機内への吸込空気の温度を室温として検出する室温センサ26がさらに接続されている。」(第3頁左下欄第6-13行)

したがって、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例発明」という。)。

「室内の下層部に据付けられた室内温調用の空気調和機の室内機と、この室内機から離れた箇所で室内の上層部に据付けられた室内空気循環用のサーキュレータとにそれぞれ温度センサを設け、各温度センサにて検出される検出温度に基づいて空調運転制御装置と循環運転制御装置とによって、室内温度の分布をほぼ均一にするように、空気調和機とサーキュレータとの運転制御を行う空気調和システム。」

3.対比

本願発明と引用例発明とを対比する。

引用例発明の「サーキュレータ」は本願発明の「送風機」に相当し、以下同様に、「温度センサ」は「温度検出部」に、「空調運転制御装置」は「空気調和機制御部」に、また、「循環運転制御装置」は「送風機制御部」にそれぞれ相当するから、

両者は、

「室内温調用の空気調和機の室内機と、この室内機から離れた箇所で室内の上層部に据付けられた室内空気循環用の送風機とにそれぞれ温度検出部を設け、各温度検出部にて検出される検出温度に基づいて空気調和機制御部と送風機制御部とによって、室内温度の分布をほぼ均一にするように、空気調和機と送風機との運転制御を行う空気調和システム。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、室内機と、室内の上層部に据付けられた送風機と、「室内の下層部に配置された温度検出装置とにそれぞれ温度検出部を設け、各温度検出部にて検出される3つの検出温度に基づいて、検出した室内温度の分布をほぼ均一にするように、空気調和機と送風機との運転制御を行う」のに対して、引用例発明では、室内の下層部に据付けられた室内機と、室内の上層部に据付けられた送風機とに「それぞれ温度検出部を設け、各温度検出部にて検出される検出温度に基づいて、室内温度の分布をほぼ均一にするように、空気調和機と送風機との運転制御を行う」点。

4.判断

上記相違点について検討する。

引用例には、従来技術として、室内の上部と下部に温度検出部を設け、これらの温度検出部で検出した空気温度を用いて送風機を制御する点(上記「2.(1)」参照)、及び、従来技術の問題点として、送風機の制御のために二個の温度検出部を設けると、充分なコストダウンを図れない点(上記「2.(2)」参照)が記載されている。

したがつて、引用例発明において、コストダウンを図るとともに、送風機に設けた1個の温度検出部による複雑な制御を避けるために、室内の上層部に据付けた該送風機の1個の温度検出部とともに、室内の下部に温度検出部を設けることに代えて、室内の下層部に据付けた室内機の温度検出部を兼用して送風機を制御すること、また、室内温度の分布をより均一にするために、室内の下層部に温度検出部を適宜追加することにより、上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例の記載から当業者が予測できた範囲内のものである。

5.むすび

本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-08 
結審通知日 2004-06-15 
審決日 2004-06-29 
出願番号 特願平6-79147
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荘司 英史  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 原 慧
櫻井 康平
発明の名称 空気調和システム  
代理人 西森 正博  

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